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第五章
(十)
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敵は絶えず円を描くように動きながら、一定の距離を保ち続けている。三町から、近付いてせいぜいが二町といったところ。おそらくこの距離であれば、絶対の自負があるのだろう。
馬上筒の射程は、当然のことながら弓よりも長い。されど銃身を短く切り詰めているため、取り回しは楽ではあっても精度は落ちている。最低でも一町程度までは接近しなければ使い物にならぬであろう。しかも撃てるのはたったの一発。それを外せば、再び弾込めをしている余裕はない。つまりは決して、遊び弾は撃てないということだ。
問題は、その機をはたして与えてもらえるかどうかだ。駆っているのもよほどの駿馬と見えて、足取りも軽やかで接近を許さない。その上こちらが少しでも動きを緩めると、必殺の矢が至近を掠めてゆく。まずは恐るべきその膂力と業。決して届かぬ場所に居ながら、死だけが常に目の前にあるようだった。
「……化け物め」
味方の陣からも弓隊、鉄砲隊による斉射が行われたが、矢は届かず、鉄砲はまったく標的を捉えられずにいた。堪らず徒士のまま飛び出してくる者もいたが、いずれも数歩と進まぬうちにあえなく射抜かれた。気付けばいつしか誰もが手を止め、機を窺うように走り続ける幸村の馬を、固唾を呑んで見守るだけとなっていた。
そしてまた裂帛の気迫が込められた矢が、風切り音を聞き取れるほどのところを通り過ぎてゆく。そのたびに、幸村は血が泡立つような恐怖と歓喜に震えていた。ようやく、戦をしていると実感していた。そう、あれこれ謀を巡らせて、かような大舞台を整えたのも、これを味わうためだったのだと。
のう、そなたはどうなのだ。幸村は必死に手綱を操りながら、名も知らぬ好敵手へと問いかける。そなたもまた、胸を躍らせておるか。血は滾っておるのか。
そなたは良いのか、かような世の中で。それだけの才、それだけの業を生かす場も与えられず、この静謐の中で腐れてゆくのに耐えられるのか。
「耐えられまいよ……そうであろう?」
※
岡山口では大野勢の二度目の猛攻を耐え切って、前田勢はいよいよ城への侵攻に入ろうとしていた。その先鋒の中にあった小野伝右衛門は、手傷を負いながらも徒士らを鼓舞し、隊列を整えさせようとしていた。
「苦しいのはわかる……だがすべてはここからよ。城内への一番乗り、必ずや我らで果たして見せようぞ!」
そう声を張り上げると、威勢の良い「おうっ」という気勢が上がる。兵の士気も依然として旺盛、まだまだやれると決意も新たになる。
そのときふと、前方に広がる茶臼山ふもとの窪地に、単騎で駆ける騎馬武者の姿を見た。まるで見えない何かを中心として、大きく円を描くように。目を凝らすと、赤備の鎧に鹿角の兜を慥かめた。それは敵の攻め手の大将格と聞く、真田左衛門佐幸村のものだった。
だとしても、あのようなところで何をしているのか。まさか味方を見捨てて、ひとり城へ逃げ帰ろうとしているのでもあるまい。ならばいったい……と訝ったところに、離れてもう一騎が見えた。
やはり同じように、あるいは真田と対となる弧を描きながら、軽やかに窪地の隅を疾駆してゆく。まるで二騎が息を合わせて舞を舞っているようで、奇妙な光景につい目を奪われてしまう。
しかしあのもう一騎はいったい何者か。馬印らしきものは何も見て取れない。槍は帯びておらず、得物は大弓がひとつのみ。
そのとき、伝右衛門の脳裏に遠い記憶が蘇った。闇に包まれた海原の彼方に、ずらりと並んだ無数の篝火。ゆっくりと近付いてくるただ一艘の小舟。その上で大弓を構えるひとりの武者。
「あれはまさか……山下どのではないのか?」
その前田勢の左翼には精強で知られる細川越中守忠興の軍勢があり、大坂方の猛攻から前田勢を防いでいた。ただし本隊は水軍を率いて大坂湾の封鎖にあたっており、ここにいたのはあくまでも三千ばかりの分隊に過ぎない。その指揮を任されていたのは、忠興の信も厚い客将・藪内匠正照であった。
その内匠も、今だけは窪地で繰り広げられている奇妙な舞に見入っていた。目はどこかここではないどこかを見るように細められ、すっかり白くなった髭で覆われた口元には、いかにも愉しげな笑みが浮かんでいる。
「まったく……傾きよるわ、半三郎め……」
その口からは、誰に言うでもない言葉が零れ落ちる。隣に控えた嫡子の新九郎は、そんな父の姿を訝しげに見やった。
「あの御仁は……やはり」
さきほどおのれが誰何した、山下大和守なる将。あの者がまことに味方なのか、あるいは間者なのかはついにわからぬままだった。はたしていったい何者であったのか。そう訝り続けていたところで、当のその者は今、よりにもよってあの真田左衛門佐と一騎打ちを演じている。
「父上は、あの方をご存知なのですか?」
そう尋ねると、内匠はちらと新九郎へ目を向けて、どこか誇らしげに頷いた。
「存じているも何も……わしの、自慢の弟よ」
大坂城の西門前にて、明石掃部率いる守兵と交戦中の浅野但馬守長晟もまた、その一騎打ちを複雑な思いで見ていた。悔恨と、憧憬と、そして奇妙な得心とを抱えて。
友だと言ってくれたかの男があそこにいるのは、きっとおのれの為でもあるのだろうとわかっていた。されどそれを、直に喜ぶことができない。何故あそこにいるのがおのれではないのだと、腹立たしくてどうしようもないのだ。そうだ、兵を率いて攻め上がることが全軍を乱してしまうというのなら、あのようにただ一騎で行けばよかったのだ。
「そういうことでござるな、山下どの……」
さようなこと、おのれには考えることすらできなかった。思い付きさえしなかった。それが、おのれとあの御仁との違いなのだ。立場の差なのか、あるいは器の大きさなのか。
そして長晟はまた、兄幸長のことを思い出してもいた。朝鮮での働きを聞かされて、いつかおのれもと憧れた幼き日のことを。今ここに兄がいればどうしていただろう。あの御仁のように、あるいは馬を並べて、その身ひとつで敵陣へと乗り込んで行っただろうか。
「……石見よ。我は、兄上にはなれぬな。山下どののようにも……」
そうつぶやくと、傍らの木村石見守はくすりと笑って答えた。「殿は、殿でよろしいのでございますよ」
長晟は驚いたように、腹心の顔を見返した。それからややあって、ほっとしたように強張っていた表情を和らげる。
「……そうか。それでよいのか」
石見守はゆっくりと頷いた。そして目の前の戦場に再び向き直ると、供を連れて馬を進めていった。
天王寺口の高台では、逃散しかけた兵たちも再び家康の元に集まり、辛うじて態勢が整いつつあった。眼下では成瀬隼人正の軍勢が、押されながらもまだ持ち堪えている。怒涛の勢いであった敵の先鋒もさすがに疲れが出たのか、その矛先が鈍ってきているようであった。
「隼人には、もう良いと伝えよ。応戦しつつ退き、こちらに合流せよとな」
そう使番を走らせると、徒手の雑兵たちを前に並べた。投石によって成瀬隊の後退を助けるためである。とりあえず頭数さえ揃ったなら、地の利を生かせるこの場所のほうが守り易い。
「殿……あれは」
しかし帯刀は何か別のものを見ているらしかった。もちろん家康も、その指差す先にあるものに気付いていた。齢とともにいくらは弱ったとはいえ、まだまだ遠目は利く。
