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episode3
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東北宮を守るためにカストルによって施されていた結界魔法。それが今破れた。あの乾いた音は、媒介なども関係なく力ずくで魔法を破った音だ。音を聞きつけ、不審に思った令嬢が薄いレースのカーテンを開け、外の様子を伺っている。その目が、シリウスの姿を捉え。驚いたように瞠られた。
「シリウス?」
慌てた様子で外に出てくる少女に、シリウスは叫んだ。
「ばかやろうっ!来るな!」
耳元で風の音がした。すぐ傍らで、鷹の黒い体躯が視界の隅に掠める。鷹は羽根を広げると、それ目掛けて突進していく。その陰に一対の光が爛々と煌めいている。陽は徐々に傾き、暮れようとしている。今は黄昏。陽が落ちれば、魔獣がもっとも活発になる時刻だ。闇がやってくる。シリウスの全身がざわり、と総毛だった。こごった、異質な瘴気の中暗闇の中にそれはいる。小さく、黒い瘴気が隠して全貌は視えない。だが、カストルの結界を力ずくで破った魔獣。
「――――っ!!」
鷹が、叫んだ。その全身が緑光に煌めき、胸元の翠石が熱を帯びる。その鋭い脚爪で魔獣に飛び掛かるも、間一髪、魔獣はその爪から逃れた。魔獣はそのまま隅から飛び出すと、少女の前へと躍り出て、咄嗟の事態に立ち尽くす少女にそのまま突進した。
「ひっ」
いきなり現れた魔獣に少女は息を呑んで悲鳴を上げて言葉を失う。鷹は、咄嗟に少女に前に出るとその羽根を広げて、少女を庇って身構えた。魔獣は魔力、瘴気を立ち上らせながら一対の目だけをぎらぎらと光らせている。シリウスはようやく、回廊を抜け宮の硝子窓の前までたどり着き、今、まさに飛び掛かってくる魔獣と、鷹と少女の前にその体を滑り込ませた。
杖を構え、空中に魔法陣を描き、唱える。
「アルジムっっ!!」
瞬間、不可視の壁が現れ、鈍い音を立てて、彼らの前に立ちはだかる。壁に弾き飛ばされて魔獣はもんどり打つ。魔獣がまとう瘴気がわずかに薄くなるも、いまだにその全貌は視えない。闇は、ただでさえものを視にくくする。
シリウスは懐に入れてある符を取り出し、気合いもろとも唱え、放った。
「イス、ニイドアンスール…ラーミナ!」
符は、鋭い刃に姿を変え、魔獣へと襲い掛かる。が、魔獣はいきり立ち、その瘴気を大きな翼のようなものに広がっていく。
「きゃぁぁぁあああっっ!!」
少女が悲鳴を上げる。突風が、シリウスの築いた不可視の壁を破り、蛇のように形を変えて、うめいて、彼女へと向かっていく。
シリウスは少女を咄嗟に抱きかかえた。少女は怯えたようにシリウスにしがみつく。
「ベティっ!!」
シリウスが叫ぶと、鷹の金線が煌めき、その体躯から緑の閃光が迸った。それは瘴気の、魔獣の魔力を切り裂いて、蹴散らす。その隙をついて、シリウスは杖を掲げて魔獣へと向ける。
「っ!ルークス…ラーミナっっ!!」
呪文もろとも、杖を振りかざすと絶大な魔力がそのまま光の刃となり、魔獣を包む瘴気を塊を切り裂いた。
「――――っ!」
地の底から轟くような断末魔の絶叫が、鼓膜に突き刺さり、生暖かい風が、辺りに吹きすさぶ高級そうな花瓶や置時計、様々な調度品を倒れ、派手な音が響く。
「シリウス?」
慌てた様子で外に出てくる少女に、シリウスは叫んだ。
「ばかやろうっ!来るな!」
耳元で風の音がした。すぐ傍らで、鷹の黒い体躯が視界の隅に掠める。鷹は羽根を広げると、それ目掛けて突進していく。その陰に一対の光が爛々と煌めいている。陽は徐々に傾き、暮れようとしている。今は黄昏。陽が落ちれば、魔獣がもっとも活発になる時刻だ。闇がやってくる。シリウスの全身がざわり、と総毛だった。こごった、異質な瘴気の中暗闇の中にそれはいる。小さく、黒い瘴気が隠して全貌は視えない。だが、カストルの結界を力ずくで破った魔獣。
「――――っ!!」
鷹が、叫んだ。その全身が緑光に煌めき、胸元の翠石が熱を帯びる。その鋭い脚爪で魔獣に飛び掛かるも、間一髪、魔獣はその爪から逃れた。魔獣はそのまま隅から飛び出すと、少女の前へと躍り出て、咄嗟の事態に立ち尽くす少女にそのまま突進した。
「ひっ」
いきなり現れた魔獣に少女は息を呑んで悲鳴を上げて言葉を失う。鷹は、咄嗟に少女に前に出るとその羽根を広げて、少女を庇って身構えた。魔獣は魔力、瘴気を立ち上らせながら一対の目だけをぎらぎらと光らせている。シリウスはようやく、回廊を抜け宮の硝子窓の前までたどり着き、今、まさに飛び掛かってくる魔獣と、鷹と少女の前にその体を滑り込ませた。
杖を構え、空中に魔法陣を描き、唱える。
「アルジムっっ!!」
瞬間、不可視の壁が現れ、鈍い音を立てて、彼らの前に立ちはだかる。壁に弾き飛ばされて魔獣はもんどり打つ。魔獣がまとう瘴気がわずかに薄くなるも、いまだにその全貌は視えない。闇は、ただでさえものを視にくくする。
シリウスは懐に入れてある符を取り出し、気合いもろとも唱え、放った。
「イス、ニイドアンスール…ラーミナ!」
符は、鋭い刃に姿を変え、魔獣へと襲い掛かる。が、魔獣はいきり立ち、その瘴気を大きな翼のようなものに広がっていく。
「きゃぁぁぁあああっっ!!」
少女が悲鳴を上げる。突風が、シリウスの築いた不可視の壁を破り、蛇のように形を変えて、うめいて、彼女へと向かっていく。
シリウスは少女を咄嗟に抱きかかえた。少女は怯えたようにシリウスにしがみつく。
「ベティっ!!」
シリウスが叫ぶと、鷹の金線が煌めき、その体躯から緑の閃光が迸った。それは瘴気の、魔獣の魔力を切り裂いて、蹴散らす。その隙をついて、シリウスは杖を掲げて魔獣へと向ける。
「っ!ルークス…ラーミナっっ!!」
呪文もろとも、杖を振りかざすと絶大な魔力がそのまま光の刃となり、魔獣を包む瘴気を塊を切り裂いた。
「――――っ!」
地の底から轟くような断末魔の絶叫が、鼓膜に突き刺さり、生暖かい風が、辺りに吹きすさぶ高級そうな花瓶や置時計、様々な調度品を倒れ、派手な音が響く。
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