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151話 ミドリムシの苦悩

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 3人の龍種が緑に聞かれた質問に答える。

「まず、はじめに俺達の強さが龍種の中でどれくらい強いかという話だったな。そうだな……俺達の強さは……」

 緑の質問に嬉しそうに聞き返すサラマンダーであったが語尾につれてその表情は暗くなり最後の肝心な部分は黙り込んでしまった。

「サラマンダー、私達の考えをきちんと話そう……」

「そうね緑達が私達の話を聞いてどう思うかは分からないけど、正直に話した方がいいと思うわ」

 明らかに質問を聞いた時とその答えを言おうとした時での3人の表情に差がありすぎ、緑と魔緑も困惑する。

「3人とも僕の質問に答えたくなければ無理には聞かないよ?」

 緑は何か3人の中で触れられたくない質問だったのかと思いそう言う。

「違う! 答えたくないわけではない! 俺達は自分達の強さに誇りを持っている! だが……」

「緑…… 聞いてくれ。サラマンダー、私、ウンディーネはそれぞれの属性の龍種の中で1番の強さをもっている」

「ノーム!?」

「サラマンダー落ち着いて、もう緑達が私達の話を信じない事なんてないはずよ」

 ノームの言葉にサラマンダーは大きな声を上げて反応するもウンディーネが落ち着く様に話す。

 そんな様子を緑と魔緑が不思議そうに見ているとサラマンダーが叫ぶ。

「緑よ言い訳にしか聞こえないかもしれないが俺達は数の力に負けたんだ!」

 そう言ったサラマンダーの目からは血の涙が流れていた。その言葉を聞いたノームもウンディーネも悔しそうに顔を背ける。

「緑よ、我等龍種は個の力に対して誇りを持っていた。少なくとも各属性の龍種のナンバー1は全員がそう思っていると思っていた……」

「思っていた?」

 ノームの語尾が気になり緑が疑問に思う。

「ある時、個の力に誇りを持っていたのは、私達だけの事だと思い知らされたの……」

「闇属性の龍種そのナンバー1のシェイドが徒党を組んで我等5つの属性のナンバー1の龍種を支配下におさめようと動いたのだ! くそ! くそ! くそぉぉぉぉおおおお!」

 純粋な身体能力ならノームが1番と思われてたが、子供の姿をしたサラマンダーはその怒りのままに地面に拳を叩きつけ地割れを作る。サラマンダーの目からは血の涙が流れ握りしめた手からも血が流れ落ちる。

その怒りの大きさに緑と魔緑は驚くも黙って話を聞き続ける。

「それで支配下に置かれ、嫌な任務を言い渡されこの大陸にきたのか……」

 サラマンダーの怒りを目にして魔緑は冷静に思考を加速させ、3人が口々にしていた気に食わない任務を思い出し呟く。

「ああ、そうだ。配下にされても反抗し続けた我等には、この大陸を手中にせよと命令をくだしおった!」

 その言葉を聞いて考え込む魔緑を見た3人がすぐに口を開く。

「魔緑! 言っておくが病をこの大陸に持ち込んだのは我等ではないぞ! お前や緑達の口からそんな疑いの言葉は聞きたくない!」

「魔緑よ我らはお前達に嘘偽りなく事実を話している。もちろん勘違いさせるような言葉も用いてないはずだ。サラマンダーの言葉はお前達を信じているからだと肝に銘じてくれ……」

「そうよね緑がもし龍種なら私は、番になろうといっているところよ」

「なにが緑と番になるだぁ? ばばぁが何言ってるんだ!?」

「サラマンダー誰がばばぁよ!? あんたこそ子供みたいに泣きわめいて鎮火してやろうかしら」

 そう言って2人はメンチを切り合い、売り言葉に買い言葉で2人の怒気が膨れ上がる。そんな2人をおいてノームが口を開く。

「見ての通り、2人はお前達の事をいたく気に入ってる。もちろん私もだ。だから我らの言葉を信じて欲しい」

 子供の姿で深刻な顔をしてノームが答える。

「うん信じる!」「緑!?」

 ノームの言葉にすぐさま緑が答えると魔緑が驚きの声を上げる。

「まーちゃん、僕はノームとウンディーネに勝ってるけどそれは僕達の【超光合成】のおかげだからと思うんだ……」

「「違う!」」

 緑の言葉に龍種の3人が声を上げる。

「緑! お前がもつ【超光合成】はこの世界に来て女神様からもらったものだろ! そんなものは生まれ持った力だ! この世界は生まれた瞬間から不平等だ! 人、エルフ、ドワーフ、獣人、龍種、蟲人我らの傍にいる種族だけでこれだけ多くの種族がいる!」

「生まれた種族によって、大きな力の差がある。だが、お前の家族の兜やレイは、蟲型の魔物から緑達に会って今、蟲人になっている」

「そうね、彼等は魔物から蟲人になり、その蟲人の中でも頂点にいてるわ。緑に蜜を貰って魔物から蟲人になったかもしれないけど、それは、彼等が強くなろうと緑を受け入れたから。緑に会っても受け入れなかった可能性もある」

 3人の言葉に緑と魔緑が黙り込む。

 俯き考え込んでいた緑は顔を上げる。

「じゃあ、僕は3人より強いの?」

「「当たり前だ!」」

「でも僕はサラマンダーとは直接戦っていないよ?」

 その言葉にサラマンダーは苦虫を潰したような顔をしなが話始める。

「緑、悔しいがな各属性の龍種でも相性がある…… 残念ながらそこのばばぁと俺は相性が悪くてな…… 本気で戦った事があるが全敗だ…… 緑、お前はそのばばぁと戦って勝っている。しかも、お前の得意な属性は水だろう?」

「サラマンダー…… 何度もばばぁってふざけてる?」

 誇り高い龍種、その火の属性の頂点のサラマンダーが苦手な属性相手でも完敗した事実を告げる。その言葉に思わずウンディーネは呟く。

 だが、サラマンダーの顔は清々しく緑を真直ぐ見つめている。

「だが!」

 その言葉を皮切りにサラマンダーの顔は険しくなる。

「シェイドの野郎はウンディーネ以外の水属性の龍種達を集めて俺にけしかけた! その結果俺は負けた」

「緑聞いて! サラマンダー、私の仲間を半分は道ずれにできたはず! でも、それは、シェイドの奴が喜ぶことになるからすぐに負けを認めたのよ!」

「緑よ、それは私も同意見だ。いくら苦手な属性の者達を集めてもナンバー1の龍種は簡単に勝てるものでは無い。だが、我らはナンバー1だがいつかは若い者達に追い抜かれる。そうでなくては龍種が弱い者になってしまう。その代替わりは起こる事だが徒党を組んでなされるものではない」

 最後に感情を大きく揺るがしていたサラマンダーが緑に頼む。

「我らの大陸に居る龍種の目を覚ましてくれ…… 龍種の頂点は決して数で勝ち取る者ではないと……」

 サラマンダーの目には涙が見える。それは、狂おしいほどの誇りが起こしたのか元来の性格が悔しく流した涙かはわからい。だが、緑はその涙に答えるために口を開く。

「3人とも話にくい事をはなしてくれてありがとう。僕は皆が居た大陸をこのまま戦いだけの大陸にしたくない。戦いの無い幸せな大陸にするよ!」

「ああ、そうだ! 超ミドリムシは強いんだぜ!」

「緑! 頼む!」「すまない、緑……」「緑お願いね!」

 3人の言葉で緑は事情の把握を終わりにダンジョンの家に向かうのであった。

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