ここタマ! ~ここは府立珠河高等学校~

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~カマキリぱにっく!~

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 暖かい日が続き、随分過ごしやすいと感じる様になった三月下旬。
 春休みになっていたが、いつものように生物室の小さな生き物たちの世話の為に生物室にやって来た渉はそれと目が合った。
 それは体長1㎝に満たないミニチュアサイズのカマキリで、実験台の上で小さいながらも左右の鎌を振り上げて渉に向かってファイティングポーズを取っていた。
「なんかシャーっていう声が聞こえてきそうだけど、なんでこんなところにカマキリが…」
 そう呟いた直後、はっと我に返り窓際の棚の上に置いていたはずのカマキリの卵鞘に走り寄る。
「わっ、ミニカマキリだらけ…いつ孵化したんだこれ?」
 棚の上やその周辺には、うじゃうじゃといった表現がぴったりくるほどの数のミニカマキリの姿を確認して、渉は唸るように呟いた。
「本には孵化は4月から5月って書いてあったから、油断した~」
 孵化に備えて、卵鞘を虫かごに入れるのはもう少し後でも良いだろうと思って、そのままの状態で棚の上に放置していた事を悔やみながら、渉はこの事態の収拾をどうしようかと頭を悩ませていると、高橋が実験室に姿を見せた。
「先輩、そんなところで何してるんですか?」
 棚の前で立ち尽くしている渉に声をかけながら、実験台の上にかばんを置こうとした高橋に渉は慌てて待ったをかける。
「この部屋、ミニカマキリだらけになってるから、カマキリがいないか確認してからかばんを置いた方がいいぞ」
「え⁈」
 渉の言葉を聞いて高橋は慌てて実験台の上に視線を走らせた。
「わわっ、本当だ――なんだこれ⁈ 小さいカマキリがあちこちにいるじゃないですか!」
 ミニカマキリの姿を確認した高橋が叫ぶように声を上げた。
「知らずに何匹か踏んだかも…どうしたらいいと思う?」
「どうしたらって…とりあえず捕獲するしかないんじゃ?」
 戸惑いを隠せないように高橋はそう言うと、虫かごは無いのかと渉に尋ねる。
「虫かごっていうか、プラケースの奴だったら恒温室に使ってないのがあったと思うけど…」
「了解です!」
 渉の言葉を聞いて、高橋は恒温室に走った。
「カマキリの卵鞘には100~300個の卵が入っているって話だったから、もしかしなくても、それだけのカマキリがここに居るって事だよな…」
 それだけの数のカマキリを捕獲するのかとげんなりしていると、高橋がプラケースを手に戻って来た。
「とりあえず未使用なのが二つありました」と言うと、高橋はそのひとつを渉に手渡した。
「サンキュー、んじゃ、急いでカマキリを捕まえるぞ」
「はい!」
 そうして渉と高橋はミニカマキリの捕獲作業を開始した。

「緊急事態が発生したから、大至急で部室に来て欲しいって書いてあったから、何事かと思ったら…」
 ラインで緊急呼び出しを受けたので、慌ててやってきた順子は、呼び出し理由を知って呆れ顔になっていた。
「俺達ふたりじゃ、この膨大な数のカマキリを回収できないって思ったもんで…」
 申し訳ないと渉は順子にそう言うと、壁際の掃除用ロッカーを動かして、その後ろに入り込んだカマキリの回収作業をしている丸山とあおいを見ながら、みんなが来てくれて助かったと安堵したような呟きを漏らした。
「…まあ、確かにこれだけの数のカマキリを二人だけで捕まえるとなると大変なのはわかりますけど、何事かと思っちゃったじゃないですか」
「そう思うのも無理ないよな――実験室がミニカマキリだらけになるなんて予想外の展開だもんな」
 順子の抗議に渉は苦笑いをしながら同意する。
「小さくて可愛いけど、これだけうじゃうじゃいるとちょっと気持ち悪いなぁ」
 回収したカマキリの赤ちゃんが入ったプラケースを覗きながら高橋が呟いた。
「カマキリだけじゃなく、小さな生き物が群生しているのって、なんかグロいよな」
 渉が頷いていると、ロッカーの位置を戻した丸山とあおいがもう一つのプラケースを持ってきた。
「とりあえず俺たちで動かせるものの後ろを確認作業は終わりましたけど、まだいろんな場所に隠れてる可能性があると思います」
「——すごく小さいから見付けにくいし、隙間に入られるとわかんないから全部回収するのは無理だろうから仕方がないね」
 報告をしに来た丸山に渉はそう言うと、小さく肩を竦める。
「このチビカマキリどうするんですかぁ?」
 興味津々といったあおいに渉は「基本的には自然に帰すとして、1~2匹うちで飼ってみたいってのもあるんだけどな」と答えた。
「飼うって言っても、エサどうするの?」
「生餌しか食べないって話だからなぁ」
 カマキリの餌は基本的には生餌であるし、このミニサイズのカマキリが食べる事ができる生餌となると、何を与えれば良いのか見当もつかない。
「それに自然に帰すって言っても、まだ三月下旬だしな――全滅しなきゃいいけど…」
 本来、カマキリの孵化の時期は温かくなった4月から5月で、ベストの気温条件であっても自然界で生き残るのは1~2匹といわれていた。
「カマキリの卵って本当はもっと暖かい季節になってからなんでしょ? どうしてこんな早い時期に孵化しちゃったのかしら?」
 小首を傾げる順子に丸山が「室内の日当たりのいい場所に置いていたからかも…」と言う。
「あ~なるほど、外に比べたら温かいし、日当たりもいいから孵化条件の温度になってたのか…」
 ようやく孵化時期が早かった理由を理解した渉は、ミニカマキリが蠢くプラケースを見てため息を吐いた。
「——それにしても、カマキリって孵化した時から成虫と同じ姿をしているとは思わなかったなぁ」
「しかも、ミニサイズにも関わらず、いっちょ前に鎌を振り上げて威嚇するしな」
 髙橋の感想に渉が笑う。
「…思ったんだけど、サイズが小さいだけで成虫と同じって事は、このままじゃ共食いを始めるんじゃない?」
 ミニカマキリたちを見ていた順子の呟きに渉たちの表情が変わる。
「言われてみれば…これだけの数のカマキリの共食いなんて見たくないぞ」
「ミニカマキリの餌について情報が無いか、ちょっとネットで調べますね」
 丸山はそう言うと、タブレットをカバンから取り出して検索を始めた。
「——生まれたばかりの赤ちゃんカマキリの餌はアブラムシやコバエを食べるみたいですね」
 ネット検索に生まれたばかりのカマキリの餌についての項目を見つけたのか、丸山がタブレットから顔を上げる。
「アブラムシは花壇とかを探せば見つかりそうだけど、コバエってよく見かけるけど、あれを生きたまま捕まえるって、どうやるんだ?」
 困惑顔の渉に高橋が「ラッキーの餌用にカットした果物エサ入れに放置してたら、すぐコバエって寄って来るじゃないですか――たぶんカマキリ用にもカットフルーツをプラケースの中に入れて置いたら、勝手にコバエが寄って来るんじゃ?」と言う。
「ナイスアイディアだけど、カマキリって羽を持ってるから飛んで逃げないか?」
 疑問を口にする渉に、丸山が「カマキリは羽は持っているけど、飛ぶのは苦手だとネットに書いてありますよ」とすぐに検索をかけたのか、その結果を告げる。
「そうなんだ…じゃあ、とりあえずはみんなで手分けしてアブラムシを集めないとな」