彼方の窪地にて、演じられている奇妙な一騎打ち。片方はおそらく真田左衛門佐その人であろう。そしてもうひとりについても、だいたいの見当は付いていた。
「……帯刀」されど家康は、険しい声で遮るのみだった。「目の前の戦に集中せよ。いまだ危地には違いないのだぞ」
「そ……そうでございました」
と、帯刀はすぐに我に返る。そして後方に下がり、兵たちに指示を送りはじめる。その背をちらりと振り返り、家康は目を戦場へと戻した。そうして気付かれぬように目を上げ、依然円を描くように対峙している二騎を遠く望む。
―――のう、今与一よ。おぬしもまた、未練があるのか。
その問い掛けは、もちろん声には出さない。声に出してはいけないとわかっていた。
―――生まれてくるのが遅すぎたと悔やんでおるか。この静謐を憎んでおるのか。されど、時はもう戻らぬよ。決して戻さぬ。恨むなら恨むがよい。すべては、徳川のためよ。
その言葉ははたして、誰に向けてのものなのか。家康自身にもわからなくなっていた。おのれが野で拾い、我が子の傅役にあてがった男に向けてなのか。あるいはそれと対峙しているもうひとりに向けてなのか。
あるいは、とそのまま天を仰ぐ。脳裏に浮かぶのは、今はもういない好敵手の太々しい面構えであった。その口から出る言葉は何ひとつ信ずるに値せず、戦ともなれば誰よりも狡猾にして強靭。おのれにとって乱世とは、まさしくあの男そのものであった。
―――恨むなら恨め、安房守よ。
そのとき、不意に「おおっ」というどよめきにも似た声が近付いてきた。目を戻すと、左翼のほうから波のように軍勢が押し出してくる。
「あれは……右兵衛か!」
ひとたびは隊列を崩して後退していった、右兵衛督義利の軍勢であった。されどまるで息を吹き返したかのように、猛然と突進して来る。こうなれば数では圧倒的な差があった。勢いのままに敵先鋒の横腹を突き、そのまま呑み込んでゆく。
馬上筒の射程は、当然のことながら弓よりも長い。されど銃身を短く切り詰めているため、取り回しは楽ではあっても精度は落ちている。最低でも一町程度までは接近しなければ使い物にならぬであろう。しかも撃てるのはたったの一発。それを外せば、再び弾込めをしている余裕はない。つまりは決して、遊び弾は撃てないということだ。
問題は、その機をはたして与えてもらえるかどうかだ。駆っているのもよほどの駿馬と見えて、足取りも軽やかで接近を許さない。その上こちらが少しでも動きを緩めると、必殺の矢が至近を掠めてゆく。まずは恐るべきその膂力と業。決して届かぬ場所に居ながら、死だけが常に目の前にあるようだった。
「……化け物め」
味方の陣からも弓隊、鉄砲隊による斉射が行われたが、矢は届かず、鉄砲はまったく標的を捉えられずにいた。堪らず徒士のまま飛び出してくる者もいたが、いずれも数歩と進まぬうちにあえなく射抜かれた。気付けばいつしか誰もが手を止め、機を窺うように走り続ける幸村の馬を、固唾を呑んで見守るだけとなっていた。
そしてまた裂帛の気迫が込められた矢が、風切り音を聞き取れるほどのところを通り過ぎてゆく。そのたびに、幸村は血が泡立つような恐怖と歓喜に震えていた。ようやく、戦をしていると実感していた。そう、あれこれ謀を巡らせて、かような大舞台を整えたのも、これを味わうためだったのだと。
のう、そなたはどうなのだ。幸村は必死に手綱を操りながら、名も知らぬ好敵手へと問いかける。そなたもまた、胸を躍らせておるか。血は滾っておるのか。
そなたは良いのか、かような世の中で。それだけの才、それだけの業を生かす場も与えられず、この静謐の中で腐れてゆくのに耐えられるのか。
