最速レベルアップはダンジョン飯バフで!~ハズレスキル《料理強化》が実は経験値取得量増加のバフが可能な最強スキルでした!~

ある中管理職

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5話 亜人

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「ぶも?」
「これは?」
「頼むから当たりきてくれよ……。召喚の枠は無限じゃないんだからよ」

 男の声と魔法陣が発する光に釣られて、ミノタウロスは俺から視線を外した。

 そしてそれに危機感を感じたのか慌てて男に攻撃を仕掛けようとする。

 だが男は顔色を変えることも逃げることもしない。

「俺が逃げきれるまで命を賭してでもこいつを食い止めろ! もし無事にそれを達成できたのであれば、お前の願いは1つ叶えられるぞ」
『ふーん。なら自由をもらおうかしら。私本来は仕える相手を自分で決めたい主義だから』
「めんどい奴が当たっちまったか? だが、その程度で済むなら好都合だ。今までの奴は血だの魔力だの弱いくせに面倒なもんばっかりねだってきたからな。そういう点でお前は最高の肉壁……ま、当たりって言って良さそうだ」
『……。私の願いは間違ってなかったみたいね。……。契約は無事締結。それじゃあそろそろ顕現させてもらおうじゃない』
「ぶもおおおおおおおおおおおおっ!!」

 姿は見えないが聞こえる女性の声。
 しかしミノタウロスはそんな声を無視してこん棒を振り下ろす。

「つっ……」

 俺は男が潰されてしまう姿を想像してしまい、咄嗟に目を瞑った

 だが肉の潰れる音も血の飛び散る音も聞こえてはこない。
 聞こえてきたのはコーンという硬いもの同士がぶつかったときの少し高めの打撃音だけ。

 俺はその音の正体を確かめるためにゆっくりと目を開ける。

 すると……。

「私が召喚によってこの世界に顕現された亜人。『獣人族:雌牛型』のミーク。それじゃあ早速願いのために一仕事させてもらうけど……。いきなりハード過ぎる相手ね。力量は五分ってとこかしら」

 頭に生えた2本の角でこん棒を受け止める女性の姿があった。

「亜人……。あれが……」

 亜人はこの世界とは別の世界、異世界に存在しているらしく度々その召喚が確認されている。
 異世界だとその扱いがひどいのか、基本的に怯えていることが多いらしく、召喚者に対して強気な態度をとることはないと学んでいたけど、こういうタイプもいるんだな。

 ダンジョンで取れる資源などの情報流出を抑えるために、普通亜人の召喚が行われた際には口止めを要求することが義務付けられているのだが、命を最優先した男はそれを無視。
 それどころか、自由にするなんていう契約を結んでしまった。

 それでも怯え、服従しやすい個体なら問題はなかったのかもしれないが……これは大目玉を喰らうことになるだろうな。

「気を付けろ! あの角で前に召喚した奴らは全員串刺しにされたんだ!」
「串刺し……。なるほどね、あなたぽんぽん召喚してはそうやって……。はぁ。人間というのはどうしてこう私たちを……。まぁいいわ。とにかく私が押さえつけている内に逃げなさい!」

 ミークは角でこん棒を振り払い、俊敏な動きでミノタウロスを撹乱。

 豊満な身体や、やんちゃに見える口ピアスからは想像できないような華麗な身のこなしだ。

「だけど、ミノタウロスの奴、なにか様子が……。……。ミノタウロスの奴あんな色だったか?」
「おい! わざわざ召喚の枠を1つ使ってんだ! さっさと逃げるぞ!」

 そんな戦闘に目を奪われていると、いつの間にか俺のもとまで移動を完了させていた男が俺の背中を叩いてきた。
 もとはといえば『お前が階層主をこんなところまで連れてきたのが原因なんだろ』と、言葉が漏れそうになるが、今は口論なんかしている場合じゃな――

「きゃああああああああああああああああっ!!」
「おい! お前の亜人、ミークさんが――」
「振り返るな! 弱かったあいつが悪いだけだ! それに亜人なんて結局のところモンスターと変わらない――」

 闘争を開始しようとしたその脚を俺は止め、男の言葉を無視して振り返る。

「はは……。なるほどね。俺が10年間試験に受からなかった理由。それってこういうを性格をその度に見抜かれてたからなのか」
「馬鹿! 悪いがここからはお前の責任。俺は逃げるからな!」

 男の脚は止まることなく、その足音はどんどんと遠くなる。

「本当に馬鹿だ、俺。でも、ちょっとこんな自分い酔ってたりもする……。おい! お前の相手は俺だろ? 第2ラウンドと行こうぜ!」
「ぶも?」
「人間……。な、んで?」
「女性一人残して逃げるなんてできない性格。それに、きっとこいつはいい経験値になるからな!」

 ミノタウロスの攻撃を受けて地面に這いつくばる亜人、ミークに軽く返事をしてやると俺は色が濃くなったミノタウロスにサバイバルナイフで切り掛かった。

 しかし、ミノタウロスはさっきよりも素早い動きで攻撃を躱すと俺の腹にこん棒をぶち込んできた。

 これだけの素早さとなると、避けるのは最早不可能。
 正面からの殴りが始まってしまった。

 そして……。



「――う、ぐっ! うらぁぁあぁぁあぁぁっ!」
「ぶもぉぉあおあおぁお!」
「人間のくせに……。なによ、かっこいいじゃない。ふふ……。よくやったわ人間、あなたの勝ちよ」

 ミノタウロスの攻撃を受ける、カウンターでサバイバルナイフを数回突き刺す。
 これを繰り返すだけの血みどろで泥沼の耐久戦が10分ほど続いた時だった。

「契約終了。私はこれで自由。だから……あいつのステータスに依存した状態から解放されて、スキルもステータスも元通り。いくら頑丈でももう無駄なんだから。『貫通角(ブレイクホーン)』」

 ミークは身体をよろめかせるミノタウロスを背後からその黒く、そして肥大化した角で貫いて見せたのだった。
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