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4話 初めての階層主
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「ぶ、も、ぶもおぉ……」
息を切らしながら発する低い呻き声、3mほどの巨体、赤く見るからに分厚い皮膚、研磨したのかと疑ってしまうくらい尖った2本の角は血で汚れている。
考えたくはないけど、こいつ人間を殺したばかりか?
「はは……。アルミラージなんかとは比較にならないな。こっえぇ」
「はぁ、はぁはぁ……。そ、そりゃああいつ怒り心頭だからな。寝込みを襲ったのが悪かったのか、それともこの尻尾が原因か、とにかく『手駒』を準備する時間はない。あいつ、自分が疲れてるからって俺たちが自分に害のない、つまりは喋ってるこの時間はのそのそ動いているが、逃げようとしたり、スキルや魔法を発動させようとすればまた勢いよく襲ってくるつもりだ。というか馬鹿だぞ、お前。なんで俺なんかと合流したんだよ」
「あ、足が竦んで」
ミノタウロス。
その姿をとらえてから俺の身体は金縛りにあったかのように硬直。
そこそこ距離はあったはずなのにいつの間にか男と合流してしまった。
それだけミノタウロスの放つプレッシャーは凄い。
「まぁあんなしょぼいステータスだったら分からんでもないけど。……はぁ。『召喚師』って職業柄俺もあんまり直接殴り合うってのは苦手なんだけど……。生き残るにはこれしかない、か。おいうすのろ! ここらで決着付けてやるよ」
男はここまで階層主を連れてきてしまったことに罪悪感を感じているのかミノタウロスのもとに突っ込んでいった。
流石にあの難関試験を突破しただけあって、まだまだその動きは軽快でスタミナもありそうだが……
「ぶもっ!」
「は、っや! やっぱ俺、向いてねえって!」
ミノタウロスはそんな男の動きに動じることなく、的確にその手に持つこん棒を振るう。
男はそれをギリギリのところで躱しているように見えるが、服は破れ、肌には切り傷が。
攻撃に転じる余裕はなく、このままだと男はいつか殺される。
そう悟った瞬間だった。
ミノタウロスが男ではなく俺を見たのだ。
「ぶ、も……。ぶもおおおおおおおおおお!!」
「な、に?」
「もしかしてパッシブスキルのせい、か?」
攻撃を止め、俺のもとに向かってくるミノタウロス。
男はそれを引き留めようとしたが、無駄に終わる。
そして恐怖心で固まる俺にミノタウロスの角がだんだんと近づき、俺の身体を貫き……はしない。
「ぶも?」
「おいおいおい! マジかよ……。一体どうなってんだ?」
「痛いけど……た、助かった」
ミノタウロスの攻撃によって尻もちをつかされはしたものの、致命傷には至らなかった。
痛みの度合いを例えるなら突き指した時くらいかな。
スライム食っといて本当に良かった。
「これなら……。おい! ここから俺とお前、2人で逃げられるよう特別に1匹召喚してやる! それまで時間を稼いでくれ!」
「え? それって……」
「ミノタウロスの尻尾を触媒に召喚を発動……召喚まで残り10分」
その場に座り込んだと思えば目を閉じて動かなくなった男。
ミノタウロスはそんな男に目もくれず、今度はこん棒を使って俺に攻撃を仕掛けてきた。
「ぶもおおおっ!」
「よし! もう、戦える!」
攻撃を喰らっても死なないという安心。
それが俺から恐怖心を払拭してくれ、今度は容易に攻撃を躱すことができた。
レベルが上がったからなのか、身体は軽く感じるし、むしろ今まで以上に冷静に戦闘ができているかもしれない。
思えばさっきまでの戦闘は全てごり押しでどうしようもないものだった。
だけど俺だって10年間鍛えに鍛えて、素の運動能力は高いはず。
冷静になればこれくらいできて当然だ。
「喰らえ!」
「ぶも!?」
ミノタウロスの動きはよく見れば単調で読みやすい。
俺は隙をついてミノタウロスの脇腹にさっきまで食事用で使っていたサバイバルナイフを突き刺した。
戦闘用の武器として配布された剣もあるが、あれは俺には重すぎて、特にこういったスピードを求められる戦闘に使うことはできそうにない。
やっぱり俺にはこのナイフくらいコンパクトなものが武器として都合がいいらしい。
「――ぶもぉおおぉぉっ!」
「はぁはぁはぁ! こん棒はもう当たらない! それに、その角も! だから、もうあきらめろって!」
ちくちくちくちくサバイバルナイフでダメージを与えているはずなのに、ミノタウロスの攻撃は止まらない。
興奮のせいでもう自分が疲れていることすら忘れているのか?
ともあれ、これがまだまだ続くようなら今度は俺のスタミナが切れて……攻撃力がまだ低いせいで俺はやられる。
俺のスタミナ切れが先か、ミノタウロスの絶命が先か……。
「そんなチキンレース……。くそ! こいつ、早くくたばれって――」
「料理の奴! これで2人とも逃げれるぞ! 召喚レベル3……亜人種!」
俺がミノタウロスにもう一撃入れようとした時、とうとう座り込んでいた男は口を開き……その足元に魔法陣を映した。
息を切らしながら発する低い呻き声、3mほどの巨体、赤く見るからに分厚い皮膚、研磨したのかと疑ってしまうくらい尖った2本の角は血で汚れている。
考えたくはないけど、こいつ人間を殺したばかりか?
