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しおりを挟む走り出した選手に応援の檄が飛ぶ。
平均台を飛ぶように駆け抜けて、網を滑るように潜っていくとそのままラケットまで走って止まりながらボールを乗せて落とさないように駆け抜ける。
そして、問題の箱からくじを引いて袋を受け取ってテントへと駆け込んだ。
一連の走りを見ていた勇人は、息を呑んだ。
ここからが問題だ。
拓也の奴どんな衣装を用意したのか気になった。
自分の番までまだ間がある。その間に覚悟というかなんというか兎に角、みんながどんな反応をするのか知りたかった。
最後の一人がテントに入ったところで、拓也がマイクを手に取る。
「さあ、みんなここからが見どころだよ!テントから出てきたら大きな声で応援してあげてね!」
なかなか出て来ない選手にざわつき始める。
テントの中ではきっと衣装に戸惑っているに違いない。
その頃テントでは、C組の選手が勇人の予想通り袋の中の衣装を見て固まっていた。
「何だ、これ・・・?」
ピンク色のワンピースとナースキャップに白い靴。
「ナースだよ、な・・・えっと・・これを着ろと?」
これが細身のかわいい選手ならよかったかもしれないが、運悪く彼は体格のいい選手だった。しかも、硬派で真面目な生徒で知られている。
彼は迷った。体育祭で優勝して食堂の無料券と外出届けの権利を手に入れるためクラス一丸となってた戦うことをみんなで誓ったばかりだった。
これを着てゴールしなければ失格となり無得点となる。
だが、これを着るのは勇気がいる。
彼の心は葛藤する。
自身の保身かそれとも犠牲か?
迷っている時間はない。こうして考えている間にも、犠牲を選んでゴールを目指している勇気ある奴があるだろうから・・。
最下位で無得点となるのと、ゴールしないで無得点とは大きな違いがある。
それはクラスメイトの信頼である。裏切ればかれからの学校生活がどうなるか目に見えている。
「クソっ!・・・」
彼は舌打ちして、犠牲を選んだ。
眉間にしわを寄せ、手は怒りと羞恥心で震えていた。
「会計めっ!覚えていろよっ」
覚悟を決め、急いで着替える。
そして大きく息を吸って、彼はヤケクソでテントを出た。
「さあ、最初の犠牲者は・・おっと、C組の選手は・・ナース、ナースのようです」
進行役の声にも力が入り、興奮しているのか目がギラついていた。
そして彼のクラスからもどよめきが走った。
「おい、あれ・・・」
「おおっ!」
「すげえっ」
「・・・何かパツンパツンだな」
「サイズがあってないから身体のラインが・・」
「・・・変な色気が出てんな・・」
「ああ・・・」
彼はきっと笑いものになると踏んでいたが、そうではないようだ。
顔を赤らめている生徒なんかもいて、思わぬところでフラグを立てたのかもしれない。
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