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第3章 陰謀と裏切り
第34話 疑惑の渦
しおりを挟む書記官が立ち去った後、マリアンヌはしばらくその場に佇んでいた。
(正体を知れば危険に巻き込まれる……あの言葉の意味は何?)
彼女の中に、書記官への疑念と信頼が交錯する。だが、目の前に広がる闇を明らかにするには、この局内でさらなる手掛かりを掴むしかないと決意した。
翌日、財務局内では小さな騒ぎが起きていた。カルトン卿が厳しい表情で部下たちに指示を出している。
「昨夜の出来事に関して、調査を進める。誰も見逃すな。」
その言葉に、局員たちは緊張した様子で動き始めた。マリアンヌはその光景を静かに観察していたが、カルトン卿の視線が一瞬彼女に向けられた。
「公爵令嬢、ご滞在中は十分に楽しんでください。」
その言葉にはどこか棘が含まれていた。
廊下を歩いていると、書記官がマリアンヌの後ろから声をかけてきた。
「昨夜のことは無事だったようですね。」
彼の声は穏やかだったが、どこか不安げでもあった。
「あなたの正体を教えてくれる気はないの?」
マリアンヌが問い詰めると、彼は少し微笑みながら答えた。
「私はただ、この王国が正しい道を歩むことを願っている一市民です。それ以上でも、それ以下でもありません。」
彼の曖昧な言葉に不満を感じつつも、マリアンヌはさらに問いかけた。
「それなら、なぜ私を助けるの?」
彼は静かに言った。
「あなたが影の組織の本当の姿を暴ける唯一の存在だからです。」
その言葉が意味する重みを感じたマリアンヌは、彼を凝視しながら言った。
「あなたを信じてもいいの?」
彼は微笑みながら静かに頷いた。
「それはあなた次第です。」
その日の午後、マリアンヌは再び帳簿に目を通していた。だが、どの記録も組織とのつながりを確証づけるものではない。
「何か見逃しているはず……。」
そう呟いた瞬間、隣にいた書記官が小さなメモを差し出した。
「これが役に立つかもしれません。」
マリアンヌが受け取ると、それは隠し資産のリストを示すものであった。
「このリスト……これが組織の資金の流れ?」
書記官は頷き付け加えた。
「だが、これだけでは不十分です。このリストに記された場所を調べる必要があります。」
マリアンヌはメモを握りしめ問いかけた。
「場所を調べる手段は?」
書記官はため息をつきながら答えた。
「それを見つけるのは、あなた自身の仕事です。」
夜、マリアンヌが宿泊している部屋に戻ると、窓辺に一枚の紙が置かれていた。
「ここから手を引け。」
その短い警告文を見て、彼女は剣を握りしめた。
(影の組織は、私の動きを完全に把握しているのか……?)
その不安の中で、彼女の決意はさらに固まった。
「どんなに危険でも、この真実を暴いてみせる。」
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