人違いの婚約破棄って・・バカなのか?

相沢京

文字の大きさ
62 / 87

国の行く末14

しおりを挟む


「えっ?」


医者が告げた言葉が理解できず思考が停止する。


「ですから、ご懐妊おめでとうございます」


ご懐妊?・・それって何だっけ?

ポカンとしているとレイルも同じような反応だが言葉が続く。

「ご懐妊とは何だ?何かの病気か?」

「「えっ?」」

驚きの声を上げたのはアリアとハインツだ。

「あなた何を言ってるの?」

ムッとしているレイルにアリアは正気かと疑う。

「陛下、懐妊とはその・・」
「・・・オレ何の病気なの?」

「へっ・・?」

説明しようとした矢先にアランが涙ぐむ。

あれーっ?もしかして意味を知らないなんてことは・・ないわよね?

「姉上・・グスン」
「えっと、アラン・・まさか懐妊の意味を知らないなんてことはないわよね?」
「意味・・?」

グズグズ鼻をすすりながらアリアの顔を見るアランにイヤな予感は的中する。

「・・・・・うん、知らない」
「ウソでしょう?あなた・・」

王妃教育の際に学んだはずなのに知らないなんてあり得ない。いやもしかしたら不要だとして省かれたのかもしれない。だけど・・・まさか知らないなんて我が弟ながら情けない。

「アラン、懐妊というのはね。おめでたってことよ。」
「おめでた?ますます意味がわかんないよ。ハッキリ言ってよっ!何かの病気なの?」
「いや、だからね・・ああっもう、妊娠したってことよっ!もっと簡単に言えば赤ちゃんができたってことよっ!!」

何で私がこんなこと言わなきゃいけないのよっ!
全く教育係は誰よ!

アリアに妊娠したことを告げられてアランは固まる。

「え、妊娠・・赤ちゃん・・?」

「そうよ、おめでとう。あなたも母親になるのよ」

「こ、子供ができた?アランが母親ってことはオレは父親ってことか?」

「そうよ、レイル。おめでとう・・先を越されちゃったわね」


「アランっ!でかしたぞ!ハハハ、オレが父親かっ!」

大声で笑い喜んでいるレイルに対しアランは実感がないのか未だに呆けている。

「オレが妊娠・・?母親になる、のか?このオレが・・?」

子供を作れる体ってことはわかっていたが、まさか本当に妊娠するなんて思っていなかった。正直、どうしたらいいのかわからない。アランの場合女性の妊娠とは違うのだ。

「アラン様、おめでとうございます。これから医者のチームを作り全力でサポートさせていただきますのでご安心を」

「そうよ、アラン。ケイン先生の腕は一流だから安心しなさい」

オレを落ち着かせようとしてくれるのは嬉しいけどやっぱり不安だ。

「不安なら実家に帰る?母上もいるし安心できるんじゃない?」

確かに母上が傍にいてくれれば安心するけど・・・でも・・

「公務ならオレと宰相で何とかなるが、実家の戻るのはマズイ。」
「何故だ?」
「ゲイル派の残党は片づけたがまだ完全ではない。アリア、義母上に王宮に来てもらうことはできないか?」
「う~ん、聞いてみないとわからないけど、たぶん問題ないと思うわ。」
「なら、頼んでもいいか?」
「わかったわ。急いで連絡してみるわ」


マジかっ!このオレが妊娠していたなんて。あ、じゃあもしかして急に不安になったり涙もろくなっていたのはこのせいだったのかぁ!

まだ実感はないけど・・そうか、母親かっ・・フフフ、何だかくすぐったいな。
へへへ・・


こうして、オレの妊娠が発覚し母上の登城が急遽、決定したのだった。



しおりを挟む
感想 205

あなたにおすすめの小説

もう殺されるのはゴメンなので婚約破棄します!

めがねあざらし
BL
婚約者に見向きもされないまま誘拐され、殺されたΩ・イライアス。 目覚めた彼は、侯爵家と婚約する“あの”直前に戻っていた。 二度と同じ運命はたどりたくない。 家族のために婚約は受け入れるが、なんとか相手に嫌われて破談を狙うことに決める。 だが目の前に現れた侯爵・アルバートは、前世とはまるで別人のように優しく、異様に距離が近くて――。

王子のこと大好きでした。僕が居なくてもこの国の平和、守ってくださいますよね?

人生1919回血迷った人
BL
Ωにしか見えない一途な‪α‬が婚約破棄され失恋する話。聖女となり、国を豊かにする為に一人苦しみと戦ってきた彼は性格の悪さを理由に婚約破棄を言い渡される。しかしそれは歴代最年少で聖女になった弊害で仕方のないことだった。 ・五話完結予定です。 ※オメガバースで‪α‬が受けっぽいです。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

悪役令嬢と呼ばれた侯爵家三男は、隣国皇子に愛される

木月月
BL
貴族学園に通う主人公、シリル。ある日、ローズピンクな髪が特徴的な令嬢にいきなりぶつかられ「悪役令嬢」と指を指されたが、シリルはれっきとした男。令嬢ではないため無視していたら、学園のエントランスの踊り場の階段から突き落とされる。骨折や打撲を覚悟してたシリルを抱き抱え助けたのは、隣国からの留学生で同じクラスに居る第2皇子殿下、ルシアン。シリルの家の侯爵家にホームステイしている友人でもある。シリルを突き落とした令嬢は「その人、悪役令嬢です!離れて殿下!」と叫び、ルシアンはシリルを「護るべきものだから、守った」といい始めーー ※この話は小説家になろうにも掲載しています。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!

ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。 その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。 しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。 何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。 聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

王太子殿下のやりなおし

3333(トリささみ)
BL
ざまぁモノでよくある『婚約破棄をして落ちぶれる王太子』が断罪前に改心し、第三の道を歩むお話です。 とある時代のとある異世界。 そこに王太子と、その婚約者の公爵令嬢と、男爵令嬢がいた。 公爵令嬢は周囲から尊敬され愛される素晴らしい女性だが、王太子はたいそう愚かな男だった。 王太子は学園で男爵令嬢と知り合い、ふたりはどんどん関係を深めていき、やがては愛し合う仲になった。 そんなあるとき、男爵令嬢が自身が受けている公爵令嬢のイジメを、王太子に打ち明けた。 王太子は驚いて激怒し、学園の卒業パーティーで公爵令嬢を断罪し婚約破棄することを、男爵令嬢に約束する。 王太子は喜び、舞い上がっていた。 これで公爵令嬢との縁を断ち切って、彼女と結ばれる! 僕はやっと幸せを手に入れられるんだ! 「いいやその幸せ、間違いなく破綻するぞ。」 あの男が現れるまでは。

婚約破棄を望みます

みけねこ
BL
幼い頃出会った彼の『婚約者』には姉上がなるはずだったのに。もう諸々と隠せません。

時間を戻した後に~妹に全てを奪われたので諦めて無表情伯爵に嫁ぎました~

なりた
BL
悪女リリア・エルレルトには秘密がある。 一つは男であること。 そして、ある一定の未来を知っていること。 エルレルト家の人形として生きてきたアルバートは義妹リリアの策略によって火炙りの刑に処された。 意識を失い目を開けると自称魔女(男)に膝枕されていて…? 魔女はアルバートに『時間を戻す』提案をし、彼はそれを受け入れるが…。 なんと目覚めたのは断罪される2か月前!? 引くに引けない時期に戻されたことを嘆くも、あの忌まわしきイベントを回避するために奔走する。 でも回避した先は変態おじ伯爵と婚姻⁉ まぁどうせ出ていくからいっか! 北方の堅物伯爵×行動力の塊系主人公(途中まで女性)

処理中です...