異世界転生 剣と魔術の世界

小沢アキラ

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第二部・最終章 最高の騎士

第三十二話

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「──終わりましたよ」
 消炎作用のある霊草をすり潰した薬を塗った上から包帯を巻き終えると、セレナはカズヤの右手をそっと離した。
「ありがとう。でも、なんで治癒術で治してくれないの?」
「火傷ぐらいで治癒術を詠唱するのが手間なだけです」
 カズヤは右手を握ってみたが、ほとんど痛みもない。ややジンジンするものの、それくらいは仕方ないだろう。
「それより、お前のあの動きは一体なんなのですか」
「あの動き……?」
「攻撃を避ける時の動きのことです。体術を心得ているからとはいえ、死角からの攻撃を完璧なタイミングで避けていたではありませんか」
「それについては、オレも気になってたんだ」
 顎に手を置きながら、騎士長が横から割って入ってきた。
「少年は以前まで、実力こそあれど隙が多かった。オレとの稽古で、全方位からの攻撃にいつでも対処できるようにはなったが、あの身のこなしはオレとの稽古で会得した動きじゃないだろ」
 まさか、あの一連の動きだけでそこまで見抜くなんて……。流石は最古の騎士にして、人界最強の守護者なだけはある。
 カズヤは一度ため息を吐いてから、素っ気なく答えた。
「別に……体の使い方と、脳の制限された機能が解除されただけです」
 思わず、元いた世界に酷似した言語で答えてしまった。そのせいか、後半の話を二人は理解できていなかった。
「体の使い方……特異点である、創造された肉体のか?」
 騎士長が何気なく発した言葉に、二人は絶句しながら反応した。
 二人の反応を見た騎士長は、軽快に笑いながら訂正してきた。
「創世神殿から少年については聞いてるさ。既に亡くなった命が、魔術師に創造された空の肉体に宿ったってこと。特異点であるお前さんの肉体が邪教神の手に渡れば、世界が滅んじまうこともな」
「…………話を聞いたわりには、冷静ですね」
 自分の弟子が違う世界の人間で、その弟子の行為一つで世界が滅びるかもしれないという話なのに、全く動揺していないのは、長年戦地に身を置いていたゆえの余裕なのか。
「同じことだからな。魔界の大軍勢が人界を支配したら、どっちみち世界は滅ぶんだ。今更、世界滅亡の条件が増えたくれぇ、どうってことねぇだろ」
 いかにも乱暴な論だが、騎士長の頼もしい声で言い切られると、そんなものかと思えてくる。何百年も前から人界を守護していただけあって、若輩の騎士と単なる高校生よりも肝が座っているのが窺える。
「それで、詳しく説明してくんねぇか? 体の使い方と、お前さんのことも」
 数秒かけて騎士長の台詞の意味を理解したカズヤは、思わず自分の顔を指さしてしまった。
「お、俺のことも……?」
「ああ。護衛対象の素性を知っておかなきゃいけねぇからな」
 素性といっても、特異点であり造られた存在というだけで充分な気がするのだが……。
 そんな疑惑を他所に、前世で過ごした世界と、邪教神のお陰で気付いた話を簡略しながら語った。
 
 体に起きた異変と元の世界での話を終える頃には、太陽は半分まで昇っており、薄暗かった空中庭園はかなり明るくなっていた。
 俺の話を最後まで聞いた二人は、特に何かを言うわけでもなく、終始黙秘を貫いていた。
 話し終えると、騎士長は二本の豪腕を組み、肩を落としながら呟く。
「にわかには信じられん話ではあるが、死者が生き返った時点でとんでもないからな……嬢ちゃんは、今の話をどうみる」
「私目の意見を言わせて頂きますと、カズヤの話には信用に値する根拠が不足しています。……我々の固定観念を主軸に捉えるとなれば、ですが」
 騎士だけじゃなく、人界の民全員に話したところで、今すぐには信じられない話なんだけどな……。大気には空間魔素なんてないし、剣とかは元の世界では法によって禁じられている。でも、同じく禁じられている殺人や窃盗は頻繁に起こっていると矛盾した話を聞かされれば、人界の民なら誰でも困惑する。
「オレも嬢ちゃんと同じ意見だ。だが、オレたちからしたら異常な常識の世界で生きてきた少年にとっては、人界での出来事の方が異常なんだろ?」
「……失礼ですが、おっしゃる通りです」
 騎士長の問いに、思わず弱々しく応えた。
「この世界の人達は、あまりにも綺麗に回っていて、凄く不気味です。人ならば、争い合う権利だってあるのに、それすら禁じるのはおかしいとも思いました。……禁書目録によって、善なる心を強要されていた世界は、元の世界と違う意味で生き辛い場所だと思います」
「だから、少年は創世神殿に禁書目録の撤廃を持ち掛けたってわけか」
「人とは本来、善と悪の心を持ち合わせた存在です。負の感情は褒められたものではありませんが、絶対に不要というものでもありません。沢山の間違いを犯して、そこから学ぶのが人間なんですから」
「そうかい。それが、自分の生きた世界で培った常識であり、お前さんが信じる信念──可能性ってやつか」
 共感する様に頷くも、騎士長は組んだ腕を解かずに、なお難しい顔で考え込んでいる。
「だからって、今聞いた話を全部信じることはできんな。嬢ちゃんの言う通り、信用に値する根拠も証拠もないからな」
「……騎士長。誠に僭越ながら、一つ意見をよろしいでしょうか」
 セレナが意見するのは珍しいのか、騎士長は細めていた両眼をわずかに見開き、ほんの少しだけ口角を吊り上げた。
「先程の私目の意見は、あくまでとして仰らせていただきました。そして今から発するのは、騎士ではなく私という存在からのものだと存じてもらいたいのですが、よろしいでしょうか?」
「嬢ちゃん自身の意見……か。…………いいだろう、言ってみてくれ」
 騎士長の寛大な懐に感謝するように一瞥してから、セレナは此方に顔を向け、微笑みながら発した。
「私は、お前の話を信じます。根拠や証拠といった理屈ではなく、単なる直感になってしまいますが、それも悪くありません。お前はふざけた面もありますが、根は真面目なのは心得てます。真剣な話し合いの場で虚言をするような輩ではないでしょう」
 長広舌の台詞を言い終えると、微笑みを解いてから騎士長に顔を戻した。
「以上が、私目の意見でございます。口を挟んでしまい、申し訳ありません」
 謝罪の言葉と一緒に頭も下げるも、騎士長は一切気にしない素振りで左手を上げ、苦笑気味に呟いた。
「気にすんな。自分の意思を明確に示すのは悪いことじゃねぇ。とは言え、嬢ちゃん自身が信用したからと言って、オレまでつられて信用するわけじゃないのは肝に免じておけよ、少年」
「別に、元の世界での話はどうでもいいので構いません……本題は、もう一つの方なんですから」
「創造された肉体の話……か」
 緩めていた頰を再度引き締め、厳格に満ちた表情で唸りながら、騎士長は発した。
「その話については、さっきの世界の話よりかは信憑性は高い……実際、お前さんの動きを見れば誰でも信じるだろう」
 今回はすんなりと受け入れてもらえたことにそっと胸を撫で下ろそうとしたが、やはり騎士長は鋭い意見をぶつけてきた。
「一応聞いておくが、少年はその力を全力で使えるのか?」
 意図しない問いに、一瞬だけ全身が強張ってしまう。しばし間を空けてから、ゆっくりとかぶりを振ってから答えた。
「……話の途中で申し上げた通り、まだ上手く扱えていません。修練すれば残りの力も発揮できると思いますが、それだけでは力の半分も出せないと思います」
「ちょっと待ちなさい。今の言い方を素直に捉えるならば、お前は半分の力も出さずに、あの動きを容易く有したというのですか」
「あれは初歩的な段階だからね。多分、二割しか出しきれてないよ」
 適当に返すと、セレナは驚愕で声も出ないのか口を紡ぎ、数歩後ずさった。だが騎士長は一切動じずに、なおも淡々と続けた。
「修練だけじゃ全力を出せないというのはどういう意味だ。力を出すのに、特殊な条件でもいるのか?」
 明確な疑問にカズヤは一瞬答えに迷いながら、頭に浮かんだありのままの言葉を、そのまま公言した。
「率直に言ってしまうと、何か見えないモノのせいで、本来出せるはずの力が出せないんです」
「見えないモノ? 魔術師がお前さんの体に施した封印か?」
 もう一度かぶりを振り、右手を持ち上げ凝視する。
「……俺自身が、その力に怯えているというか、一度それに目覚めてしまうと、今度こそ自分という存在を見失ってしまうんじゃないかと考えてしまい、無意識に力を封じ込めているんです」
「自分を、見失う……」
 カズヤの台詞に共感するモノがあったのか、セレナが力なく復唱した。
 自分でも、何を言ってるのかよく解っていない。しかし、今の言葉全てに嘘偽りがないのは断言しても構わない。
 俺はまだ、自分がみんなと同じ人間だと思い込んでいる。実際は人工的に造られた肉体に憑依している死人だと知っているのに、未だその現実から目を背けている。
 それは、辛うじてこの肉体が人族となんら変わらない性質だからだ。人界に住む人達と違わないという概念が定着してるからこそ、俺はまだ自分が人間であると思えている。
 でも、その概念すらねじ曲げる現象が、この肉体には備わっていた。もはや人が為し得ない動きを遂行してしまっては、自分はまだ人間である固定概念は崩壊していくに決まっている。
 それでもカズヤは、認めるつもりがなかった。自分が人ではなく、造られた命であることを今なお必死に否定している。だから、秘められた力を意図的に封じ込めている。
 この力が解き放たれてしまったら、認めるしかない。自分が人ではなく、全く別の異質な生命体であることを……。

「……少年。お前さんに一つ教えてやるよ」
 長い葛藤から呼び戻すように、騎士長の深みのある錆び声が耳に届いた。
 反射的に顔を上げると、いつも通りの太い笑みを顔に浮かべながら、諭すように発した。
「現状維持なんてモノを求めてると、いつか本当に大切なモノを失うことになる」
「本当に、大切なもの? なんですか、それは」
「それまではオレにも分からん。でもな、人には、これだけは絶対に譲れない、一本の信念はある。それを守るためなら、時には非情にならなきゃいけない。……いいか、少年。変化を恐れていては、自分の限界を超えることも、守りたいモノも守れなく終わることになる。その悔いは、一生心の枷となってお前を戒めていくぞ」
「…………」
 俺は騎士長の、深みのある多くの言葉を無言で受け止めながらも、素直に頷くことが出来なかった。
 自分でも、痛いほど理解はしている。運命の悪戯と言わんばかりの超常的な現象の中、何も為さずに終わることだけは許されないことも、既に後には引けない状況の中で、今更恐れなどあってはならないことも、全部解ってる。
 それなのに俺は、転生してから変わらず持ち続けている、自分の半端な覚悟に翻弄されている。半端な覚悟が未だ残留しているから、自分の殻を破ることが出来ずにいる。
 まだ人間味が残っていると言えば聞こえはいいが、時と場合によっては単なる駄々をこねる子供と変わらない。そして今は多分、俺は後者だろう。
 自分の不甲斐なさと優柔不断さに呆れていると、無骨な手が頭部に触れたのを感じ取れた。そのまま、手は何度か左右に擦り動く。
「難しい話で悪かったな。ようは、自分が絶対に後悔しない選択をすればいいだけさ。まぁ、それが難しいんだけどな」
 何度も見た笑みを浮かばせながら言う騎士長の手が、何故だがとても心地よく思えた。苦慮を続け疲労した精神を労うように優しく撫でる手には、今まで出会った多くの人々よりも暖かい感情が込められている、ようにも思える。
「とりあえず、少年の体についての問題は追々考えるとしてだ。実は、二人にあることを頼みたいんだが、構わないか?」
 気前のいいおじさんに思えたヒサカゲの顔つきが急変し、騎士長の厳格な風貌に変わった瞬間、先ほどまでの緊張感のない空気が一気に引き締められた。
「嬢ちゃんの報告で聞いてはいるが、女騎士団団長を名乗る輩を捕虜として捕らえたらしいな」
 騎士長の問いかけに、二人は無言で頷く。
「それで二人には、その団長を教会にまで連行してきてもらいたい。オレが行っても構わないんだが、今は忙しくてここを離れるわけにはいかなくてな」
「私は構いません。当然、お前も来ますよね」
「……護衛対象は常に側にいなきゃ、誰かさんがうるさいからな」
 皮肉めいた物言いを発するも、セレナは誰のことかまるで解っていない様子で周囲をキョロキョロと見回している。
「捕虜のいる村は、飛竜で向かえば半刻も掛からん。嬢ちゃんは自分の飛竜に、そして少年は、カムイが乗っていた飛竜を使ってくれ」
「え、カムイさんの?」
「カムイには悪いが、乗り手のいない飛竜を置いておくほど、今の人界には余裕がないんだ。殺処分される前に、少年がカムイの飛竜を授かってくれねぇか?」
 悲壮感に塗れた声色を真正面から受け止めると、俺は一切躊躇わずに頷き、返した。
「承知しました。俺で良ければ、喜んで授からせて貰います」
「……おう、頼んだぞ」
 もう一度頷くと、ヒサカゲはカズヤの右肩に手を置き微笑みかけた。すぐに表情を引き締めると、不穏なことを言い渡した。
「決して警戒は怠るなよ。魔界側も団長が捕虜になってると知れば、本気で奪い返しにくるはず。最悪、邪教神自らが出向く恐れもある」
 その名を聞いた瞬間、抑えてた感情──怒りが湧き上がってきた。
