人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

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四章 異世界旅行編 2 トカ国

341 キ町での依頼終了

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 グリズが言うには、流れてきたオークとコボルトから逃げるように、ブゲット盗賊団は町から離れた岩陰に居着いたんだと。
 朝早くに出掛け戻りが遅かったのは、町を出る前にブゲット盗賊団を捕らえている兵士に話を聞いていたからで、廃村に着くのが遅くなったとのことだった。
 廃村に向かう道に通った跡があったのは、元々はブゲット盗賊団が隠れ住んでいたからだと。

 帝国でマジックカプセルを使うのは、低ランクの冒険者か貧困層の住民くらいらしい。
 ただ帝国傘下のトカ国とフギ国には、使用しなくなりつつある技術が下りてくるため、マジックカプセルはまだよく使われているとのことだ。
 俺が出した武器についてグリズさんが聞いてきたので、トレカカードを使って実体化させた武器だと説明したら「カードか……」と軽く流された。
 気になってはいるようだったが、深く聞いては来なかったので説明せずに済んだ。
 異世界がどうのこうのと、説明はできないから。
 ただ、まだ使い捨てのカードから武器を取り出して使っているのか、と言っているように思えて仕方なかった。
 帝国の魔道具技術は、王国よりどれだけ先をいってるのかと考えてしまった。

 せっかくギルドマスターと二人だけで居るのだからと、カズはグリズに帝国領内での奴隷の扱いについて尋ねた。
 グリズの返答を聞く限りでは、奴隷だからと酷い扱いを受けている様には思えなかった。
 町で働いていた奴隷達の殆どは、何かしらの罪で捕らえられ、解放されるための金銭を稼ぐのに、労働力として借りられ安い賃金で働いているとのことだ。
 
 もちろん重い罪を起こした奴隷は危険なので、街で労働力として使われる事はなく、そういった重罪人は国の兵士や冒険者ギルドが監視管理する採石場などで働かされているんだと。
 ただ場所によっては、種族売買された違法奴隷が働かされてる事もある、と。
 証拠がなければ、保護や解放をさせることもできず、貴族と結託して揉み消してるなんて事もあるらしく、仲間の三人を拐われたりしないように気を付けろと、グリズに念を押された。

 道について聞くと、東へ進みキ町と同等程度の町を二ヶ所過ぎると、南北に連なる山脈に見え標高は約3000mはあり、馬車で越えるのは無理だと。
 北に行くにつれて標高は高くなり、5000mを越えるため、南下して標高の低い場所に作られた山越えの道を行くか、国を跨いで迂回して帝国本土を目指すのだと。
 山脈沿いに南下して行くとフギ国があり、トカ国と国境の街で通行許可証を買えば、トンネルを抜けて山脈の反対側に抜けられるが、通行料が高くそこを通るのは貴族や豪商ばかりとのことだ。
 大抵はフギ国に入り、山脈が低くなった場所に作られた山道を通って帝国に向かうのだと。
 同じ帝国傘下の領内のため、トカ国からフギ国に入るのは、身分証を兵士に提示するだけていいらしい。

 そうこう話してる間に、二人はキ町のすぐ近くまで戻って来ていた。
 カズはギルドカードを兵士に提示し、グリズは顔パス状態で町の中に入る。
 二人がギルドの前まで来ると、中か楽しげな話し声が聞こえた。

「賑やかなのはいいが、仕事してるか? サボりはいかんぞ」

「ギルド長じゃないんですから」

「こりゃ手厳しい」

「遅かったから心配しましたよ。カズさんにお願いして」

「聞いた聞いた。カズなら後ろに来てるぞ」

「会えたんですね」

「ああ」

「廃村の方は?」

「オークとコボルトが二十体くらい住み着いてた。カズと討伐してきたから安心しろ。建物も全て燃やしてきたから、新たにモンスターが住み着くことはないだろ」

「それは良かったです。カズさんには無理言ってごめんなさい。お怪我はされませんでしたか?」

「なんともないです。半分以上はグリズさんが倒しましたから。俺はちょこっと手伝っただけなので。それと残念なことに、依頼の木の実は全部食べられてしまったらしく」

「そうでしたか。では依頼者の方には、副長に頼んで連絡してもらいましょう」

「そうだな。ダッチに任せよう」

「溜まった依頼が減ったとはいえ、副長に厄介事を任せてばかりでは、そろそろ怒られそうです」

「依頼の数は減ったんだ。ダッチも大目に見てくれるだろ」

「副長が怒ったその場合は、ギルド長がなんとかしてください」

「なんでわいが?」

「今までサボってきただと思ってください」

 隅にある四人掛けの席で乾燥させた果物ドライフルーツを入れたクッキーを、アレナリアとレラはむしゃむしゃと食べていた。
 ビワが淹れた麦茶を口に運び、ごっくんと口の中のクッキーを飲み込むと、アレナリアはトリンタを後押しする。