「はは……。アルミラージなんかとは比較にならないな。こっえぇ」
「はぁ、はぁはぁ……。そ、そりゃああいつ怒り心頭だからな。寝込みを襲ったのが悪かったのか、それともこの尻尾が原因か、とにかく『手駒』を準備する時間はない。あいつ、自分が疲れてるからって俺たちが自分に害のない、つまりは喋ってるこの時間はのそのそ動いているが、逃げようとしたり、スキルや魔法を発動させようとすればまた勢いよく襲ってくるつもりだ。というか馬鹿だぞ、お前。なんで俺なんかと合流したんだよ」
「あ、足が竦んで」
ミノタウロス。
その姿をとらえてから俺の身体は金縛りにあったかのように硬直。
そこそこ距離はあったはずなのにいつの間にか男と合流してしまった。
それだけミノタウロスの放つプレッシャーは凄い。
「まぁあんなしょぼいステータスだったら分からんでもないけど。……はぁ。『召喚師』って職業柄俺もあんまり直接殴り合うってのは苦手なんだけど……。生き残るにはこれしかない、か。おいうすのろ! ここらで決着付けてやるよ」
男はここまで階層主を連れてきてしまったことに罪悪感を感じているのかミノタウロスのもとに突っ込んでいった。
流石にあの難関試験を突破しただけあって、まだまだその動きは軽快でスタミナもありそうだが……
「ぶもっ!」
「は、っや! やっぱ俺、向いてねえって!」
ミノタウロスはそんな男の動きに動じることなく、的確にその手に持つこん棒を振るう。
男はそれをギリギリのところで躱しているように見えるが、服は破れ、肌には切り傷が。
攻撃に転じる余裕はなく、このままだと男はいつか殺される。
そう悟った瞬間だった。
ミノタウロスが男ではなく俺を見たのだ。
「ぶ、も……。ぶもおおおおおおおおおお!!」
「な、に?」
「もしかしてパッシブスキルのせい、か?」
攻撃を止め、俺のもとに向かってくるミノタウロス。
男はそれを引き留めようとしたが、無駄に終わる。
そして恐怖心で固まる俺にミノタウロスの角がだんだんと近づき、俺の身体を貫き……はしない。
「ぶも?」
「おいおいおい! マジかよ……。一体どうなってんだ?」
「痛いけど……た、助かった」
ミノタウロスの攻撃によって尻もちをつかされはしたものの、致命傷には至らなかった。
痛みの度合いを例えるなら突き指した時くらいかな。
スライム食っといて本当に良かった。
「これなら……。おい! ここから俺とお前、2人で逃げられるよう特別に1匹召喚してやる! それまで時間を稼いでくれ!」
「え? それって……」
「ミノタウロスの尻尾を触媒に召喚を発動……召喚まで残り10分」
その場に座り込んだと思えば目を閉じて動かなくなった男。
ミノタウロスはそんな男に目もくれず、今度はこん棒を使って俺に攻撃を仕掛けてきた。
「ぶもおおおっ!」
「よし! もう、戦える!」
攻撃を喰らっても死なないという安心。
それが俺から恐怖心を払拭してくれ、今度は容易に攻撃を躱すことができた。
レベルが上がったからなのか、身体は軽く感じるし、むしろ今まで以上に冷静に戦闘ができているかもしれない。
思えばさっきまでの戦闘は全てごり押しでどうしようもないものだった。
だけど俺だって10年間鍛えに鍛えて、素の運動能力は高いはず。
冷静になればこれくらいできて当然だ。
「喰らえ!」
「ぶも!?」
ミノタウロスの動きはよく見れば単調で読みやすい。
俺は隙をついてミノタウロスの脇腹にさっきまで食事用で使っていたサバイバルナイフを突き刺した。
戦闘用の武器として配布された剣もあるが、あれは俺には重すぎて、特にこういったスピードを求められる戦闘に使うことはできそうにない。
やっぱり俺にはこのナイフくらいコンパクトなものが武器として都合がいいらしい。
「――ぶもぉおおぉぉっ!」
「はぁはぁはぁ! こん棒はもう当たらない! それに、その角も! だから、もうあきらめろって!」
ちくちくちくちくサバイバルナイフでダメージを与えているはずなのに、ミノタウロスの攻撃は止まらない。
興奮のせいでもう自分が疲れていることすら忘れているのか?
ともあれ、これがまだまだ続くようなら今度は俺のスタミナが切れて……攻撃力がまだ低いせいで俺はやられる。
俺のスタミナ切れが先か、ミノタウロスの絶命が先か……。
「そんなチキンレース……。くそ! こいつ、早くくたばれって――」
「料理の奴! これで2人とも逃げれるぞ! 召喚レベル3……亜人種!」
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