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80. 瀬尾の思惑
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俺は改めて三兄弟をどう思っているのかを考えさせられることになり頭を抱えた。できればこの婚約者候補というか、婚約者というもの自体をやめたいと思っていたのに、だ。
昔から兄は俺を煩わせるものをなるべく排除しようとする傾向がある。その兄がわざわざ俺へ言ってくるのだから、日下も瀬尾も今回ばかりは本気なんだろう。
瀬尾の両親は、小さい頃は俺のことを単純に友人の子供として普通に可愛がってくれていたような気がするが、宏樹と婚約した頃からは自分たちの子供のように接してくるようになった。名前も普通に呼び捨てにするし、何か用事があれば直接俺に連絡だってしてくる。
ただ、日下――俺の両親は、宏樹のことを自分の息子と同じようには接していないのだけど。
(自分の息子といっても最上位アルファとオメガの二人だから、アルファの両親には俺たち兄弟は元々荷が重いのかもしれないな……)
大体、日下と瀬尾の四人は、三人のうち誰と俺を番わせようと思っているのか。
彼らの話を聞く分には、以前は宏樹しかフェロモンが適合しないと認識していたところを、俺がマンションに移り住むようになった頃には尚樹さんたちも適合するとわかっていたはず。一度は尚樹さんに婚約者を変更しようとしていた流れもあったと聞いている。三兄弟の中でなら誰でもいいのか、そうじゃないのか。
『もし俺が誰も選ばなかったら、父さんたちはどうすると思う?』
間髪入れずに既読がついた。
兄の返信を待つ間に、三兄弟について考えてみることにした。
まず尚樹さん。
尚樹さんは、一応幼なじみではあるものの、年が離れていることもあって子供の頃はそれほど交流がなかった。しっかりと付き合うようになったのは、やっぱり就職してからだろう。心理士の資格を生かして就職した先は瀬尾の系列で、そこで尚樹さんが働いていたわけで。
(今思えば、もしかしてわざと尚樹さんのいるところを勧められたんだろうなぁ……)
仕事の面では頼りになる上司だし、同じ職場の人間としてはかなり尊敬している。尊敬はしているのだけど、……それが好きなのかどうか、と聞かれたら、イエスとは答えられない自分がいる。
尚樹さんとしては俺を抱きたいみたいだし、もしかしてそれに応えられないかもと思ったら、婚約者になってもらうには二の足を踏んでしまう。
宏樹。
宏樹は、宏樹だ。初恋の人で、婚約者で、何もかも俺にとって初めてだった相手で。
好きで好きで仕方なくて、それでいて大嫌いな相手。俺が離れれば寄ってくるし、俺が近づけば離れていくイメージだ。
宏樹が抱えていたものを一緒に持ってあげられなかったことが、今は悲しい。もう少し俺たちに会話があれば、きっと今みたいに絡みまくった関係にはきっとならなかったんだと思うと後悔しか湧かない。
今も好きなのかと聞かれたら、好きなんだと思う。でも一緒にいるべきなのかと聞かれたら――わからない。ただ今は元気になってほしいだけで。
ピロンと音がなってスマホの画面が点灯した。
ロック画面には、兄からラインのメッセージが届いた通知が表示されている。
暗証番号を入力してラインから兄とのトーク画面を開いた。
そこには兄の返信が一文だけ。
――瀬尾は、三兄弟全員の子供を真緒に生ませるつもりでいる。
その一文に俺は、今自分が最悪の状況に置かれていることを理解した。
昔から兄は俺を煩わせるものをなるべく排除しようとする傾向がある。その兄がわざわざ俺へ言ってくるのだから、日下も瀬尾も今回ばかりは本気なんだろう。
瀬尾の両親は、小さい頃は俺のことを単純に友人の子供として普通に可愛がってくれていたような気がするが、宏樹と婚約した頃からは自分たちの子供のように接してくるようになった。名前も普通に呼び捨てにするし、何か用事があれば直接俺に連絡だってしてくる。
ただ、日下――俺の両親は、宏樹のことを自分の息子と同じようには接していないのだけど。
(自分の息子といっても最上位アルファとオメガの二人だから、アルファの両親には俺たち兄弟は元々荷が重いのかもしれないな……)
大体、日下と瀬尾の四人は、三人のうち誰と俺を番わせようと思っているのか。
彼らの話を聞く分には、以前は宏樹しかフェロモンが適合しないと認識していたところを、俺がマンションに移り住むようになった頃には尚樹さんたちも適合するとわかっていたはず。一度は尚樹さんに婚約者を変更しようとしていた流れもあったと聞いている。三兄弟の中でなら誰でもいいのか、そうじゃないのか。
『もし俺が誰も選ばなかったら、父さんたちはどうすると思う?』
間髪入れずに既読がついた。
兄の返信を待つ間に、三兄弟について考えてみることにした。
まず尚樹さん。
尚樹さんは、一応幼なじみではあるものの、年が離れていることもあって子供の頃はそれほど交流がなかった。しっかりと付き合うようになったのは、やっぱり就職してからだろう。心理士の資格を生かして就職した先は瀬尾の系列で、そこで尚樹さんが働いていたわけで。
(今思えば、もしかしてわざと尚樹さんのいるところを勧められたんだろうなぁ……)
仕事の面では頼りになる上司だし、同じ職場の人間としてはかなり尊敬している。尊敬はしているのだけど、……それが好きなのかどうか、と聞かれたら、イエスとは答えられない自分がいる。
尚樹さんとしては俺を抱きたいみたいだし、もしかしてそれに応えられないかもと思ったら、婚約者になってもらうには二の足を踏んでしまう。
宏樹。
宏樹は、宏樹だ。初恋の人で、婚約者で、何もかも俺にとって初めてだった相手で。
好きで好きで仕方なくて、それでいて大嫌いな相手。俺が離れれば寄ってくるし、俺が近づけば離れていくイメージだ。
宏樹が抱えていたものを一緒に持ってあげられなかったことが、今は悲しい。もう少し俺たちに会話があれば、きっと今みたいに絡みまくった関係にはきっとならなかったんだと思うと後悔しか湧かない。
今も好きなのかと聞かれたら、好きなんだと思う。でも一緒にいるべきなのかと聞かれたら――わからない。ただ今は元気になってほしいだけで。
ピロンと音がなってスマホの画面が点灯した。
ロック画面には、兄からラインのメッセージが届いた通知が表示されている。
暗証番号を入力してラインから兄とのトーク画面を開いた。
そこには兄の返信が一文だけ。
――瀬尾は、三兄弟全員の子供を真緒に生ませるつもりでいる。
その一文に俺は、今自分が最悪の状況に置かれていることを理解した。
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