(仮)裏クリーンレンジャー

やなぎかゔき

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誕生1

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暗闇の中、しとしとと冷たい小雨が降り注ぐ
スラム街のさらに奥にある、もう人の気配も感じない土地の廃墟の壁にもたれかかる少年がいた
うつむく少年の目に生気はなく、白くにじむ息も弱々しい
「おれもう終わりかな…」
うっすら笑みを浮かべ、重くなった瞼をそのまま閉じようとした時に、一台の車がゆっくり近づいてきた
その車は少年の目の前に停まり、運転手が傘を持ち後部座席へ向かいドアを開ける
降りてきた男はガタイのいい初老の男だった
運転手が初老の男を濡れないように傘を差すが、男は手で制止し一人で少年に近づいてきた
警察か何かかと少年は警戒して構えるが、初老の男は唐突に
「名は何という?」
と笑顔で聞いてきた
少年は頭の中で物心ついてからいつも呼ばれていたを口にした
「…クズ」
伏し目がちにいうと
「そうか、これからうちに来なさい」
初老の男の意外な返事に驚きを隠せなかったが、もう死ぬだろうと覚悟をした身だと、正直安易な考えでついていくことに決めた少年は、立ち上がろうとしたが足に力が入らず地面に手をついてしまった
初老の男は少年の顔を触り、少年が熱を出していることに気づくと
「毛布を」
と運転手に指示し、毛布にくるんだ少年を抱え車に乗せた
街に乗り捨ててあった廃車でボロボロになった車とは違い、黒塗りの高級車で革張りのシートを汚してしまうのではないかと思い、少年は気にするように毛布を全身にまとった
それを察してか、初老の男は少年の頭を自分の膝に乗せた
「気にすることはない、ゆっくり休みなさい」
と、自分のスーツが汚れるのは気にしてない様子だった
その優しい言葉と温かい眼差しで少年の意識は遠のいた

次に目を覚ました時は腕に点滴がされていて、ふわふわのベッドで横になっていた
天井は高く、明るい雰囲気を醸し出している
そこに一人の女性が気が付き
「意識が戻られたようですね、ご主人様をお呼びします」
淡々とした態度に感じる口調で早々と部屋を後にした
少年は何が起こっているのかがまるで分らない状態だった
ここはどこだろう?さっきまで夜で雨が降ってたのに、今は窓から光がさしている。白く綺麗なレースカーテンが風になびいている。そして心地よいベッドで寝ているし、体もだいぶ楽になっている、いや、もう死んでいるのでは?
と考えている中、扉が開くとそこに車に乗せてくれた初老の男が部屋に入ってきた
「だいぶ顔色が良くなったな、二日間寝ていたんだぞ」
とホッとした様子で優しく微笑む
そうか…そんなに寝てたのか…
「医者も熱が下がれば大丈夫だと言ってたし、元気になったみたいでよかった」
初老がそういうと感謝とこれからの不安を感じたが、とりあえず礼はしとかないとと思い
「…ありがとう、助かりました」
と頭を下げた
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