16 / 32
カイン、キレる!
しおりを挟む「さっきからあなたは何を言ってるんですか?」
ギリギリと手首を締め上げ殺気をとばすカインにクリスは怯む。
「な、何を・・する」
カインはエレンのことだけでなく、今まで散々迷惑をかけられたことに憤りを隠せなく、いやもう隠すのをやめた。
あんなクズでも兄だと我慢していたが、もうやってられないとキレたのだ。
「もう、いい加減にイヤになったんですよ。ダグラスのお守りも権力を振りかざし弱いもの虐めをするあんたにもっ」
「グっ・・」
苦痛に顔を歪ませるクリスを睨みながらも話を続ける。
「昔から正妃の子供にしか王位は継げないこをなぜあいつに言わなかったかわかったよ。あんたはこうやってオレに何らかの罪を着せて王太子の座から引きずりおろしてダグラスを王太子にするつもりだったんだろ?」
そう淡々と冷静に呟くカインの瞳の奥に、何か得体のしれないものを感じた。
心の底から凍り付きそうな恐怖に体が震える。王太子といえどもただの子供だというのに・・。
「ただ、誤算だったのはダグラスがクズで無能だったってことと、平民を伴侶だと言って連れてきたことだ」
ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべながらバカにして煽ってやる。
さあ、もっとボロを出せ―――と・・
「ほんっと、こいつバカだから本気で平民と結婚するつもりだったみたいだぜ。」
ダグラスの胸のポケットから小さな箱を見つけて手に取る。
開けてみると、中には青い宝石がついた指輪が入っていた。
それを箱から取り出し指でくるくると回して玩ぶ。
大きいとはいかないがそれなりの大きさから高額だと推測する。それが国民の血税かクリスからせびり取ったものかは知らないが無駄遣いしやがってと鼻で笑う。
「見ろよ、こんなものまで用意して・・」
クスクスと笑いながらクリスの小指にそれを嵌めてやる。
「結婚できない相手にこんなの送ったら怖くて逃げたんじゃねえの?」
いつも冷静で温和なことで知られているカインだがキレるとその言葉遣いは荒くなることはごく一部の人間しか知られていない。だから、この場にいる貴族たちは茫然とカインを見つめていた。
「あれがカイン様・・?」
「信じられない・・」
「でも、ワイルドで・・カッコいい」
首を左右にふり信じられないとショックで口を押える者や目を潤ませるもの。嬉しそうに微笑みものと反応は様々だが、一番おどろいているのはアレクだった。
「兄・・うえ・・?」
いつもアレクの前ではいい兄でいようとニコニコしていたし、言葉遣いもこんな風ではなかった。
意外な兄の一面を垣間見て嬉しいやら悲しいやら何とも言えない気持ちだった。
そんなアレクの様子に気付かないほどカインはキレていたわけで転がっているダグラスの背中を踏みつけながらクリスをあざ笑う。
「さて、どうする?ク・リ・ス・様ぁ?」
怯えるクリスに顔をグイっと近づけてドスの利いた低い声で脅すカインに腰が抜けたのかその場にへなへなと座り込んだのだった。
61
あなたにおすすめの小説
【本編完結】処刑台の元婚約者は無実でした~聖女に騙された元王太子が幸せになるまで~
TOY
BL
【本編完結・後日譚更新中】
公開処刑のその日、王太子メルドは元婚約者で“稀代の悪女”とされたレイチェルの最期を見届けようとしていた。
しかし「最後のお別れの挨拶」で現婚約者候補の“聖女”アリアの裏の顔を、偶然にも暴いてしまい……!?
王位継承権、婚約、信頼、すべてを失った王子のもとに残ったのは、幼馴染であり護衛騎士のケイ。
これは、聖女に騙され全てを失った王子と、その護衛騎士のちょっとズレた恋の物語。
※別で投稿している作品、
『物語によくいる「ざまぁされる王子」に転生したら』の全年齢版です。
設定と後半の展開が少し変わっています。
※後日譚を追加しました。
後日譚① レイチェル視点→メルド視点
後日譚② 王弟→王→ケイ視点
後日譚③ メルド視点
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
運命じゃない人
万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。
理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。
不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)
伯爵家次男は、女遊びの激しい(?)幼なじみ王子のことがずっと好き
メグエム
BL
伯爵家次男のユリウス・ツェプラリトは、ずっと恋焦がれている人がいる。その相手は、幼なじみであり、王位継承権第三位の王子のレオン・ヴィルバードである。貴族と王族であるため、家や国が決めた相手と結婚しなければならない。しかも、レオンは女関係での噂が絶えず、女好きで有名だ。男の自分の想いなんて、叶うわけがない。この想いは、心の奥底にしまって、諦めるしかない。そう思っていた。
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる