5 / 11
レヴェレナット ―起ノ壱―
彼女の名はレヴェレナット
しおりを挟む
「優くん!!」
後ろから幹の声が聞こえる。
俺を呼ぶ声が。
でも、今は俺なんかどうでもいい。
幹の家が燃えているんだ。
それも、稀に見ないほどの大きな炎によって。
家を隠すように、赤い炎がメラメラと燃え上がっている。
これは完全に全焼だろう。
家はもうダメだ。
いや、今心配すべきは家じゃない。
そうだ、博士だ。
博士は無事なのか?
わからない、中にいるのかどうかも。
どうする、こういう時はどうすればいい?
ああ、そうだ、とりあえず119だ、消防車を呼ばなきゃ――
「優くんッ!!」
「なんだよ! 早く消防車を呼ばないと――」
「消防車は野次の人が呼んでくれてる!! それよりも博士だよ!!!」
幹の血相がいつになくひどい。
鬼のような形相とまではいかない。
でも、間違いなく怒っている。
そして、焦っている。
「すいませーん!!! だれか、この家から子供が出てきたとこを見た人はいませんかー!!!」
叫んでいる。
ただ口元に手を当て『恐ろしいね』なんて話すだけのあいつらに。
スマホを向けて動画を撮る学生達に。
無駄だ、こいつらはゴミだ。
こいつらは、必死になる俺たちを見て嘲笑するタイプのクズの群れだ。
こんなやつら、あてにならない。
「藤島さん・・・」
烏丸は、必死になって声を上げる幹を見つめて、ギュッと両の手を合わせて握っている。
まるで祈るように。
そうだ、こんなに燃え上がった炎を止める術なんて、俺らにはない。
無駄に手を出せば悪化するかもしれない。
俺たちは祈るしかない。
だとしても、祈ってるだけなんて、そんなのって!
「だれか、白衣を着た子供を知りませんかー!!」
まだ声を上げている。
でも、返ってくる声はない。
聞こえてくるのは『子供がいるのかしら』というひそひそ声。
ダメだ、博士は外にいない。
まだ中にいるかもしれない。
だとしたら、早く助けないと死んでしまう。
いや、最悪の場合、もう死んでいるかもしれな――
「優くん」
そんな時だ。
冷淡な声が聞こえてきた。
確実に幹の声だ。
慌てふためいてるだけの俺を、言の圧で潰そうとしているような、そんな声。
普段の幹からは、いや、今までの幹からは聞いたことのない声。
優しい幹の声色は、どこにもない。
俺の背中は凍っている。
何か怖いものを見た時の、聞いた時の、あの寒気に 悪寒に似ている。
多分、今の幹は恐ろしい。
恐ろしいんだろう。
「優くん、博士、まだ家にいるかもしれない」
「・・・ああ」
「私さ、こんなポンコツでも、一応機械なんだよね」
「・・・」
幹の言おうとしてることがわかる。
分かってしまう。
だから怖いんだ。
幹の声色に恐怖の色が見えるのは、幹が言おうとしてることが分かってしまうからだ。
幹は、この炎に包まれた家へ飛び込もうとしているのだ。
燃え盛っているあの家に。
「ダメよ」
俺が言葉を吐く前に、俺の後ろで息をのんでいた烏丸が声を上げた。
その声は荒くもなく、しかし落ち着いてもいない、ただ、ずっしりと重い。
そんな声だ。
烏丸の額には汗が流れている。
冷や汗か、火の熱さによって噴き出る汗か。
どちらにしても、頬を伝うそれは、烏丸の鋭い眼差しを強調していた。
さっきまで和やかで、笑顔でいた二人は、ただ見つめあっている。
いや、睨みあっている。
「まだ、何も言ってないよ」
言葉が一つ、この異様な空間に落ちるたびに、燃え上がる炎はより強くなっていく。
より、不安が募る。
より、緊迫が広がる。
より、時間が消える。
「あなた、あの家に行くつもりでしょ」
「大丈夫だよ、私、機械だもん」
少し俯いている幹の表情は、どこか悔しそうな顔をしていた。
両の手を握りしめながら、ぐっと、こらえているような。
「機械じゃない、藤島さんは人間よ」
「あはは・・・うれしいけど、機械だよ。これが事実だもん」
「機械だからって、あの火の中に突っ込むなんて、そんなのダメよ」
