不自由と快楽の狭間で

Anthony-Blue

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90.守られる約束

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「ボク、まだ何もさせてもらってないんですけど」

「いいから、いいから。後で触らせてあげるから。わたしは、早くこれを入れたいの」

 ボクの硬くなったペニスに、明美は自分の口からたっぷりと唾液を手に取りなすりつけた。

「入れるわね」

 片膝を立てて、自身の割れ目を指で広げて、狙いを定めるようにゆっくりと腰を落としてゆく。思ったより余裕のある膣の生暖かさが、ボクを包んでゆく。

「ああっ、うちの旦那のより大きくて硬いわ。どう、生で入れたわたしのおまんこの感想は」

「はぁ、気持ちいいです」

「そうでしょう。生で入れさせてもらえるなんて、なかなかないからよかったわよね」

 明美は、満足そうな顔をして、重そうなお腹を前後にスライドさせながらボクのペニスを味わっているようだった。ボクは、明美の言っている貴重な生の膣を味わっている。ボクにとっては、目新しい快感はなく、それ以上に、そんなに動いても大丈夫なのかという心配の方が頭に渦巻いていた。妊娠すると性欲がなくなる人と、性欲が強くなる人がいると聞いていたが、明美は後者の部類に入るのだろう。それよりも、明美は早く終わらせようとしているようにも思えた。この茶番のような情事より、パチンコの魅力の方が大きいのかもしれない。

「ああ、お腹が重いわ。この子を産んで身軽になったら、またやろうね。今度はゴム付きだけど」

「そうですね」

 ボクは、曖昧で肯定的な返事というか相づちを打った。どんなにいい女性であろうと、二度と会うことはないだろう。それが、ボクと咲恵との間で交わされた約束なのだから。

「ねぇ、気持ちいい?」

「ええ、まぁ」

「気持ちの入ってないお返事だこと。溜まってる上に生だから、あっという間に発射するのかと思ってけど、なかなか逝かないのね」

「すみません」

「仕方ないわね」

 明美は、グラインドさせていた動きを、足を立てて腰を浮かせた上下運動に変えた。行き場のなかった愛液が、腰を浮かしたために一気に溢れ出してボクの下腹部を濡らした。粘度の高い愛液は、ボクと明美の間で 糸を引いた。

「は、はぁあ、気持ちいいんだけど、腰が痛くなって来ちゃったわ」

「大丈夫ですか」

「わたし、もう少しで逝きそうなの。もうちょっとがんばるから」

 膝を付けて、最初のような腰のグラインドに動きを変えた。べちゃべちゃと粘着質な音が、段々と音が大きくなってゆく。

「うっうぅ」

 という、明美の声のトーンも上がってゆく。カラダを貫く快感で、上体を支えきれなくなってきた明美は、ボクの胸に手をつく。それでも、大きなお腹が邪魔をして明美の顔はボクには近づかない。

「あっ、逝きそう」

 その声と共に、明美の太ももが痙攣してボクの肋骨を締め付けた。痙攣はもう一つの命が宿っている腹をも揺らして乳房まで届く。大きく肩で呼吸していたのを少しずつ整えて、ボクのペニスを解放した。割れ目からぽっかり開いた穴から、大量の白濁した愛液が流れ出して太ももに伝わった。

「キミは、射精してないよね」

 自分の性器から、流れ出した愛液を拭いたティッシュペーパーを嗅いで、ボクに確かめた。

「はい、絶頂は迎えてないですね」

 少し面倒くさそうな顔をしてボクに言った。

「わたし、もう満足したんだけど。どうする?手でしごいて逝かせてあげようか」

 その言葉の端に見え隠れする嫌みに、ボクも少しお返しをするつもりで言い返した。

「いえ、大丈夫です。あなたでは逝けそうにないと思うので」

 ボクは、出来うる限りの作り笑いを浮かべて言った。

「そう、ならいいわ。わたしの生でやる良さがわからなかったみたいで残念だわ」

「すみません。ボクのモノでは、生でもゴムありでも違いがわからないくらい経験が乏しいもので」

「わたし、シャワー浴びるけど、キミはいいんだよね」

「はい、結構です」

 明美は、ベッドの上に放り出されていたバスタオルを手に、バスルームに行った。ボクも、バスタオルで、明美の愛液が付いた下半身を拭った。家に帰ったら一番に風呂に入って、この気分を害する匂いを落とそうと思った。

 さっさと身支度を済ませてホテルを出た。

「わたし、用事があるから、先に行くわ」

 小走りに去ってゆく明美を見送りながら、ボクは、まだ青味が残る空を見上げて独り言のように言った。

「これで、咲恵との約束は確実に守れそうだ。もう、二度と会う気にもならないだろうし」
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