27 / 43
第27話 魔王、慣れられず
しおりを挟む
朝焼けが空を薄紅色に染める頃。筆の家の厨房からは、軽快なフライパンの音が響き渡り、食堂からは子どもたちの朗らかな笑い声が溢れ出す。外の畑では、土から顔をのぞかせたばかりのジャガイモが、朝日を浴びてキラキラと輝いていた。まるで、今日という日も、昨日と同じように平和な一日が始まる――そう錯覚させるような、穏やかな風景。
だが、その数日前から、この家を包む空気は、どこか奇妙にざわめいていた。
「お、おい……なんか、後ろにいるぞ……」
リュウが、まるで背後を幽霊でも見たかのように不安げな視線を投げかける。その言葉に、子どもたちの楽しげな声が一瞬にして凍りついた。
ギギィ……。
ログハウスの重々しい扉が、ゆっくりと、しかし確実に開いていく。その隙間から現れたのは、息を呑むほどの異形――漆黒のローブを纏い、威圧的な角を頭に戴き、見るからに筋骨隆々とした長身の男だった。彼の存在だけで、部屋中の空気が一気に張り詰める。
「ふぁぁ……朝の芋は実にうまいな……」
その低く、まるで地を這うような轟く声が食堂に響き渡ると、子どもたちどころか、そこにいた全員の足がすくみ上がった。本能的な恐怖が、彼らの心を支配する。
「ぎゃあああああ!! 魔王だぁぁぁぁ!!!」
ついに、何人かの子どもが甲高い悲鳴を上げて一斉に逃げ出した。厨房スタッフは驚きのあまり鍋をひっくり返し、熱いスープが床に飛び散る。ミランダに至っては、反射的に手にしていた包丁を、まるで魔物を迎え撃つかのように構えていた。
「落ち着けってば! こいつ、もう魔王じゃないから!!」
リュウが必死に大声で叫ぶも、その声はほとんど届かない。無理もない。どう見ても、目の前の男は、完璧なまでに「魔王」そのものなのだから。威圧感と存在感が半端ではない。
「なぁ……ダルクス。お前さぁ……もう、魔王軍、やらないんだよな?」
リュウは、震える声で恐る恐る確認した。もしここで「いや、気が変わった」などと言われたら、まさに世界の終わりだ。
「うむ。我は第二の人生を“芋”に捧げると決めたのだ。人里で静かに暮らす所存である」
ダルクスは、その恐ろしい形相に似合わない、どこか不敵な笑みを浮かべた。しかし、その笑みもまた、周囲の恐怖を煽るだけだった。
「その姿でか!?」
リュウは、もはや呆れを通り越してツッコミを入れた。これでは「静かに暮らす」どころか、毎朝のように大パニックが巻き起こるだろう。
「そ、それは……生まれついての威厳というものが……」
ダルクスは、そう言って威張るように胸を張った。だが、その頭上の角は天井にすれすれ、通路は彼の巨体にきしみ、ログハウス全体が悲鳴をあげている。威厳どころか、単に邪魔なだけだ。
「じゃあ、もうちょっと威厳下げてくれません!?」
リュウが木製の梁を指しながら叫ぶと、ダルクスはキョトンと首をかしげた。どうやら、彼には「威厳を下げる」という意味が理解できないらしい。
そして夜。ほとんど理不尽とも言える一日を終えたリュウは、疲労困憊の顔でノートを開いた。朝から魔王騒動、そして昼間は芋を巡る攻防。彼の精神は完全に擦り切れていた。
「……書くか。ちょっとだけ……ほんの、ちょっとだけ」
呟きと共に、彼の手に握られたペンに、微かな魔力が宿る。リュウは、この世界を綴る能力者だ。書いたことが現実になる、そんなチートな力を持っている。彼は、震える手でインクを走らせた。
《魔王ダルクスの魔力を封じ、人間の姿へと変える。角もなく、体も少年のように。年齢換算十四歳程度。改名してマオ》
ぱぁん!
まるで空気が弾けるような音と共に、原稿帳から淡い光がこぼれ出した。それはあっという間にダルクスを包み込み、そして――。
「な、なに!? 体がっ……!」
ドサッと音を立てて落ちた漆黒の魔王マント。それを翻して現れたのは、誰もが目を疑う光景だった。金髪のくせっ毛に、紅い瞳。そこに立っていたのは、まごうことなき十四歳の少年だった。
「ふむ、我は……な、なんだこの軽さは!? どこだ、我の角!!」
マオ(旧ダルクス)は慌てて頭を掻きむしり、床に落ちたはずの角を探そうと足元をバタつかせる。その姿は、先ほどの威厳ある魔王とはあまりにかけ離れていた。
「……変わった……魔王が、少年に……」
リュウもルナも、Tシャツのまま、口をぽかんと開けてその光景を見つめていた。理解が追いつかない。
「見た目だけだぞ! 中身はそのままだからな!」
リュウが慌てて釘を刺すと、マオは「むーっ」と頬を膨らませた。その仕草は、どこか可愛らしい。
「それ一番厄介やん!!」
リュウが思わず勢いよくツッコミを入れると、ログハウスには、再び騒然とした空気が漂った。だが、今度は恐怖ではない。むしろ、困惑と、そしてどこか、新たな騒動の予感に満ちていた。
こうして、“魔王ダルクス改めマオ”――魔王の子ども化という、想像を絶する大混乱の幕が、静かに、しかし確実に切って落とされたのだった。
***
翌朝。まだ陽の光も柔らかな時間帯だったが、筆の家の木製の廊下には、早くも低く、そして少し戸惑ったような声がこだましていた。
「ふむ……足が、軽い。背も……低い。鏡はどこだ? 余の威厳を確認せねば」
マオは、まだ慣れぬ十四歳の体を確かめるように呟きながら、廊下をそろりと歩く。その足取りは、どこかぎこちない。
「ちょっとマオ! パジャマのままうろつかんと! 朝食前に顔を洗いなさいってば!」
その声と共に、ルナがタオルを握りしめ、颯爽とマオの元へと駆け寄ってきた。容赦ない彼女の言葉に、マオはぴくりと反応する。
「我は魔王であるぞ!? 洗顔など、側近の仕事ではないのか!?」
マオはふんぞり返り、片眉を上げて抗議の姿勢を見せた。だが、その小さな抗議は、ルナには全く通用しなかった。
「ちがーーーう!!」
ルナは躊躇なくマオの耳を引っ張り、強制的に洗面所まで連行した。マオはむくれた顔をしつつも、洗面台に無抵抗で顔を寄せる。まるで、飼い慣らされた猫が水を飲むかのように。
「……まるで猫やね。されるがまま」
「されるしかないというか、気づいてないまであるよね」
廊下の陰から、そっとその様子を見守っていたティアとロッテが、小声でくすくす笑い合った。新たな日常の、可愛らしい一コマだ。
食堂では、ミランダたちが和やかな朝食の準備を進めていた。そんな中、マオは席に着くと、まるで王族がメニューを告げるかのように、堂々と宣言した。
「朝食はライスとスープ、焼き魚、漬物に煮物……そして芋だ」
「朝から品数、多っ!?」
ミランダが慌ただしく大皿を並べながら、思わず声を上げた。朝食にしてはあまりにも豪華すぎる。
「食卓は“国の縮図”である。多ければ多いほど、国が豊かになるのだ」
マオは、さも当然とばかりに誇らしげに顔を上げる。その言葉に、ミランダはまな板に突っ伏しながら呟いた。
「国運までかけるな朝食に!!」
「……はいはい。卵焼きも追加ね。ところで、この子、王族育ちか何かなの?」
ミランダは苦笑しながら、マオの言葉に付き合うように卵焼きを追加する。そして、ふと疑問を口にした。
「魔王族です」
リュウが簡潔に答えると、ミランダは納得したように深く頷いた。魔王族なら、これだけ威張るのも納得だ。彼女は黙々と卵を焼き始め、マオは満腹そうに腹をさすった。
「では、余の任務に戻るとしよう」
「ん? 何するの?」
「屋根で芋干しだ」
「やっぱり芋か」
マオは涼しい顔で立ち上がり、まるで当然の任務を果たすかのように、背後の階段を上っていった。彼の「芋」への情熱は、魔王から少年になっても、全く変わっていないらしい。
昼下がり。ぽかぽかと温かい陽気の下、ログハウスの屋根の棟には、綺麗に並べられた芋の列が輝いていた。その傍らで、マオは心地よさげに目を細めている。
「よい……芋の香りと共に眠るこのひととき……これぞ真の平和……」
マオは両手を腰に当て、満足げに空を見上げた。穏やかな時間。このまま、何事もなく一日が過ぎていくかのように思えた。
だが、その瞬間。
「ダルクス様ァァァアアアア!!!」
