公爵令嬢の選択

つきほ。

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第3章 陰謀と裏切り

第32話 財務局の闇

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 王宮に到着したマリアンヌは、公爵令嬢としての立場を生かし、財務局への出入りを許された。豪奢な内装と整然とした帳簿の山が並ぶその場所は、一見すると平和そのものだったが、彼女の目には不自然な点が多く映った。

「この静けさ……何かが隠されている。」

そう呟きながら、彼女は部屋の隅々を観察した。




 財務局長であるカルトン卿がマリアンヌの前に姿を現した。

「公爵令嬢が財務局に興味をお持ちとは珍しいことですな。」

カルトン卿は親しげな笑みを浮かべながらも、その目は冷ややかだった。マリアンヌは丁寧に挨拶をしながら答えた。

「王宮の財政管理について学びたく、直接お話を伺いたいと思いました。」

カルトン卿は眉を上げ、やや驚いたような表情を見せた。

「それは結構。しかし、財務局の業務は退屈なものばかりですぞ。」




 その後、マリアンヌは案内された帳簿閲覧室で、一部の記録を確認する機会を得た。帳簿に記された数字は一見整然としていたが、彼女は微妙な不一致に気づいた。

「この部分……資金が他国に送られた形跡がある?」

記録を追ううちに、影の組織との関与を示す手掛かりが浮かび上がり始めた。だが、明確な証拠を掴むにはまだ不足している。




 帳簿を閉じた瞬間、マリアンヌは背後に視線を感じた。振り返ると、一人の若い書記官が彼女をじっと見つめていた。

「何かご用ですか?」

マリアンヌが冷静に声をかけると、書記官は一瞬驚いたような表情を浮かべたが、すぐに微笑んだ。

「いえ、ただ……興味深い方だと思いまして。」

その言葉に警戒心を抱きながらも、マリアンヌは笑顔を返した。

「そうですか。ご親切にありがとうございます。」




 その夜、マリアンヌが宿泊している王宮内の部屋に忍び込む影があった。気配に気づいた彼女は、すぐに剣を手にして立ち上がる。

「誰!」

カーテンの影から現れたのは黒装束の男だった。

「財務局に近づくな。それが身のためだ。」

低く囁く声に、マリアンヌは迷うことなく剣を突き出した。だが、男は素早く窓から姿を消した。

「……影の組織がここまで来るなんて。」

彼女は剣を収めながら、胸の奥に広がる緊張を振り払った。




 静まり返った夜の王宮で、マリアンヌは窓の外を見つめた。

(この場所で何が隠されているのか……私は絶対に見つけ出してみせる。)

月の光が彼女の決意を静かに照らしていた。


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