人違いの婚約破棄って・・バカなのか?

相沢京

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国の行く末13

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ええええええ―――――っ!!

姉上、すげえ怒ってるううう――っ!


「あ、姉上・・お、落ち着いて・・ね?」

「フフフ・・アラン私は落ち着いているわよ」


いやいやいや・・その笑顔のときって興奮している時だよね?
あのゲイルの騒ぎの時と同じ笑顔で怖いんだけど・・?

「あのさ、忘れているかもしれないけど、オレは王妃でレイルは国王。ムチを振るうのはダメだと思うんだけどな~?」


遠慮がちに伝えたらますます顔が強張って行った。

あ、余計に怒らせた?

それに気づいたときには遅く、ムチの先が床に落とされ振動と音が響く。
それが体だけでなく頭にも響く。

「うっ・・」

ん・・あれ、おかしいな何か吐き気が・・

「ぐっ・・うぅ・・ん」

手を口元に当て飲み込むが目眩もして立っていられなくなってきた。

我慢できなくなって膝が床に着く。

ダメだ・・気持ち悪い・・・


「アラン・・?」
「おい、しっかりしろっ!」

二人の心配する声が聞こえるが体の力が抜け意識が遠のいていく。

「・・・レ・・イル・」

どうしよう・・オレ、死ぬの、か・・な?

視界も暗くなってきてオレの意識はプッツリと切れたのだった。








「ん・・・」

ぼんやりと意識が浮上したのは辺りが暗くなってからだった。

目を開けると、見覚えのある天井が見えて自室だと気づくのに少し時間がかかった。

「あれ・・?何でベッドに?」

確か姉上のムチの制裁を受けて・・ああ、そうか急に気分が悪くなって・・倒れたんだ。

ゆっくりと起き上がると部屋に一人だけで、誰もいない。

はあ~・・何で急に気分が悪くなったんだろう?異物の飲食はないし・・心当たりがないな。

なら、ただ単に疲れていただけかもしれないな・・うん、きっとそうだな。

「それより、お腹がすいたな」

ベッドから降りて外に出ようと歩きだしたら、ドアが開いた。

入って来たのはレイルだった。

「アラン、気が付いたのか?」
「ああ、心配かけてごめん」
「いや、謝るな。悪いのはオレだ。お前疲れてたんだろう?それなのに無理をさせてすまなかったな・・」
「レイルのせいじゃないよ。それよりみんなはどうしている?」
「ああ、お前が倒れてアリアはパニックになって、お前を無理やり連れて行こうとするから焦った・・・」
「姉上がパニックに・・?いつも冷静なあの姉上が・・?」
「ああ、お前が倒れたのが余程ショックだったようだ。オレもビックリしたよ」

あのいつも何があっても冷静な姉上がパニック?
信じられない・・鬼姫なんて異名がある姉上が?

「へ・・へえ~・・」
「それで、気分はどうだ?」
「うん、さっきより随分よくなった」
「そうか、よかった。念のため医者を呼んであるから診てもらえ」
「わかった・・」
「呼んでくるから横になっていろっ」
「ああ・・」

レイルが行った後、ベッドに戻ろうとしたがソファーに人影を見つけてビクついた。

「うおっ!だ、誰だ?」

恐る恐る近づいて行くと、その人物がゆっくりと顔をあげた。

「あ、姉上っ?」

灯りがまだついていなかったから気づくのが遅れてしまったことと、さっきの会話を聞かれたんだと気づいて気まずい空気ななる。

しかし、姉上の様子がおかしい。もしかしてオレが倒れたのは自分のせいだと思っているのかもしれないな。実際それもあるかもしれないけど、姉上のせいじゃない。

「・・・アラン、ごめんなさい。私のせいであなたが・・」
「・・姉上」

驚くことにいつもきちんと身なりを整えている姉上のキレイな髪がボサボサに乱れていた。
そんなにショックだったのか?
よく見れば涙の後もあるし・・

「姉上のせいじゃないよ・・」
「でも・・」

申し訳なさそうに目じりをさげてオレの手を握って離そうとしない。

「私・・私、あなたが具合が悪いことに気付かなかった。前はすぐに気づいたのに・・」
「姉上・・オレは大丈夫だから心配しないで。もうすぐ医者もくるから」

慰めるように姉上の微笑みかけると涙を浮かべて頷いてくれた。
ほんと、昔から心配性なのは変わってないなと苦笑した。


そこに、医者が到着したらしくノックの音がした―――・・



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