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~あおいの敗北~
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寒風吹きすさぶ季節に入り、かつて静香の指定席であったストーブの前の椅子には、寒そうに震えるあおいが座っていた。
「うぅ~」
赤々とした光を放つストーブに手をかざしているあおいに、加山が「寒そうですね」と声をかける。
「私、皮下脂肪が一桁台だから、冬場は寒さが骨身にしみるのぉ~」
「皮下脂肪が一桁台って…男子でもめったにいないのに」
驚く加山にあおいは「皮下脂肪が少ないと、水に沈むって知ってた?」と言う。
「そうなんですか?」
「筋肉は重いから、脂肪が少ないと水に浮かばないのぉ――大きく息を吸って肺を浮袋代わりにするぐらいだもん」
「そんなんじゃ、水泳の授業大変なんじゃ?」
驚き顔の加山にあおいは気合と筋力で泳ぎ切ると笑う。
「気合っすか…」
加山が絶句していると、空が食堂での買い出しから戻って来た。
「さっぶ~」
そう言いながらあおいの横の椅子に座った空は、白い紙袋から肉まんを取り出す。
「あ、美味しそう」
肉まんを食べ始めた空に、あおいはよだれを垂らしそうな目で見た。
「寒い日にはやっぱり肉まんですよね~」
「まだ残ってた?」
「肉まんはあと三つくらいだったかな? アンマンとピザまん、カレーマンも残ってたから、今行けば買えると思いますけど」
「う~、食べたい…でも、外寒いから嫌だしなぁ…」
「珍しい、あおい先輩が寒さを理由に食欲を優先させないなんて」
茶化すように言う加山の言葉にあおいは肩を竦める。
「食堂は向かいの建物だから、いったん外に出ないといけないのがなぁ…風邪悪化しちゃいそうだし」
「え? 風邪ひいてるんですか?」
心配そうな顔になった空にあおいは、午後からずっと寒気が止まらないのだという。
「風邪薬は?」
「飲んでない」
「風邪はひき始めが大切って言うから、早めに飲んだ方がいいですよ」
空のアドバイスにあおいは頷き「帰りに風邪薬買おうっと…」呟く。
「なんか最近、未成年が市販の風邪薬を買う場合は、購入制限があるらしいっすね」
「購入制限?」
あおいは初めて聞く話だったらしく、不思議そうな顔で加山を見る。
「なんか、俺達ぐらいの若い世代の間で、幻覚が見えたりするって噂を聞いた連中が市販の風邪薬を大量に飲んで、救急車で運ばれる事が増えてるらしいです」
「あ~、OD(オーバードウズ:薬物過剰摂取)ってやつでしょ? 興味本位で初めて繰り返しているうちに薬物中毒になって、臓器不全とかを起こすし、死ぬ方がマシって思うぐらい苦しむらしいですよ」
「空ちゃん詳しいね」
あおいの言葉に空は「うちのママ、薬剤師だから」と笑う。
「なんかすげ~」
「薬剤師と言っても、調剤薬局のパートさんだよ」
「パートさんでもお薬のプロってなんかすごいね」
感心するあおいと加山に空は嬉しそうな表情になる。
「どんなお薬でも量が多いと毒になるってママが言ってたから、風邪薬もそうなんでしょうね」
「ああ、薬のコマーシャルなんかだと、用法・容量を守って正しくお使いくださいって注意アナウンスが最後に入ったりするもんな」
空の話に思い当る事があったのか、加山は納得した様であった。
「購入制限って事は、風邪シロップとかも一本しか買えないのかなぁ」
「たぶん…って、あおい先輩は風邪薬はシロップ派?」
「粉末の風邪薬は苦いから嫌いだし、カプセルとかは固いのが喉を通る感じが嫌い」
それに比べて風邪シロップは甘くておいしいから好きだとあおいは言う。
「甘い風邪用シロップって子供用の奴ですか? 咳止めなんかだと大人用のシロップもあったと思いますけど…」
「よくわかんない」
あおいの返答に空は「子供用の薬だと服用年齢って15歳までだったはずなので、高校生が飲んでも効くんですか?」と首を傾げる。
「なんか効きが悪そうだから、いつも多めに飲んでるよ」
そんなあおいの言葉を聞いた空はぎょっとした表情を浮かべた。
「多めって…どのくらいですか?」
「コップに半分ぐらい」
コップ半分の風邪用シロップの味を想像して加山は「くどそう」と呟く。
「シロップを炭酸水で割ってるからくどくないし、ドクターペッパーみたいな味になるから美味しいよ」
衝撃的なあおいの風邪シロップの服用方法を聞いた空は頭を抱える。
「…ありえない」
信じられないといった様子の空にあおいは「たまにドクターペッパーが飲みたいのに買えなかった時にも、風邪用シロップの炭酸割りを飲む事もあるよ」と無邪気に笑う。
