クズ王子、弟にざまあされる

相沢京

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煽ってみた・・

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ダグラスの手のひらから魔力があふれるのをオレは感知した。

まさか、それをここで放つわけじゃないだろうな。

王宮で攻撃魔法は禁止されている。それをここで破るというのはどういうことかわかっていないのか。


「何をするつもりだ・・?」

「決まっておる。貴様をここで始末してやる」

「・・・馬鹿な真似はやめろっ!」

「うるさい!」


手のひらには小さな炎が出来上がっている。

あれを消し去るのは簡単だが、周りにいる貴族たちに何かあったらマズイ。



「貴族たちもいるのだぞ・・」

「フン!知ったことか」


クズだと知っていたがここまで愚かな奴だとは・・。

彼らを傷つけたら信頼関係が崩れることにもなりかねない。国を支えているのは王族だけではないのだ。

オレの後にはアレクがいる。離れているが状況は把握しているだろう。


「兄上っ」

「アレク、結界をはれ!貴族たちを守れっ」

「はいっ!・・・結界っ」


アレクの魔力は強い。初期魔法しか使えないクズとは比べものにはならないくらい。


「くらえっ!ファイヤーボールっっ!!!」


オレはダグラスが放ったファイヤーボールを自身の結界で打ち消そうと構えた。

が―――・・


しかし、奴が放ったのは子供の手のひらのような大きさだった。

その結果、結界ではなく手で掴みとったら・・・自然と消えた。



「え・・?」

「え・・・?」

「・・・・は?」


周りにいた貴族たちもポカン・・

その中にオレも含まれている。


「はあ?え、ええ――っ!何あれ?」

「あれがファイヤーボール?」

「小さくないか?」

「いや、我々がいるから手加減したんだろう・・?」

「そうですよ、ね」

「しかし、手で掴むとはさすがカイン様だ」

「ええ、本当に・・」

「我が息子を娶ってほしいものですね」

「何をいう、カイン様のお相手はうちの息子です」

「抜け駆けはやめてください」

「そなたこそ・・陛下に売り込みに行ったとききましたぞ」

「それにしても、いつ拝見してもあの美貌にはため息がでますな」

「ええ、艶のある銀髪に透き通った肌に青い瞳。すっとした鼻筋に色気のある唇。頭もよくて魔力も多くて剣術・武術もすぐれているなんて・・・うらやましいですな」

「私が若ければ求婚してましたよ」

「それに比べてダグラス様は・・成績も最下位、剣術も武術も全くダメらしいじゃないですか」

「ほんとうに陛下のお子なんでしょうかね?」

「王族象徴である髪も銀色ではなく茶色。怪しいものですね」



ダグラスは冷たい視線を浴びせられ彼らの会話に動揺した様子だ。

バカにされて悔しいのか唇をかみ、怒りで肩を震わせている。




「なぜだ・・なぜカインを誉める?オレのファイヤーボールを掴んで消したのは偶然だろうっ!」


怒りをぶちまけるダグラスに貴族たちの視線は益々冷たくそして蔑んだものへと変わっていく。


あれを偶然というとは驚きだ。


「あんな弱いファイヤーボールなんてへでもない」

「この負け惜しみを・・」


負け惜しみときたか。


「なら、試してみるか?」


意地の悪い笑みを浮かべて煽ってやれば、まんまと乗ってきた。


「後悔するなよっ!」


「どっちが、だよ」



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