「耐えられまいよ……そうであろう?」
※
岡山口では大野勢の二度目の猛攻を耐え切って、前田勢はいよいよ城への侵攻に入ろうとしていた。その先鋒の中にあった小野伝右衛門は、手傷を負いながらも徒士らを鼓舞し、隊列を整えさせようとしていた。
「苦しいのはわかる……だがすべてはここからよ。城内への一番乗り、必ずや我らで果たして見せようぞ!」
そう声を張り上げると、威勢の良い「おうっ」という気勢が上がる。兵の士気も依然として旺盛、まだまだやれると決意も新たになる。
そのときふと、前方に広がる茶臼山ふもとの窪地に、単騎で駆ける騎馬武者の姿を見た。まるで見えない何かを中心として、大きく円を描くように。目を凝らすと、赤備の鎧に鹿角の兜を慥かめた。それは敵の攻め手の大将格と聞く、真田左衛門佐幸村のものだった。
だとしても、あのようなところで何をしているのか。まさか味方を見捨てて、ひとり城へ逃げ帰ろうとしているのでもあるまい。ならばいったい……と訝ったところに、離れてもう一騎が見えた。
やはり同じように、あるいは真田と対となる弧を描きながら、軽やかに窪地の隅を疾駆してゆく。まるで二騎が息を合わせて舞を舞っているようで、奇妙な光景につい目を奪われてしまう。
しかしあのもう一騎はいったい何者か。馬印らしきものは何も見て取れない。槍は帯びておらず、得物は大弓がひとつのみ。
そのとき、伝右衛門の脳裏に遠い記憶が蘇った。闇に包まれた海原の彼方に、ずらりと並んだ無数の篝火。ゆっくりと近付いてくるただ一艘の小舟。その上で大弓を構えるひとりの武者。
「あれはまさか……山下どのではないのか?」
その前田勢の左翼には精強で知られる細川越中守忠興の軍勢があり、大坂方の猛攻から前田勢を防いでいた。ただし本隊は水軍を率いて大坂湾の封鎖にあたっており、ここにいたのはあくまでも三千ばかりの分隊に過ぎない。その指揮を任されていたのは、忠興の信も厚い客将・藪内匠正照であった。
その内匠も、今だけは窪地で繰り広げられている奇妙な舞に見入っていた。目はどこかここではないどこかを見るように細められ、すっかり白くなった髭で覆われた口元には、いかにも愉しげな笑みが浮かんでいる。
「まったく……傾きよるわ、半三郎め……」
その口からは、誰に言うでもない言葉が零れ落ちる。隣に控えた嫡子の新九郎は、そんな父の姿を訝しげに見やった。
「あの御仁は……やはり」
さきほどおのれが誰何した、山下大和守なる将。あの者がまことに味方なのか、あるいは間者なのかはついにわからぬままだった。はたしていったい何者であったのか。そう訝り続けていたところで、当のその者は今、よりにもよってあの真田左衛門佐と一騎打ちを演じている。
「父上は、あの方をご存知なのですか?」
そう尋ねると、内匠はちらと新九郎へ目を向けて、どこか誇らしげに頷いた。
「存じているも何も……わしの、自慢の弟よ」
大坂城の西門前にて、明石掃部率いる守兵と交戦中の浅野但馬守長晟もまた、その一騎打ちを複雑な思いで見ていた。悔恨と、憧憬と、そして奇妙な得心とを抱えて。
友だと言ってくれたかの男があそこにいるのは、きっとおのれの為でもあるのだろうとわかっていた。されどそれを、直に喜ぶことができない。何故あそこにいるのがおのれではないのだと、腹立たしくてどうしようもないのだ。そうだ、兵を率いて攻め上がることが全軍を乱してしまうというのなら、あのようにただ一騎で行けばよかったのだ。
「そういうことでござるな、山下どの……」
さようなこと、おのれには考えることすらできなかった。思い付きさえしなかった。それが、おのれとあの御仁との違いなのだ。立場の差なのか、あるいは器の大きさなのか。
そして長晟はまた、兄幸長のことを思い出してもいた。朝鮮での働きを聞かされて、いつかおのれもと憧れた幼き日のことを。今ここに兄がいればどうしていただろう。あの御仁のように、あるいは馬を並べて、その身ひとつで敵陣へと乗り込んで行っただろうか。
「……石見よ。我は、兄上にはなれぬな。山下どののようにも……」
そうつぶやくと、傍らの木村石見守はくすりと笑って答えた。「殿は、殿でよろしいのでございますよ」
長晟は驚いたように、腹心の顔を見返した。それからややあって、ほっとしたように強張っていた表情を和らげる。
「……そうか。それでよいのか」
石見守はゆっくりと頷いた。そして目の前の戦場に再び向き直ると、供を連れて馬を進めていった。
天王寺口の高台では、逃散しかけた兵たちも再び家康の元に集まり、辛うじて態勢が整いつつあった。眼下では成瀬隼人正の軍勢が、押されながらもまだ持ち堪えている。怒涛の勢いであった敵の先鋒もさすがに疲れが出たのか、その矛先が鈍ってきているようであった。
「隼人には、もう良いと伝えよ。応戦しつつ退き、こちらに合流せよとな」
そう使番を走らせると、徒手の雑兵たちを前に並べた。投石によって成瀬隊の後退を助けるためである。とりあえず頭数さえ揃ったなら、地の利を生かせるこの場所のほうが守り易い。
「殿……あれは」
しかし帯刀は何か別のものを見ているらしかった。もちろん家康も、その指差す先にあるものに気付いていた。齢とともにいくらは弱ったとはいえ、まだまだ遠目は利く。
彼方の窪地にて、演じられている奇妙な一騎打ち。片方はおそらく真田左衛門佐その人であろう。そしてもうひとりについても、だいたいの見当は付いていた。
「……帯刀」されど家康は、険しい声で遮るのみだった。「目の前の戦に集中せよ。いまだ危地には違いないのだぞ」
「そ……そうでございました」
と、帯刀はすぐに我に返る。そして後方に下がり、兵たちに指示を送りはじめる。その背をちらりと振り返り、家康は目を戦場へと戻した。そうして気付かれぬように目を上げ、依然円を描くように対峙している二騎を遠く望む。
―――のう、今与一よ。おぬしもまた、未練があるのか。
その問い掛けは、もちろん声には出さない。声に出してはいけないとわかっていた。
―――生まれてくるのが遅すぎたと悔やんでおるか。この静謐を憎んでおるのか。されど、時はもう戻らぬよ。決して戻さぬ。恨むなら恨むがよい。すべては、徳川のためよ。
その言葉ははたして、誰に向けてのものなのか。家康自身にもわからなくなっていた。おのれが野で拾い、我が子の傅役にあてがった男に向けてなのか。あるいはそれと対峙しているもうひとりに向けてなのか。
あるいは、とそのまま天を仰ぐ。脳裏に浮かぶのは、今はもういない好敵手の太々しい面構えであった。その口から出る言葉は何ひとつ信ずるに値せず、戦ともなれば誰よりも狡猾にして強靭。おのれにとって乱世とは、まさしくあの男そのものであった。
―――恨むなら恨め、安房守よ。
そのとき、不意に「おおっ」というどよめきにも似た声が近付いてきた。目を戻すと、左翼のほうから波のように軍勢が押し出してくる。
「あれは……右兵衛か!」
ひとたびは隊列を崩して後退していった、右兵衛督義利の軍勢であった。されどまるで息を吹き返したかのように、猛然と突進して来る。こうなれば数では圧倒的な差があった。勢いのままに敵先鋒の横腹を突き、そのまま呑み込んでゆく。
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