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世にも奇妙な少女 過去
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「あら、わたくしの曾祖父の妹の話に興味がありますの?」
くすくすとソコロは笑ってアンバーを見ている。
笑顔を貼り付けた筈なのに、どうしてバレた?解せない。アンバーは首を傾げる。
そこへデイブが現れた。
「やぁ。私もいいかな」
にこやかな顔で、デイブが発した言葉はアンバーの耳に柔らかく届いているのに、アンバーはデイブにドス黒いものを感じて嫌な汗をかく。
一連の(大したことではない)アンバーの企みが気づかれたのかしら……と、アンバーは読まなくていい裏を読み始める。たかだか『やぁ。私もいいかな』で。
「デイブ様、この間はありがとう」
「私は何もしてませんよ」
くいっと眼鏡をあげて、ソコロにそっけなくデイブは答えた。
「王太子殿下ですが廃太子されることが決定しました。……残念です」
庭園へ目線を向けていたデイブはそっとティーカップへ目線を移し苦しそうに言った。
「……そう仕方がないわね、いくら魅了がと言っても国庫まで横領していたのですものね」
ソコロもティーカップに視線を落としす。場はお通夜のような暗い雰囲気が漂っている。
横領までもか……アンバーは父の姿を思い浮かべる。
魅了の力のせいなのか、惚れた弱みかは定かではないが、どうも強請られたり願われたりすると断れないようなのだ。だから側から見ると、相手の女性の言いなりになっているように見えてしまう。
実際、父はエルノーラの言いなりだ。どうしよう、エルノーラがアンバーを殺しなさいと命令したら……アンバー身の危険を更に感じる。
「ジョイ嬢ですが、リベラ男爵家の横領や詐欺の証拠が見つかりまして、現在は連なる者として収監されてます」
……これ世にも奇妙な女性が間違いなく絡んでるよね。こんな絶妙な時期に男爵家の罪が発覚するなんて……まさか元々知っていた?……まさかね。
アンバーは考えすぎて、世にも奇妙な女性が、男爵家の罪を捏造したのではないか?と絶対にあり得ないことを考えだし、あげくリベラ男爵家にエルノーラを返品させない為に捏造を……と突飛な発想にまで辿りつこうとしていた。
黙って考え込んだアンバーを、他の三人が面白いものを見る目で注目しているなど、露いささも思わす我に返ったアンバーは三人の視線に驚いた。
「――なっえっ?あっわー」
アンバー、驚きすぎて混乱する。
アンバーが交互に目線を三人に移して挙動不審になっていると、ソコロが別の話を切り出してくれた。
「そう言えば、さっき曾祖父の妹の話をしようとしてましたわね」
くすくすと可憐にソコロは笑った。
場の雰囲気を変えてくれたソコロに、アンバーはこっそり感謝した。
「曾祖父の妹?」
途中参加のデイブが少し首を傾げる。
「ええ。当時の王太子の婚約者で、頭の良い方だったみたいですわ。しかも完璧な淑女と評されていたらしくて、わたくしも会ったこともないのに、幼い頃はよく比べられました。」
ソコロはお茶を一口飲み、話を続ける。
「王太子との仲も良好だったようなのですが、学園で会った女性に王太子が恋慕されたそうで、卒業パーティーで王太子から婚約破棄を宣言されたとか。」
「……それどこかで聞いたことある話ですね」
ジエネッタが訝しげに問う。
「ええ危うくわたくしも、その憂き目に合うところでした。曾祖父の妹は遠い国へ嫁いだそうで、その地で幸せになったそうですわ。」
ふうっと、ソコロは可愛らしい溜め息を吐くと話を続ける。
「その後、その王太子は惚れた女性と結婚したのですが、その女性が礼儀知らずで無知、そして享楽的だったらしく、みるみる国の国庫は傾き、最終的には処刑されたと聞いてます。勿論王太子も廃太子され、北の塔での余生を余儀なくされたとか」
礼儀知らずで無知、あげく享楽的とはエルノーラよ、酷い言われ方ですね。アンバーちょっと遠い目をする。
その女性に会ってみたいですか?会いたいなら伯爵家にいますよ……と言ってみたいが言えないアンバーだった。まぁ、ジエネッタは知ってるし、デイブも薄々は……知らないのはソコロだけだけど。
「あら?わたくしの話をしているのかしら?」
久々の世にも奇妙な女性の登場である。
「今までどこに行ってたんですか!探しましたよ!」
「あら幽霊だって忙しいのよ」
ふふふと世にも奇妙な女性の久々の笑い。……落ち着くのは何故?
