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第五章
(九)
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戦場の騒擾もいくらかは遠まった樹上で、藤七は掌に刺さったままであった暗器をゆっくりと引き抜いた。身の裡に、どうやら良くないものが巡りはじめているのもわかっていた。当然、何かしらの毒であろう。
かような戦場での仕物に使うのであるからして、鹿右衛門が得意にしていた、ひと月ふた月掛けてじわじわ死んでゆく類の毒ではないはずだ。おそらくもっと回りは早い。只人であれば、せいぜい四半刻と持たぬ代物であろう。これでも里にいた頃に、何度も泡を吹いて倒れながらも毒に慣らされているので、生半のものなら耐えられる身体にはなっている。だがあの鹿右衛門が、そんな半端なものを使うとも思えなかった。
はたして、あとどれくらい動けるものか。半刻か、あるいはもっと短いか。ともあれその間に片を付けなければならなかった。それが出来なければ、他の者にこの男が止められるとは思えない。
「まったく……割が合わないにも程がありますや、山下さま」
おそらくはもう会うこともないであろう雇い主にそうぼやき、藤七は脇差を抜いた。そうして邪魔にしかならない大太刀は、さっさと抜いて下に放り捨てる。
「……やはりおぬしであったか、佐助。久しいの」
やがて声が聞こえた。遥か遠くから聞こえてくるのか、あるいは耳元で囁かれているのか。どちらとも取れそうで、位置も距離も測れない。
「今は藤七と名乗っておりますがね。それにこちらはそう久しくもありませんや。鹿右衛門さまのお姿は先だって、京でお見かけしております」
「なるほど。あれはやはりおぬしであったか」くすり、と笑う気配。「それとわしも、今は才蔵という名を戴いておる」
この稼業、名など何の意味もない。わかってはいても、互いに拘らずにはいられないようであった。まったく妙なものである。
「それにしても誇りある武田忍びだったおぬしが、今は徳川の飼い犬か。堕ちたものよの」
「飼い犬なんてほどのものでもありやせん。所詮は日銭稼ぎの流しでさ」
「……ほう」と、才蔵がようやく姿を現した。目の前の小枝に鳥の羽のごとく軽やかに舞い降り、そのままふわりと立つ。ほとんど重さがないように見えて、それでいてあたりの気が凍り付いたかのような重圧が伝わってくる。
まったく、何も変わっていなかった。藤七が若き頃に見知っていたままの、人ならぬ怪物だ。かような相手と本気で命の遣り取りをせねばならぬとは、つくづく割に合わない。
「その、たかが日銭稼ぎのために……わしとやり合うというのか」
「流しには信用ってもんが大事なんですよ。途中でお役目を投げ出せば、明日からはおまんまの食い逸れでございますゆえ」
「死んでしまえば、信用も糞もなかろうに……愚かなことよ」
ええ、愚かなものです。おのれでも、そのくらいはわかってまさ。されど。
「頼まれちまいましたから……ねっ!」
声に出すともなくそう続けて、藤七は脇差を手に跳んだ。相手はあらゆる暗器の扱いに長けていて、距離を取ったらまず歯が立たない。されどただひとつ、刀の業だけなら互角に持ち込めるはずだった。勝機を掴むなら、とにかく離れないことだ。
才蔵もそれをわかっているのか、即座に間を取るべく背後に跳び退さった。されど離されては堪るものか。至近距離から放たれる暗器を刀で弾きながら、藤七は必死で神業めいた動きに付いてゆく。
※
辛うじて持ち堪えていた堤が決壊したように、いったん道が開けるとあとは一気呵成であった。歓喜の声とともに、兵たちは地を揺らしながらひた走ってゆく。それを左右に従えながら、左衛門佐幸村は悠然と馬を進めていた。前方では猛り狂った徒士たちが、逃げ遅れた越前兵をひとりずつ血祭りに上げているのが見える。
「海野さまはすでに敵の本陣に攻め入っておるようです。家康は馬印もそのままに、小勢を連れて逃げ延びたとのこと」
その報に、幸村は「……ふふ」と小さく笑う。「無様なものよ。それでも天下人かのう」
「されどその後は、敵の殿が思いの外手強く、いささか難儀しておるとか。さすがに海野さまといえど、千ばかりではそこまでかと」
「で、あろうの。ひとまずはそこで持ち堪えよと伝えるのじゃ。すぐに我らも向かうぞ」
そう言って、幸村はヤクの毛をあしらった采配を振るった。従う古強者たちも、勝利を確信したような声で「おうっ」と応える。
「ここからはもはや一本道よ。家康が首、必ずや上げるのじゃ。良いな!」
されどそう檄を飛ばしながらも、幸村はこの戦の推移に満足してはいなかった。これで家康の首級を挙げたところで、はたしておのれの勝利と言えるのか。何かが足りぬ。こんなはずではなかった。そんな思いを払えずにいる。
この戦は、ただ徳川を退ければよいというわけではない。できる限りの乱戦に持ち込み、誰しもが安寧に眠らされていた獣心を目覚めさせ、新たな乱世の呼び水としなければならない。されどそれにしては、あまりにも手応えがなさすぎた。徳川の腑抜けぶりは、どうやら思っていた以上であったようだ。
「……つまらぬ」
そうつぶやいてみてはじめて、幸村は気付いた。おのれはただ、血が湧き立つような戦がしたかっただけなのだと。この戦の先にあるものなどどうでもいい。武士に生まれた以上は一度でいい、万余の兵のぶつかり合いの中で、思う存分槍を振るってみたい。煎じ詰めればそれだけのために、さまざま謀を巡らせてこの大戦を仕立て上げただけのこと。されどいざ蓋を開けてみれば、何とも興醒めであった。
戦乱の果てについに天下を獲った徳川も、数こそは多いがさっぱり手応えがない。まるで木偶の集まりだ。これが戦なのか。戦とはこんなものなのか。あるいはまことに、誰もが牙を抜かれてしまったのか。安寧の中に微睡んで、燃ゆる心を忘れてしまったのか。
ここまで幸村を追ってきた浅野但馬守が、急に追撃を止めてしまったことも気に入らない。いったい何があったというのか。兄の仇を眼前に捉えながら、ここに来て怖じけたとでもいうのか。あの男を焚き付けておのれを追わせたのも、むろん同士討ちさせて戦場を混乱させるという計略のうちでもあったが、同時に背を追われるひりひりとした焦燥感を味わいたいという思いもあってのことだ。あの幸長の弟とあって多少は期待していたのだが、所詮はまた飼い馴らされた獣に過ぎなかったのか。
と、そのときであった。不意に首筋のあたりの毛が、ぞわりと逆立つような悪寒が走った。幸村は思わずうしろを振り返り、目を凝らす。
来る、ということだけがわかった。何かが来る。それが何かはわからぬが、とにかく剣呑なものが近付いてくる。
「いかがなされました、左衛門佐さ……」
前を走る馬上の兵が顔を振り向け、訝しげに何かを言いかけた。されどその言葉は、ひゅっという風切り音に遮られ、途切れた。ややあって兵はゆっくりと身体を傾がせ、そのまま鞍より転がり落ちる。空馬のうしろに遠ざかってゆく骸の眼窩に、鮮やかな鳥羽の矢が刺さっているのがちらりと見て取れた。
「な……何じゃっ!」
あたりの兵たちがざわめいた。されど、何が起きたのかを理解している者がいるのかどうか。そうする間にも、またひとりが低く呻いて馬から落ちた。慌てたように徒士たちが足を止め、幸村を守るように槍衾を並べる。どこかから射られたことはわかったが、いったいどこからかはわからなかった。
幸村は同じく馬を止め、「……見よ」と采で虚空を差した。やがてゆらめく土煙の向こうに、一騎の武者が見えた。鐙の上に立ち上がり、馬上で取り回すには長すぎる大弓を構え、こちらへ疾駆してくる。それでもまだ、三、四町はあった。只人では中てることはおろか、矢を届かせることすら至難の距離だ。
「何だぁ……ありゃ」
徒士のひとりが、呆けたような声を漏らした。目は慥かにその姿を捉えていても、まだ現実のものとは思っていないようですらあった。そうするうちにも、幸村はまたぞくりとする寒気を感じて、咄嗟に身を反らすように上体を傾けた。次の瞬間耳元を掠めて、そして兜を削りながら、矢が通り過ぎて行った。研ぎ澄まされた本能のなせる業であって、それがなければ今おのれは絶命していただろう。一瞬のちにそう悟って、総毛立つような興奮がこみ上げてくる。
「お下がりください、左衛門佐さま。ここは我らが……!」
「……莫迦を申すな」
幸村は低い声で言って、徒士を掻き分けるように前へ出た。おのが口角が愉悦に吊り上がるのを、もはや堪えようがなかった。
「そっちこそ下がっておれ。おぬしらごときに釣り合う相手ではないわ」
単騎の武者はほぼ二町ほどのところまで近付いたところで止まり、矢を番えたまま動かずにいた。まるでこちらが応じるのを待っているかのように。いや、慥かに待っているのであろう。この我が、舞台へと降りてくるのを。
ならば、行くまでだ。幸村はそう決意して、手にしていた十字槍を投げ捨てた。おそらく相手はこれ以上距離を詰める気はないであろうから、槍など持っていても邪魔なだけである。
そして徒士に用意させていた馬上筒を受け取った。すでに弾も込められていて、火縄も点されている。堺で手に入れた、南蛮製の最新式であった。家康をこの手で仕留めるために用意したものだが、ぶざまに逃げ惑う臆病者などよりも、ただ一騎にて敵中へと乗り込んできたこの者にこそ相応しかろう。
そうして幸村は、勢いよく馬の腹を蹴った。それを見てか、敵も再び駆け出した。
かような戦場での仕物に使うのであるからして、鹿右衛門が得意にしていた、ひと月ふた月掛けてじわじわ死んでゆく類の毒ではないはずだ。おそらくもっと回りは早い。只人であれば、せいぜい四半刻と持たぬ代物であろう。これでも里にいた頃に、何度も泡を吹いて倒れながらも毒に慣らされているので、生半のものなら耐えられる身体にはなっている。だがあの鹿右衛門が、そんな半端なものを使うとも思えなかった。
はたして、あとどれくらい動けるものか。半刻か、あるいはもっと短いか。ともあれその間に片を付けなければならなかった。それが出来なければ、他の者にこの男が止められるとは思えない。
「まったく……割が合わないにも程がありますや、山下さま」
おそらくはもう会うこともないであろう雇い主にそうぼやき、藤七は脇差を抜いた。そうして邪魔にしかならない大太刀は、さっさと抜いて下に放り捨てる。
「……やはりおぬしであったか、佐助。久しいの」
やがて声が聞こえた。遥か遠くから聞こえてくるのか、あるいは耳元で囁かれているのか。どちらとも取れそうで、位置も距離も測れない。
「今は藤七と名乗っておりますがね。それにこちらはそう久しくもありませんや。鹿右衛門さまのお姿は先だって、京でお見かけしております」
「なるほど。あれはやはりおぬしであったか」くすり、と笑う気配。「それとわしも、今は才蔵という名を戴いておる」
この稼業、名など何の意味もない。わかってはいても、互いに拘らずにはいられないようであった。まったく妙なものである。
「それにしても誇りある武田忍びだったおぬしが、今は徳川の飼い犬か。堕ちたものよの」
「飼い犬なんてほどのものでもありやせん。所詮は日銭稼ぎの流しでさ」
「……ほう」と、才蔵がようやく姿を現した。目の前の小枝に鳥の羽のごとく軽やかに舞い降り、そのままふわりと立つ。ほとんど重さがないように見えて、それでいてあたりの気が凍り付いたかのような重圧が伝わってくる。
まったく、何も変わっていなかった。藤七が若き頃に見知っていたままの、人ならぬ怪物だ。かような相手と本気で命の遣り取りをせねばならぬとは、つくづく割に合わない。
「その、たかが日銭稼ぎのために……わしとやり合うというのか」
「流しには信用ってもんが大事なんですよ。途中でお役目を投げ出せば、明日からはおまんまの食い逸れでございますゆえ」
「死んでしまえば、信用も糞もなかろうに……愚かなことよ」
ええ、愚かなものです。おのれでも、そのくらいはわかってまさ。されど。
「頼まれちまいましたから……ねっ!」
声に出すともなくそう続けて、藤七は脇差を手に跳んだ。相手はあらゆる暗器の扱いに長けていて、距離を取ったらまず歯が立たない。されどただひとつ、刀の業だけなら互角に持ち込めるはずだった。勝機を掴むなら、とにかく離れないことだ。
才蔵もそれをわかっているのか、即座に間を取るべく背後に跳び退さった。されど離されては堪るものか。至近距離から放たれる暗器を刀で弾きながら、藤七は必死で神業めいた動きに付いてゆく。
※
辛うじて持ち堪えていた堤が決壊したように、いったん道が開けるとあとは一気呵成であった。歓喜の声とともに、兵たちは地を揺らしながらひた走ってゆく。それを左右に従えながら、左衛門佐幸村は悠然と馬を進めていた。前方では猛り狂った徒士たちが、逃げ遅れた越前兵をひとりずつ血祭りに上げているのが見える。
「海野さまはすでに敵の本陣に攻め入っておるようです。家康は馬印もそのままに、小勢を連れて逃げ延びたとのこと」
その報に、幸村は「……ふふ」と小さく笑う。「無様なものよ。それでも天下人かのう」
「されどその後は、敵の殿が思いの外手強く、いささか難儀しておるとか。さすがに海野さまといえど、千ばかりではそこまでかと」
「で、あろうの。ひとまずはそこで持ち堪えよと伝えるのじゃ。すぐに我らも向かうぞ」
そう言って、幸村はヤクの毛をあしらった采配を振るった。従う古強者たちも、勝利を確信したような声で「おうっ」と応える。
「ここからはもはや一本道よ。家康が首、必ずや上げるのじゃ。良いな!」
されどそう檄を飛ばしながらも、幸村はこの戦の推移に満足してはいなかった。これで家康の首級を挙げたところで、はたしておのれの勝利と言えるのか。何かが足りぬ。こんなはずではなかった。そんな思いを払えずにいる。
この戦は、ただ徳川を退ければよいというわけではない。できる限りの乱戦に持ち込み、誰しもが安寧に眠らされていた獣心を目覚めさせ、新たな乱世の呼び水としなければならない。されどそれにしては、あまりにも手応えがなさすぎた。徳川の腑抜けぶりは、どうやら思っていた以上であったようだ。
「……つまらぬ」
そうつぶやいてみてはじめて、幸村は気付いた。おのれはただ、血が湧き立つような戦がしたかっただけなのだと。この戦の先にあるものなどどうでもいい。武士に生まれた以上は一度でいい、万余の兵のぶつかり合いの中で、思う存分槍を振るってみたい。煎じ詰めればそれだけのために、さまざま謀を巡らせてこの大戦を仕立て上げただけのこと。されどいざ蓋を開けてみれば、何とも興醒めであった。
戦乱の果てについに天下を獲った徳川も、数こそは多いがさっぱり手応えがない。まるで木偶の集まりだ。これが戦なのか。戦とはこんなものなのか。あるいはまことに、誰もが牙を抜かれてしまったのか。安寧の中に微睡んで、燃ゆる心を忘れてしまったのか。
