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トウガラシくん
02
しおりを挟む1日目
朝昼夜!3食、食べました。
「うん。やっぱりチョコくんがいないとからい…」
舌がずっとぴりぴりしている。でも食べなきゃね……。
2日目
朝!食べました。
昼!少し残しちゃった。
夜 なし
「疲れて帰ってきたチョコくん、食べてないの気づいたら悲しむだろうな……でも、もう食べたくない」
前よりも、ぜったいにからい。チョコくんに食べさせてもらってばかりいたから、更に辛さに弱くなったのだろうか。
3日目
朝! 少し食べた。
昼 なし
夜 なし
ずっと水ばっかり飲んでる。チョコくんの部屋からシャツを1枚借りて、嗅ぎながら食べたけどあんまり効果がない。余計,寂しくなった。
「チョコくん……大丈夫かな」
4日目
お腹は空いたけど俺の口は野菜を食べてくれない。見てるのもつらくて、せっかく用意してくれた食べ物を全部捨てた。食べなきゃいけないのに。ごめん、チョコくん。
5日目
初めてこの世界に来た時の夢をちょっと見た。お腹が空くのにどうして食べられないんだろう、辛いものなんて少し我慢すればいいだけなのに。普通の食べ物は全く口にできなくなってしまった。チョコくんとのキスの味を、何度も思い出し、食べたくなった。
6日目
あんまり、体に力が入らない。家から出て、買い物に行った。ふらつきながら、目当ての店で木の実を買った。業務用はここでは売ってないから、小さな袋の"家庭用ペットのエサ"である。
チョコくんのお金を使うまでもなく、たった銅貨一枚でおれの数日間分の食事は購入できた。
「懐かしいなぁ」
家まで持ち帰っていたら、空腹で倒れると思った俺は、人通りの少ない裏路地で、木の実を口に含んだ。固いから、よく噛んでから食べるのがコツ……なのに。
「ひっ……うえ……げほっ」
吐いてしまった。胃の中には何も入ってないから、酸っぱい液体をぼたぼた口から流すだけで何もできない。なんで、どうしてだろう。前は、味はしなくても、食べれたのに。
「どうしよう……チョコくんとちゅーもえっちもできないな……はは」
お腹は空いてるし、不安だし、寂しいし。涙がでてくる。ちゅーとえっちどころか、こんな姿、チョコくんが見てしまったら……。優しいチョコくんはきっと自分を責めるだろう。なんも悪くないのに。
「……おい、大丈夫か?」
突然、そんな声が頭上から降ってきた。涙をこぼしながら、嘔吐いている俺の背中に、その声の持ち主は手を当てて優しくさすってくれた。
「ご、ごめんなさ……」
「気にしなくていい。全部吐ききれ」
どこか安心するその声に従って、無理矢理のみこんだ木の実を吐き出した。
「……なんでこんなもの食ってるんだ。おい、水を飲め」
ひょうたん型の水筒を渡されて、ごくごく飲むと、すこし落ち着いた。
「ありがとう、ございます」
「いや、医者だからな。当たり前のことをしただけだ」
すごく優しいひとってチョコくん以外にもいるのだなぁ。そんな人にはしっかり目を合わせてお礼を言わなきゃって思って、ずっと伏せていた顔をあげる。
「……何故こんなものを食べてたんだ?……いや、大方察せるな。人が食うものじゃないぞ、これは」
「あ、え?」
「よく見たらガリガリで顔色も悪い……このまま死なれたら後味が悪ちから俺と来てもらうぞ」
「チョコ、くん……?」
チョコレート色の肌と、髪、苺みたいな瞳は確かにチョコくんだ。声も顔もおなじ。でも、話し方、違うし、なにより甘いにおいがしない。
唐辛子のようなとってもからいにおい。チョコくんほど濃厚じゃないけどすこし、する。でも、弱っていた俺の身体には大ダメージだったみたいで、意識を失ってしまった。
「おいっ!……仕方ない。運んでいくか」
男は、アカネを抱き上げると怠そうに歩き出す。向かった先は、男が営む診療所だ。
「帰った。ルナ、いるか?」
「はいはーい!ってえ、なんてものを持って帰ってきたんですか!カーティスさん!人ですよ!?」
「目の前で倒れたんだ、放っておくわけにもいかないだろ」
「本当です?誘拐してきたとか言わないでしょうね?」
その日、アカネは目を覚ますこともなく、眠り続けた。食べなきゃいけないというプレッシャーによって寝られず、寝不足だったせいだ。
7日目
急いで帰ってきたチョコ君はアカネがいないことに気づき、S級冒険者のコネを最大限使って、アカネを探していた。絶望感により、震える身体を無理矢理動かし、ようやく辿り着いたのは……。
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