「それヤバすぎです! 絶対やめてください!」
悲鳴のような空の発言に、あおいが不思議そうな顔をして首を傾げる。
「風邪用シロップはジュースなんかじゃありません! ——さっきも言った様に、お薬は使い方や量を守らないと毒になるから、先輩、身体壊しちゃいます!」
「え~、でもぉ、今まで何ともなかったよ?」
「それは運が良かっただけかもです――お医者さんとか看護師さん、薬剤師さんから絶対に怒られる奴です」
はっきりきっぱり空に言い切られたあおいは、それでも納得できないのか「炭酸水で薄めてるんだから、そんなに怒らなくても――ドクターペッパー代わりにもなるし、栄養ドリンクみたいなものなのに」とブツブツと不満そうに呟く。
「俺、ドクペ好きだから、あおい先輩の言ってる事わかるなぁ――大阪ってドクペ売ってる店って限られてるし、自販機では売ってないから、飲みたくなった時に買いに行くの大変なんだよ」
「ちょっと、光君まで!」
あおいに賛同するような事を言う加山に空が抗議の声を上げる。
「空ちゃんは大げさなんだよ、インスタント食品とかお菓子だって体に悪いって言われてるけど、全然問題無いんだからさ」
加山の言葉を聞いた空は、これ以上言っても無駄と思ったのか、それ以上の反論はせず、深いため息を吐いた。
あおいの危険な風邪シロップ服用方法が発覚した数日後、丸山は空から相談を受けていた。
「風邪用シロップの炭酸割りだって⁈」
空から話を聞いた丸山は驚きのあまり目をむいて絶句する。
「あおい先輩、風邪の時以外にも、ドクターペッパーを飲みたくなった時にそうやって飲んでるらしくって…」
「あれの容量、付属の小さなキャップに一杯とかだろ?――言われてみれば味は似てるかもしれないけど、炭酸で割っても薬の過剰摂取に変わりはないんだから、さすがにそれはヤバいっしょ」
「ですよねぇ」
事の重大さを丸山が理解してくれた事にホッとしながら空は頷く。
「それに炭酸水でお薬を飲むのも危ないらしいんです――お薬が体に吸収されるスピードがお水で飲むのと違うんで、効きすぎたりする事もあるらしくって」
「飲み薬って水か白湯で飲めって書いてあるもんな」
丸山に空は頷いてみせる。
「あおい先輩の場合、トリップしたいからって理由じゃないけど、やってる事はODをやっている人たちと変わんないですよ」
空の話を聞いている丸山は、腕組みをして難しい顔で考え込んだ。
「空ちゃんの心配は判るし、正論だとは思うけど、本人が良いと思っている事を止めさせるのって至難の業だよ――本人は悪い事をしている自覚がないんだから」
「ずっと監視する訳にも、力ずくで止めさせる訳にもいかないですしねぇ…」
丸山の意見に空も異論はなく、困ったといった表情を浮かべる。
「それにあおいちゃんってお気楽だけど、猪突猛進的なとこもあるから、壁にぶつからないと、聞く耳を持たないと思うよ」
「あ~、それ、なんとなくわかります」
「注意してもやめなくて、体を壊しちゃうとかは最終的に自己責任って話になるけど、他の連中が影響を受けてマネしないようにだけ注意をお願いできるかな?」
俺も出来るだけ気を配るからと言う丸山に空は頷く。
「光君もあおい先輩に賛同するような事言っていたから気を付けなくっちゃ」
「…って、加山君もかよ」
丸山の表情が呆れ顔に変わる。
「体に悪いって言われているインスタント食品やお菓子も食べてるけど、問題無かったんだから、心配しすぎだって言われたんですよ」
「だぁ~、食いもんと薬を一緒にするな~!」
頭を抱える丸山に苦笑いを浮かべるしかない空であった。
それから更に数日後。放課後の生物実験室では緊急の勉強会が行われる事となった。
「食品とサプリメント、薬の定義がわかる人」
各実験台に着席した部員たちを前に、黒板前の教壇に立った丸山が質問をする。
「食品は、俺達が普段食べてるごはんや肉、野菜の事…でいいのかな?」
髙橋が少し考えるように発言する。
「だいたいそんな感じだね…。食品の定義は生命活動必要なエネルギーや、生存に必要物質って事だそう」
丸山はそう言うと、黒板に「たんぱく質(肉、魚、大豆、卵):主に筋肉などを構成する栄養素」「カルシウム(牛乳、乳製品、海藻、小魚):主に骨や歯などを作り、各機能の調整をする栄養素」「カロチン類(緑黄色野菜):主に皮膚や粘膜を保護し、各機能を調整する栄養素」「ビタミンC(淡色野菜、果物):主に各機能の調整をする栄養素」「炭水化物(穀物、砂糖、芋類):エネルギーの源になるもの」「脂肪(油脂類、脂肪が多い食品):エネルギーの源になるもの」と書き出していく。
「これが日本の栄養学に使われる6つの基礎栄養素なのは家庭科の授業とかで習ったと思う」と丸山は説明する。
「それに対して医薬品——いわゆるお薬の定義は、ヒトや動物の病気を診断して治療、予防するものの事なんだ」
「…で、サプリメントの定義はビタミンやミネラル、アミノ酸といった栄養補助を目的としたり、ハーブなんかの薬効を期待するものの総称なんだそうだ」
事前に調べてきた資料を手に丸山は説明を続ける。
どうやら、あおいの危ない風邪シロップ摂取の件があったので、部員たちに食品と医薬品の違いを知ってもらいたいという事での緊急勉強会を開いたらしい。
「お菓子とかは何に分類されるんすか?」
加山の質問に丸山は「使われてる原料とか分類の方法によって違うけど、ポテチなんかは油脂扱いなんだぜ」と笑う。
「え? 油脂? 原材料がジャガイモとかトウモロコシなんだから、お野菜とか炭水化物じゃないんですか?」
ポテチなどのスナック菓子は野菜や炭水化物だからと、ごはんやパンの代わりに食べる事が多い律子が驚いたように訊く。
「普通そう思うよな。俺もずっとそう思っていたんだけど、栄養学的には油脂扱いなんだって」
「…って事は私、ごはん代わりに油を食べていたって事⁈」
自分の思い違いを知って、律子はショックを受けた様子で思わず声を上げた。
「栄養学自体、俺達ってなんとなくしかわってないし、食品とサプリ、医薬品の線引きってさらによくわかんないところあるよな」
「最近のドラッグストアって、同じお店でお薬だけじゃなくサプリや食品も買えちゃいますもんね」
トキが丸山の話に頷いて笑う。
「薬についてもいろいろ違いがあるらしくて、病院で医師が服用を指示するのが処方薬で、処方薬は市販薬より薬効成分が濃い…というか多いらしい」
「もしかして、病院で貰った薬の方が同じ名前の薬でもよく効くってのは、濃度が違うからって事?」
順子の質問に丸山は頷く。
「そうみたいだね。——ただ薬って使い方を間違えたり飲み合わせが悪いと、他の病気を引き起こす事もあるんで薬剤師さんがいるそうなんだ」
「あ~、空ちゃんのお母さん、薬剤師さんって言ってたもんな」
加山がそう言って空を見る。
「お医者さんは人間の体の仕組みとかを勉強していて、患者さんの症状から病気の原因を見つけて治療するのが専門だけど、お薬の飲み合わせなんかの細かいところまで勉強している訳ではないから、お薬の専門家である薬剤師が処方ミスが無いかをチェックしたり、患者さんの話を聞いてお薬の飲み方なんかのアドバイスをする事もあるって言ってたよ」
「へぇ…薬剤師ってそういうお仕事だったんだ」
そう言ってユウは、薬剤師ってかっこいい仕事かもと呟く。
「一般のドラッグストアなんかの市販薬は、処方薬にくらべれば薬効成分は少ないけど、それでも医薬品だから、薬品の販売資格を持った人がいないとダメなんだって」
「…へえ、そんな資格もあるんっすね」
感心した様な藤原に「今の世の中、何でも資格がいるもんな」と高橋が言う。
「確かに…うちみたいな小さな工務店で設計するぐらいなら二級建築士の資格で十分だけど、大きなビルなんかなら一週建築士の資格が必要だし、内装工事で配線が必要になる電気工事だと電気工事の資格が必要になってきますもんね」
親が工務店であるせいか、家業関連の資格を連想するらしかった。そんな藤原たちの会話が納得できないのか、あおいが口を開く。
「え~、自分たちだけで独占する為に業界とかで資格って勝手に決めたんだから、そんなのにどうでもいいんじゃない~」
「勝手にって…」
不満そうなあおいの発言に、一同言葉を失う。
「だって、調理師免許が無くてもお料理できるし、運転免許を持っていなくても車とかバイクを運転できる人いるよ?」
「あおいちゃんって、かなり突拍子ないとは思っていたけど…アナーキーだなぁ」
順子は困惑顔で呟くと、「アナーキーって?」とあおいは首を傾げた。
「アナーキーってのは無政府状態とか自己判断って意味。それぞれが社会ルールを無視して好き勝手やったら無茶苦茶な世界になっちゃうじゃない」
「なんで? 日本って自由主義なんでしょ? それなのにルールだとか資格だらけなのっておかしいよ」
「わ~」
まさかのあおいの反論に順子は頭を抱える。
「…あのね、あおいちゃん。ルールはみんなが快適で安全に暮らせるようにって決められた事なんだ——資格だって専門知識が無いと事故を起こしたり病気になったり、誰かの不利益にならないようにちゃんと勉強して必要な知識とか技術を持っていますってのを証明するものなんだよ」
小さい子供を諭すように丸山が説明をするが、あおいはいまいち納得できていない様子であった。そんなあおいの不満を感じ取ったのか、高橋が口を開く。
「あおいちゃんはふぐを食べるのなら、ふぐの調理師免許を持った人がさばいたのを食べる? それとも自分がさばいたのを食べる?」
「え~? ふぐの専門の人のやつ」
「どうして?」
「私、ふぐのさばき方知らないから、ぐちゃぐちゃになりそうなんだもん」
毒があるからという答えを期待していた一同は、あおいの返答を聞いてずっこける。
「…そっちか~」
苦笑いを浮かべながら高橋は気を取り直して言葉を続ける。
「ふぐには猛毒のパーツをいくつかあって、昔からふぐは毒を持っている魚ってのは知られていたんだけど、毒のあるパーツがどこなのかわかんない…でも美味しい魚だから食べたいってので、一か八かの賭けでふぐを食べて死ぬ人が多かったんだ――ふぐの調理師免許制度が出来てからは、調理する人がちゃんとその猛毒部分を取り除くようになったから、ふぐを食べて死亡する事例が随分減ったんだよ」
「…そうなんだ」
「さっきも言ってたように、資格とか社会的なルールってのは自分だけじゃなく、他人を傷つけないようにって考えられた制度でもあるんだけど…わかるかな?」
髙橋の問いかけにあおいは小さく頷く。
「あおいちゃんが言うように、たまに変だなって思うルールとか資格もあるけどさ、大部分はみんなを守る為に作られた決め事なんだ」
「そっか~」
ようやく社会ルールや資格制度についてあおいが納得した様だったので、丸山は今回の目的の一つであった、あおいの風邪シロップ服用問題に話題を切り出す。
「そういえばさ、あおいちゃん、風邪シロップを炭酸割にして飲んでる事もあるらしいね?」
「あ~前はね」
「前は?」
予想外のあおいの返事に丸山は聞き返す。
「風邪シロップの炭酸割美味しいんだけど、すぐお薬の瓶が空になっちゃうの」
「…まあ、そうだろうね」
「でね、薬局に買いに行ったら売ってくれないの」
「?」
あおいが何を言っているのか解らないといった表情を浮かべた丸山を見たトキが「未成年の場合、風邪薬なんかの服用薬では購入制限されるようになったってニュースで言ってましたよ」と説明をする。
「そうそう。買う時に学生証も見せないとダメだし、お店の人にいろいろ聞かれる様になっちゃってたのぉ」
「今ってそうなってるんだ…」
他のメンバーも、身分証明書提示や使用目的など詳しく話さないといけないのを知らなかったらしく、顔を見合わせる。
「んでね、すぐに無くなっちゃったから買いに行ったら、前回買ってからそんなに経っていないし、そんなに早くなくなるはずがないお薬だからって売ってくれなかったの」
あおいの話から、どうやら店の方で未成年の服用薬の購入記録を取っているようなのを推察することが出来た。
「んでね、他の薬局にも行ったんだけど、そこでも学生証を見せないといけなかったし、一個しか売ってくれなくて…そこも次から売ってくれないんだよ?」
「——ってか、他の薬局まで回ったんだ」
順子が呆れ顔になっている横で、加山が「風邪薬として使うより、ジュース代わりに飲んでることが多いみたいなんで、普通にドクペをディスカウントショップに買いに行った方が早いし、安くないっすか?」と笑いながらあおいに言う。
「そういうのよくわかんないけど、ドクペは普通に買うしかなくなったよね~」
あおいのぼやきに似た呟きを聞いた空はホッとした表情を浮かべ「よかった…」と小さく声を漏らす。
「…それにしてもさ、どうしてわざわざ風邪シロップを炭酸割なんかにしようと思ったの?」
そんな順子の素朴な疑問に「ドクターってお医者さんの事でしょ? それにドクターペッパーってお薬っぽい名前だから、家にあった風邪シロップを炭酸で割ってみたの…そしたらドクペみたいな味になったから、本物はこれで、ジュースは偽物なんじゃないかな~って」と笑顔であおいが説明をする。
「本物とか偽物のドクペって考え方…やっぱ、あおいちゃんってアナーキーだわ」
そう言って順子は深いため息を吐く。
そんな会話を聞きながら丸山は、世の中には絶対改善した方がいいだろうと高校生の自分が思っても、なかなか制度の改善が大人たちの事情で進まないと感じる事が多いのだが、今回の未成年の薬物過剰摂取問題に関しては、珍しく迅速に大人たちが対策をしたと感じていた。
「――なんか大人が勝手に決めた不条理な制度に負けたみたいで悔しい…」
さすがに大人たちが国が制度として決めた事には抗いようがなかった様で、その言葉には敗北感を滲ませるアナーキーあおいであった。
「うぅ~」
赤々とした光を放つストーブに手をかざしているあおいに、加山が「寒そうですね」と声をかける。
「私、皮下脂肪が一桁台だから、冬場は寒さが骨身にしみるのぉ~」
「皮下脂肪が一桁台って…男子でもめったにいないのに」
驚く加山にあおいは「皮下脂肪が少ないと、水に沈むって知ってた?」と言う。
「そうなんですか?」
「筋肉は重いから、脂肪が少ないと水に浮かばないのぉ――大きく息を吸って肺を浮袋代わりにするぐらいだもん」
「そんなんじゃ、水泳の授業大変なんじゃ?」
驚き顔の加山にあおいは気合と筋力で泳ぎ切ると笑う。
「気合っすか…」
加山が絶句していると、空が食堂での買い出しから戻って来た。
「さっぶ~」
そう言いながらあおいの横の椅子に座った空は、白い紙袋から肉まんを取り出す。
「あ、美味しそう」
肉まんを食べ始めた空に、あおいはよだれを垂らしそうな目で見た。
「寒い日にはやっぱり肉まんですよね~」
「まだ残ってた?」
「肉まんはあと三つくらいだったかな? アンマンとピザまん、カレーマンも残ってたから、今行けば買えると思いますけど」
「う~、食べたい…でも、外寒いから嫌だしなぁ…」
「珍しい、あおい先輩が寒さを理由に食欲を優先させないなんて」
茶化すように言う加山の言葉にあおいは肩を竦める。
「食堂は向かいの建物だから、いったん外に出ないといけないのがなぁ…風邪悪化しちゃいそうだし」
「え? 風邪ひいてるんですか?」
心配そうな顔になった空にあおいは、午後からずっと寒気が止まらないのだという。
「風邪薬は?」
「飲んでない」
「風邪はひき始めが大切って言うから、早めに飲んだ方がいいですよ」
空のアドバイスにあおいは頷き「帰りに風邪薬買おうっと…」呟く。
「なんか最近、未成年が市販の風邪薬を買う場合は、購入制限があるらしいっすね」
「購入制限?」
あおいは初めて聞く話だったらしく、不思議そうな顔で加山を見る。
「なんか、俺達ぐらいの若い世代の間で、幻覚が見えたりするって噂を聞いた連中が市販の風邪薬を大量に飲んで、救急車で運ばれる事が増えてるらしいです」
「あ~、OD(オーバードウズ:薬物過剰摂取)ってやつでしょ? 興味本位で初めて繰り返しているうちに薬物中毒になって、臓器不全とかを起こすし、死ぬ方がマシって思うぐらい苦しむらしいですよ」
「空ちゃん詳しいね」
あおいの言葉に空は「うちのママ、薬剤師だから」と笑う。
「なんかすげ~」
「薬剤師と言っても、調剤薬局のパートさんだよ」
「パートさんでもお薬のプロってなんかすごいね」
感心するあおいと加山に空は嬉しそうな表情になる。
「どんなお薬でも量が多いと毒になるってママが言ってたから、風邪薬もそうなんでしょうね」
「ああ、薬のコマーシャルなんかだと、用法・容量を守って正しくお使いくださいって注意アナウンスが最後に入ったりするもんな」
空の話に思い当る事があったのか、加山は納得した様であった。
「購入制限って事は、風邪シロップとかも一本しか買えないのかなぁ」
「たぶん…って、あおい先輩は風邪薬はシロップ派?」
「粉末の風邪薬は苦いから嫌いだし、カプセルとかは固いのが喉を通る感じが嫌い」
それに比べて風邪シロップは甘くておいしいから好きだとあおいは言う。
「甘い風邪用シロップって子供用の奴ですか? 咳止めなんかだと大人用のシロップもあったと思いますけど…」
「よくわかんない」
あおいの返答に空は「子供用の薬だと服用年齢って15歳までだったはずなので、高校生が飲んでも効くんですか?」と首を傾げる。
「なんか効きが悪そうだから、いつも多めに飲んでるよ」
そんなあおいの言葉を聞いた空はぎょっとした表情を浮かべた。
「多めって…どのくらいですか?」
「コップに半分ぐらい」
コップ半分の風邪用シロップの味を想像して加山は「くどそう」と呟く。
「シロップを炭酸水で割ってるからくどくないし、ドクターペッパーみたいな味になるから美味しいよ」
衝撃的なあおいの風邪シロップの服用方法を聞いた空は頭を抱える。
「…ありえない」
信じられないといった様子の空にあおいは「たまにドクターペッパーが飲みたいのに買えなかった時にも、風邪用シロップの炭酸割りを飲む事もあるよ」と無邪気に笑う。
「それヤバすぎです! 絶対やめてください!」
悲鳴のような空の発言に、あおいが不思議そうな顔をして首を傾げる。
