人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

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五章 テクサイス帝国編 4 再会と帝都からの旅立ち

822 帝国最大級の麦の産地

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 魔導列車内で昼食を取り、景色を眺めながら東へと向かう。
 二つの大きな街と四つの小さな街を通過して、この日の目的の街が近付くと、窓から見える景色が、黄金色の麦穂が実る麦畑に変わる。   
 麦畑広がり中を魔導列車が進み『麦畑と渡り鳥の街クルル』に到着した。
 広さは裁縫と刺繍の街バイアステッチの数倍はあるが、街の七割を麦畑が占めている。
 主に三種類の麦を育てており、育てる時期をずらして、年に三度収穫している。
 帝国で使用する麦の二割以上を、麦畑と渡り鳥の街クルルが生産している。

 麦が大きく育った頃に、一種の渡り鳥が群れで飛来する。
 麦がこうべを垂れる頃になると、別の渡り鳥が麦畑にやって来る。
 飛来する渡り鳥は、麦につく害虫を餌として食べるので、害虫駆除用の毒草薬を使わずに済み、安全で味が良い麦穂が収穫出来る。
 品質の良い麦が多く、一等品は皇族や各街の貴族に。
 二等品の麦が主に流通するのは、帝都の他には帝国の将来を担う、貴族や有力者が多く通う学園がある街や、各街の有名飲食店が購入している。 
 三等品の麦は一般庶民が多く住む街に安値で出回り、それ以下の好ましくないクズ麦と呼ばれる物は、家畜の餌として更に安い価格で畜産の街に売られる。

 クズ麦は国の決まりで、家畜を育てている業者にしか売り渡せない決まりになっている。
 クズ麦で作られたパンやパスタを口にしても害はないが、一般的にパン屋で売られている二等品の麦を使ったパンと比べると、味や食感が悪く加工には向かないことから、主に家畜の飼料用に使われている。

 麦畑と渡り鳥の街のクルルの駅で降りて、宿屋でベッドが三台ある部屋を確保した。
 流石に四人が一緒に寝れる、大きなベッドがある部屋はなかった。
 より良い麦を買いに来る商人が多いらしく、宿屋は意外と多く点在していたので、探すのに苦労はなかった。
 夕食は麦を使った料理を堪能する事に。
 今まで食べていたパスタもあるが、うどんに似た太く柔らかい麺と麦粥が名物。
 そしで生産地ならではの麦シュワは、なんと! 八種類もあった。

「今まで飲んでた黄色い麦シュワの他に、黒や赤っぽい麦シュワもあるなんて知らなかったわ」

「今日は全部飲むぞ!」

「いいわね。最初はどれにしようかしら?」

 アレナリアとレラは、全八種類を飲むと意気込む。

「あちしは黒っぽいのにする」

「なら私は、白いのを飲んでみるわ」

「ほどほどにな。俺はいつもと同じ黄色のでいいかな。ビワはどうする?」

「私は麦茶にします。原産地なら香りがいいと思うんです」

「麦シュワもこれだけ種類があるなら、麦茶も期待できそうだ」

 運ばれてきた料理を食べ、麦シュワを喉に流し込み、アレナリアとレラは笑みを浮かべる。
 ビワが頼んだ麦茶も、焙煎した良い香りがして、甘味を加えてないのに程良い甘みを感じた。
 顔見知りは居らず冒険者も少ないので、カズは魔導列車を降りる時に変装を解除していた。
 レラはアレナリアと同じくらいの大きさになったままなので、酔って大きさは憧れか欲望かアイテム効果が切れ、急に元の大きさに戻らないようにと、注意しておく。

 宿屋のベッドは麦藁をふんだんに使用して、寝心地は良さそう。
 料理も麦シュワも気に入った様子だったので、数日滞在する事にした。
 アレナリアとレラは翌日も麦シュワを味わえるのならと、三種類までにして夕食を終えた。
 お腹も満たされると、散歩がてら麦畑を見てから宿屋に戻った。

 浴槽はないがシャワーがあったので、一日の汗を順に流してベッドに入る。
 双塔の街で一悶着あったが、大事にならずに済み、落ち着けそうな街に到着したので良かった。
 アレナリアとレラは程良く酔っていたので、ベッドに入るとすぐに寝てしまった。
 何事もなければ、このまま皇族の会談が終わり、情報が知れ渡るまで滞在しても良いかとカズは考えながら就寝した。
 ビワは麦シュワを飲まなかったが、匂いに当てられたらしく、ベッドに入ると十分もしない内に、寝息を立てていた。



