公爵令嬢の選択

つきほ。

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第3章 陰謀と裏切り

第33話 書記官の正体

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 翌朝、マリアンヌは再び財務局を訪れた。目の前に広がる帳簿や記録の山を見ながら、昨夜の出来事が頭を離れない。

「影の組織がここまで近づいている……。」

その考えを振り払うように深呼吸をし、局内を見渡すと、昨日の書記官が彼女の方へ近づいてきた。




 「おはようございます、公爵令嬢。」

彼は爽やかな笑みを浮かべていたが、その目にはどこか緊張の色が見えた。

「おはようございます。早速ですが、財務局の運営について教えていただけませんか?」

マリアンヌは自然な口調で尋ねた。彼は頷きながら、資料室の方へと彼女を案内した。

「ここに保管されている記録がすべてです。ご自由にご覧ください。」

彼の丁寧な態度に違和感を覚えつつも、マリアンヌは書類の山に目を通し始めた。




 しばらくすると、書記官がふと声を潜めて言った。

「ここにある記録だけでは全貌は分かりませんよ。」

マリアンヌは驚き、彼に視線を向けた。

「それはどういう意味ですか?」

彼は窓の外を一瞥し、低い声で続けた。

「この局には隠された記録があります。それにアクセスできるのは限られた者だけ。ですが、いくつかの手掛かりは掴めるかもしれません。」

 マリアンヌは鋭く問い返した。

「なぜあなたがそれを教えてくれるの?」

彼は少しの間沈黙し、それから口を開いた。

「私は、ただ真実を知りたいだけです。」




 書記官に導かれ、マリアンヌは局内の奥まった場所にある小さな部屋に案内された。扉には複雑な錠が施されており、書記官はそれを巧みに解除した。

「ここが秘密の記録室です。ただし、時間はあまりありません。」

マリアンヌが中に入ると、そこには膨大な数の書類と巻物が保管されていた。その中で目を引いたのは、一冊の分厚い帳簿だった。

「これは……?」

彼女が手に取ると、それには影の組織との資金の流れが詳細に記されていた。




 帳簿に夢中になっていると、背後で物音がした。振り返ると、カルトン卿が立っていた。

「ここで何をしている?」

その声は冷たく鋭く響いた。書記官はすぐに頭を下げた。

「公爵令嬢に局内を案内しておりました。」

カルトン卿の目は明らかに彼を疑っていた。マリアンヌは冷静を装いと答えた。

「局内の仕組みを学ぶために、特別に案内をお願いしました。」

 カルトン卿はしばらく二人を睨んでいたが、やがて微笑みを浮かべた。

「公爵令嬢、どうぞご自由にご覧ください。ですが、何か問題があれば、私にお知らせください。」

その言葉に含まれる警告を感じながら、マリアンヌは冷や汗を隠し、微笑みを返した。




 部屋を出た後、マリアンヌは書記官に向き直り、小声で言った。

「あなたは何者なの?」

書記官は少しの間考え込み、それから低く呟いた。

「私の正体を知れば、あなたも危険に巻き込まれる。」

その言葉を残し、彼はその場を立ち去った。

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