「なんで? だいじょうぶだよ? 燃えないよ、わたし」
嘘だ。
いや、正確には半分嘘だ。
幹は確かに機械だ。
幹の身体の骨組みは特殊なもので作られていて、あらゆるものに耐性がある。
きっと火も効かない。
でも、外側の皮膚は違う。
燃えるのだ、皮膚は。
焼けた皮膚はただれ、そのうち幹の中身を晒すことになる。
それはもう、幹が人間でないと証明するようなものだ。
「とにかくだめよ、消防が来るまでは――」
烏丸がそう発した時だった。
「博士は!! 今も助けを求めてるかもしれない!! 私の名前を呼んで、必死にもがいてるかもしれない!! それなのに、わたしに、ここでひたすら待てっていうの!?」
何かの糸が切れたように、幹は声を震わせながら叫んだ。
さっきまでのにらみ合いの時の目じゃない、幹の目には、人間らしい涙が見える。
幹は、声を、身体を震わせながら、烏丸に向かって叫び続けた。
「博士が中にいるとしたら、私がやるべきことは、人造人間として、機械として、博士を助けること!! そうでしょ? ちがう!!?」
怒号だ。
焦りと怒りが混じっている。
そんな幹を前にしても、烏丸は変わらなかった。
「違うわ。あなたが今すべきことは、消防車を待つことよ」
それは、言葉だけではない。
睨みつける目も、握りしめている拳も、流れていく汗も、変わらない。
でも、若干だけど、烏丸も震えている気がする。
「・・・ッ」
幹は震えている。
下を向いている。
下に垂れていく煌めく雫は、汗と涙が混じったような、そんなような――
「ごめん、愛理・・・わたし、ダメみたいだ」
その瞬間だった。
幹が炎に包まれた家へと走り出したのは。
「なっ!? ダメよ、だめよ!! 待って、幹ッ!!」
その後ろを追いかける烏丸。
全速力で、転びそうになりながら追いかけている。
でも、ダメだ。
幹は足が速い。
単純な力、速さ、そういったもので幹に勝てるやつはいない。
幹は人間でありながら、機械でもあるのだから。
「まって! 幹!!」
烏丸の声は止まない。
けれど、幹も止まることはない。
いつの間にか、幹は炎の中へと潜り込んでいった。
「幹・・・」
炎の前で、幹は倒れている。
膝をつき、肘をつき、倒れている。
野次馬は大騒ぎしている。
少女が飛び込んだ、その事実に驚く人たちで溢れかえっている。
そして、相も変わらず増えていくのは、人とスマホだ。
あいつらが撮っているのは、炎の中に飛び込んだ少女と、家の前でひれ伏すように倒れる少女の画だ。
「幹・・・みき・・・そんなことしたら・・・」
烏丸は何かをぶつぶつと喋っている。
震えた声で、小さな声で、まるで怯えたように。
一分、二分、未だに進展はない。
消防も来ない、幹は出てこない。
烏丸は打ちひしがれている。
俺は、ただ、動けないでいる。
そんな俺に、一つ視線が飛んできた。
烏丸だ。
次に飛んできたのは、軽蔑するような眼差しだった。
そして、次に飛んできたのは
「あなたは、なんなの?」
苦しそうな声だった。
その声が聞こえた瞬間、炎の中から大きな音がした。
何かが崩れるような音。
これは、そうだ。
家が倒壊したのだ。
だが、そんな様を見ることもしないで、烏丸は俺を見つめて話しかけてくる。
「なんなの・・・なんなの・・・あなたは、なんなのよ・・・」
まるで壊れた機械のように、同じ言葉を話している。
俺はただ、動けないでいる。
拳を握ることも、声も上げることもできない。
何もできないままでいる。
「ねえ、あなた、幹が好きなんでしょ? なんでそんな顔してるのよ・・・ねえ!!」
烏丸は声を荒げている。
顔、か。
今の俺は一体どんな顔をしているのだろうか。
固まってしまった俺は、一体、どんな――
「あなたは・・・クズよ・・・幹を好きになったんなら、止めないと・・・」
ああ、そうだ。
止めないと、止めないとな。
でも、幹は死なないんだ。
幹は、機械なんだ。
死なないんだ。
死なないのに、なんで?
何で止めるんだよ。
『ウー』『ウー』
そんな時だ。
消防車が到着したのは。
―――
消火活動は続いたまま。
炎は未だ膨らんでいる。
そして、そんな様を俺は、ただ見ている。
烏丸はというと、地面に体操座りしながら顔を膝にうずめている。
しかし、疑問だ。
何でこんなに炎が燃え上がっているのに、隣の家や近くの草木には引火しないんだ。
たまたまだろうか。
というか、幹は大丈夫だろうか。
まだ出てこないけど。
博士、いるだろうか。
そんなことを考えていた時だった。
『おい!! 火の中から人が!!』
そんな声が聞こえたのは。
俺は炎を凝視した。
垂れる汗が目に入っても決して瞑らず、ただ炎を見ていた。
そして、それは出てきた。
「み・・・き・・・うっ、おえぇ!!」
それをみて、烏丸は嘔吐している。
俺は、ただ見ている。
彼女を。
「わたしは・・・」
小さな声が聞こえた。
あの炎の中から現れた少女の声だ。
その声は、次の瞬間、野次や消防隊を釘付けにした。
「わたしは、わたしは機械人間、レヴェレナット!! 私の大切な人、藤島樹里を、誰か知りませんか!!!」
所々に焼けただれた皮膚がこべりつき、所々に黒鉄色の機械仕掛けが垣間見えるそれは、そう叫んだ。
藤島幹は、レヴェレナットは、炎を背にして自らの姿を見せつけた。
俺はただ、見ているだけだった。
後ろから幹の声が聞こえる。
俺を呼ぶ声が。
でも、今は俺なんかどうでもいい。
幹の家が燃えているんだ。
それも、稀に見ないほどの大きな炎によって。
家を隠すように、赤い炎がメラメラと燃え上がっている。
これは完全に全焼だろう。
家はもうダメだ。
いや、今心配すべきは家じゃない。
そうだ、博士だ。
博士は無事なのか?
わからない、中にいるのかどうかも。
どうする、こういう時はどうすればいい?
ああ、そうだ、とりあえず119だ、消防車を呼ばなきゃ――
「優くんッ!!」
「なんだよ! 早く消防車を呼ばないと――」
「消防車は野次の人が呼んでくれてる!! それよりも博士だよ!!!」
幹の血相がいつになくひどい。
鬼のような形相とまではいかない。
でも、間違いなく怒っている。
そして、焦っている。
「すいませーん!!! だれか、この家から子供が出てきたとこを見た人はいませんかー!!!」
叫んでいる。
ただ口元に手を当て『恐ろしいね』なんて話すだけのあいつらに。
スマホを向けて動画を撮る学生達に。
無駄だ、こいつらはゴミだ。
こいつらは、必死になる俺たちを見て嘲笑するタイプのクズの群れだ。
こんなやつら、あてにならない。
「藤島さん・・・」
烏丸は、必死になって声を上げる幹を見つめて、ギュッと両の手を合わせて握っている。
まるで祈るように。
そうだ、こんなに燃え上がった炎を止める術なんて、俺らにはない。
無駄に手を出せば悪化するかもしれない。
俺たちは祈るしかない。
だとしても、祈ってるだけなんて、そんなのって!
「だれか、白衣を着た子供を知りませんかー!!」
まだ声を上げている。
でも、返ってくる声はない。
聞こえてくるのは『子供がいるのかしら』というひそひそ声。
ダメだ、博士は外にいない。
まだ中にいるかもしれない。
だとしたら、早く助けないと死んでしまう。
いや、最悪の場合、もう死んでいるかもしれな――
「優くん」
そんな時だ。
冷淡な声が聞こえてきた。
確実に幹の声だ。
慌てふためいてるだけの俺を、言の圧で潰そうとしているような、そんな声。
普段の幹からは、いや、今までの幹からは聞いたことのない声。
優しい幹の声色は、どこにもない。
俺の背中は凍っている。
何か怖いものを見た時の、聞いた時の、あの寒気に 悪寒に似ている。
多分、今の幹は恐ろしい。
恐ろしいんだろう。
「優くん、博士、まだ家にいるかもしれない」
「・・・ああ」
「私さ、こんなポンコツでも、一応機械なんだよね」
「・・・」
幹の言おうとしてることがわかる。
分かってしまう。
だから怖いんだ。
幹の声色に恐怖の色が見えるのは、幹が言おうとしてることが分かってしまうからだ。
幹は、この炎に包まれた家へ飛び込もうとしているのだ。
燃え盛っているあの家に。
「ダメよ」
俺が言葉を吐く前に、俺の後ろで息をのんでいた烏丸が声を上げた。
その声は荒くもなく、しかし落ち着いてもいない、ただ、ずっしりと重い。
そんな声だ。
烏丸の額には汗が流れている。
冷や汗か、火の熱さによって噴き出る汗か。
どちらにしても、頬を伝うそれは、烏丸の鋭い眼差しを強調していた。
さっきまで和やかで、笑顔でいた二人は、ただ見つめあっている。
いや、睨みあっている。
「まだ、何も言ってないよ」
言葉が一つ、この異様な空間に落ちるたびに、燃え上がる炎はより強くなっていく。
より、不安が募る。
より、緊迫が広がる。
より、時間が消える。
「あなた、あの家に行くつもりでしょ」
「大丈夫だよ、私、機械だもん」
少し俯いている幹の表情は、どこか悔しそうな顔をしていた。
両の手を握りしめながら、ぐっと、こらえているような。
「機械じゃない、藤島さんは人間よ」
「あはは・・・うれしいけど、機械だよ。これが事実だもん」
「機械だからって、あの火の中に突っ込むなんて、そんなのダメよ」
「なんで? だいじょうぶだよ? 燃えないよ、わたし」
嘘だ。
いや、正確には半分嘘だ。
幹は確かに機械だ。
幹の身体の骨組みは特殊なもので作られていて、あらゆるものに耐性がある。
きっと火も効かない。
でも、外側の皮膚は違う。
燃えるのだ、皮膚は。
焼けた皮膚はただれ、そのうち幹の中身を晒すことになる。
それはもう、幹が人間でないと証明するようなものだ。
「とにかくだめよ、消防が来るまでは――」
烏丸がそう発した時だった。
「博士は!! 今も助けを求めてるかもしれない!! 私の名前を呼んで、必死にもがいてるかもしれない!! それなのに、わたしに、ここでひたすら待てっていうの!?」
何かの糸が切れたように、幹は声を震わせながら叫んだ。
さっきまでのにらみ合いの時の目じゃない、幹の目には、人間らしい涙が見える。
幹は、声を、身体を震わせながら、烏丸に向かって叫び続けた。
「博士が中にいるとしたら、私がやるべきことは、人造人間として、機械として、博士を助けること!! そうでしょ? ちがう!!?」
怒号だ。
焦りと怒りが混じっている。
そんな幹を前にしても、烏丸は変わらなかった。
「違うわ。あなたが今すべきことは、消防車を待つことよ」
それは、言葉だけではない。
睨みつける目も、握りしめている拳も、流れていく汗も、変わらない。
でも、若干だけど、烏丸も震えている気がする。
「・・・ッ」
幹は震えている。
下を向いている。
下に垂れていく煌めく雫は、汗と涙が混じったような、そんなような――
「ごめん、愛理・・・わたし、ダメみたいだ」
その瞬間だった。
幹が炎に包まれた家へと走り出したのは。
「なっ!? ダメよ、だめよ!! 待って、幹ッ!!」
その後ろを追いかける烏丸。
全速力で、転びそうになりながら追いかけている。
でも、ダメだ。
幹は足が速い。
単純な力、速さ、そういったもので幹に勝てるやつはいない。
幹は人間でありながら、機械でもあるのだから。
「まって! 幹!!」
烏丸の声は止まない。
けれど、幹も止まることはない。
いつの間にか、幹は炎の中へと潜り込んでいった。
「幹・・・」
炎の前で、幹は倒れている。
膝をつき、肘をつき、倒れている。
野次馬は大騒ぎしている。
少女が飛び込んだ、その事実に驚く人たちで溢れかえっている。
そして、相も変わらず増えていくのは、人とスマホだ。
あいつらが撮っているのは、炎の中に飛び込んだ少女と、家の前でひれ伏すように倒れる少女の画だ。
「幹・・・みき・・・そんなことしたら・・・」
烏丸は何かをぶつぶつと喋っている。
震えた声で、小さな声で、まるで怯えたように。
一分、二分、未だに進展はない。
消防も来ない、幹は出てこない。
烏丸は打ちひしがれている。
俺は、ただ、動けないでいる。
そんな俺に、一つ視線が飛んできた。
烏丸だ。
次に飛んできたのは、軽蔑するような眼差しだった。
そして、次に飛んできたのは
「あなたは、なんなの?」
苦しそうな声だった。
その声が聞こえた瞬間、炎の中から大きな音がした。
何かが崩れるような音。
これは、そうだ。
家が倒壊したのだ。
だが、そんな様を見ることもしないで、烏丸は俺を見つめて話しかけてくる。
「なんなの・・・なんなの・・・あなたは、なんなのよ・・・」
まるで壊れた機械のように、同じ言葉を話している。
俺はただ、動けないでいる。
拳を握ることも、声も上げることもできない。
何もできないままでいる。
「ねえ、あなた、幹が好きなんでしょ? なんでそんな顔してるのよ・・・ねえ!!」
烏丸は声を荒げている。
顔、か。
今の俺は一体どんな顔をしているのだろうか。
固まってしまった俺は、一体、どんな――
「あなたは・・・クズよ・・・幹を好きになったんなら、止めないと・・・」
ああ、そうだ。
止めないと、止めないとな。
でも、幹は死なないんだ。
幹は、機械なんだ。
死なないんだ。
死なないのに、なんで?
何で止めるんだよ。
『ウー』『ウー』
そんな時だ。
消防車が到着したのは。
―――
消火活動は続いたまま。
炎は未だ膨らんでいる。
そして、そんな様を俺は、ただ見ている。
烏丸はというと、地面に体操座りしながら顔を膝にうずめている。
しかし、疑問だ。
何でこんなに炎が燃え上がっているのに、隣の家や近くの草木には引火しないんだ。
たまたまだろうか。
というか、幹は大丈夫だろうか。
まだ出てこないけど。
博士、いるだろうか。
そんなことを考えていた時だった。
『おい!! 火の中から人が!!』
そんな声が聞こえたのは。
俺は炎を凝視した。
垂れる汗が目に入っても決して瞑らず、ただ炎を見ていた。
そして、それは出てきた。
「み・・・き・・・うっ、おえぇ!!」
それをみて、烏丸は嘔吐している。
俺は、ただ見ている。
彼女を。
「わたしは・・・」
小さな声が聞こえた。
あの炎の中から現れた少女の声だ。
その声は、次の瞬間、野次や消防隊を釘付けにした。
「わたしは、わたしは機械人間、レヴェレナット!! 私の大切な人、藤島樹里を、誰か知りませんか!!!」
所々に焼けただれた皮膚がこべりつき、所々に黒鉄色の機械仕掛けが垣間見えるそれは、そう叫んだ。
藤島幹は、レヴェレナットは、炎を背にして自らの姿を見せつけた。
俺はただ、見ているだけだった。
0
あなたにおすすめの小説
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
二度目の勇者は救わない
銀猫
ファンタジー
異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。
しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。
それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。
復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?
昔なろうで投稿していたものになります。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた
ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。
今の所、170話近くあります。
(修正していないものは1600です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる