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愚かな国王6
しおりを挟むコンコンコンコン―――・・
「ん・・・あ――・・」
不意にノックの音で目覚めた。
どうやら、いつの間にか眠っていたらしい。
コンコンコンコン―――・・
もう一度ノックされて慌てて返事を返す。
「はい、どうぞ・・」
「失礼します・・」
入って来たのは中年の男性だった。
よかった侍女を見ただけで王女を思い出してイヤな気分になるから助かった。
「お食事をお持ちしました」
「ありがとう。運んでくれ・・」
ワゴンを押してテーブルに並べられたのは、パンとサラダとスープとメインの肉料理だった。
「美味しそうですね。」
「申し遅れました。私、ルート様のお世話をさせていただきますマークと申します。以後お見知りおきを・・」
「私はルートと申します。よろしくお願いしますね。マークさん」
「さんは必要ありません。マークとお呼びください。それに敬語も必要ありません」
「・・わかったマーク。よろしく頼む」
「はい、お任せを。ではテーブルのセッティングをいたします」
結構、空腹だったので頂くことにするが念のため鑑定をかける。うん、よかった毒などは入っていないようだ。王女のお茶会では、如何にも毒入りですってお茶が出されたからあれから無意識に鑑定するようになってしまった。
だけどこういう時、無詠唱だと便利だよな。相手に気付かれないから。
座って食べていると、何だか外が騒がしい。何かあったのか?
コンコンコンコン―――・・
ノックの音にちょっとびっくりする。だって誰かが尋ねてくる予定なんてないからだ。
「誰でしょうか?」
「う~ん・・・頼んでいいか?」
「はい、少々お待ちください」
ドアを開ける前に誰だか訊ねるが反応がない。
「どうしますか?」
「名乗らないならムシしていいよ」
「はい・・」
ムシしていいといったらマークは少し驚いたようだが、頷いてこっちに戻って来た。
間違いだったのか?でもここ王宮だし、客室だし・・そんなことあるのか?
食事も終わってお茶を飲んでいたらもう一度ノックの音がした。
「またか・・今度は開けてみて」
「はい・・」
マークがドアを開けるとそこには小さな男の子がいた。どこかの令息か?
「これは王太子殿下。なぜここに?」
へっ!王太子殿下って言わなかったか?
「うむ、姉上を助けてくれた恩人がここにおられると聞いたので挨拶にきた。会えるか?」
マークは少し困ったような顔になったが、オレが頷くと彼を部屋に招き入れた。
オレは立ち上がり膝をつく。今は平民のふりをしているのだからこれははずせない。
「貴殿がルートか?」
「はい・・」
「姉上を助けてくれて礼を言う。ありがとう」
にっこり笑う王太子殿下はまだ幼くて可愛らしいがしっかりとしていた。あの我がまま王女とは偉い違いだ。
「勿体ないお言葉です。」
彼ならこの国は大丈夫かもしれない。あいつも見捨てることなんてことはしないだろう。
この国の微かな希望の光を見た気がした。
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