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だが、空気の読めない奴はどこにでもいるようだ。


「そうだよ~勇人はオレのだからね~」


ニコニコと満面の笑みで勇人に抱き着いたのは拓也だ。


「おいっ!」


焦る勇人を無視して彼の頬にチューっと挨拶がわりにキスをしやがった。


「えへへ・・・」

「なっ!何しやがるっ!!」


全校生徒の前で醜態をさらされて、黙っているほど勇人は大人ではない。

ふつふつと怒りを表し、肘打ちをみぞおちに無言でぶち込んでやった。


「ぐはっ!」


キレイな顔を歪ませて床に崩れた拓也を和也はじーっと見ているだけ。しかも、心なしか不機嫌のようだ。


「何やってんの?」


つま先でつつかれ弟に見下ろされて拓也は痛みにもがきながら苦笑する。


「ええ――だって、勇人はオレのだし・・」

「はあ?オレはお前のものになった覚えはねえよっ!」

「・・・だって」


思いっきり拒否されてがっかりするかと思いきや、なぜかニコニコ笑う拓也の考えが読めなくて勇人の顔が引きつる。


「フフフ・・今は、ね」

「・・・・」


生徒たちを置いて話がずんずん進んでいくこの状況に頭を痛めたのは早瀬と高坂だ。


「まったく、何をしているんですか?今日は勇人だけでなく他にも紹介する人がいるでしょう?」

「ああ・・そうだったな」


正気を取りもした夏樹がマイクを握り直して生徒会メンバーがいた反対側の袖の方を向いて手を差し出した。


「今日はもう一人紹介したい奴がいる。庶務に就任したが家の都合で休学していた中原亜矢なかはらあやだ」


姿を現した中原に親衛隊から悲鳴があがる。


「「「キャアアアアア―――っ!!」」」

「亜矢さまあああ―――っ」

「お帰りさないませっ」


昨日会った彼が生徒会メンバーで庶務だったとは思わなかった。

顔も見たくないと嫉妬した彼にこんな形で会うことになるなんて皮肉なものだ。

歓声を浴びている彼の後姿から目を逸らし高坂に向けると口元が笑っていた。滅多に笑わないと言われている彼がだ。

やっぱりそういう関係なんだろうかと疑ってしまう。実際確認をしたわけではないからはっきりとは言えないけど、その笑みは勇人にはショックだった。


これから毎日彼と顔を合わせるのかと思うと憂鬱になった。


そして、二学期の予定を発表して始業式は終了した。
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