アンバーちょっと不思議に思う。
ソコロが口をパクパクして、世にも奇妙な女性の方角を指差している。……これは見えてる?
「えっと、ソコロ様の曾祖父様の妹さんです」
どうにも決まらない紹介だけと、他に紹介の仕様がないのでしょうがない。
「ふふふ、お兄様の玄孫がこんな可愛らしい人で嬉しいわ」
ソコロはやだ声も聞こえる……と、いつも淑女の鏡で平然としてる人が、取り乱す姿がちょっと新鮮だ。
「そうそう、ずっとアンバーちゃんに聞こうと思っていて聞きそびれてましたの。エルノーラの魅了の影響下にない人が伯爵家にいますわよね?」
「シャロームとミミルのことですかね?――確かに、あの二人はエルノーラの魅了に侵されてない……どうして気付かなかったんだろう」
アンバーは唖然とした。エルノーラの魅了の力に戦慄を感じたアンバーは、意識してエルノーラと接触しないようにしてきた。
学園に通っているのもあって、一日位は会わなくて済んだりするが、シャロームとミミルもそうはいかない。同じ屋敷に住み職場にもエルノーラがいる。アンバーなどより、余程接触しているではないか。
「わたくしがエルノーラの魅了の力に畏怖していたとき、お父様とお兄様だけは態度に欠片も変化がありませんでしたの。あの頃は気付きませんでしたが、そこには何か秘密があるのかもと推論しましたのよ。残念ながら父と兄には聞けませんが」
「それはモルガン公爵が、エルノーラと接触しなかったからではなくて?」
「当時のエルノーラの魅了の力は今よりずっと強く、範囲ははっきりとは判断できませんが、王都内は影響下にありましたのよ。接触していなくても些細な変化は感じましたわ」
「とととっとにかく帰ってふふっ二人から話を聞きます」
アンバーはどうしてそれに気付かなかったのかと動揺し慌てふためいて、言葉がうまくでてこない。
立ち上がって先に帰る詫びを皆にし、テラスを去ろうと歩きだしたが、ふと立ち止まり今までいた方へ振り返って、アンバーは世にも奇妙な女性を見る。
え、まてよ?この二人の話を世にも奇妙な女性にしたことあったっけ?
訝しげにアンバーは、世にも奇妙な女性を見る。
ふふふっと笑う世にも奇妙女性
この世にも奇妙な女性、策士である
結局はこの、世にも奇妙な女性に踊らされているのを、アンバーははっきりと自覚した。
くすくすとソコロは笑ってアンバーを見ている。
笑顔を貼り付けた筈なのに、どうしてバレた?解せない。アンバーは首を傾げる。
そこへデイブが現れた。
「やぁ。私もいいかな」
にこやかな顔で、デイブが発した言葉はアンバーの耳に柔らかく届いているのに、アンバーはデイブにドス黒いものを感じて嫌な汗をかく。
一連の(大したことではない)アンバーの企みが気づかれたのかしら……と、アンバーは読まなくていい裏を読み始める。たかだか『やぁ。私もいいかな』で。
「デイブ様、この間はありがとう」
「私は何もしてませんよ」
くいっと眼鏡をあげて、ソコロにそっけなくデイブは答えた。
「王太子殿下ですが廃太子されることが決定しました。……残念です」
庭園へ目線を向けていたデイブはそっとティーカップへ目線を移し苦しそうに言った。
「……そう仕方がないわね、いくら魅了がと言っても国庫まで横領していたのですものね」
ソコロもティーカップに視線を落としす。場はお通夜のような暗い雰囲気が漂っている。
横領までもか……アンバーは父の姿を思い浮かべる。
魅了の力のせいなのか、惚れた弱みかは定かではないが、どうも強請られたり願われたりすると断れないようなのだ。だから側から見ると、相手の女性の言いなりになっているように見えてしまう。
実際、父はエルノーラの言いなりだ。どうしよう、エルノーラがアンバーを殺しなさいと命令したら……アンバー身の危険を更に感じる。
「ジョイ嬢ですが、リベラ男爵家の横領や詐欺の証拠が見つかりまして、現在は連なる者として収監されてます」
……これ世にも奇妙な女性が間違いなく絡んでるよね。こんな絶妙な時期に男爵家の罪が発覚するなんて……まさか元々知っていた?……まさかね。
アンバーは考えすぎて、世にも奇妙な女性が、男爵家の罪を捏造したのではないか?と絶対にあり得ないことを考えだし、あげくリベラ男爵家にエルノーラを返品させない為に捏造を……と突飛な発想にまで辿りつこうとしていた。
黙って考え込んだアンバーを、他の三人が面白いものを見る目で注目しているなど、露いささも思わす我に返ったアンバーは三人の視線に驚いた。
「――なっえっ?あっわー」
アンバー、驚きすぎて混乱する。
アンバーが交互に目線を三人に移して挙動不審になっていると、ソコロが別の話を切り出してくれた。
「そう言えば、さっき曾祖父の妹の話をしようとしてましたわね」
くすくすと可憐にソコロは笑った。
場の雰囲気を変えてくれたソコロに、アンバーはこっそり感謝した。
「曾祖父の妹?」
途中参加のデイブが少し首を傾げる。
「ええ。当時の王太子の婚約者で、頭の良い方だったみたいですわ。しかも完璧な淑女と評されていたらしくて、わたくしも会ったこともないのに、幼い頃はよく比べられました。」
ソコロはお茶を一口飲み、話を続ける。
「王太子との仲も良好だったようなのですが、学園で会った女性に王太子が恋慕されたそうで、卒業パーティーで王太子から婚約破棄を宣言されたとか。」
「……それどこかで聞いたことある話ですね」
ジエネッタが訝しげに問う。
「ええ危うくわたくしも、その憂き目に合うところでした。曾祖父の妹は遠い国へ嫁いだそうで、その地で幸せになったそうですわ。」
ふうっと、ソコロは可愛らしい溜め息を吐くと話を続ける。
「その後、その王太子は惚れた女性と結婚したのですが、その女性が礼儀知らずで無知、そして享楽的だったらしく、みるみる国の国庫は傾き、最終的には処刑されたと聞いてます。勿論王太子も廃太子され、北の塔での余生を余儀なくされたとか」
礼儀知らずで無知、あげく享楽的とはエルノーラよ、酷い言われ方ですね。アンバーちょっと遠い目をする。
その女性に会ってみたいですか?会いたいなら伯爵家にいますよ……と言ってみたいが言えないアンバーだった。まぁ、ジエネッタは知ってるし、デイブも薄々は……知らないのはソコロだけだけど。
「あら?わたくしの話をしているのかしら?」
久々の世にも奇妙な女性の登場である。
「今までどこに行ってたんですか!探しましたよ!」
「あら幽霊だって忙しいのよ」
ふふふと世にも奇妙な女性の久々の笑い。……落ち着くのは何故?
アンバーちょっと不思議に思う。
ソコロが口をパクパクして、世にも奇妙な女性の方角を指差している。……これは見えてる?
「えっと、ソコロ様の曾祖父様の妹さんです」
どうにも決まらない紹介だけと、他に紹介の仕様がないのでしょうがない。
「ふふふ、お兄様の玄孫がこんな可愛らしい人で嬉しいわ」
ソコロはやだ声も聞こえる……と、いつも淑女の鏡で平然としてる人が、取り乱す姿がちょっと新鮮だ。
「そうそう、ずっとアンバーちゃんに聞こうと思っていて聞きそびれてましたの。エルノーラの魅了の影響下にない人が伯爵家にいますわよね?」
「シャロームとミミルのことですかね?――確かに、あの二人はエルノーラの魅了に侵されてない……どうして気付かなかったんだろう」
アンバーは唖然とした。エルノーラの魅了の力に戦慄を感じたアンバーは、意識してエルノーラと接触しないようにしてきた。
学園に通っているのもあって、一日位は会わなくて済んだりするが、シャロームとミミルもそうはいかない。同じ屋敷に住み職場にもエルノーラがいる。アンバーなどより、余程接触しているではないか。
「わたくしがエルノーラの魅了の力に畏怖していたとき、お父様とお兄様だけは態度に欠片も変化がありませんでしたの。あの頃は気付きませんでしたが、そこには何か秘密があるのかもと推論しましたのよ。残念ながら父と兄には聞けませんが」
「それはモルガン公爵が、エルノーラと接触しなかったからではなくて?」
「当時のエルノーラの魅了の力は今よりずっと強く、範囲ははっきりとは判断できませんが、王都内は影響下にありましたのよ。接触していなくても些細な変化は感じましたわ」
「とととっとにかく帰ってふふっ二人から話を聞きます」
アンバーはどうしてそれに気付かなかったのかと動揺し慌てふためいて、言葉がうまくでてこない。
立ち上がって先に帰る詫びを皆にし、テラスを去ろうと歩きだしたが、ふと立ち止まり今までいた方へ振り返って、アンバーは世にも奇妙な女性を見る。
え、まてよ?この二人の話を世にも奇妙な女性にしたことあったっけ?
訝しげにアンバーは、世にも奇妙な女性を見る。
ふふふっと笑う世にも奇妙女性
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