「その意気よトリンタ。職員だからって、ギルマスに遠慮することないんだから」

「ほはへふ」

 レラはクッキーを頬張ったまま喋り、何を言っているのか分からない。
 二人はカズを心配する様子もなく、クッキーに手を伸ばし止めようとしない。

「そのクッキーどうしたんだ?」

「トリンタに……貰ったの」

「そうなんですか? すいません」

「い、いえとんでもない。アレナリアさんには今日も仕事を手伝ってもらったので、このくらいは……(カズさんを利用しようとしたお詫びだなんて言えない)」

「役に立ったのなら良かったです。これ依頼書ですね。採取依頼以外は終わってます」

「ありがとうございます。助かりました」

「残りの依頼は町に居る冒険者だけで回せるとのことなんで、俺達は明日にでも立とうかと」

「もうですか!」

「約束の依頼はこれで済みましたし、もう七日も滞在してるのでそろそろ」

「そうですか。報酬は用意しておきますので、出発前に一度ギルドに寄ってください」

「分かりました」

「お~い、夕飯の買い物して宿に戻るぞ」

「は~い。むしゃむしゃ」

「てか、それだけお菓子食べて、夕飯食えるのか?」

「お菓子は別腹だから大丈夫」

 使っていたカップを片付け、散らばったクッキーの食べかすを掃除するビワ。
 アレナリアとレラも珍しく、一緒なって掃除していた。
 トリンタは自分がやるからと言ったが、麦茶とクッキーまで貰ってしまったのだからと、ビワは掃除する手を止めなかった。
 掃除が終わると、四人は夕食の材料を買い宿屋に戻った。
 カズ達が出た後ギルドでは、トリンタがグリズに今日の出来事を報告していた。
 
「さっきのはやっぱりアレナリアに吹き込まれたか。どうりでいつもより厳しい言い方だと思ったぞ」

「ギルド長がもっとしっかりしてくれれば、わたしだってこんな言い方しませんよ。ギルド職員の一人に過ぎないんですから」

「トリンタがしっかりしてるから、わいは楽が出来るんだ。そのくらいのことは気にしないぞ」

「それってこれからもサボるってことですか!」

「あ、いや……そんなことはないぞ。仕事はするさ。でないどダッチにも小言を言われかねん(一言多かったか。しかしトレントの森を抜けて来たのが本当になら……)」

 一方ギルドを出て買い物を終えて宿屋に戻ったカズ達は、夕食を前に明日出発する準備をしていた。

「そうだカズ」

「ん?」

「トレントが生息してた森で拾ったギルドカード、まだギルドに渡してないの?」

「あ……町に来てから、依頼だなんだとあって忘れてた」

「やっぱりね。そんなことだろうと思ってた。カズってそういうところあるのよね」

「悪かったな」

「別にいいじゃない。欠点のない人なんて信用できないもの。それにそういったとこが、カズのかわいいところ。そうよね」

 アレナリアがレラとビワに同意を求める。
 レラは親指を立てて答え、ビワはコクりと頷く。

「俺みたいなおっさんが、かわいいわけないだろ」

「かわいいは言葉の綾よ」

 冗談だと笑いながらアレナリアは言う。

「可愛いのは三人の方だろ」

「「「え!?」」」

 ついボソッと出たカズの言葉を、三人は聞き逃さなかった。
 ビワは赤面して、レラは当然でしょうと満面の笑み、アレナリアは目付きを変えてカズに詰め寄る。

 これはまずいとカズはすぐに話題を変え、グリズから聞いた道を三人に話した。
 高くても安全ならトンネルを通ろうと言うレラ、本心はトンネルを通ってみたいだけであろう。
 急ぐ旅でもないのなら、フギ国から標高の低くなった山道を通ればいいとアレナリアは言う。
 ビワもトンネルには興味を持っていたが、通行料が高いと聞き、大きく迂回をする道を選んだ。

「その通行料っていくらなの?」

 トンネルを通りたいレラは、当然のごとく金額を聞いてきた。

「そこまでは聞いてないや。通るとは言ってないから」

「そこ大事なとこ!」

「各場所で新しい飯を食べるのと、質素な食事にする代わりに、近道…」

「遠回りで決定! 旅はのんびり楽しまないと。アレナリアとビワもそれでいいよね、ね!」

「う、うん。私はそれで……」

「食い意地がスゴいわよレラ」

「外を出歩けないあちしの楽しみは、これしかないんだもん」

「私と一緒ならイリュージョンの魔法で姿を誤魔化して、出掛けられるようになったじゃない」

「でも大きな街とかだとバレることだってあるから危険だって、カズが」

 険悪になりそうになったので、カズはレラの要望を聞き入れ答える。

「場所によりけりだぞ」

 それを聞いたレラ、念を押すように返答する。

だよ」

「さあ、ベッドで寝れるのは暫くないから、ごはん食べて早く寝よう」

 カズはレラの一言をサラッと流す。

「絶対だから。分かったの……? ねぇ、ねえカズ!」

「そうだ、たまにはデザートク…」

「ごまか……デザ!? そうよカニ!」

 レラの意識がこれから先で出会う食べ物から、最近食べてないデザートクラブカニへと移った。
 騒がしいレラを静めるのに、カズはこの日の夕食にレラ所望のカニを用意した。
 キ町での最終日も騒がしく、夕食を済ませた四人は早くに就寝した。
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