不自由と快楽の狭間で

Anthony-Blue

文字の大きさ
37 / 231

37.押し切り

しおりを挟む
「出来るよ。やっぱり、そこにこだわるんだ」

「出来なかったら、お金もらえないじゃん」

 残りのハンバーガーを口に押し込みながら、萌はそれが当たり前のように言った。名残惜しそうに包装紙をきちっと畳む姿を眺めていたボクは言った。

「まだ食べるなら、もう一つハンバーガー食べていいよ」

「ホント。ラッキー」

 ボクは千円札を財布から出し、萌はそれを受けとりカウンターに駆けていった。

「ありがとね」

 そう言って、新たに買ってきたハンバーガーに口を付けながら、初めて見せた笑顔で萌はお礼を言った。

「何で、そんなにお金が欲しいの」

「えー、だれだってお金は欲しいでしょ。それに、持てる者が持たざる者に分け与えるのは、どこかの神様の教えでしょ。その対価として、私は自分のカラダを差し出すの」

 食事してお金を貰ってさようならする女子よりは、随分まともな神経だなと思いながら、「いや、それは違う」と心の中で叫んだ。倫理的には正しくないことを今しているボクが、言える話ではないのだろうけど。

「キミ、ほんとは高校生でしょ」

「えっ」

 突然の質問に、萌は驚いたような顔をした。

「正直に言わないと、ここでさよならだね」

「いや、ちょい待ち。それは困るんだよ。家に帰りたくないし」

「家出娘なのかぁ。じゃあ連絡入れないとな」

「ほんとに待って。正直に言うからさ。はい、まだ高校生です。今は学校へは行ってないけど」

「わかった。話を聞こう」

 ボクの言葉に、萌は落ち着いたようにため息をついた。

「どうして家出したの」

「ここでは言えない」

「うーん。どこなら話せるの」

「ホテル」

「いや、それはマズいでしょ」

「おねがい」

「ネカフェとかは。お金出してあげるから」

「だめ!昨日ネカフェの泊まったら、夜中に変な男に絡まれて、怖かったし」

「このまま、キミをほっといて帰るわけにもいかないし。困ったなぁ」

「おねがいします。なんでもするから」

 萌は、本当に必死でボクに頼んでいるように見えた。

「なんでもするとか言ったらだめだよね。その言葉は、他の男に言ったら大変なことになるヤツだからね。まあ、ボクも大変なことするかもしれないし」

「そうなの。でも、いいの。だから、おねがい」

 引き下がろうとしない萌に、根負けしたようにボクは言う。

「わかった、わかったよ。仕方ないなぁ。じゃあ、ボクの言うことなんでも聞くんだよ」

「ほんと!やったぁ」

 萌は笑顔になって、両手を挙げて無邪気に喜んだ。そんな姿を見ていると、高校生と言うよりもっと幼く見えてしまう。まさかな、と思いつつ少し不安になってくる。

「ねぇ、学生証とか持ってる?」

「そんなの持ってないよ。なんで」

「いや、歳とかを確認出来ないかなって思って」

「高校生って言ったでしょ。信じられない?」

「そんなことはないんだけど。素直に喜んでたから」

「だって、うれしかったんだもん」

 また、食べ終えたハンバーガーの包み紙を手のひらで伸ばして畳みながら言った。

「お風呂も入れるし、お布団で寝られるから」

「はぁ」

「あっ、今、臭いとか思ったでしょ」

「えっ、いやいや、そんなことないけど。着替えとか持ってる?今から買いに行って、ちゃんと夕ご飯食べてからにしようか」

「うん、でもいいの?」

「臭いよりはね」

「それ言うのね」

 二人は、顔を見合わせて笑った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

処理中です...