「ここにいるミニカマキリちゃんの分全部⁈」
 あおいが信じられないといった表情で餌集めを口にした渉を見た。
「さすがにそれは無理があるか…」
「無理がありますね」
「だよな」
 そんなこんなで話し合いの結果、元気そうなカマキリを一匹残して、他のカマキリは草むらに放すという方針で話がまとまった。

「アブラムシ…アブラムシは…っと」
 校庭の花壇やグラウンド周辺の草むらで、渉たちはカマキリの赤ちゃんの餌となるアブラムシを手分けして探していた。
「探すとなったら、アブラムシってなかなか見つかんないなぁ」
 校庭の草花の葉や茎をチェックしながら順子が呟きを漏らす。
「ほんと、簡単に見つかると思ってたんだけど、きれいさっぱりだね」
 アブラムシがいそうな場所を見て回っていたあおいが順子の呟きに同意をしていると、グランド脇の草むらの方に行っていた男子たちが雑草を手に戻って来た。
「アブラムシ見つけたぞ」
 カマキリの餌を確保したと聞いてあおいと順子は安堵の表情を浮かべた。
「おお~。びっしりアブラムシが付いてるぅ」
 渉が手にしていた草を確認したあおいが嬉しそうな声を上げた。
「アブラムシって樹液を餌にしているから、新緑とかの柔らかい茎なんかに付くみたいで、そういうのを重点的に探したらすぐに見つかった」と高橋が笑顔を見せた。
「そうなの?――校庭のお花なんかにはさっぱりだったんだけど」
「もしかしたら校庭の方は用務員さんが害虫対策で薬を撒いてるのかもな」
「あ~、なるほど」
 渉の意見に「芋虫さんが好きそうな葉っぱがいっぱいなのに、全然いないのはその可能性が高いね」とあおいは納得顔になる。
 とりあえずの餌を確保した一同は実験室に戻ると、単独飼いとなったカマキリたちのプラケースにアブラムシが付いた草を入れた。
「いっぱい食べて大きくなぁれ」
 そう言ってミニカマキリの様子を眺めるあおいの横で、丸山はカマキリの飼育についての検索作業を再開した。
「——んじゃ、うちはお茶を入れて来るから、みんな何が飲みたい?」
 香奈子からお茶会のホストを引き継いだ順子が他のメンバーに尋ねる。
「俺はミルクと砂糖入りのコーヒー」
「あ、僕も」
「私は何でもいいよぉ」
「俺はホットココアがいいな」
 そんな飲み物リクエストを訊いた順子は頷くと、お茶の用意の為に準備室に移動した。
「コーヒー二つに、ココアが一つ、あおいさんは何でもいいって言っていたから、紅茶を入れようかな?」
 そう独り言を呟きながら棚からコップ類を出した順子は、そのコップを置こうとしたところでそのまま固まり、その次の瞬間、悲鳴交じりの声を上げる。
「うそ~!」
 その声に驚いた渉たちが準備室に様子を見に飛んできた。
「どうした⁈」
「カマキリ!」
「え⁈」
 順子が指し示す先には、シンクの上を歩くカマキリがいた。
「なんで準備室にカマキリが⁈」
「プラケースから逃げた⁈」
 孵化したカマキリたちがいるのは実験室の中だけだと思っていたので、その隣の準備室にミニカマキリがいる事に部員たちの間でちょっとした動揺が走る。
「実験室との出入りをしている間に、見落としていたカマキリがこっちに移動したのかも…」
 丸山の呟きに高橋がラッキーのケージの様子を見に走ると「あぁ~っ」という何とも言えない声を上げた。
「どうした?」
「水入れの中でカマキリがおぼれてる」
「わ…ほんとだ」
 餌入れの中に浮かぶミニカマキリを確認して渉は水槽の方は大丈夫かと訊く。それに反応してアフリカツメガエルやプラナリアの水槽を確認した順子とあおいからは大丈夫だという返事が返ってきた。
「参ったなぁ…準備室にまでカマキリが大量に出没するとなると、たけやんに怒られるかも」
 幸い春休み中の為、顧問の武田の姿は無かったが、他の教室にまでカマキリが出没するとなると生物部だけの話ではなくなってくる恐れが考えられる。
「…とりあえず、他にも準備室にカマキリがいないか確認しないとダメそうだな」
 ため息交じりに渉はそう言うと、全員で準備室に迷い込んだカマキリの捜索を始めた。

 カマキリの孵化から二週間。
 二度の脱皮を終えたカマキリは生まれた時に比べて、確実に大きくなっていた。
「ほれ、ご飯だぞ」
 細かく刻んだかまぼこをピンセットでつまみ、それを小さくカマキリの前で丸山が振ってみせると、カマキリはかまぼこを動く餌と認識したのか、かまぼこに齧りつく。
「へぇ…生餌じゃなくても食べるんだね~」
 カマキリの餌やりの様子を見ていた順子が感心したように言う。
「生きている様に動かして見せれば、カマキリって好き嫌いなく食べるんだって」
 丸山はカマキリ卵鞘を持ってきた責任からか、カマキリの孵化騒動からカマキリの人工の飼育方法をいろいろ勉強したらしく、自ら進んでカマキリの世話を毎日行っていた。
「何でも食べるって言っても、やっぱり生餌の方がいいみたいなんで、そろそろ餌用のコオロギやバッタを調達したいんだけどな…」
 予算の都合もあるので渉と相談をしなければという話をしていると、その渉が分厚いファイルを抱えて生物室に姿を見せた。
「あ、先輩いい所に」
「ん? 何?」
 渉は駆け寄って来た丸山を見て、小首を傾げる。
「カマキリ用の生餌欲しいんですけど…」
 遠慮気味に「予算なんとかなりませんか?」と言う丸山に「ああ、カマキリの餌か…」と渉が呟く。
「いくらぐらいなの?」
「100匹¥1000ぐらいみたいです」
「100匹…」
 値段より、その数を聞いて渉の表情がぎょっとしたものに変わる。
「カマキリ一匹に対して生餌100匹じゃ、多すぎると思うんだけど…もう少し、少ない単位で売ってないの?」
「俺もそう思って、いろいろ探したんですけど、最低単位は50匹とか100匹とかになるみたいで」
「う~ん」
 丸山の返答に渉の表情が難しいものに変わる。
「カマキリが食べる餌って一日一匹とかだよね? 当然、生餌としての役割だからコオロギを死なす訳にもいかないし…自動的にコオロギの飼育も必要になるんじゃ…」
「やっぱ、そうなりますよね」
 丸山自身も渉が指摘した事は考えたらしく、困り顔になる。
「これ以上世話をする生き物が増えるってのもなぁ…」
 渋る渉に丸山はカマキリの飼育は自分の責任なので、コオロギの飼育も自分がすると申し出る。
「そこまで言うなら…仕方がないな。ただし最後まで責任を持って飼育してね」
 丸山の熱意に負けたのか渉が許可を出すと丸山の表情が嬉しそうなものに変わった。そんな丸山に、渉は「逃がさないように」と付け加える。
――今でも逃亡したミニカマキリの死骸が変な所から出てくるんだもんな…。
 慣れたとはいえ、ミニカマキリの死骸を目にするのは気分のいいものでは無い。ましてやコオロギはそれより大きいし、見た目がゴキブリと似ている事もあるので、ドキッとするのは間違いない事を考えると、渉がそんな言葉を付け足したのも無理はなかった。
 そんな渉の考えを勘違いしたのか、丸山は拳を握りしめ笑顔で応える。
「逃がして数を減らさないように、俺、コオロギの繁殖も出来るように頑張ります!」
――違う、そうじゃない。
 丸山の宣言を聞いて心の中で叫ぶ…が、ただ苦笑いを浮かべるしかない渉であった。
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