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しおりを挟む生徒会室に向かう際、オレは高坂さんと中原の関係が気になってしまい時々彼らの様子を盗み見しては哀しくなって項垂れた。見なければいいのにどうしても気になって見てしまったのだ。
それを夏樹兄さんは緊張していると勘違いしたのかオレの頭をガシガシと撫でまわした。
「大丈夫だから」
「・・・?」
何が大丈夫なのかと聞きたかったが、生徒会室の棟が見えて来て口を噤んだ。
生徒会メンバーと風紀委員幹部全員が乗り込んでも大丈夫なほどここのエレベーターは大きい。非常階段もあるがそこはエレベーターがストップして初めて出入口のロックが解除される仕組みになっているそうだ。
そんな仕組みを知らなかったオレはついうっかりドアを開けようとしたら非常ベルが鳴って焦った。案の定生徒会室の残っていた早瀬が飛び出してきて初めてこの仕組みを知ったのだ。
あれは恥ずかしかった。でもオレは悪くない。
生徒会室のある階に着きドアを開けて中に入ると、そこには晴広兄さんがソファーでお茶をしていた。
「やあ、来たね」
「晴広兄さん、なぜここに?」
上の階が理事長室なのは知っているが、今頃は仕事で大忙しなはずだ。
「おはようございます。理事長」
「ああ、おはよう。みんな揃っているな」
集まったメンバーの顔を確かめるように見ながら満足そうに微笑んだ。
それぞれがイスやソファーに腰かけて理事長の話を聞く体制に入ったが、勇人だけは違った。何も聞かされていなかったのが気に入らなかった。
いきなり、風紀委員を解任させられて生徒会入りさせた目的をこの耳で聞きたかった。
「さて、勇人が私たち幸村家の人間だと公表したのはみんな知っているな」
「はい、あの放送を世界中の人が見ていたと思います。ですがなぜ公表したのですか?」
晴広を責める早瀬に意味がわからない勇人は首を捻る。
「それは、勇人を守るためだ」
「守るため?守るためなら公表しないほうがよかったのではないですか?」
「そうだよ、あの放送で勇人の顔が知られてしまった。それって凄く危ないことだよ」
早瀬に続いて拓也も晴広を責める。
「・・・そうだな。」
「え・・・?」
「勇人、わかっていなようだけど・・幸村家の人間は常に命を狙われてるんだよ」
「・・・は?命を・・狙われて、る?」
命が狙われていると言われて心がざわついた。
そんなテレビドラマみたいなことがあるはずがないというのがオレの考えだった。
「まさか・・冗談だよな?」
今までケンカしてケガをすることはあっても、命の危険にはあったことがない。
「大袈裟だろう・・?」
引きった笑みを浮かべながら呟いたが、反対にムッとしたようで珍しく早瀬が声を荒上げた。
「冗談なんかではありませんよ。これは非常にマズイ事態です」
「え・・・?」
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