木霊のように響く大声とともに、空気が震えた。それは、この平和を打ち破る、あまりにも唐突な来訪者の予兆だった。
「!?」
マオが慌てて飛び起き、リュウもハンモックから跳ね起きた。尋常ではない魔力の気配と、その声は、かつての魔王ダルクスの部下である可能性を示唆していた。
「な、なに!? 空から!? あれ翼っ!? って、女の人が三人!?」
リュウの叫びに、ティアとルナも庭先に出て空を見上げる。そこには、信じられない光景が広がっていた。
屋根に音もなく降り立ったのは、真っ黒な翼を持つ三人の魔族の女性たち。彼女たちの眼光は鋭く、まるで獲物を見つけたかのように、マオを強く見据えていた。彼らの目には、マオの姿がどのように映っているのだろうか? そして、この来訪は、新たな混乱を巻き起こすのか――。
「ま、魔王様!? まさか、その姿は……」
一人が震える声で問いかける。混乱と驚きに満ちたその声は、この平和な日々が、またもや揺らぎ始めることを告げていた。
「ふむ、久しいな。我が忠実なる側近、否、世話係どもよ」
マオは肩をすくめ、かつての威厳そのままに挨拶した。その言葉に、リュウは天を仰ぐ。
「やっぱり世話係だったぁああああ!!!」
リュウの絶叫が、どこまでも続く青空に高くこだました。そして、彼らの新しい、そして波乱に満ちた日常は、さらに加速していくのだった。
だが、その数日前から、この家を包む空気は、どこか奇妙にざわめいていた。
「お、おい……なんか、後ろにいるぞ……」
リュウが、まるで背後を幽霊でも見たかのように不安げな視線を投げかける。その言葉に、子どもたちの楽しげな声が一瞬にして凍りついた。
ギギィ……。
ログハウスの重々しい扉が、ゆっくりと、しかし確実に開いていく。その隙間から現れたのは、息を呑むほどの異形――漆黒のローブを纏い、威圧的な角を頭に戴き、見るからに筋骨隆々とした長身の男だった。彼の存在だけで、部屋中の空気が一気に張り詰める。
「ふぁぁ……朝の芋は実にうまいな……」
その低く、まるで地を這うような轟く声が食堂に響き渡ると、子どもたちどころか、そこにいた全員の足がすくみ上がった。本能的な恐怖が、彼らの心を支配する。
「ぎゃあああああ!! 魔王だぁぁぁぁ!!!」
ついに、何人かの子どもが甲高い悲鳴を上げて一斉に逃げ出した。厨房スタッフは驚きのあまり鍋をひっくり返し、熱いスープが床に飛び散る。ミランダに至っては、反射的に手にしていた包丁を、まるで魔物を迎え撃つかのように構えていた。
「落ち着けってば! こいつ、もう魔王じゃないから!!」
リュウが必死に大声で叫ぶも、その声はほとんど届かない。無理もない。どう見ても、目の前の男は、完璧なまでに「魔王」そのものなのだから。威圧感と存在感が半端ではない。
「なぁ……ダルクス。お前さぁ……もう、魔王軍、やらないんだよな?」
リュウは、震える声で恐る恐る確認した。もしここで「いや、気が変わった」などと言われたら、まさに世界の終わりだ。
「うむ。我は第二の人生を“芋”に捧げると決めたのだ。人里で静かに暮らす所存である」
ダルクスは、その恐ろしい形相に似合わない、どこか不敵な笑みを浮かべた。しかし、その笑みもまた、周囲の恐怖を煽るだけだった。
「その姿でか!?」
リュウは、もはや呆れを通り越してツッコミを入れた。これでは「静かに暮らす」どころか、毎朝のように大パニックが巻き起こるだろう。
「そ、それは……生まれついての威厳というものが……」
ダルクスは、そう言って威張るように胸を張った。だが、その頭上の角は天井にすれすれ、通路は彼の巨体にきしみ、ログハウス全体が悲鳴をあげている。威厳どころか、単に邪魔なだけだ。
「じゃあ、もうちょっと威厳下げてくれません!?」
リュウが木製の梁を指しながら叫ぶと、ダルクスはキョトンと首をかしげた。どうやら、彼には「威厳を下げる」という意味が理解できないらしい。
そして夜。ほとんど理不尽とも言える一日を終えたリュウは、疲労困憊の顔でノートを開いた。朝から魔王騒動、そして昼間は芋を巡る攻防。彼の精神は完全に擦り切れていた。
「……書くか。ちょっとだけ……ほんの、ちょっとだけ」
呟きと共に、彼の手に握られたペンに、微かな魔力が宿る。リュウは、この世界を綴る能力者だ。書いたことが現実になる、そんなチートな力を持っている。彼は、震える手でインクを走らせた。
《魔王ダルクスの魔力を封じ、人間の姿へと変える。角もなく、体も少年のように。年齢換算十四歳程度。改名してマオ》
ぱぁん!