 翌日、翌々日と昼間は各種の麦畑や、そこに飛来する渡り鳥を見て、麦藁で作られた製品を売る店を回り、夕食は麦を使った料理と、各種の麦シュワと麦茶を堪能した。
 四日目の午前中に運搬用の魔導列車が到着して、収穫を終えて出荷を待っていた麦が、各街に運ばれて行った。

 そして滞在している間に、街の名前がである事について分かった事があった。
 それは帝国第三皇女ケツァール・ヴィジ・マ・クルルの名前が使われている、と。
 良品の麦を生産するのに、渡り鳥と共存しているこの街が気に入り、鳥人族の第三皇女が名前を貸し与えたのだと。
 これによりこの街は収穫した最高級の麦は、皇族に届けられるようになり、飛来する渡り鳥も保護される事に。

 麦が主食の帝国では、麦の値段は一等級でも贅沢をすれば庶民が手を出せる値段。
 なので生産者が暮らしていくには、薄利多売をするしかなかった。
 名前を貸し与えられる前までは、害虫駆除をしてくれる渡り鳥を狙う大きな鳥や獣などを捕らえて食料にしていたが、それをしなくて済んだ。
 渡り鳥の保護は、冒険者ギルドに報酬を渡し、依頼出来るようになった。

 同じ品質の麦でも付加価値が付き、以前より値が上がった事で街は潤ったので、他の街から色々な食材を多く仕入れられるようになった。
 まだ二十年も経ってないが、それでも皇族の名前を貸し与えられただけ、麦畑と渡り鳥の街は豊かになった。
 何種類もの麦シュワを作れたのも、それだけ街が発展して暮らしに余裕が出来た証拠。


 このまま皇族の会談が終わるまで、麦畑と渡り鳥の街クルルに滞在する事も考えたが、もしもの事態を考えて、魔導列車で行ける東の終着駅まで進むことにした。
 アレナリアとレラの希望で、各種麦シュワと麦茶、それとうどんに似た麺と生麦や粉に精製した麦などを購入した。
 麦藁で作られた帽子を四人分と、大き目のゴザを購入して、帝都を出てから五日目の朝に、魔導列車で東の終着駅を目指す。
 一日魔導列車に乗り続けるので、料金は高くなるが所持金には余裕があるので、個室のある一等車両を選んだ。
 フジには《念話》で連絡して、乗車する魔導列車を伝え、魔導列車で行ける東の終着駅に向かうと。

 フジが街の近くに現れると大騒ぎになるので、街を離れて四人だけになるまでは、今まで通り自由に過ごすようにともカズは伝えた。
 カズは魔力を隠蔽しているので感知はできないが、四人が居る街の近くまで来れば、アレナリアの魔力を感知出来るくらいまでフジは成長している。
 レラの魔力は目視で確認出来る距離まで近付かなければ感知はできず、ビワは魔力をあまり使用しないので、今のフジに感知は無理。

 魔導列車に乗車して四時間、途中の小さな街の駅で二十数分停車して、西に向かう魔導列車とすれ違うする。
 帝国の東に線路は長く延びているが、麦畑と渡り鳥の街クルルから魔導列車で三時間程移動すると、線路は単線化しており、駅に停車して西に向かう魔導列車とすれ違わなければならない。
 なので短くとも十数分の停車する。
 必ずしも同じ駅ではないが、魔導列車がすれ違う時間を利用して、魔導列車を降りて食べ物を買ったり、用を済ませたりする。
 カズ達もまだ魔導列車に乗り続けるので、大なり小なり用を済ませる。
 乗車券と座席の指定券があるので、乗り遅れなければ駅の外にも出れる。
 入れ替わったとしても、駅員にバレると多額の罰金を払わなくてはならなくなる。
 拒否すると衛兵を呼ばれ拘束されて、二度と魔導列車に乗車する事ができなくなる。
 それを分かっていたとしても、入れ替わり行為はなくなることはなく、年に数百人が衛兵に捕まっている。
 ただこれには、冤罪も含まれているので、国として解決しなければならない大きな問題の一つになってた。
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