 カムイさんを亡き者にし、魔界の支配者でありながらそこに暮らす民すら無に還す気でいる、諸悪の根源にして最低最悪な存在。
「もし死ぬ恐れがあるなら、任務のことは気にせず迷わず撤退しろ。これ以上の人的被害は、見過ごせないからな」
「……心配いりませんよ、師匠」
 悔やむヒサカゲを、今度はカズヤが諭すように発した。
「人界の番人にして最強の騎士セレナに、特異点であり異質な能力を持つ人間が行くんですよ。むしろ、相手が可哀想なくらいですよ」
 親指を立てながら寝言のような戯言を、騎士長は特に否定するわけでもなく、かと言って笑い飛ばすのでもなく、
「……それも、そうだな」
 ただ一言、共感してくれた。
「嬢ちゃんと少年は、オレが認めた実力の持ち主だからな」
 そう言うと、カズヤとセレナを交互に見遣ってから、錆びた声をより一層強めて言った。
「生きて帰ってくる! それが、お前らに課すもっとも重要な任務だ! 何があっても、必ず完遂しろ!」
「──了解!」
 単純明快な命令に、二人は芯のあるはっきりとした声で答え、身を翻した。
 二人の若者の背中をしかと目に焼きつけながら、ヒサカゲは思念を送った。
 ──託したぞ、未来を担う者たちよ。

 颯爽と階段を駆け下り、飛竜の留置所にたどり着いたカズヤは、何度も顔を合わせているカムイの飛竜の元へと赴く。
 相変わらず俺には無愛想な飛竜であったが、自身の乗り手が既に亡き者だと察しているのか、何の躊躇いもなく首を下げてきた。
 一度頭を撫でてから飛竜の背に乗り移ると、高らかな咆哮を上げ身を起こし、これから向かう村が位置する方角に合わせる。手綱を強く引くと、巨躯な体とは思えない速さで駆け出し、両翼を何度も仰ぐ。
 百メートル駆け出すと巨躯はふわりと浮き上がり、徐々に高度を上げていく。留置所があっという間に見えなくなると、隣に並行するセレナが尋ねてきた。
「意外ですね。まさか、一度で飛竜を乗りこなすなんて」
「……驚くことなのか?」
「そもそも、飛竜は自分が認めた者以外は背に乗せたりはしません。乗れたとしても、飛竜の信頼がなければ言うことも聞いてはくれませんよ」
「へぇ。だったら、心配いらないさ」
 飛竜の首に手を添え、微笑みながら呟く。
「何度も顔を合わせてるからな。元の乗り手ほどじゃないにしても、少しぐらいは信頼されてると思うよ」

 衛士隊が護衛する村に到着した二人は、村長と衛士隊隊長に事情を話し、女騎士団団長の護送準備に取り組んだ。
 護送の準備が終わるまでの間、騎士長の危惧が的中する恐れもあるため、俺とセレナは周囲の警戒に当たった。
「……先程、フロリダと顔を合わせてきました」
 不意に、セレナが口にした。
「特に目立った外傷もなく、平然としていました。お前に命を取られる危険性があったにも関わらずに……」
 それだけで、彼女が何を言いたいのかが分かった。
 俺はセレナの隣に立ち、右肩に手を置いた。
「怯える必要はないよ。フロリダは命に興味がないんじゃない。それなりの覚悟が出来てるから、怖がらないんだよ」
「それなりの覚悟……」
「戦場に身を置くのは、命を奪う覚悟も、奪われる覚悟もあるからだ。だからフロリダは衛士を容赦なく殺した。自分も、殺される覚悟を持ってるからな」
 かつての自分を思い返すような語りは、セレナだけでなく自分の胸にも深く響いた。

 ── 現状維持なんてモノを求めてると、いつか本当に大切なモノを失うことになる。

 ふと脳裏に、騎士長の言葉が浮かび上がった。
 
 本当に大切なモノ……それだけは、異世界に来てから、未だ見つからずにいる。
 ユリを助けた時、自分の大事な心を守るためにユーグを斬った。だが結局、ユリを守ることが出来ずに終わった。
 あの時、現状維持を求めずに変革を求めてた。だから、後悔はしていない。
 騎士長の言葉を自己解釈し、端的に換言するならば、ことになる。
 創世神が言っていた、人界全土の運命を取るか、どちらか一方の全民の命を取るかを選ばされた時、俺は決めることが出来なかった。
 それはまだ俺に、覚悟が出来ていないからだ。だから、本来使える力も出せずにいる。
 どこまでも中途半端な自分に、守れる者なんているのだらうか……、などと困惑していると──。
「ああっ……ああ──っ!」
 背後から、きんきんと甲高い、何者かの金切り声が響く。
「なんて嘆かわしい、嘆かわしいのでしょうっ! まさか、ああ、もったいない、ああ、いけませんねぇっ、ああ、おおお──っ!!」
 意味不明な感嘆詞と絶叫の羅列に、俺のセレナは怪訝な顔を見合わせてから、後ろに振り返る。
