Santa is…

Atelier Sfida

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サンタさんってね…

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クリスマスが近づいたある日、
学校の教室で、

「サンタさんってね、本当は…」

と、サンタクロースの話になった。


みんなが言うには、サンタクロースはいなくて、
お父さんがサンタクロースのふりをしているのだそうだ。
なおプレゼントは、お母さんが情報を仕入れて
それをお父さんに伝えて、買って来てもらうらしい。


「だから、サンタクロースはいないの!」


釈然としなかった私は、サンタの絵を見せた。


「じゃあ、この白いお髭を生やしたおじいさんは誰?」

「サンタクロース」

「サンタクロースはいないんでしょ?」

「いないよ!」

「じゃ、この人は?」

「サンタクロース」

「でもサンタさんは…」

「だからサンタさんは、くうそうの人なの!」


意味わかんない。


***   ***


家に帰るとお母さんに聞いてみた。


「サンタクロースっているの?」

「いるわよ」



びっくりした。

即答だった。



「え?いるの?どこに?」

「ラップランド」

「らっぷらんど?」

「サンタさんが住んでいるところよ」

「じゃ、そこへ行けばサンタさんに会えるの?」

「会えるわよ」

「本当!?」

「本当よ」

「なんで知ってるの?」

「会ったことあるんですもの」

「会ったことあるの!?」

「あるわよ」


お母さんはニヤリと笑っていた。


***   ***


あれから10年


ここはフィンランド
ラップランド地方 ロヴァニエミ


サンタクロースの住む村に、私はやって来た。


村のあちこちでは
サンタクロースのグッズがたくさん売っている。

ちょっと思い描いていたのと違う。


***   ***


『Santa Claus office』


ここに、サンタクロースがいるらしい。

一つ大きく息を吸って、ドアを叩いた。

中に入ると、大きな身体のおじいさんが

大きな椅子に座っていた。


「あ、サンタクロースだ。」


サンタに会った最初の一言がそれだった。

もっとこう、ワクワク、ドキドキすると思ってたのに
ただのサンタのコスプレをしているおじいさんにしか見えない。

「クリスマスじゃないと、こんな感じなのかな…」

私は作り笑いを浮かべながら


「Hi. Mr. Santa Claus, Nice to meet you. 」


と挨拶をした。


「あなたは日本人ですね」


え?


「あ、はい」

「ようこそ、サンタクロースの村へ!」


そういえば
サンタさんは世界中の言葉を話せるんだった。


「ええ、私は世界中の言葉を話せます。
世界中の子供たちから、手紙をもらって
プレゼントを用意しなくてはいけませんからね」


まるで私の心の中を読んでいるかのようだ。


「サンタクロースがいるって、
信じてもらえましたか?」


そうなのだ。

あの日からずっと


「サンタに会ってみたい」


そう思っていて、サンタクロースに会うために
はるばるここまでやって来たのだ。


「ええ。お会いできて嬉しかったです」


なんか、心がこもってないな。

やっぱりサンタクロースは
クリスマスに会わないと、実感がわかないのかも。


「良かった!」


サンタが近寄って来て、私の手を握った。


その瞬間


ものすごいエネルギーが
体に伝わって来た。

とても優しい、とても暖かなエネルギーだった。


「今度は、クリスマスに会いましょう」


サンタクロースはニッコリ笑った。
私はなぜか、涙を流していた。


***   ***


それからまた10年。


結婚して子供が出来て
毎年クリスマスが来るのを楽しみにしていた夫が
今、目の前で悩んでいる。

原因は息子からの手紙だ。


「本物のサンタさんに会いたい、か…」


本物のサンタさんに会いたい。
それ以外のことは書かれていなかった。

「今年は何をお願いしたの?」

私も尋ねてみたが、何も答えてくれなかった。



そしてクリスマス・イヴ



ツリーも飾った。
料理も頑張って作った。
ケーキも食べた。
でもプレゼントがない。


息子は笑顔で自分の部屋に入って行った。

苦笑いを返す夫。


「欲しいものが書いてないのに、勝手に買えないだろ?」


真面目な人だ。


「さて、どうするか」


私たちは途方にくれていた。



その時だった。


窓を叩く音が聞こえた。


カーテンを開けるとそこに
見覚えのある顔の人が立っていた。


「こんばんは。
私を、覚えていますか?」

「もちろんです!」


その人は大きな箱を抱えて家に入ると
それを持って息子の部屋に行き
枕元にそれを置いた。

私は急いでミルクを温めて、クッキーを渡した。
彼は美味しそうにそれを口にした。


「あの時の約束、覚えていてくれたんですか?」

「ええ。少々時間がかかってしまいましたが
約束が果たせて良かったですよ」


夫はキョトンとしている。


「本物のサンタに会いたがったんだって?」

「ええ」

「サンタを信じていれば、いつか必ず会えますよ。
なぜなら…」


そうですとも。

私はもう2回もサンタに会っているんだから。



去り際、彼が私にこう言った。


「君たちにもプレゼントがあるんだ。
楽しみにしているといいよ」


そしてウィンクして出て行った。


「私たちにもプレゼントがあるって。何だろう」


***


翌朝


「本物のサンタさんに会った!」


息子の元気な声で起こされた。


「やっぱり本当にサンタさんはいたんだよ!」


夢の中で会えたのかな?
うんうん、本当にいますよ。



その時だった。



「あれ、この感じ…」




ああ


これが私たちへの、クリスマスプレゼント!


夫にこのことを伝えると
少しびっくりした後
優しく抱きしめてくれた。


***   ***


あのね

サンタさんって、本当にいるのよ。

これからあなたにも、サンタさんのこと

たくさん教えてあげる。

会えるのを、楽しみにしているね。
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