「風邪用シロップはジュースなんかじゃありません! ——さっきも言った様に、お薬は使い方や量を守らないと毒になるから、先輩、身体壊しちゃいます!」
「え~、でもぉ、今まで何ともなかったよ?」
「それは運が良かっただけかもです――お医者さんとか看護師さん、薬剤師さんから絶対に怒られる奴です」
はっきりきっぱり空に言い切られたあおいは、それでも納得できないのか「炭酸水で薄めてるんだから、そんなに怒らなくても――ドクターペッパー代わりにもなるし、栄養ドリンクみたいなものなのに」とブツブツと不満そうに呟く。
「俺、ドクペ好きだから、あおい先輩の言ってる事わかるなぁ――大阪ってドクペ売ってる店って限られてるし、自販機では売ってないから、飲みたくなった時に買いに行くの大変なんだよ」
「ちょっと、光君まで!」
あおいに賛同するような事を言う加山に空が抗議の声を上げる。
「空ちゃんは大げさなんだよ、インスタント食品とかお菓子だって体に悪いって言われてるけど、全然問題無いんだからさ」
加山の言葉を聞いた空は、これ以上言っても無駄と思ったのか、それ以上の反論はせず、深いため息を吐いた。
あおいの危険な風邪シロップ服用方法が発覚した数日後、丸山は空から相談を受けていた。
「風邪用シロップの炭酸割りだって⁈」
空から話を聞いた丸山は驚きのあまり目をむいて絶句する。
「あおい先輩、風邪の時以外にも、ドクターペッパーを飲みたくなった時にそうやって飲んでるらしくって…」
「あれの容量、付属の小さなキャップに一杯とかだろ?――言われてみれば味は似てるかもしれないけど、炭酸で割っても薬の過剰摂取に変わりはないんだから、さすがにそれはヤバいっしょ」
「ですよねぇ」
事の重大さを丸山が理解してくれた事にホッとしながら空は頷く。
「それに炭酸水でお薬を飲むのも危ないらしいんです――お薬が体に吸収されるスピードがお水で飲むのと違うんで、効きすぎたりする事もあるらしくって」
「飲み薬って水か白湯で飲めって書いてあるもんな」
丸山に空は頷いてみせる。
「あおい先輩の場合、トリップしたいからって理由じゃないけど、やってる事はODをやっている人たちと変わんないですよ」
空の話を聞いている丸山は、腕組みをして難しい顔で考え込んだ。
「空ちゃんの心配は判るし、正論だとは思うけど、本人が良いと思っている事を止めさせるのって至難の業だよ――本人は悪い事をしている自覚がないんだから」
「ずっと監視する訳にも、力ずくで止めさせる訳にもいかないですしねぇ…」
丸山の意見に空も異論はなく、困ったといった表情を浮かべる。
「それにあおいちゃんってお気楽だけど、猪突猛進的なとこもあるから、壁にぶつからないと、聞く耳を持たないと思うよ」
「あ~、それ、なんとなくわかります」
「注意してもやめなくて、体を壊しちゃうとかは最終的に自己責任って話になるけど、他の連中が影響を受けてマネしないようにだけ注意をお願いできるかな?」
俺も出来るだけ気を配るからと言う丸山に空は頷く。
「光君もあおい先輩に賛同するような事言っていたから気を付けなくっちゃ」
「…って、加山君もかよ」
丸山の表情が呆れ顔に変わる。
「体に悪いって言われているインスタント食品やお菓子も食べてるけど、問題無かったんだから、心配しすぎだって言われたんですよ」
「だぁ~、食いもんと薬を一緒にするな~!」
頭を抱える丸山に苦笑いを浮かべるしかない空であった。
それから更に数日後。放課後の生物実験室では緊急の勉強会が行われる事となった。
「食品とサプリメント、薬の定義がわかる人」
各実験台に着席した部員たちを前に、黒板前の教壇に立った丸山が質問をする。
「食品は、俺達が普段食べてるごはんや肉、野菜の事…でいいのかな?」
髙橋が少し考えるように発言する。
「だいたいそんな感じだね…。食品の定義は生命活動必要なエネルギーや、生存に必要物質って事だそう」
丸山はそう言うと、黒板に「たんぱく質(肉、魚、大豆、卵):主に筋肉などを構成する栄養素」「カルシウム(牛乳、乳製品、海藻、小魚):主に骨や歯などを作り、各機能の調整をする栄養素」「カロチン類(緑黄色野菜):主に皮膚や粘膜を保護し、各機能を調整する栄養素」「ビタミンC(淡色野菜、果物):主に各機能の調整をする栄養素」「炭水化物(穀物、砂糖、芋類):エネルギーの源になるもの」「脂肪(油脂類、脂肪が多い食品):エネルギーの源になるもの」と書き出していく。
「これが日本の栄養学に使われる6つの基礎栄養素なのは家庭科の授業とかで習ったと思う」と丸山は説明する。