まるで空気が弾けるような音と共に、原稿帳から淡い光がこぼれ出した。それはあっという間にダルクスを包み込み、そして――。
「な、なに!? 体がっ……!」
ドサッと音を立てて落ちた漆黒の魔王マント。それを翻して現れたのは、誰もが目を疑う光景だった。金髪のくせっ毛に、紅い瞳。そこに立っていたのは、まごうことなき十四歳の少年だった。
「ふむ、我は……な、なんだこの軽さは!? どこだ、我の角!!」
マオ(旧ダルクス)は慌てて頭を掻きむしり、床に落ちたはずの角を探そうと足元をバタつかせる。その姿は、先ほどの威厳ある魔王とはあまりにかけ離れていた。
「……変わった……魔王が、少年に……」
リュウもルナも、Tシャツのまま、口をぽかんと開けてその光景を見つめていた。理解が追いつかない。
「見た目だけだぞ! 中身はそのままだからな!」
リュウが慌てて釘を刺すと、マオは「むーっ」と頬を膨らませた。その仕草は、どこか可愛らしい。
「それ一番厄介やん!!」
リュウが思わず勢いよくツッコミを入れると、ログハウスには、再び騒然とした空気が漂った。だが、今度は恐怖ではない。むしろ、困惑と、そしてどこか、新たな騒動の予感に満ちていた。
こうして、“魔王ダルクス改めマオ”――魔王の子ども化という、想像を絶する大混乱の幕が、静かに、しかし確実に切って落とされたのだった。
***
翌朝。まだ陽の光も柔らかな時間帯だったが、筆の家の木製の廊下には、早くも低く、そして少し戸惑ったような声がこだましていた。
「ふむ……足が、軽い。背も……低い。鏡はどこだ? 余の威厳を確認せねば」
マオは、まだ慣れぬ十四歳の体を確かめるように呟きながら、廊下をそろりと歩く。その足取りは、どこかぎこちない。
「ちょっとマオ! パジャマのままうろつかんと! 朝食前に顔を洗いなさいってば!」
その声と共に、ルナがタオルを握りしめ、颯爽とマオの元へと駆け寄ってきた。容赦ない彼女の言葉に、マオはぴくりと反応する。
「我は魔王であるぞ!? 洗顔など、側近の仕事ではないのか!?」
マオはふんぞり返り、片眉を上げて抗議の姿勢を見せた。だが、その小さな抗議は、ルナには全く通用しなかった。
「ちがーーーう!!」
ルナは躊躇なくマオの耳を引っ張り、強制的に洗面所まで連行した。マオはむくれた顔をしつつも、洗面台に無抵抗で顔を寄せる。まるで、飼い慣らされた猫が水を飲むかのように。
「……まるで猫やね。されるがまま」
「されるしかないというか、気づいてないまであるよね」
廊下の陰から、そっとその様子を見守っていたティアとロッテが、小声でくすくす笑い合った。新たな日常の、可愛らしい一コマだ。
食堂では、ミランダたちが和やかな朝食の準備を進めていた。そんな中、マオは席に着くと、まるで王族がメニューを告げるかのように、堂々と宣言した。
「朝食はライスとスープ、焼き魚、漬物に煮物……そして芋だ」
「朝から品数、多っ!?」
ミランダが慌ただしく大皿を並べながら、思わず声を上げた。朝食にしてはあまりにも豪華すぎる。
「食卓は“国の縮図”である。多ければ多いほど、国が豊かになるのだ」
マオは、さも当然とばかりに誇らしげに顔を上げる。その言葉に、ミランダはまな板に突っ伏しながら呟いた。
「国運までかけるな朝食に!!」
「……はいはい。卵焼きも追加ね。ところで、この子、王族育ちか何かなの?」
ミランダは苦笑しながら、マオの言葉に付き合うように卵焼きを追加する。そして、ふと疑問を口にした。
「魔王族です」
リュウが簡潔に答えると、ミランダは納得したように深く頷いた。魔王族なら、これだけ威張るのも納得だ。彼女は黙々と卵を焼き始め、マオは満腹そうに腹をさすった。
「では、余の任務に戻るとしよう」
「ん? 何するの?」
「屋根で芋干しだ」
「やっぱり芋か」
マオは涼しい顔で立ち上がり、まるで当然の任務を果たすかのように、背後の階段を上っていった。彼の「芋」への情熱は、魔王から少年になっても、全く変わっていないらしい。
昼下がり。ぽかぽかと温かい陽気の下、ログハウスの屋根の棟には、綺麗に並べられた芋の列が輝いていた。その傍らで、マオは心地よさげに目を細めている。
「よい……芋の香りと共に眠るこのひととき……これぞ真の平和……」
マオは両手を腰に当て、満足げに空を見上げた。穏やかな時間。このまま、何事もなく一日が過ぎていくかのように思えた。
だが、その瞬間。
「ダルクス様ァァァアアアア!!!」
木霊のように響く大声とともに、空気が震えた。それは、この平和を打ち破る、あまりにも唐突な来訪者の予兆だった。
「!?」
マオが慌てて飛び起き、リュウもハンモックから跳ね起きた。尋常ではない魔力の気配と、その声は、かつての魔王ダルクスの部下である可能性を示唆していた。
「な、なに!? 空から!? あれ翼っ!? って、女の人が三人!?」
リュウの叫びに、ティアとルナも庭先に出て空を見上げる。そこには、信じられない光景が広がっていた。
屋根に音もなく降り立ったのは、真っ黒な翼を持つ三人の魔族の女性たち。彼女たちの眼光は鋭く、まるで獲物を見つけたかのように、マオを強く見据えていた。彼らの目には、マオの姿がどのように映っているのだろうか? そして、この来訪は、新たな混乱を巻き起こすのか――。
「ま、魔王様!? まさか、その姿は……」
一人が震える声で問いかける。混乱と驚きに満ちたその声は、この平和な日々が、またもや揺らぎ始めることを告げていた。
「ふむ、久しいな。我が忠実なる側近、否、世話係どもよ」
マオは肩をすくめ、かつての威厳そのままに挨拶した。その言葉に、リュウは天を仰ぐ。
「やっぱり世話係だったぁああああ!!!」
リュウの絶叫が、どこまでも続く青空に高くこだました。そして、彼らの新しい、そして波乱に満ちた日常は、さらに加速していくのだった。
0
あなたにおすすめの小説
最凶と呼ばれる音声使いに転生したけど、戦いとか面倒だから厨房馬車(キッチンカー)で生計をたてます
わたなべ ゆたか
ファンタジー
高校一年の音無厚使は、夏休みに叔父の手伝いでキッチンカーのバイトをしていた。バイトで隠岐へと渡る途中、同級生の板林精香と出会う。隠岐まで同じ船に乗り合わせた二人だったが、突然に船が沈没し、暗い海の底へと沈んでしまう。
一七年後。異世界への転生を果たした厚使は、クラネス・カーターという名の青年として生きていた。《音声使い》の《力》を得ていたが、危険な仕事から遠ざかるように、ラオンという国で隊商を率いていた。自身も厨房馬車(キッチンカー)で屋台染みた商売をしていたが、とある村でアリオナという少女と出会う。クラネスは家族から蔑まれていたアリオナが、妙に気になってしまい――。異世界転生チート物、ボーイミーツガール風味でお届けします。よろしくお願い致します!
大賞が終わるまでは、後書きなしでアップします。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~
スサノワ
ファンタジー
「ここわぁ、地獄かぁ――!?」
悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、気がつきゃ金糸のような髪の小娘に!?
「えっ、ファンタジーかと思ったぁ? 残っ念っ、ハイ坊主ハラペコSFファンタジーでしたぁ――ウケケケッケッ♪」
やかましぃやぁ。
※小説家になろうさんにも投稿しています。投稿時は初稿そのまま。順次整えます。よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる