ここタマ! ~ここは府立珠河高等学校~

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~食べるメス 食べられるオス~

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 寒い日が続く二月の放課後。
 憂鬱な週明けの授業を何とか終え、生物室にやって来た丸山の手には一本の枝の様なものが握られていた。
「先輩、これ何か知ってますか?」
 ラッキーの世話を終え、のんびり温かいコーヒーを飲んでいた渉に、丸山が持ってきた枯れた茎らしいものを差し出し訊く。
「何かの茎っぽいのに、白い何かくっついてるけど、初めて見るな…これ何?」
 マグカップを置いて渉はしげしげと枯れた茎にくっついている5㎝ほどの少し茶色っぽい白いボール状の塊を見ながら首を傾げた。
「この枯れた茎はセイタカアワダチソウで、この白いフワフワした塊はカマキリの卵っす」
「カマキリ…って、これ?」
 そう言いながら渉は両手を上げて手首を曲げ、カマキリが鎌を振り上げる様なポーズを取りながら丸山を見る。
「そうです――この卵鞘(らんしょう)はカマキリの卵だって聞きました」
「らんしょう?」
 訊き返す渉に丸山は頷いた。
「卵鞘ってのは小さな卵の集まりの事で、カマキリの場合、泡で卵を包んだものを産卵するんですが、その泡は時間が経つと泡は柔らかい発泡スチロールみたいになるので、その空気の層で冬の寒さから卵を守ってるんだそうです」
 丸山はそう言うと触ってみると面白い感触ですよと笑う。
「ほんとだ…確かにマシュマロとか、柔らかい発泡スチロールみたいな感触だね」
 恐る恐る卵鞘の触り心地を確かめた渉は驚いたようにそう言うと、何処で見つけたのかと訊いた。
「昨日、じいちゃんの家の裏庭で見つけたんです」
「へぇ…よくカマキリの卵って知ってたなぁ」
 渉が感心した様に言うと、丸山は「俺自身は知らなくて、じいちゃんにいろいろ教えてもらっただけです」と苦笑いを浮かべる。
「そうなんだ。丸ちゃんのおじいさんって物知りなんだね」
「小さい頃、虫取りをよくしていたらしいです」
「虫取りかぁ…俺は小さい頃にセミ採りをちょっとやったぐらいしか経験ないなぁ」
「俺はじいちゃんに連れられて、小さい頃に何度かカブトムシを採ったりした事はありますけど、詳しいって程じゃないですね」
 丸山はそう言うと、そもそも虫採りをする場所ってのがありませんしと肩を竦めた。
「確かに…虫採りが出来るのって公園ぐらいしかないし、実際に見た事がある昆虫となると、セミと蝶…それとトンボぐらいかな?」
 記憶をたどって指折り数える渉に丸山が「お忘れかもしれませんが、蜘蛛やゴキブリも昆虫です」と笑った。
「そっちは採りに行かなくて、家の中で見かけるからなぁ」
「ゴキブリは触りたくないですけど、ハエトリグモなんかは小さいから可愛いから俺好きですよ」
「ハエトリグモって黒くて1㎝ぐらいのぴょんぴょん跳ねるやつだろ? 確かにあれは可愛いよな」
 そう言って渉は笑うとカマキリの卵を見ながら「蜘蛛もカマキリも確か肉食だったよな?」と呟く。
「家に出る蜘蛛は害虫であるゴキブリとかコバエ、ダニなんかを食べるから殺しちゃダメだって教えられましたけど…」
「小さなハエトリグモがゴキブリを食べるってサイズ的に無理がないか?」
「あ、でかいゴキブリを食べるのは家に住む蜘蛛としては最大級のアシダカグモっていう手のひらサイズのでっかい蜘蛛で、アシダカグモが二匹いれば家中のゴキブリが半年で全滅するってじいちゃん言ってました」
 その話を聞いた渉の目が丸くなる。
「半年でゴキブリが全滅って、それなんかすごくないか?」
「すごいと思いますよ――うちのじいちゃんはアシダカグモの事を軍曹って呼んでましたね」
「軍曹?」
 首を傾げる渉に丸山は頷きながらどうしてそう呼ぶのかまでは判らないですけど…と笑う。
「家に出る蜘蛛は害虫を食べてくれるのは判ったけど、カマキリって何を食べてるんだろうな?」
「小学校の時の授業で見た映像では、蝶とかバッタなんかを捕まえて食べてるのは見ましたけど…」
 正直、具体的に何を食べているのかまではわからないと言う。
「…だよな。テレビなんかの映像や写真なんかでカマキリという昆虫がいるのは知ってるけど、実物を見る機会なんてほとんどないし」
 そう言うと渉は他の部員たちも同じようなものだろうから、このカマキリの卵鞘もみんな見た事が無いだろうなと呟いた。
「そうだと思って、これ持ってきたんですよ――次のお茶会にでもみんなにこれ見てもらいましょう」
 丸山はそう言うと、カマキリの卵鞘が付いた茎を窓際の棚の上に置いておいてもいいかと渉に尋ねる。
棚の上なら授業があっても邪魔にならないし問題無いと思う、という渉の言葉を聞いて丸山は頷くと、そっとそれを棚の上に置いた。

 丸山がカマキリの卵鞘を持って来てから数日後、生物実験室では恒例のお茶会は開かれていた。
「今日は珍しく全員揃いましたね~」
 嬉しそうなあおいに渉が「あおいちゃんがお茶会に顔を出すのも久しぶりだけどな」と苦笑いを浮かべ指摘する。
「バイトが忙しいんですよぉ――覚えなきゃいけない事も増えちゃったし」
 あおいの話によると、最近、洋司の家に外国からのゲストが入れ代わり立ち代わりでやって来るので、その対応であおいの仕事も増えているらしかった。
「忙しいのはいい事だけど、もう留年しちゃダメよ」
 香奈子が笑いながらそう言うと、あおいが「今年は大丈夫ですぅ」と笑顔を浮かべた。
「僕らがこのお茶会に参加するのは今日で終わりやろうから、みんなの顔が見られて良かったわ」
 そう言ってお茶をすする古谷にあおいが「終わり?」と首を傾げる。
「もう二月やし、僕ら学校に来るのあと何日もないで」
「あ~、言ってる間に卒業式ですもんねぇ」
 もうそんな季節なんだという顔で渉が呟いた。
「先輩たちが卒業って事は、僕たちももうすぐ二年になるんですね」
 そんな高橋の言葉に順子が「そうだった!」と頭を抱える。
「頭を抱えてるけど、順ちゃんは留年の心配とかは無いんでしょ?」
「進級は問題ないですけど、もうすぐ先輩たち卒業しちゃうんでしょ? そしたら女子はうちとあおいさんだけになっちゃうじゃないですか」
「…まあ、そうなるわね」
「しかも、最近あおいさん、お世話当番が終わったらさっさと帰っちゃうし、お茶会に参加する女子うちだけって寂しすぎるんですもん」
 そんな順子の声に優子が「だったら、次の新入生が入ってきたら、女子の勧誘に力を入れなきゃね」と言って笑った。
「新入部員勧誘⁈」
 優子に言われて、初めて気が付いたように順子が声を上げる。
「そうよ、私達はもう卒業だし、渉君は三年。次期部長は次の二年生から選ぶ事になるんだし、次のクラブ勧誘も二年の役目よ」
「新入生勧誘に次期部長選びもあるのか…」
 ようやく高橋や丸山も自分たちが二年になって部活動の主力を担うのだと、優子の言葉を聞いて再確認させられたのか、お互いの顔を見合わせた。
「…ま、頑張ってね」
 他人事のように笑う静香に順子が「そんな他人事みたいに言わないでください」と抗議の声を上げる。そんな順子に「だって私たちは卒業するんだから、あとの事は他人事よ?」と静香が笑う。
「今すぐ決めろって訳じゃないけれど、そろそろ先の事を考えておいた方がいいんじゃない? って話なだけなんだけどね」
 そう言うと、優子はお茶菓子を口に放り込んだ。
「うちは部長ってタイプやないから、香奈子先輩からお茶の入れ方を伝授してもらったし、お茶会担当って事で、部長はみんなに任せた」
 いち逃げ宣言の順子に続いて、あおいも忙しいバイトを理由に部長は無理と断言する。
「…となると、男子のどちらかに部長をやってもらう事になるね」と渉が呟いた。
 髙橋は動物好きであるし勉強熱心で、ラッキーの世話や知識といった事柄について、この約一年で古谷から信頼をされるようになっていた。
 一方の丸山は、当初巨漢の食いしん坊といったイメージが先行していたが、実は独特な感性の持ち主で、ちょっとした研究などは自ら考えて行う自主性がある人物であるのは、皆が知るところであった。
「そういや、この間も丸ちゃん、カマキリの卵鞘持って来てくれてたしな…」
 思い出したように渉はそう言うと、棚の上に置いてあったカマキリの卵鞘が付いた茎を持ってくると、実験台の上に置いた。
 優子は一目見てすぐにそれが何かわかったらしく「あら、珍しい。カマキリの卵じゃない」と目を丸くする。
「丸ちゃんが持って来てくれたんです」
 渉の説明の後に丸山が「みんな見た事が無いだろうと思って…」と付け加えた。
「へぇ、これがカマキリの卵なんだ」
 静香は茎を手に取って卵鞘を物珍しそうに言う。
「この卵鞘はおそらく大カマキリのものでしょうね」
「そんなん見ただけでわかるん?」
 優子の言葉に古谷が疑問を口にした。
「大カマキリの卵鞘は白っぽくて4~5㎝ぐらいの球体をしているんだけど、チョウセンカマキリの卵鞘の場合はサイズは同じぐらいだけど縦長の形をしているっていう違いがあるのよ――この二種類はススキや稲、セイタカアワダチソウなんかの茎に産卵するのが特徴」
 ハラビロカマキリの卵鞘は2~3㎝の卵型で、産卵場所は木の枝に産み付けるし、コカマキリの卵鞘は2~3cmの縦長の形をしていて、石の間や倒木なんかの地面に近い場所であっても構わず、産卵場所は選ばないという。
「へぇ、カマキリの種類によって、そんなに違いがあるんや」
 昆虫に関しては門外漢の古谷は素直に感心する。
「カマキリって共食いをするって話を聞いた事があるけど?」という静香の言葉に優子は頷く。
「カマキリの共食いは有名な話だけど、いつも共食いをしている訳ではないのよね」
 優子はそう言うと、カマキリは生餌でないと食べないっていうグルメさんで、昆虫や小動物なんかを捕食するのが普通で、エサが無い場合や交尾中には体が小さいオスを食べちゃう事があるのだという。
「それに日本のカマキリは交尾中にメスがオスを食べるって事例は少ないっていうのを何かの本で読んだことがあるわよ」
 優子の話に古谷が「交尾中にメスに食われるって、オスにとっては悲劇的なホラーな話や」と嫌そうな表情を浮かべる。
「昆虫なんかだとメスの方が体が大きい事が多いし、たしかジョロウグモもオスを食べなかったっけ?」
「ジョロウグモもオスを食べる事はあるみたいだけど、それはオス同士のメスをめぐる争いで負けた者を食べちゃうことがあるぐらいで、交尾中では無いみたい」
 静香の質問に優子が答えていると、渉が「交尾中でなくても、やっぱりメスも方が強いんだ」と呟いた。
「人間も外国では女子が強くて、暴言だけじゃなくパートナーを殴ったりとか暴力を振るう事が多いみたいだから、メスって生き物を問わず強いのかもよ」と静香が笑う。
「え? 男性が暴力で女性を支配するって話は聞きますけど、女性が男性を?」
 高橋が信じられないといった表情を浮かべると、香奈子が「日本人の女性が外国人の男性に人気の理由のひとつに、日本の女性は優しくておしとやか、しかも暴力を振るわないっていう理由もあるって聞いた事あるわよ」と微笑んだ。
「いわゆる大和撫子ってやつですか?」
「そうみたいね――いまや日本でも大和撫子なんて絶滅危惧種って気もするけど」
「確かに絶滅危惧種かも…」
 香奈子の言葉に納得した様に頷く男子たちに、静香が「そこ納得しない」と突っ込んだ後、「大和撫子って、日本女性が持つ美徳や理想を表す言葉で、優しさ、柔らかさ、強さ、内面の美しさを表す言葉だから、今でもそれに該当する女子はたくさんいると思うわよ」と言う。
「大和撫子って、着物を着ておしとやかにしている女性の事だとばかり…」
 大和撫子という言葉を間違った意味で覚えていた事を知って丸山が戸惑った様に呟きを漏らした。
「ただ、蝶よ花よ…だけじゃ子供は産めないわよ」
 新しい命を宿し、育て、出産するというのは命がけなのだからと静香は言う。
「命がけ…」
 妊娠というものがどういう事なのか漠然としたイメージしか持っていない男子たちは、命がけという言葉に戸惑いの表情を浮かべる。
「生物界ではメスが体が大きかったり、強い事が多いのは、種の維持の為、命をつなぐ為に必要だからなんじゃないかしら? 交尾の後、メスがオスを食べてしまうのも、新しい命を育む為の栄養とする為なんだし」
 おそらく日本のカマキリがオスを食べる事が少ないのは、他国に比べて餌が豊富にある豊かな環境の関係もあるのかもと優子は言う。
「日本女性が大人しいのも同じ理由かもよ」と笑う静香の言葉を聞きながら――先輩たちは今でも十分強いのに、厳しい環境になったら、さらに強くなるんだろうか? という考えが渉の頭をかすめる。
――それって無敵じゃん
 楽しそうに談笑する先輩女子たちを見ながら、そう思わずにはいられない渉であった。
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