「それに対して医薬品——いわゆるお薬の定義は、ヒトや動物の病気を診断して治療、予防するものの事なんだ」
「…で、サプリメントの定義はビタミンやミネラル、アミノ酸といった栄養補助を目的としたり、ハーブなんかの薬効を期待するものの総称なんだそうだ」
事前に調べてきた資料を手に丸山は説明を続ける。
どうやら、あおいの危ない風邪シロップ摂取の件があったので、部員たちに食品と医薬品の違いを知ってもらいたいという事での緊急勉強会を開いたらしい。
「お菓子とかは何に分類されるんすか?」
加山の質問に丸山は「使われてる原料とか分類の方法によって違うけど、ポテチなんかは油脂扱いなんだぜ」と笑う。
「え? 油脂? 原材料がジャガイモとかトウモロコシなんだから、お野菜とか炭水化物じゃないんですか?」
ポテチなどのスナック菓子は野菜や炭水化物だからと、ごはんやパンの代わりに食べる事が多い律子が驚いたように訊く。
「普通そう思うよな。俺もずっとそう思っていたんだけど、栄養学的には油脂扱いなんだって」
「…って事は私、ごはん代わりに油を食べていたって事⁈」
自分の思い違いを知って、律子はショックを受けた様子で思わず声を上げた。
「栄養学自体、俺達ってなんとなくしかわってないし、食品とサプリ、医薬品の線引きってさらによくわかんないところあるよな」
「最近のドラッグストアって、同じお店でお薬だけじゃなくサプリや食品も買えちゃいますもんね」
トキが丸山の話に頷いて笑う。
「薬についてもいろいろ違いがあるらしくて、病院で医師が服用を指示するのが処方薬で、処方薬は市販薬より薬効成分が濃い…というか多いらしい」
「もしかして、病院で貰った薬の方が同じ名前の薬でもよく効くってのは、濃度が違うからって事?」
順子の質問に丸山は頷く。
「そうみたいだね。——ただ薬って使い方を間違えたり飲み合わせが悪いと、他の病気を引き起こす事もあるんで薬剤師さんがいるそうなんだ」
「あ~、空ちゃんのお母さん、薬剤師さんって言ってたもんな」
加山がそう言って空を見る。
「お医者さんは人間の体の仕組みとかを勉強していて、患者さんの症状から病気の原因を見つけて治療するのが専門だけど、お薬の飲み合わせなんかの細かいところまで勉強している訳ではないから、お薬の専門家である薬剤師が処方ミスが無いかをチェックしたり、患者さんの話を聞いてお薬の飲み方なんかのアドバイスをする事もあるって言ってたよ」
「へぇ…薬剤師ってそういうお仕事だったんだ」
そう言ってユウは、薬剤師ってかっこいい仕事かもと呟く。
「一般のドラッグストアなんかの市販薬は、処方薬にくらべれば薬効成分は少ないけど、それでも医薬品だから、薬品の販売資格を持った人がいないとダメなんだって」
「…へえ、そんな資格もあるんっすね」
感心した様な藤原に「今の世の中、何でも資格がいるもんな」と高橋が言う。
「確かに…うちみたいな小さな工務店で設計するぐらいなら二級建築士の資格で十分だけど、大きなビルなんかなら一週建築士の資格が必要だし、内装工事で配線が必要になる電気工事だと電気工事の資格が必要になってきますもんね」
親が工務店であるせいか、家業関連の資格を連想するらしかった。そんな藤原たちの会話が納得できないのか、あおいが口を開く。
「え~、自分たちだけで独占する為に業界とかで資格って勝手に決めたんだから、そんなのにどうでもいいんじゃない~」
「勝手にって…」
不満そうなあおいの発言に、一同言葉を失う。
「だって、調理師免許が無くてもお料理できるし、運転免許を持っていなくても車とかバイクを運転できる人いるよ?」
「あおいちゃんって、かなり突拍子ないとは思っていたけど…アナーキーだなぁ」
順子は困惑顔で呟くと、「アナーキーって?」とあおいは首を傾げた。
「アナーキーってのは無政府状態とか自己判断って意味。それぞれが社会ルールを無視して好き勝手やったら無茶苦茶な世界になっちゃうじゃない」
「なんで? 日本って自由主義なんでしょ? それなのにルールだとか資格だらけなのっておかしいよ」
「わ~」
まさかのあおいの反論に順子は頭を抱える。
「…あのね、あおいちゃん。ルールはみんなが快適で安全に暮らせるようにって決められた事なんだ——資格だって専門知識が無いと事故を起こしたり病気になったり、誰かの不利益にならないようにちゃんと勉強して必要な知識とか技術を持っていますってのを証明するものなんだよ」
小さい子供を諭すように丸山が説明をするが、あおいはいまいち納得できていない様子であった。そんなあおいの不満を感じ取ったのか、高橋が口を開く。
「あおいちゃんはふぐを食べるのなら、ふぐの調理師免許を持った人がさばいたのを食べる? それとも自分がさばいたのを食べる?」
「え~? ふぐの専門の人のやつ」
「どうして?」
「私、ふぐのさばき方知らないから、ぐちゃぐちゃになりそうなんだもん」
毒があるからという答えを期待していた一同は、あおいの返答を聞いてずっこける。
「…そっちか~」
苦笑いを浮かべながら高橋は気を取り直して言葉を続ける。
「ふぐには猛毒のパーツをいくつかあって、昔からふぐは毒を持っている魚ってのは知られていたんだけど、毒のあるパーツがどこなのかわかんない…でも美味しい魚だから食べたいってので、一か八かの賭けでふぐを食べて死ぬ人が多かったんだ――ふぐの調理師免許制度が出来てからは、調理する人がちゃんとその猛毒部分を取り除くようになったから、ふぐを食べて死亡する事例が随分減ったんだよ」
「…そうなんだ」
「さっきも言ってたように、資格とか社会的なルールってのは自分だけじゃなく、他人を傷つけないようにって考えられた制度でもあるんだけど…わかるかな?」
髙橋の問いかけにあおいは小さく頷く。
「あおいちゃんが言うように、たまに変だなって思うルールとか資格もあるけどさ、大部分はみんなを守る為に作られた決め事なんだ」
「そっか~」
ようやく社会ルールや資格制度についてあおいが納得した様だったので、丸山は今回の目的の一つであった、あおいの風邪シロップ服用問題に話題を切り出す。
「そういえばさ、あおいちゃん、風邪シロップを炭酸割にして飲んでる事もあるらしいね?」
「あ~前はね」
「前は?」
予想外のあおいの返事に丸山は聞き返す。
「風邪シロップの炭酸割美味しいんだけど、すぐお薬の瓶が空になっちゃうの」
「…まあ、そうだろうね」
「でね、薬局に買いに行ったら売ってくれないの」
「?」
あおいが何を言っているのか解らないといった表情を浮かべた丸山を見たトキが「未成年の場合、風邪薬なんかの服用薬では購入制限されるようになったってニュースで言ってましたよ」と説明をする。
「そうそう。買う時に学生証も見せないとダメだし、お店の人にいろいろ聞かれる様になっちゃってたのぉ」
「今ってそうなってるんだ…」
他のメンバーも、身分証明書提示や使用目的など詳しく話さないといけないのを知らなかったらしく、顔を見合わせる。
「んでね、すぐに無くなっちゃったから買いに行ったら、前回買ってからそんなに経っていないし、そんなに早くなくなるはずがないお薬だからって売ってくれなかったの」
あおいの話から、どうやら店の方で未成年の服用薬の購入記録を取っているようなのを推察することが出来た。
「んでね、他の薬局にも行ったんだけど、そこでも学生証を見せないといけなかったし、一個しか売ってくれなくて…そこも次から売ってくれないんだよ?」
「——ってか、他の薬局まで回ったんだ」
順子が呆れ顔になっている横で、加山が「風邪薬として使うより、ジュース代わりに飲んでることが多いみたいなんで、普通にドクペをディスカウントショップに買いに行った方が早いし、安くないっすか?」と笑いながらあおいに言う。
「そういうのよくわかんないけど、ドクペは普通に買うしかなくなったよね~」
あおいのぼやきに似た呟きを聞いた空はホッとした表情を浮かべ「よかった…」と小さく声を漏らす。
「…それにしてもさ、どうしてわざわざ風邪シロップを炭酸割なんかにしようと思ったの?」
そんな順子の素朴な疑問に「ドクターってお医者さんの事でしょ? それにドクターペッパーってお薬っぽい名前だから、家にあった風邪シロップを炭酸で割ってみたの…そしたらドクペみたいな味になったから、本物はこれで、ジュースは偽物なんじゃないかな~って」と笑顔であおいが説明をする。
「本物とか偽物のドクペって考え方…やっぱ、あおいちゃんってアナーキーだわ」
そう言って順子は深いため息を吐く。
そんな会話を聞きながら丸山は、世の中には絶対改善した方がいいだろうと高校生の自分が思っても、なかなか制度の改善が大人たちの事情で進まないと感じる事が多いのだが、今回の未成年の薬物過剰摂取問題に関しては、珍しく迅速に大人たちが対策をしたと感じていた。
「――なんか大人が勝手に決めた不条理な制度に負けたみたいで悔しい…」
さすがに大人たちが国が制度として決めた事には抗いようがなかった様で、その言葉には敗北感を滲ませるアナーキーあおいであった。
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