ここタマ! ~ここは府立珠河高等学校~

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スキー講習学校四日目 最終日 ~高い理想と志⁈~

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 スキー講習旅行四日目は講習最終日で午前中、スキーを楽しんでから帰路に着くという予定になっていた。
「ここでの時間も午前中だけになっちゃったけど、静香たちはお昼までどうする予定?」
 朝食のテーブルを囲みながら優子が別働班の静香にスケジュールを訊ねる。
「今日はみんながスキーをしている間に、先輩たちとお蕎麦屋さんに行ってると思う」
 そんな静香に優子が「お蕎麦屋さんって昨日の夜、みんなで行ったのに?」と不思議そうな表情を浮かべた。
「確かに行ってお蕎麦を食べたけど、私が食べたの山菜蕎麦だったでしょ?」
「うん」
「今日はザル蕎麦を食べようと思って」
 静香のそんな考えを聞いて香奈子が「そんなにお蕎麦好きだったっけ?」と尋ねる。
「大好物って程では無いけど、昨日の夜、先生言ってたじゃない――ここの蕎麦は冷たい方が美味いんだって」
「あ~、なんかそんな事、言ってましたね」
 夕食後は自由行動OKの時間だったので、生物部のメンバーはこのスキー場周辺の名産である蕎麦を食べに行ったのだが、蕎麦の注文をしてから、そこで先に来て酒盛りをしていた教師たちにここの蕎麦は冷たい方が美味しいという事を教えられたのである。
「そう言う事は注文する前に言えっていうの」
 要するに静香はその美味しいと教えられた蕎麦を昨夜食べそこなったので、今日、リベンジするつもりらしい。
「朝食の後にお蕎麦なんて、静香先輩も結構食べる方なんですね?」
 渉の問いに静香は「お蕎麦はヘルシーだから別腹」とすまし顔で応える。
「スイーツが別腹ってのはよく聞くけど、蕎麦が別腹ってのは初めて聞いたわ」という古谷に、静香は「うどんなんかに比べたらカロリーは低いし、お蕎麦はポリフェノールの一種であるルチンが豊富だから体にも美容にもいいんだから」と笑う。
「僕は関西人やから、蕎麦よりうどんの方が好きやけどなぁ」
「麺類と言っても別物なんだから、比べるのはちょっと違う気もするけど」
 小首を傾げる静香に香奈子が頷く。
「比べるなら、うどんカテゴリーの中でよね――私はコシのある讃岐うどんより関西風の柔らかいおうどんが好きなんだけど…」
「え~、私は絶対讃岐うどんですぅ。冷凍食品の讃岐うどんなんか滅茶苦茶美味しいじゃないですか」
 讃岐うどん派のあおいも加わり、そこからきしめんや素麺といった麺類についての話に花が咲く。
「ほんま、みんな麺類好きやなぁ」
 話が止まらなくなっている女子たちの会話を聞きながら古谷が半分呆れたように言う。
「おうどんとかラーメンなんかの美味しいお店なら、また行きたくなるじゃない?」
 静香のそんな言葉に古谷は「僕は昨夜の蕎麦屋の帰りに寄った喫茶店にまた行きたいわ」と言うと、「洋風の囲炉裏テーブルが雰囲気ありましたよね」と渉が頷いた。
 古谷が言っているのは蕎麦屋近くにある煉瓦作りの建物の喫茶店で、店の真ん中に煉瓦の囲炉裏テーブルがあり、そこでお茶を飲みながらゆっくり薪の炎の揺らめきを楽しむ事ができるお店であった。
「ジャズが流れていて大人の隠れ家みたいでカッコよかったわ」
 落ち着いた渋い雰囲気が古谷は気に入ったらしい。
「確かにデートとかで彼氏とゆっくり雰囲気とお茶を楽しみたいお店ではあるわね」
 地元には無い雰囲気の喫茶店であるのは静香も認める所であった。
「お蕎麦屋さんと喫茶店、お土産物屋さんぐらいしか行けなかったけど、他にもいろいろ素敵な場所ありそうですね」というあおいに、静香は頷く。
「先輩たちとお詣りにいった神社は信州ではかなり有名な神社だし、可愛らしいペンションが立ち並ぶ場所なんかもあって、そのペンションでオリジナルのスイーツも楽しめるって先輩が言ってたわよ」
 別働体の静香は、みんながスキーを楽しんでいる間に他の場所に出かけているので、この周辺の情報をいろいろ知っていた。
「来年も参加して、他の場所も探索しようっと」
 あおいがそう言って無邪気な笑顔を浮かべる。
「私たちは来年は三年だから参加資格ないからなぁ…」
 残念そうな香奈子に優子が「木下先生の奥さんみたいに、うちの学校の独身の先生と結婚したらまた来れるじゃない」と笑う。
「ここに来る為だけで先生と結婚するなんてありえない~」
 笑いながら否定する香奈子の意見に静香が大きく頷く。
「お付き合いならともかく、結婚相手を選ぶ条件がここに来る為だけなんて条件低過ぎよ――結婚相手を選ぶならもっと理想と志は高い人でないと…」
「たとえば?」
「正直で嘘がつけない人で、夢に向かって突き進むタイプ。それにリーダーシップがある人ならいう事ないわね」
「へぇ…地位とかお金じゃないんだ」
 意外そうな顔で優子が静香を見る。
「地位やお金では本当の愛は買えないわ――愛は二人で築き上げて行くもの、私の人生のパートナー対等な立場の相棒であってほしいの」
 そんな静香の考えを聞いた渉が「静香先輩の条件だと藤木先輩も該当しますね」と笑った。
「ちょ…どうしてそうなるのよ」
「だって藤木先輩って馬鹿正直で夢に向かって猪突猛進、すぐ人の上に立ちたがる人ですし…」
「確かにそやな」
 渉の言葉に古谷が噴き出して同意する。
「冗談じゃないわよ!」
 抗議の声を上げる静香の声を聞きながら優子が「あの人は人の上に立ちたがるけど、リーダーシップが無いから人望があるとはいえないわよ?」と冷静に指摘する。
「…」
 反論できなくなった渉を見たあおいが思わず吹き出す。
「悪口じゃないけど、ひどい言われ様ですよね――藤木先輩って」
「こんな所でまで話題にされるんやから、やっぱりタダ者やないかもなぁ」
 そう言いながら古谷も笑っているのだから、その言葉に説得力などあるはずもなかった。
――藤木先輩って…
 真面目な人ではあるが、キャラクター的に尊敬を集められない可哀想な先輩を思いつつ、自分はそうならないようにしなければと思う渉であった。

 スキー講習学校最終日は実力別クラスでの行動ではあったが、講習ではなく実力に合わせたコースを滑って楽しむといった趣向となった。
「今日はまた雪雲が出てるなぁ…」
 リフトに揺られたいた優子が空を眺めて心配そうに呟きを漏らす。
「ほんまや。来る時の空みたいな色してるなぁ」
 優子と同じリフトのペアシートに腰かけていた古谷も空を見上げて、表情を曇らせる。
「帰りも大雪で高速道路が通行止めとかになったらかなわんなぁ」
「とりあえず、大阪に戻るまでひどくならない事を祈るわ」
「そやな」
 年の瀬なので実家に帰省する人たちと重なる事もあって、ここにきて大寒波が再び襲来して高速道路が通行止めになれば、来た時以上の大渋滞が発生するのは間違いなかった。
「…あ、降って来た」
 雪が舞い始め、スキーウエアーや手袋の上に雪が付く。気温が低いからか雪は解ける事無く、肉眼でも様々な形をした結晶の形が観察する事が出来た。
「雪の結晶ってほんとキレイよね」
「繊細で精密やし、自然が作り出す芸術品やもんな」
「大阪だと暖かいから溶けちゃって、ここまで綺麗な結晶状態のままの雪って見られないもんねぇ」
 そんな優子に古谷はスキー場で雪の結晶を実際に見る迄、雪が芸術的な結晶の形をしているとは想像すらした事が無かったのだと笑う。
「私も同じ――図鑑などで雪の結晶の写真を見た事はあったけれど、美しい結晶のまま空から降って来るなんて思いもしなかったもの」
 暖かい地域の都会育ちではテレビや本などでその存在を知ってはいても、実際に見たり触ったりといった体験をする機会はなかなか出来ない事であった。
「知識って、実際に見たり触ったりして体験しなきゃ本当に知っているとは言えないのかもしれないわね」
 頭でっかちになりがちな自分を戒めるように優子が小さな呟きを漏らす。
「そやな、本やテレビ、ネットなんかの情報で知ったつもりになってるけど、ほんまは何も知らんのかもしれんなぁ」
 古谷も思い当るところがあるのか苦笑いを浮かべていると、リフトの降り口が近ずいて来た。
「古谷君、外側だから先に降りてね」
「了解」
 ペアシートで外側に座って居る人間がリフトから降りるのをもたもたしていると、内側の人間が降りやすい場所で降りる事が難しくなるのである。古谷も優子も中級者クラスで何度もリフトを利用しているので要領はわかっていたが、経験が浅い初心者だと降りる時に降りるタイミングを逸して焦って降り場で転倒して、リフトを止める事がよくあった。
「ほな、お先」
 スキーが降り場の到着すると同時に古谷がシートを立ち、慣れた様子で降り場からコースの方へ滑り出てゆく。それに続いて優子もリフトのシートから降りて古谷の後を追った。
 リフト降り場の先には中級者クラスの講師やメンバーが待っていて、全員揃ったのを確認してコースをトレインと呼ばれる隊列を組んで滑り始めた。
 中級者コースは比較的難易度の低い斜面が広く長く続いており、それぞれのスタイルで思い思いに滑りを楽しむ。
「あっ」
 滑り始めてしばらくすると、思いもよらないギャップにスキーを取られバランスを崩した優子が転倒した。慣れた様子で優子はすぐに立ち上がったのだが、周囲を見回すと同じクラスの姿は誰一人見当たらない。
 初級者クラスなら全員がへっぴり腰で滑るのも遅く、転倒者も多い為、仲間を見失う事はほぼ無いが、中級者クラス以上となるとそこそこ滑るスピードも速いので、転倒して起き上がった時にはみんな滑って行ってしまっている事が往々にあった。
「あちゃ~、置いてけぼりになっちゃった」
 天を仰ぎ優子は苦笑いを浮かべると、再びコースを一人で滑り始める。
 昨日も何度も滑ったコースなので、みんながどこを滑って行っているのかは解っていたが、時間まで一人で滑り続ける訳にもいかず、どこかで合流しないといけなかった。
「合流するとしたら…この下のリフト乗り場あたりかしら? そこで待つしかないわねぇ」
 昨日も、講習中、毎回完全に下まで滑り降りることは無く、コースの途中にある中腹から再び上に向かう短いリフトに乗る事が多かったのを思い出して、優子はその場所へ向かう。
 中腹のリフト乗り場に着くと優子は他のメンバーが上から滑り降りて戻って来るのを見つけやすい場所で待つ事にした。
 待っている間優子が周囲を眺めていると、ショートリフトの前の緩やかな初級者コースを通って麓まで降りていくグループもいれば、上から降りて来ると再びリフトに乗って上に向かうグループもいて、それを観察しているだけでも暇つぶしにはなった。
「あれ? 志麻、こんなところで何してるんだ?」
 今日も生徒たちの滑る姿の撮影を担当しているのか、安井がカメラを手に優子に滑り寄って来た。
「みんなとはぐれちゃったんで、ここでみんなが戻って来るのを待ってるんです」
「どこのクラス?」
「中級クラス2班です」
「中級者クラスなのになんで?」
 不思議そうな表情を浮かべ安井は優子を見る。
「中級者だからですよ――滑るスピードがそこそこ速いから、起き上がったらみんな居なくなってたんです」
「あ~、なるほど」
 優子の説明に納得がいったのか安井はそう言って笑う。
「降りて来るのも早いと思うんで、ここで待つのもそんなには待たなくてもいいとは思いますけど…」
「了解、了解。早く合流できるといいな」
 心配する案件では無いと判断したのか、安井はそう言うと優子に片手を挙げて下の方へ滑り去って行った。
「雪、酷くなってきたなぁ」
 先程、リフトの上ではちらつく程度の雪であったが、今は時たま風に乗って雪が吹雪の様な降り方をするようになっていた。断続的な吹雪状態という訳ではなかったので視界はまださほど悪い訳では無かったが、ゲレンデに出た時に比べて気温は確実に低下している様であった。
「身体が冷えてきたし、みんな早く戻ってこないかしら?」
 そんな事を優子は呟きながら上から下ってくるコースの方を見ていると、見覚えのある講師の顔とその後に続いて滑る面々が姿を現した。それを確認した優子はリフト前で彼らと無事合流する事ができた。
「ここで待っていてくれたのか――さっき志麻君がいないのに気が付いたんだけど、初心者じゃないからそんなには心配していなかったよ」
 優子が交流すると講師は安心した様に笑顔を見せ「——これがまた、上級者だと急な斜面を滑落して怪我をする事があるんで心配なんだけどね」と豪快に笑う。
――それ笑うところ?
 心の中で優子は呟きながら、引きつった笑顔を浮かべるのだった。

 お昼前。ゲレンデに講習参加者が集まり、スキー講習の閉校式が行われた。
 降り出した雪はどんどん酷くなり、最後のコースを滑り降りて来る頃には吹雪いて視界が一気に悪くなり、前を滑る人間の背中が判別するのも困難な状況となっていた。
「——では、一時間後、迎えのバスが到着するので、帰る準備を急いで整えるように。解散」
 吹雪となったので簡単な閉校の挨拶と連絡のみで解散となり、参加者たちは慌てて民宿へ戻っていった。
「お帰り~、雪すごくなってきたわね」
 部屋に戻ると先に帰り支度を済ました静香がスキー組を出迎えた。
「湿ったウエアーこのまま入れたくないんだけど、仕方がないか…」
 香奈子がぶつぶつと文句を言いながらスキーウェアを畳んでバッグに詰め込む。
「時間なさすぎですぅ」
 あおいも文句を言いながら荷作りをしていた。
「最後、視界が悪くて全員揃うの遅くなっちゃったからねぇ…」
 最後、このまま戻れず遭難するのでは? っという不安がよぎる瞬間があるほどひどい状態となったので、それも時間が押している一つの原因であった。
「これでまた高速道路が通行止めになったら笑っちゃうわねぇ」
 静香が窓の外を見ながらそう言うが、考える事は皆同じの様である。
「お昼ご飯はどうなるんですかね?」
 のんびり食堂で昼食を食べるといった話も聞いていないので、お腹を空かせたあおいが先輩たちに尋ねる。
「バスの中で食べるお弁当を用意してくれているみたいよ」
 食堂のテーブルの上にお弁当が入った段ボールの箱を部屋に戻って来る時に見かけた優子があおいに告げる。
「良かった…お腹が空きすぎて死にそうなんで…」
「あおいって年中欠食児童みたいな事言ってるわよね」
 口を開いたら食べ物の事を口にする事が多いあおいに静香が呆れ顔で見た。
「欠食児童って…戦前戦後じゃないんだから」
 静香の言葉を聞いて優子が噴き出す。
「だって口を開いたらお腹空いた~なんだもの」
「三食ちゃんと食べてるんだから欠食児童ではなく、どちらかと言うと食べても食べても満足しない餓鬼の方が表現的には近いと思うんだけど」
「あ、確かに…」
 優子の意見に静香は納得する。
「何の事を言ってるのか解らないんで、私にわかる様に説明してください~」
 あおいが自分の事を言われているのかはわかるが、それを何に例えてるのかが理解できず抗議の声を上げる。
「今は悠長に説明してる時間はないわ――続きはバスの中でね」
 優子はそう言うと、自分のかばんのファスナーを閉じた。
「なんかバタバタですね…」
 荷物を持って玄関に降りると、靴を履いている渉と古谷と優子たちは一緒になる。
「——これ、ほんまに迎えに来れるんかいな」
 玄関の扉を開いた古谷が牡丹雪に変わった雪を見ながら思わず呟きを漏らす。
「さっきバスから連絡があって、もう近くまで来ているらしいわ」
 その声に振り返ると、部屋着のままの安西が立っていた。
「…あれ? 先生帰らないの?」
 不思議そうに渉が訊く。
「私は他の先生たちと他のスキー場に行くから、ここでみんなとはお分かれ」
「…あ、そう言えば現地解散する先生たちがいるって言ってましたね」
 来る時に耳にしていた話を渉は思い出す。
「私達以外にも、ここから実家に帰省する先生も何人かいるから、ここに来る時よりもバスの座席に余裕があるはずよ」
「窮屈なよりはありがたいですけど」
 来る時はバス2台がほぼ満席だったので、それよりは余裕があるのは圧迫感が減るのでありがたかった。
「——じゃあ、来年、新学期に学校で元気に会いましょう」
 安西はそう言うと、良いお年をお迎えくださいと言って生徒たちを見送った。
「ここで現地解散した先生たちもこの雪やし、無事に次の目的地にいけるかわからんよな」
 観光バスの停留所の広場へ向かいながら古谷が新雪が積もり始めた周囲の景色を見回して呟きを漏らす。
「他のスキー場にスキーを予定している先生たちは最悪、移動できなくてもここでスキーす楽しめばいいから問題ないだろうけど、実家に帰省予定の先生たちは困るでしょうね」と渉が苦笑いを浮かべた。
「…あ、もうバス来てますぅ」
 広場に自分たちの学校の名前の名札を掲示している観光バスが2台停車しているのを確認してあおいが声を上げる。近くに行くと、バスの外で名簿を手にした奥野が生徒たちの確認を取っていた。
「生物部一行だな…」
 優子たちの顔を確認すると、奥野は名簿に記載されている名前にチェックを入れていく。
「帰りも乗るバスの指定あるんですか?」
 静香の問いに奥野は帰りは席に余裕があるので、どちらに乗るかだけ申請すれば好きな方で構わないという答えであった。
「…んじゃ、1号車で」
 観光バスは同じ会社の同じ形のバスなのでどちらに乗っても変わりは無さそうだったので、優子はそう言うと、他のメンバーも「同じく」と奥野に告げる。
 大きな荷物をトランクスペースに預けバスに乗り込むと、添乗員から弁当とお茶が手渡された。
「ごっはん♪ ごっはん♪」
 弁当を受け取ったあおいは歌いながら最後尾の空席に腰を下ろす。
「あおいちゃんご機嫌やな」
 上機嫌のあおいに古谷が小さく笑う。
 1号車の最後尾に生物部の部員が固まって陣取る形となって、後は出発を待つのみとなった。
「では、大阪に向かって出発します」
 大阪に戻るメンバーがバスに全員乗り込んだのを確認してドアが閉まると、引率教諭の簡単な車内アナウンスと一緒にバスが動き始めた。
 窓の外を見ると、現地解散で残った教師数人と、民宿のスタッフが数名見送りに来ていて、バスに向かって手を振っていた。
「ありがとう~。また来年くるね~!」
 あおいがそう言いながら見送りの人たちに手を振り返す。
「…あおいちゃん、ここ気に入ったみたいだね」
 渉があおいを見ながら笑う。
「私、あと2回来れますから。いろんな場所探索するつもりです」
「2回?」
 首を傾げる渉にあおいは「三年生は参加できないから普通ならここに来るのは2回が限界ですけど、私の場合、来年、もう一回一年生をするんで、計3回はスキー講習旅行に参加できる事になるんで」と明るく笑う。
「…既にダブるの前提なのね」
 あおいの言葉を聞いて静香が苦笑いを浮かべた。
「はい。勉強でダブるのは仕方がありませんが、スキーの方は、来年は中級者クラスで、再来年は目指せ上級者クラスです」
 理想と志が高いのか低いのかよく分からないあおいの言葉を聞いて、微妙な表情を浮かべる生物部の部員たちを乗せて、雪の中をバスは大阪を目指してひた走るのであった。
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