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一章
15、宴の終わり
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ユリウスは、庭園を疾駆していた。
ぐんぐんと後ろにすっ飛んでいく景色に、流れる汗の滴が置き去りにされる。
「ぷはぁ!」
ジューンが詰めていた息を吐いた。その瞬間まじないが解け、二人の姿が現われる。
ジューンは荒い息を吐きながら、ユリウスの背に凭れかかった。
「あ、危なかった~! あとちょっとで、見つかるかと思った!」
「大丈夫か? かなり速く駆けたが……」
「平気平気。ユリウス様こそ大丈夫?」
「問題ない」
言葉の通りユリウスは、汗こそ浮かべているが呼吸に乱れはない。ジューンは、背後を振り返り、誰も追ってきていないことを確認し、ホッと息をついた。
「よかった。バレなかったみたいだね」
「そうか……」
ユリウスは曖昧に頷きつつ、多分バレただろうなと思った。少し騒ぎになったのに、誰も追ってきていないのがその証拠だ。恐らく、兄が自分たちだと気づいて追及させなかったのだろう。
嬉しそうなジューンに水を差すのが忍びなく、ユリウスは話題を変えた。
「それより、さっきはどうしたんだ? 何か光ったみたいだったが」
「ああ、あれ」
ジューンは頷くと、胸にかけた守り袋を手繰った。中から、翠色の宝玉を取り出した。少し速度を緩めたユリウスの目の前に、石を差し出す。
「これは?」
「預かり物。さっき、お守りを拾おうとしたとき、この石が袋から落ちてタイロスお義兄さまに当たってね。そしたら、急に光ったの」
この石がタイロスに触れた瞬間、翠色の閃光が弾けたのだ。それで驚いて、まじないが解けそうになった。
あのときは、「まずい、とにかく逃げなきゃ」と思ったが、あれは一体何だったんだろう。ジューンは、手の中に石を握りこんだ。
(今は何ともない……さっきはたまたま?)
ユリウスがジューンを振り返る。心配そうな顔をしていた。
「おまえは、持っていて何ともないのか?」
「えっ、別に」
「そうか。だが、少しでもおかしいと思ったら、手放したほうが良い」
「ユリウス様……」
ジューンは微笑んで、こくりと頷いた。
「わかった、そうする」
「うん」
それから、ユリウスは暫く黙って走っていた。ジューンは、いい加減背から降りるべきかと迷いつつ、ユリウスが何も言わないので黙っていた。
別に走るのが嫌だったわけではないが、少しもったいないと思ったのだ。
「ジューン、見ろ。あそこに姉上たちがおられるぞ」
「本当だ!」
前方に、アプリリスがセレニアと共に手を振っているのが見えた。
「お義姉さま!」
「ジューン~~ユリウス~~よく戻ったぞ~~!」
ジューンが手を振り返すと、アプリリスがセレニアの手を引いて走ってきた。
ユリウスもジューンと共に、姉に駆け寄った。
長い宴の夜がようやく終わろうとしていた。
ぐんぐんと後ろにすっ飛んでいく景色に、流れる汗の滴が置き去りにされる。
「ぷはぁ!」
ジューンが詰めていた息を吐いた。その瞬間まじないが解け、二人の姿が現われる。
ジューンは荒い息を吐きながら、ユリウスの背に凭れかかった。
「あ、危なかった~! あとちょっとで、見つかるかと思った!」
「大丈夫か? かなり速く駆けたが……」
「平気平気。ユリウス様こそ大丈夫?」
「問題ない」
言葉の通りユリウスは、汗こそ浮かべているが呼吸に乱れはない。ジューンは、背後を振り返り、誰も追ってきていないことを確認し、ホッと息をついた。
「よかった。バレなかったみたいだね」
「そうか……」
ユリウスは曖昧に頷きつつ、多分バレただろうなと思った。少し騒ぎになったのに、誰も追ってきていないのがその証拠だ。恐らく、兄が自分たちだと気づいて追及させなかったのだろう。
嬉しそうなジューンに水を差すのが忍びなく、ユリウスは話題を変えた。
「それより、さっきはどうしたんだ? 何か光ったみたいだったが」
「ああ、あれ」
ジューンは頷くと、胸にかけた守り袋を手繰った。中から、翠色の宝玉を取り出した。少し速度を緩めたユリウスの目の前に、石を差し出す。
「これは?」
「預かり物。さっき、お守りを拾おうとしたとき、この石が袋から落ちてタイロスお義兄さまに当たってね。そしたら、急に光ったの」
この石がタイロスに触れた瞬間、翠色の閃光が弾けたのだ。それで驚いて、まじないが解けそうになった。
あのときは、「まずい、とにかく逃げなきゃ」と思ったが、あれは一体何だったんだろう。ジューンは、手の中に石を握りこんだ。
(今は何ともない……さっきはたまたま?)
ユリウスがジューンを振り返る。心配そうな顔をしていた。
「おまえは、持っていて何ともないのか?」
「えっ、別に」
「そうか。だが、少しでもおかしいと思ったら、手放したほうが良い」
「ユリウス様……」
ジューンは微笑んで、こくりと頷いた。
「わかった、そうする」
「うん」
それから、ユリウスは暫く黙って走っていた。ジューンは、いい加減背から降りるべきかと迷いつつ、ユリウスが何も言わないので黙っていた。
別に走るのが嫌だったわけではないが、少しもったいないと思ったのだ。
「ジューン、見ろ。あそこに姉上たちがおられるぞ」
「本当だ!」
前方に、アプリリスがセレニアと共に手を振っているのが見えた。
「お義姉さま!」
「ジューン~~ユリウス~~よく戻ったぞ~~!」
ジューンが手を振り返すと、アプリリスがセレニアの手を引いて走ってきた。
ユリウスもジューンと共に、姉に駆け寄った。
長い宴の夜がようやく終わろうとしていた。
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