31 / 57
第3章 陰謀と裏切り
第29話 裏切りの兆候
しおりを挟む洞窟を抜けたマリアンヌたちは、夜の闇に包まれた森を慎重に進んでいた。持ち帰った書類をしっかりと守りながら、彼女の心には影の組織が残した言葉が重くのしかかる。
「この国の腐敗……いったい何が真実なの?」
リナが小声で問いかけたが、マリアンヌは答えず、ただ前を見据えた。
騎士団に戻ったマリアンヌたちは、すぐに団長室へ向かった。机に広げられた地図と資料の山を前に、エリック団長は深い皺を刻んだ眉をさらに寄せた。
「これが……影の組織の証拠か。」
書類の中身に目を通し、団長は低く呟いた。
「王宮内に協力者がいる可能性が高いということか。」
マリアンヌは頷いた。
「はい。ですが、具体的な名前は記されていません。」
団長は厳しい表情のまま答える。
「調査には慎重を期す必要がある。内部で動きを察知されれば、この証拠も無力化されるだろう。」
報告を終えた後、マリアンヌは廊下でロイとカインに向き直った。
「この書類を調べれば、裏切り者の手掛かりが掴めるかもしれない。でも、誰を信じるべきかが問題だわ。」
カインが腕を組んで答えた。
「団長は信じられるとして、他の騎士団員がどうかは分からない。」
ロイが険しい表情で続ける。
「影の組織がここまで広がってるなら、騎士団内に潜んでる可能性もある。」
リナが不安げに呟く。
「そんな……仲間が裏切り者だなんて……。」
マリアンヌは深く息を吐いた。
「今は慎重に動きましょう。」
その夜、マリアンヌが一人で訓練場に立っていると、背後から足音が近づいた。
「また悩んでいるのか?」
振り返ると、シリウスが立っていた。彼は軽い笑みを浮かべながら剣を肩に担いでいる。
「あなたには関係ないわ。」
冷たく言い放つマリアンヌに、シリウスは興味深そうな視線を向けた。
「王宮内に裏切り者がいると聞けば、誰だって気になるさ。」
マリアンヌは警戒を緩めずに言った。
「何が言いたいの?」
シリウスは近づき、静かに囁いた。
「その書類だけで真実を知ったつもりになるな。表の顔だけを見ていては、本当の敵を見失うぞ。」
シリウスの言葉が耳に残る中、マリアンヌは剣を握り直した。
(本当の敵……それが誰なのか、この目で確かめてみせる。)
彼女の視線の先には、夜空に浮かぶ月が冷たく輝いていた。
0
あなたにおすすめの小説
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
悪意には悪意で
12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。
私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。
ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる