不自由と快楽の狭間で

Anthony-Blue

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229.思惑

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「ちょっと待って」

 ドア越しの節子に伝わるように、律子は大きめな声で答えた。ボクたちは、部屋にあるテーブルに着いた。

「どうぞ」

 ドアを開けて入ってきた節子は、ボクと律子に視線を這わしてテーブルにアイスティーとクッキーを置いた。

「なにかしてたの」

「ええ、ちょっとね」

「あら、瑞樹さんも隅に置けないわね」

 笑顔が消えて真顔でボクを見て節子は言った。

「そんなんじゃありませんよ。ねぇ、律子さん」

 救いを求めるように律子に視線を送ると、律子は失望したような顔をした。

「わたしたちは、もうそういう関係なのだからそれなりのことをしてもおかしくはないわよね。大人なんだし、やっと会いに来てくれたんだから」

 自分から、ちょっかいを出したことなんておくびにも出さず、何かがあって当たり前だと言うように母親に告げた。

「ごめんなさいね。もう、夕ご飯まで来ないから、何か用があったら呼んでね。トイレとかの時もね」

「はいはい。わかったから」

「じゃあ、ごゆっくり」

 律子のめんどくさそうな対応に、節子は追い出されるように出て行った。

「お母さんに、あんな風に言わなくてもよかったんじゃないのかな」

「いいのよ。お母さんは、瑞樹が気に入ってるみたいだから取られたくないのよ」

 平然と言ってのける律子に、ボクは少し驚いた。

「そんなこと、あるわけないでしょう」

「瑞樹さんは、そういうところ、自己評価が低いというか。女性に対して、認識が甘いというか。もう少し、気をつけた方がいいと思うわ。

「そうかなぁ」

 口ではそう言っているけれど、わからないように振る舞っているのは確かだ。その態度が、女性をイライラさせてしまうのかもしれないということもだ。

「そうかなぁ」

「お母さんだって、女なんだし。瑞樹さんの面接の時から、様子がちょっとへんなんだもの。久しぶりの男との触れ合いで、目覚めたのかもしれないわね」

 咥えていたストローから口を離して、律子はボクの横にやってきた。ノーブラだと言われて、やわらかい感触を思い出して、ついつい律子の胸に目が行ってしまう。

「やっぱり、気になるんですね。でも、乳首の突起はわからないでしょう。ノーブラがいいって、お母さんに言ったら、せめてニプレス付けるんだったらって言われたのよね。ほら、触ってみたらわかると思うわ」

 律子はボクの手を取って、自分の乳房に押し当てた。

「ね、わかるでしょ」

 押し当てられた乳房の頂き付近に指があるはずだが、乳首の突起はわからなかった。

「これじゃあ、よくわかんないよ」

「えっ、直接触りたいの」

「ち、違いますよ」

 ボクが慌てて否定すると、律子はクスッと笑って新たな提案をした。

「瑞樹さんにやられたカラダだから、瑞樹さんの自由にしても私は構わないのよ」

「お嬢様なんだから、もう少しやわらかなニュアンスの言い方があるでしょ」

「はぁ、じゃあ瑞樹さんに処女を奪われたカラダとか、瑞樹さんに弄られたカラダとか言えばいいのかしら」

「うーん。ひどくなったような気がする」

「あはは、いいのよ。結果は同じことなんだから。ねえ、わたしのおっぱいを見たいんだったら、背中のファスナーを降ろしてくれるかしら。脱ぎやすいように、わざとノースリーブのワンピースにしたんだから」

 フフッと小鼻を膨らませて笑うと、律子はボクに背中を向けた。

「確信犯でしたね」

「でもね、瑞樹さんが満足したら、原状回復してね。出来る?」

 律子の思惑通りに事は進められるのだろう。諦め気味にボクは背中のファスナーに手をかけた。

「降ろすよ」
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