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陰謀3
しおりを挟むアルバ伯爵はクリスの発した言葉に動揺した。
「な、何をおっしゃっているのですか・・?」
誰が見てもわかる彼の慌てぶりにクリスは首を傾げる。
「どうしたのですか、アルバ伯爵?」
「どうしたのかって、クリス様こそ今がどういう状況かわかっておられないのですか?」
「え・・?何が言いたいのですか?」
「何がって・・?」
アルバ伯爵はクリスが状況を理解していないのではなく、真面目に答えていることに気付いて困惑した。
「アルバ伯爵・・?」
これは一体どういうことなのだ?なぜ国王の名前を間違える?
それはアルバ伯爵だけでない。イアンもまた同じ気持ちだった。
「クリス、そなた・・・」
イアンが何か言いかけた時、国王は悲しそうな顔で話を続ける。
「クリスよ、余の名前はルーベルトではない」
「え・・?」
ポカンとするクリスに国王は今まで感じていた疑問が一気に解決したことを悟った。
「え、ええっ!な、何を言うのですか?あなたはルーベルト様でしょう?」
必死に食いつくクリスに国王は首を左右に振った。
「余の名前は、エリックだ。ルーベルトは余の弟の名前だ」
「エリック・・?弟・・・?」
「そうだ・・」
「・・・・う、嘘・・・だ・・・そ、そんな・・」
ふらふらと立ち上がり国王に近づいていくクリスに騎士たちが警戒態勢を取る。
「クリス様、これ以上陛下に近づくのはおやめください」
団長が忠告するが、クリスには聞こえていないのかその足は止まらない。
「陛下、なぜです。なぜ私をそこまで拒否されるのですか?婚約者だった私がそこまで忌み嫌われるわけはなんですか?」
「・・・婚約者だと?」
涙をはらはらと流すクリスに国王は頭を抱えた。
「クリスよ、そなたの婚約者は余ではなくルーベルトだ」
「いいえ、私の婚約者は陛下です。本当なら陛下と結婚して正妃になるのはこ私だった。それをイアンが・・」
ギロリとイアンを睨に憎しみを露わにする。
この様子を静かに見守っていたカインはクリスが洗脳されているのではないかと疑いを持ち始めた。
おかしい。父上の名前を間違えるなんてあのクリス様がそんなヘマをするだろうか?ルーベルト叔父上に婚約者がいたことは聞いたことがある。それがクリス様だったとは意外だが、でも叔父上はもう・・
「貴様が私から陛下を奪わなければ、ダグラスが王太子になるはずだった。それをっ・・
歯をギシギシと噛みしめ恐ろしいほどの形相に国王は今はこれ以上の話は無駄だと思い一旦打ち切ることにした。
「クリスよ、今はこれ以上話し合うのは無理だと判断する。よって指示があるまで親子ともども牢屋で頭を冷やせ。アルバ伯爵、貴様もだ。衛兵、こ奴らを牢やへ連れていけ!」
「「はっ!」」
牢屋行きとは覆ってもみなかったアルバ伯爵は抗議するが、そもそも不貞にかかわった張本人にそれが許されるわけもなくあっさりと牢屋へと連れて行かれたのだった。
クリスも拒否したが、それが通るはずもなくダグラスと共に連れて行かれた。
そして、残されたのは平民であるにも関わらずダグラスを惑わし混乱を招いたフランはその死刑を言い渡され死刑囚を監禁している特別な牢屋へと引きずられて行った。
「さて今の話を聞いていた貴族の諸君、そなたたちには忘却魔法をかけさせてもらう。心配せずともこの数時間だけのことだ。良いなっ?」
怯えながらも貴族たちは頷いた。
「うむ、よろしい。」
国王は手をかざし、魔力を集中させる。
「忘却・・・・」
そうひと言呪文を唱えると、金色の粒が貴族たちを包み込んだ。
そして、何事もなかったかのように誕生日を祝いうパーティーが再開される。
「アレク様、お誕生日おめでとうございます。」
赤い花束を渡され笑顔で答えるアレクの姿を見て国王は笑みを浮かべた。
「陛下、クリス様のことですが・・」
「ああ、わかっておる。これは早急に調べた方がよいな」
「ええ、ですが、犯人は」
「だいたいの検討はついておる」
あやつめ、厄介なことを仕出かしおって!
「影よ、早急にクリスの身辺調査を行え!」
「はっ!」
王宮から数名の影が散って行った。
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