ここまで幸村を追ってきた浅野但馬守が、急に追撃を止めてしまったことも気に入らない。いったい何があったというのか。兄の仇を眼前に捉えながら、ここに来て怖じけたとでもいうのか。あの男を焚き付けておのれを追わせたのも、むろん同士討ちさせて戦場を混乱させるという計略のうちでもあったが、同時に背を追われるひりひりとした焦燥感を味わいたいという思いもあってのことだ。あの幸長の弟とあって多少は期待していたのだが、所詮はまた飼い馴らされた獣に過ぎなかったのか。
と、そのときであった。不意に首筋のあたりの毛が、ぞわりと逆立つような悪寒が走った。幸村は思わずうしろを振り返り、目を凝らす。
来る、ということだけがわかった。何かが来る。それが何かはわからぬが、とにかく剣呑なものが近付いてくる。
「いかがなされました、左衛門佐さ……」
前を走る馬上の兵が顔を振り向け、訝しげに何かを言いかけた。されどその言葉は、ひゅっという風切り音に遮られ、途切れた。ややあって兵はゆっくりと身体を傾がせ、そのまま鞍より転がり落ちる。空馬のうしろに遠ざかってゆく骸の眼窩に、鮮やかな鳥羽の矢が刺さっているのがちらりと見て取れた。
「な……何じゃっ!」
あたりの兵たちがざわめいた。されど、何が起きたのかを理解している者がいるのかどうか。そうする間にも、またひとりが低く呻いて馬から落ちた。慌てたように徒士たちが足を止め、幸村を守るように槍衾を並べる。どこかから射られたことはわかったが、いったいどこからかはわからなかった。
幸村は同じく馬を止め、「……見よ」と采で虚空を差した。やがてゆらめく土煙の向こうに、一騎の武者が見えた。鐙の上に立ち上がり、馬上で取り回すには長すぎる大弓を構え、こちらへ疾駆してくる。それでもまだ、三、四町はあった。只人では中てることはおろか、矢を届かせることすら至難の距離だ。
「何だぁ……ありゃ」
徒士のひとりが、呆けたような声を漏らした。目は慥かにその姿を捉えていても、まだ現実のものとは思っていないようですらあった。そうするうちにも、幸村はまたぞくりとする寒気を感じて、咄嗟に身を反らすように上体を傾けた。次の瞬間耳元を掠めて、そして兜を削りながら、矢が通り過ぎて行った。研ぎ澄まされた本能のなせる業であって、それがなければ今おのれは絶命していただろう。一瞬のちにそう悟って、総毛立つような興奮がこみ上げてくる。
「お下がりください、左衛門佐さま。ここは我らが……!」
「……莫迦を申すな」
幸村は低い声で言って、徒士を掻き分けるように前へ出た。おのが口角が愉悦に吊り上がるのを、もはや堪えようがなかった。
「そっちこそ下がっておれ。おぬしらごときに釣り合う相手ではないわ」
単騎の武者はほぼ二町ほどのところまで近付いたところで止まり、矢を番えたまま動かずにいた。まるでこちらが応じるのを待っているかのように。いや、慥かに待っているのであろう。この我が、舞台へと降りてくるのを。
ならば、行くまでだ。幸村はそう決意して、手にしていた十字槍を投げ捨てた。おそらく相手はこれ以上距離を詰める気はないであろうから、槍など持っていても邪魔なだけである。
そして徒士に用意させていた馬上筒を受け取った。すでに弾も込められていて、火縄も点されている。堺で手に入れた、南蛮製の最新式であった。家康をこの手で仕留めるために用意したものだが、ぶざまに逃げ惑う臆病者などよりも、ただ一騎にて敵中へと乗り込んできたこの者にこそ相応しかろう。
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