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2. アルファの婚約者
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瀬尾宏樹。
俺より三つ年上で、今年で三十路になる上位アルファの男。そして、親同士が決めた俺の婚約者だったりする。
まっすぐ癖のない艶のある黒髪、少し垂れ目がちだけれど大きな目が印象的な精悍な顔が、百八十を超える長身に乗っかってる。もちろん学生時代の成績も良く、誰が見ても嫌味なくらいの完璧な美形。……傍から見れば。
出会いはまだお互い小学生の頃だった。
俺が小学二年生、宏樹が五年生だったと思う。
宏樹はアルファの両親にアルファの兄弟と完全なるアルファ一族の生まれだ。
俺の家も一応は宏樹の家とそう変わらないレベルのアルファ一族だけれど、例外的に俺だけがオメガで生まれた。まぁ数代前にオメガが一人いたそうだから、その血が俺には濃く出たんだろう。
お互いの両親が大学の同窓で、その日は宏樹の弟が生まれたからと、俺は両親と一緒に瀬尾家を訪れていた。
初めて会った宏樹は、筋肉ムキムキのゴリラみたいな俺の兄たちとは違って、ディズニー映画に出てくる王子様みたいなルックスで、知らない人たちの中で人見知りをする俺に「一緒に遊ぼうか」と声をかけてくれた優しいお兄さんだった。
それがいけなかったんだろうな。
手を繋いで瀬尾家の庭を散策する俺と宏樹を見た両親たちは「自分たちの息子同士がくっついたら親戚になれるぞ」という短絡的な考えを持っちゃって、俺と宏樹は初対面から三ヶ月後には婚約することになる。
俺は婚約がどういうものかわからなくて、婚約話が出た時はただ置き物化していたけど、隣に座る宏樹は今思えばすごい変な顔をしていた。
宏樹が小学生のうちはまだ良かった。
定期的にお互いの家に通い、優しく遊んでくれる宏樹は俺にとって婚約者というよりは仲の良い親戚の兄ちゃんって感じだった。宏樹にとっても俺は可愛い弟分だったと思う。
ところが宏樹が中学へ進学すると一変した。
宏樹は俺の家に来なくなり、俺が宏樹の家に約束どおり行っても本人は友人たちと遊ぶために不在ということが続いた。なかなか顔を合わすことすら難しくなり、そういう日々が三年続いたのを見計らって俺は宏樹と会うのをやめた。
親の方針で中高は宏樹と同じ私立の一貫校に進んだのだけど、宏樹はそこで有名人だった。
上位アルファの血筋で眉目秀麗、同級生たちより頭一つ高い身長、鍛えられた肉体、飛び抜けたコミュ力。そして、色んな人たちに教えられた「男女問わず来るもの拒まず去るもの追わず」という、ただれた性関係。
つまり婚約者との約束を破ってまでセックスに勤しんでいたわけだよ。そのことを知った俺は、宏樹に対して「マジきもい」という感想しか持てなかった。
実際に高等部との合同授業なんかに出た時は、宏樹の横にはいつもきれいな女子や男子がぴったりくっついていて、噂は事実なのだと実感した。
両親には早々に宏樹との婚約解消をお願いしたけれど、お互いの家も絡んでの縁談だったからそれは出来なかった。両親には「宏樹くんがまさかそんなことになってるなんて」「婚約は早まったかもしれない」と謝られたが、それでも婚約は解消してもらえなかった。
そして、今に至る。
俺より三つ年上で、今年で三十路になる上位アルファの男。そして、親同士が決めた俺の婚約者だったりする。
まっすぐ癖のない艶のある黒髪、少し垂れ目がちだけれど大きな目が印象的な精悍な顔が、百八十を超える長身に乗っかってる。もちろん学生時代の成績も良く、誰が見ても嫌味なくらいの完璧な美形。……傍から見れば。
出会いはまだお互い小学生の頃だった。
俺が小学二年生、宏樹が五年生だったと思う。
宏樹はアルファの両親にアルファの兄弟と完全なるアルファ一族の生まれだ。
俺の家も一応は宏樹の家とそう変わらないレベルのアルファ一族だけれど、例外的に俺だけがオメガで生まれた。まぁ数代前にオメガが一人いたそうだから、その血が俺には濃く出たんだろう。
お互いの両親が大学の同窓で、その日は宏樹の弟が生まれたからと、俺は両親と一緒に瀬尾家を訪れていた。
初めて会った宏樹は、筋肉ムキムキのゴリラみたいな俺の兄たちとは違って、ディズニー映画に出てくる王子様みたいなルックスで、知らない人たちの中で人見知りをする俺に「一緒に遊ぼうか」と声をかけてくれた優しいお兄さんだった。
それがいけなかったんだろうな。
手を繋いで瀬尾家の庭を散策する俺と宏樹を見た両親たちは「自分たちの息子同士がくっついたら親戚になれるぞ」という短絡的な考えを持っちゃって、俺と宏樹は初対面から三ヶ月後には婚約することになる。
俺は婚約がどういうものかわからなくて、婚約話が出た時はただ置き物化していたけど、隣に座る宏樹は今思えばすごい変な顔をしていた。
宏樹が小学生のうちはまだ良かった。
定期的にお互いの家に通い、優しく遊んでくれる宏樹は俺にとって婚約者というよりは仲の良い親戚の兄ちゃんって感じだった。宏樹にとっても俺は可愛い弟分だったと思う。
ところが宏樹が中学へ進学すると一変した。
宏樹は俺の家に来なくなり、俺が宏樹の家に約束どおり行っても本人は友人たちと遊ぶために不在ということが続いた。なかなか顔を合わすことすら難しくなり、そういう日々が三年続いたのを見計らって俺は宏樹と会うのをやめた。
親の方針で中高は宏樹と同じ私立の一貫校に進んだのだけど、宏樹はそこで有名人だった。
上位アルファの血筋で眉目秀麗、同級生たちより頭一つ高い身長、鍛えられた肉体、飛び抜けたコミュ力。そして、色んな人たちに教えられた「男女問わず来るもの拒まず去るもの追わず」という、ただれた性関係。
つまり婚約者との約束を破ってまでセックスに勤しんでいたわけだよ。そのことを知った俺は、宏樹に対して「マジきもい」という感想しか持てなかった。
実際に高等部との合同授業なんかに出た時は、宏樹の横にはいつもきれいな女子や男子がぴったりくっついていて、噂は事実なのだと実感した。
両親には早々に宏樹との婚約解消をお願いしたけれど、お互いの家も絡んでの縁談だったからそれは出来なかった。両親には「宏樹くんがまさかそんなことになってるなんて」「婚約は早まったかもしれない」と謝られたが、それでも婚約は解消してもらえなかった。
そして、今に至る。
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