 声の主は、背を向けて地面に座り込んでいる。
「ノホホホホッ!! ホオオオオオオオオッ!!」
 もはや意味を成さない絶叫を放ち続ける人物がまた、異様としか言えない姿だった。
 丸い。まるで雪だるまだ。しかしその色は白ではなく、黒色の服を着込んでいる。短い腕を包む袖は黒と白の縦縞で、じっと見ていると眼が疲れそうだ。
 丸い頭は真っ白で、一本の毛髪もなく、肌はてらてらと脂ぎっている。その頭頂部に載るのは、鳥類の頭部を思わせる下品な帽子。
 俺は隣に立つセレナの耳に口を近づけると、最小のボリュームで訊いた。
「あの子、誰……?」
「知りません」
 騎士の答えはごく密やかだったが、消し切れない嫌悪感が滲み出ている。民を愛するのに、ここまで嫌悪感を前に出すのは珍しい。
 俺はもう一度、子供の背中を凝視した。
 丸い背中に遮られてよく見えないが、どうやら子供は両手で抱えた何かに意識が集中しており、こちらの存在には全然気付いていない。
 いったいこの状況をどう判断したものか。此処は危険だから村の人たちの所に連れて行くか、一時的に保護しておくか。俺が次のアクションを決めかねていると、もう我慢ならぬというように、いきなりセレナが動いた。しかも、足音を全く隠さない全力のダッシュだ。
 と言っても、実際に床を蹴ったのはたったの五歩だった。慌てて追いかける俺を軽々と引き離し、黄金の疾風となって子供の近くに立ったセレナは、丸い首が振り向こうとした時にはもう、子供の襟首をがっしと摑み上げていた。
「ノホホホホホアッ!?」
 素っ頓狂な声を漏らす丸い物体を、セレナは高々と吊り上げ、前方へと放り投げた。
「ちょっとセレナさん!?」
 ようやく追いついたカズヤは、声を荒げながらセレナに物申した。
「人様の子供に何してんだよ! もし怪我でもしたらどうすんだよ!」
 セレナはこちらの抗議を物ともせずに子供を睨んでおり、俺は末恐ろしい思いを感じながら、子供が夢中で覗いていた物──硝子玉が視界に飛び込んだ。
 直径五十センチはありそうな硝子玉の中央には、渦巻く光に彩られて、半立体の映像が映し出されている。映像には、全裸の女性が複数人映っている。
 子供が奇声を上げていたのはこういうわけか、と脱力感とともに納得したその時、そこで術式が切れたのか、映像はいきなり白くフラッシュしてから消えてしまった。
 セレナのほうは、端から映像に興味を示さず、放り投げた子供に向けて、華焔剣の切っ先を突き付けて言った。
「不穏な動きをした瞬間、その醜い首を斬り飛ばします」
 冷ややかな声音で発せられた警告に、子供ではなく俺の方が硬直した。
 そんな俺を案じたのか、今度はセレナが俺の耳に口を近づけ、小声でささやく。
「あいつは魔界の民です」
「……ッ!?」
 絶句し、息を鋭く呑む。
 俺は改めて──セレナが魔界の民と断言した子供を眺めた。
 正体不明、という形容がこれ以上似つかわしい風貌もなかなかあるまい。真ん丸い顔の下半分を占める真っ赤な唇、その上にこれも巨大な団子鼻が突き出し、一見するとピエロだ。
 たしかに、人族の子供にしては少しだけ異質な容姿をしている。だが、それだけで魔界の民というのは失礼な気がしてならない。
 やがて、分厚い唇をラッパのようにすぼめた子供は、錆びた金属が軋むような声を漏らした。
「やれやれ……騎士がなんでこんなとこにいるンですかねェ。めんどクさいことこの上ないですねェ」
 その声を聞けば、否応なく認めるしかない。奴が、魔界の民であることを。
 人族とは思えないほどの声に、騎士を侮辱するような台詞。彼等を慕う人界の民からは絶対に有り得ない。
「人族のガキンチョに擬態して、近寄った瞬間に喉元掻っ切ってヤロウとおもってたのに、ほんとめんどくせェですねェ」
 雪だるまのような身を起こしながら、魔界の民は貴重な情報と取れる単語を発した。
「擬態……お前、デーモン族だな」
「デーモン族ゥ?」
 俺の問いを復唱した子供は、突如、膨れ上がった腹を縦に揺らす勢いで笑い出した。金属が擦れ合うような不快な音が、離れに立つはずの二人の耳にまで鮮明に届く。
「ば、馬鹿いうんじャぁありませェんよ! 私のような選ばれた者が、あんなチンケな族と同等なわきゃぁないでしょうがぁ!」
 なんとも聞き取り辛い声音にも、セレナは眉ひとつ動かさずに冷ややかな言葉を返した。
「ならば、貴様は何者ですか」
 子供は、卑しい笑みをニタリと浮かべた。
「いいでしョう。私は、敬愛すべき邪教神様に選び抜かれた四人いる死邪しじゃの一人、愚餓ぐが! お前たち愚か者を葬る者ですゾォ──!」
 意味深な単語以外全く聞かずに、高笑いを続ける愚餓を名乗る子供を眺めながら、馬鹿なんだなぁ、と考えてしまった。
 重要な情報を包み隠さずに言ってるから、こいつの素性だけじゃなく、有意義な情報を多く手に入れられた。
「しっかし、折角こんな居心地の悪い体に入ったというのに、意味なかったジャナイですかぁ」
「……体に、入った?」
 不可解な単語を尋ねると、愚餓は末恐ろしいことを平然と言った。
「決まってるじゃナイですかぁ。この体のことですヨォ」
 愚餓の台詞は、普通の人間ならば理解不能のものだった。しかし、二人はその意味を瞬時に察することができた。
「貴様……その子供の人格を乗っ取ったな」
 今にも爆発してしまいそうな怒りをどうにか抑えながら問うた。しかし愚餓は卑しい笑みを一切崩さずに、妖気に続けた。
「乗っ取りではアリませぇんよ! 私は、生物のだけに入り込むことが出来るのですよぉ。邪教神様のように、肉体の能力をフルに活用はできませんがぁ、肉体を自由自在に動かせるんですよぉ!」
「……待てよ……」
 不快な語りを遮るように、カズヤが物申した。そのまま、怒りを隠さず、睨みながら発した。
「神経だけ、ってことは……その子供の意思は、残されたままなのか……」
「当然でしょうなぁ。喋れはしませんが、意思だけははっきりと残ってますよぉ」
 それを聞いた瞬間、今すぐ愚餓を斬り殺したくなった。
 だが、ギリギリで踏みとどまる。
 奴を殺せば、支配された子供の命まで奪うことになる。そんなの、許されるわけがない。
 全く関係もない、何か罪を犯したわけでもない子供を傷つけていい理由なんて、あるわけがない。だからと言って何もしなければ、子供が苦しい思いを長く味わう羽目になる。
 まさに今、騎士長に言われた「非情に徹しなければいけない」状況に陥っている。
 子供の命を守るか、愚餓の命を奪うか、どちらか片方を選ばなければいけない中、カズヤは右側から発せられる、強烈な殺意を感じ取った。
 セレナは、食い縛った歯をきりりと鳴らし、唇を動かした。
「リベラシオン……」
 解放術の術式が発動すると、華焔剣が無数の花弁に分離し、愚餓を中心に渦を巻いた。渦は少しずつ縮まっていき、子供へと近づいて行く。
 このままでは、子供の身が引き裂かれてしまう。そう直感したカズヤは、セレナの右肩を乱暴に掴んだ。
「やめろセレナ! あの子を殺す気か!!」
 俺の呼び止めも一切気にする様子もなく、無数の花弁の渦は更に縮まり、遂には子供の身を引き裂き始めた。
 という俺の予想は、一秒後、あっさりと裏切られた。
 ばぁん! と盛大な破裂音が渦の中から轟き、子供の真ん丸い体が風船のように弾け飛んだ。大量に迸った血液が、周囲を真紅に染め──なかった。
「えっ……!?」
 カズヤは、驚きの声を上げた。噴き出したのは、液体ではなく気体──真っ赤に着色された煙だったのだ。それはたちまち周囲に広がり、空気中へと散っていった。
 華焔剣の解放術が解除されると、渦の中心にいた子供は横倒れていた。
 子供の元へ駆け寄り、心臓の鼓動を確かめる。規則的に動いているのを確認すると、セレナが近くまで歩み寄ってきた。
 俺は子供を抱き抱えながら、恐らく初めて──彼女に対して純粋な怒りを見せた。
「セレナ。なんで、こんな危険な真似をしたんだ」
「奴は、私達が子供には手が出せないと踏んで肉体を乗っ取ったに違いありません。だからあえて、子供を殺める気で攻撃すれば、奴とて肉体を捨て逃げると思い、今のような行動に出たのです」
「……理屈は分からんでもないが、だからって、子供の命を危険に晒す必要はなかったはずだ!」
「ですが、結果的に少年の体から愚餓を離すことができました」
 正論を言われてしまい、何も反論することができなかった。いや、元々反論する権利など、俺にはない。
 苦渋の決断をセレナを選び抜き、見事子供を救い出した。何も決断できずに迷い続けた俺に、責められる道理などない。
 俺はこれ以上口を開かず、気絶した子供を近くの家のベッドに放り投げた。扉の前で周囲を警戒していたセレナに向かって、俺は頭を下げた。
「悪かった。君の判断は、正しかったよ」
「……謝る必要はありません。お前の迷いは、何一つ間違いではないのですから」
 同情しているわけでもなく、きっと本心のまま告げているのだろう。そしてきっと、彼女なりに俺を慰めてくれているのだろう。
 しかし、その慰めも今は意味を成さない。事ここに至ってしまえば、その迷いは邪魔である他ない。瞬時に決断しなければ、最悪の結末もあり得る。
 今回はセレナのお陰で免れたが、次はないと思った方がいい。
「……それよりも、逃げた愚餓を探しましょう。もし次に村人に擬態でもされれば、今回の策は通用しないでしょう」
 セレナの提案に頷き、葛藤を思考の片隅に据え置く。
 そうだ。まだ危機が完璧に去ったわけではない。愚餓がいる限り、村人全員の命が危険に晒されているのは変わらない。こんな所でまた迷っていたら、今度こそ取り返しのつかない結末を迎えてしまう。
 苦渋の決断ができないなら、決断を下る状況に陥る前に決着をつければいい。
 一時の迷いを消すような決意を固め、セレナと顔を見合わせ、一度頷き、言う。
「……行こう」
「行きましょう」
 そして俺、特異点カズヤと、天界の騎士セレナは、扉の先へと踏み出した。
 一歩、二歩、三歩進んだ──その時。
 真正面から歩み寄る、強烈な気配を感じ取った。
 立ち止まり、先を見据える俺の眼を、幾つもの眩い煌めきが射抜いた。それは、流麗なデザインの金属鎧に反射する陽光だった。全身を重装鎧に包んだ何者かが、長いマントを翻して緩やかに歩み寄ってくる。
 身長からして人族で間違いないし、体格は男のそれだ。逆光のせいで顔は見えない。
「まさか、暗黒騎士か……?」
 俺が呟き、
「確かにあの鎧は……いえ、でも……」
 セレナが囁いた次の瞬間、騎士は十五メートル離れた場所で歩みを止めた。
 鎧は、青みがかった銀色。わずかに透明感がある装甲表面が、降り注ぐ陽光を溜めて眩く輝く。マントは漆黒になっており、光を一切受け入れていない。腰には一刀の長剣が備え付けられているが、遠目のためよく見えない。俯けられた顔は大型の首当てゴーゲットに隠れて見えないが、少しウェーブのかかった髪から覗く……両眼。
 刹那、俺の全身を、雷撃にも似た戦慄が貫いた。
 まさか。でも。なんで。
 極度の混乱に襲われ、立ち尽くす俺の視線の先で、騎士がついに顔を上向けた。半ば伏せられた瞼の奥から、黒い瞳がまっすぐ俺を見返した。もう、疑いようもなかった。あの騎士は…………

「………………カムイさん…………」

 ほとんど音にならない喘ぎ声で、俺は彼の名を呼んだ。
 彼は、彼だけは見誤ろうはずもない。コモレヴィの洞窟でゴブリンの集団を簡単に蹴散らし、アースリアに惨劇をもたらした暗黒騎士をも退けた。戴天捕獲の任務も共に赴き、邪教神に精神を乗っ取られた俺を、身を挺してまで救い出してくれた、一番信頼している騎士。
 異世界に転生してから、今までなんとか前に進んでこられたのは、旅の中で出会った仲間や村で待っていると信じていたセレナ、そして常に俺を見守ってくれていたカムイさんがいたからだ。そんな彼の顔を、見間違えることは絶対に有り得ない。
 しかし、無言で立つカムイの眼や口許に浮かぶ表情だけが見覚えのないものだった。いや、そこに表情と呼べるものは存在しない。学園で初めて遭遇した時のセレナよりもなお冷ややかな、氷の無機質さ。
「カムイさん」
 俺はもう一度、今度はどうにか声らしい声で騎士に呼びかけた。だが、両眼を満たす冷光は小揺るぎもしない。と言って、無視しているわけでもない。彼は今……待っている。俺が、近づくのを。
「……カズヤ……分かってますよね」
 不意に隣のセレナが呟き、俺は縋るような気持ちで訊き返した。
「分かってる……って、何が……」
「あれは、邪教神だということです」
 ちらりと俺に視線を振り、白銀の騎士はわずかな躊躇いを見せてから、決定的な一言を口にした。
「カムイ殿は……
 意思の支配。邪教神が人間の内部に侵入して、意思を支配する行為。
「……嘘だ、そんな……だって、カムイさんは、君と同じ騎士だ……強靭な意思を持った、騎士なんだぞ……」
 子供のようにかぶりを振りながら反駁はんばくする俺に、セレナは冷静に答えた。
「いくら騎士とはいえ、強敵との長期戦に陥れば疲弊は隠せません。お前を救い出す時ですら、カムイ殿はかなりの深傷を負っていました。支配される可能性は充分にあります」
「そんなの……有り得ない、カムイさんがそんな、簡単に…………。そうだよ。あれはきっと、君も知ってるカムイさんだ……」
 自分でも何を言っているのか意識できないまま、俺はふらりと前を歩き出そうとした。
 だが、だらりと垂らした右腕を、突然セレナの左手が強く摑んだ。同時に、耳元で声。
「落ち着きなさい! ここでお前が動揺すれば、助けられるものも助けられなくなる!」
「た……助ける……? カムイさんは、まだ助かるのか?」
「当然です! 事実お前も、カムイ殿と剣を交えたことで目覚めたでしょう! 今度はお前がカムイ殿を助けなければ、誰が助けるというのですか!」
 鋭い叱咤に続いて、手首に触れるセレナの掌から炎の如き意思力が流れ込んできて、冷たく麻痺しかけた俺の体に活を入れた。いつのまにか取り落としそうになっていた焔天剣を、しっかりと握り直す。
 そう──、セレナの言う通りだ。カムイの記憶や人格は、まだ残ってるに違いない。
 カムイさんが俺に施してくれた外部から内部への呼びかけを、今度は俺が行えばいいだけだ。そうすればきっと、カムイさんは俺の知っている、優しく気高い騎士に戻る。
「ありがとう、セレナ」
 落ち着きを取り戻させてくれた騎士に一言告げる。
「……ここは、俺に任せてくれないか」
 俺の右手を摑んだままのセレナにそう囁きかけると、騎士は少し躊躇う様子を見せてから頷いた。手を離し、一歩下がりながら、早口に言う。
「私は、逃げた愚餓の方を片付けます」
「すまない、助かるよ」
「礼には及びません。それと、油断しないで。カムイ殿は恐らく、以前よりも遥かに強くなっているはずです。……お前も、最初から本気で戦いなさい」
「ああ」
 俺が答えると、セレナは無言で距離を取り、反対方向へ疾駆した。
 正直なところ、二人で同時に解放術を使えば、如何に強くなったカムイでも容易に戦闘能力を奪えるだろう。しかし、それを俺は望まない。
 一人で俺を救ってくれたカムイさんを、今度は俺一人で救わなければいけない。
 俺は一歩前に出ると、変わらずに冷たい光を浮かべたままのカムイの瞳を、正面から見詰めた。
「カムイさん」
 三度目の呼びかけは、もう震えも掠れもしなかった。
「待っててください。あなたが俺にしてくれたように、今度は俺があなたを助けます。……だから、それまで我慢していてください」
 焔天剣を握る手に力を込めながら発する。
 白銀の鎧に身を包む騎士は、更に数秒間沈黙を続けてから、ついに口を開いた。
「特異点。思っていたよりも、意思の正常化が早かったな」
 それが騎士カムイの第一声だった。ソフトな声音は記憶にあるとおりだが、表情と同じく氷の質感を帯びている。
「……邪教神。貴様は、人の心を弄ぶのが本当に得意だな」
 今度はカムイにではなく、カムイの意思を支配している者に発すると、不敵な笑みを刻んだ。
 漆黒の瞳を一度瞬かせてから、邪教神は当然のことのように言った。
「馬鹿を言うな。既に承知の事実だろうが、お前は人ではない。特異点という名の、人ならざる存在……」
「そんなの関係あるか」
 邪教神の言葉を遮り、俺は食い下がった。
「人の心がなかろうが、人でなかろうが、カムイさんを救いたい思いは変わらない。……貴様のような、自己の欲望にしか目を向けないような存在には、到底理解できないだろうがな」
「……理解する気も、ない」
 一蹴するやすぐに、左腰に吊らされたり激凍剣げきとうけんを握り、躊躇いなく抜き放つ。
 やむなく俺も、焔天剣を体の前に構えた。
 カムイと出逢ってから、俺は一度たりとも剣を交えるなど考えたこともなかった。そもそも、対峙する理由などないのだから。
 にもかかわらず──。
 俺の胸中に満ちてくるのは、望んでた時が来た、という感慨だった。そう、俺はこの瞬間を、焔天剣を受け取った日から、密かに予感していた。
 しかしそれは、剣を打ち合わせるところまでだ。戦いの結末までは考えたこともない。もちろん、それは俺たち以外の誰にだって──創世神にだって、決めさせるつもりはない。
「カムイさん」
 最後の会話のつもりで、俺は語りかけた。
「コモレヴィの洞窟で出逢ってから、密かに願っていた。いつか、あなたと戦うに値するだけの実力を身につけたら、その成長を命の恩人であるカムイさんに見せるのが、俺の夢だったんです」
 しかしカムイはもう口を開けなかった。それでも俺は、最後まで続けた。
「俺が望む相手は、カムイさん自身です。だから、邪教神の支配から目を覚ましてください。そして、他の誰でもないあなた自身が、俺と戦ってください。……あなたが救った剣士の成長を、自分自身で感じてください!」
 それを最後に、焔天剣を滑らかな動作で構える。
 二本の剣が、太陽光を浴びて淡い煌めきを放った。
 一秒後。
 村の中央部で、激しい衝突音が響いた。
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