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ノエルのはなし

女神との邂逅5

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「んふっ、あっ……」

 淫靡な声がか細く耳に届く。いま、最高潮に興奮しているのが自分でもわかっていた。これは、乙女の血の影響もあろうが、何より、女神のごとき美しい少女がこちらを誘う姿は雄としての部分を非常に刺激したのだ。
 いままで逃げ隠れする生活の中で縁が無かったため、興味が薄いのか無いと思い込んでいたようだが、そうではなかった。
 ――いま、この少女をもっと穢したい、と思ってしまった。

「あぁ……はぁっ、んん……」

 少女が気持ちよさそうな声を上げるたびに、もっと己がよくしてやりたいという欲望がムクムクと湧いてきた。抑えていた欲望が臨界点を突破しそうになって、思わず興奮を落ち着けるようにため息を吐いたその瞬間、――

「――だ、だれ?」
「あ……」

 ――しまった、人化してしまった。

 一瞬にしてすべての興奮が静まった。少女の驚愕の視線がカチリ、と合わさる。

 ――見られた。見られた。見られた、見られた見られた見られた見られた見られた見られた――。

 パニックになった頭が、それでも少女の拒絶は必然であると警告していた。このような醜い容姿の、卑しいものに穢されていたなど、知られてはいけなかったのだ。もっとよくしたいなどと、考えてはいけなかったのだ。
 そもそも、このような蛮行が許されていたのはなぜか。戯れなのか、傷だらけだった色の薄い憐れな獣を見つけ看病するなど、ただ同情していただけかもしれないのだ。情が湧いて好きにさせてやっていただけかもしれない。

 色で差別されてきただろう獣を救おうとするような女神のごとき容姿と心根の持ち主なのだ。きっと、これが真意だろう。戯れに救ってやっただけ。
 まさか人化するとは思いも寄らなかった、というように驚愕に見開かれた瞳が胸に刺さった。――そうだ。俺はその全てが美しい少女を穢すなんてとんでもないことをしてしまったのだ。

 ――こわい。

 少女の次の言葉が拒絶であると、生まれてからの今までの経験が告げる。女神のような少女にまで拒絶されれば、これから先、この世を生き抜く覚悟が無くなってしまう予感、――いや、確信がした。

 ――こわい。

 ただただそれだけだった。
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