上 下
2 / 2

誕生2

しおりを挟む
その後点滴が外され、消化のよいものなら食べてもいい許しが出た
少年は何となくベッドにいながら食事をするのに抵抗があり、しかも外観は見ていないが、想像しただけでも大きそうな屋敷の一部屋で、一人で食事をとるのはさすがに寂しいと感じた
「おっさん、おれおっさんと食事したい」
少年は初老の男に向かってお願いをした。久々に誰かと食事をしたいとも感じていた
ところが一人の執事が自分の主人をおっさん呼ばわりしたのが不服だったらしく
「ご主人様になんという口を!」
と怒りをあらわにした
少年は正直何で彼が怒っているのかが理解できてない、普通に思ったことを口に出しただけなのにと疑問に思った
それを仲裁するように初老の男は
「いいんだ、私も普段の食事に会話がなく寂しいんだ、それにお前の話を聞いてみたい。」
と少年に言った後
「今まで何も教えられていない子だ、これから私たちでこの子に教えていこう」
さっき怒った執事に向かって優しい笑みでそういうと、執事の肩を軽く叩いた
「申し訳ありません!つい…私もこの子の為に力を尽くします!」
そういうと執事は初老の男に向かって深々と礼をし、少年にも「失礼しました」を頭を下げた
「…ちょっとまって、おれここで暮らすの?」
少年は若干混乱した様子で初老の男に問いかけた
「ああ、お前が嫌じゃなかったらな」
こんないい家に住めるなんて夢みたいだ、見た感じ初老の男も執事たちも悪い印象がない
でもいい話ではあるが裏があるんじゃないかと、今までの経験上での猜疑感も膨らんでくる
それを察してか
「まぁ、最終的にお前が決めればいい、それまで好きなだけいなさい」
と相変わらず優しい面持ちで少年に話しかけた
「…とまぁ、食事の前にお風呂だな。ミハル、の体を洗ってあげなさい」
「かしこまりました」
ミハルというメイドは返事をするや否や少年の体を担ぎ移動する
「ちょ、ちょっと!歩けるから離せよ!」
ミハルは体格が大きいわけでもなく普通の女性という感じなのだが、いくら痩せているとはいえ、暴れている14歳の男子を軽々と担ぐという出来事にも驚いたが
「…ギル?何それ?」
聞いたことのない名前だと初老の男に質問を投げかけるが
「お前の名だ、いつまでもクズとは呼べんだろう」
と笑顔で返された
確かにまともな名前だな、ありがたくいただこう
と、ミハルに抱え込まれながら新しい呼び名にうっとりした
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...