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53話 安里翔
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扉を開くとそこには、石柱の立ち並ぶ広々とした室内に、威圧感漂う玉座が設えてあった。
周囲を見回しても魔物の姿は一向に見当たらない。
だけど、さっきからずっと感じている恐怖は消えるどころか、大きさを増す一方だった。
俺達三人は恐る恐る玉座の間へと足を踏み入れた。
"彼の御方の痕跡を感じるぞ。選ばし者よ、随分と待ち侘びたぞ"
唸る様な声が部屋中に響き渡った。
その声に俺達は思わず恐れ慄き、身動きが出来なくなった。
「誰だ!隠れて無いで出て来い!」
俺は震えながらも、恐怖心を打ち消そうと叫んだ。
するとその声に応えたのか、玉座の前方の空間に亀裂が入り、大きな楕円形の穴が出現した。
その穴からは、果てしない深淵へと続く様な禍々しさを感じた。
この穴に近付くのは危険だ。本能がそう訴え掛けた。
隣ではロマリオンがその穴から漂う得体の知れない恐怖に震えているのが分かった。
俺達は只々茫然とその異様な穴を見つめる事しか出来なかった。
これが、俺達の探し求めていたゲートなのだろうか。
もしそうなら、邪悪な気配しかしないこの中に飛び込むのは危険過ぎる。
そうこう考えていると、穴の奥から手の様な物がこっちへ伸びて来るのが見えた。
手は穴の縁を掴みそこからこちらへ出て来ようとしている様に見えた。
「あれを穴から出してはいけない!」
ロマリオンが震えながら火炎の魔法を唱えた。
しかし、火炎が放たれる事は無く不発に終わった。
「この城全体に魔法を無効かする結界が張られているのか?いや、城全体に結界を張るなど出来る筈が・・・」
ロマリオンは恐怖の入り混じった表情で言った。
「早く何か手を打たなくては、手遅れになるかもしれない!アリシア!俺に強化魔法を掛けてくれ!」
アリシアが肉体強化の魔法を唱えたが、俺の体に魔法の効果は見受けられなかった。
「翔!やっぱりダメみたい!」
俺は魔法による援護を諦め、穴を目指して走った。そして、穴の縁を掴む手に向かって剣を振った。
しかし、肉眼では見えないバリアの様な物に阻まれ、剣が通らない。
「馬鹿野郎!こっちに来るな!」
イワンは泣き叫びながら、道具袋に入れていたガラクタを穴目掛けてぶん投げてた。
しかし、それらは穴の手前で弾かれてしまった。
もう手の打ち様は無いのかと思ったその時、イワンの投げた何かがバリアを通過した様に見えた。
「待ってくれイワン!今何を投げたんだ?」
「そんなの知るかよ!何て言ったって、手当たり次第、無我夢中で投げてたんだから!」
俺達がそうこうしている間にも穴の中からはもう一本の手が現れ、両手で縁を掴み、顔と思しき部位を穴の中から覗かせた。
次に胴体と足が現れた。
結局俺達は穴の中からこちら側に謎の物体が抜け出すまでに、何一つ効果的なダメージを与える事は出来なかった。
全体像が露わになったその物体は身の丈は俺より少し大きく、影の様な無機質な物体に二つの眼球だけが付いているといった具合だった。
その威圧感は尚も俺達を震え上がらせていた。
「お前は一体何者なんだ?」
"我はゲートを守護する存在"
影は天を指差して言った。その先に目を遣ると影が出現した穴に似た穴が宙に浮かんでいた。だけど、その穴からは禍々しさは感じられない。
これこそ、ロマリオンが言っていたゲートの事だろう。
"そして、我は選ばれし者を屠る存在"
「つまりアンタは俺の命を狙う魔物って訳か。」
"お前達が魔物と呼ぶ存在は我が生み出した傀儡に過ぎぬ"
影は漆黒の炎を作り、こっちに向けて放った。
俺達は間一髪、炎を躱す事が出来たが、その炎が辿った軌跡を見て愕然とした。
それに触れた物は見る影も無く全て消え去っていた。
あの炎にちょっと掠るだけでも致命傷になり兼ねない。
俺とロマリオンは次の攻撃を警戒しつつ、影との距離を詰めた。
アリシアは魔法が使えず仮に影に向かって行ったとしても足手纏いにしかならない自分に悔しさを感じていた。
そしてイワンはと言うと、遥か後方で両手に薬草を握り締めて戦況を伺っていた。
俺とロマリオンは二人掛りで影を攻撃したが、バリアの様な物に阻まれ剣も魔法も通らない。
影は俺達の攻撃には全く関心を示さず、漆黒の炎の二射目を放った。
「危ない!」
ロマリオンが覆い被さる様にして俺を庇った。
見上げた先にロマリオンの顔があった。
「君が無事で何よりだ・・・」
ロマリオンは苦しそうな顔で口からは大量の血が流れていた。
力無く俺に覆い被さったロマリオンを立たせようとした時、その左半身が無くなっている事に気付いた。
「ロマリオン!どうして俺なんかを庇ったんだよ!」
「いいか!良く聞くんだ安里翔!絶望的なこの状況を変える方法が一つだけある!
君はこれから私に止めを刺して、魔王の力を手に入れるんだ!そうすればあの影を倒す事が出来るかもしれぬ!
それに魔王の力を得る事で、ゲートを通る条件も同時にクリア出来る!」
「そんな事俺には出来ないよ!ロマリオン!アンタは不死身なんだから、暫く休めば損傷した腕だって回復するかもしれないだろ?
一旦ここから離れて、回復してから奴に再戦しよう!」
「どうやら、この炎の前では私が不死身である事は意味を成さない様だ。これは存在それ自体を消滅させる炎だ。触れてしまっては最後。復元する事は出来無い。」
俺にはロマリオンを手に掛けると言う選択肢は考えられない。
ふと後方に目を遣ると、崩壊した瓦礫に挟まり気絶しているアリシアの姿が見えた。
ついでにイワンを探したがその姿はどこにも見当たらなかった。
影に目を戻すと、漆黒の炎をこちらに向けている。
「もう迷っている暇は無いぞ!」
「それでも出来ない!」
漆黒の炎が影の手を離れ、猛スピードでこちらに迫っている。
足を動かそうにも力が入らない。
「坊主!最後まで諦めるんじゃねぇ!
これでお前達の御守をしないで済むと思うと清々するぜ。
・・・だけど、お前とアリシアと一緒に旅が出来て楽しかったよ。
これからの事、そしてアリシアの事は任せたぞ!勇者、安里翔!」
イワンは俺を突き飛ばし、いつも肌身離さず身に着けていた道具袋をこちらに向かって投げ、晴れやかな顔で笑ってみせた。
「何言ってんだよイワン・・・。止めろーーー!!!」
そしてイワンは前を見据え、小さく何か呟いた。
しかし、その声は誰にも聞き取る事は出来なかった。
『アレン、サラ。すまなかった。今から俺もそっちへ行って罰を受ける・・・イワンでは無い本当の俺として・・・』
そして、イワンはまるで初めからこの世界に存在していなかったかの様にその痕跡を一切残さずに消えた。
唯一イワンがこの世界に生きた証を示すのは、形見となってしまった使い古された道具袋だけだった・・・
周囲を見回しても魔物の姿は一向に見当たらない。
だけど、さっきからずっと感じている恐怖は消えるどころか、大きさを増す一方だった。
俺達三人は恐る恐る玉座の間へと足を踏み入れた。
"彼の御方の痕跡を感じるぞ。選ばし者よ、随分と待ち侘びたぞ"
唸る様な声が部屋中に響き渡った。
その声に俺達は思わず恐れ慄き、身動きが出来なくなった。
「誰だ!隠れて無いで出て来い!」
俺は震えながらも、恐怖心を打ち消そうと叫んだ。
するとその声に応えたのか、玉座の前方の空間に亀裂が入り、大きな楕円形の穴が出現した。
その穴からは、果てしない深淵へと続く様な禍々しさを感じた。
この穴に近付くのは危険だ。本能がそう訴え掛けた。
隣ではロマリオンがその穴から漂う得体の知れない恐怖に震えているのが分かった。
俺達は只々茫然とその異様な穴を見つめる事しか出来なかった。
これが、俺達の探し求めていたゲートなのだろうか。
もしそうなら、邪悪な気配しかしないこの中に飛び込むのは危険過ぎる。
そうこう考えていると、穴の奥から手の様な物がこっちへ伸びて来るのが見えた。
手は穴の縁を掴みそこからこちらへ出て来ようとしている様に見えた。
「あれを穴から出してはいけない!」
ロマリオンが震えながら火炎の魔法を唱えた。
しかし、火炎が放たれる事は無く不発に終わった。
「この城全体に魔法を無効かする結界が張られているのか?いや、城全体に結界を張るなど出来る筈が・・・」
ロマリオンは恐怖の入り混じった表情で言った。
「早く何か手を打たなくては、手遅れになるかもしれない!アリシア!俺に強化魔法を掛けてくれ!」
アリシアが肉体強化の魔法を唱えたが、俺の体に魔法の効果は見受けられなかった。
「翔!やっぱりダメみたい!」
俺は魔法による援護を諦め、穴を目指して走った。そして、穴の縁を掴む手に向かって剣を振った。
しかし、肉眼では見えないバリアの様な物に阻まれ、剣が通らない。
「馬鹿野郎!こっちに来るな!」
イワンは泣き叫びながら、道具袋に入れていたガラクタを穴目掛けてぶん投げてた。
しかし、それらは穴の手前で弾かれてしまった。
もう手の打ち様は無いのかと思ったその時、イワンの投げた何かがバリアを通過した様に見えた。
「待ってくれイワン!今何を投げたんだ?」
「そんなの知るかよ!何て言ったって、手当たり次第、無我夢中で投げてたんだから!」
俺達がそうこうしている間にも穴の中からはもう一本の手が現れ、両手で縁を掴み、顔と思しき部位を穴の中から覗かせた。
次に胴体と足が現れた。
結局俺達は穴の中からこちら側に謎の物体が抜け出すまでに、何一つ効果的なダメージを与える事は出来なかった。
全体像が露わになったその物体は身の丈は俺より少し大きく、影の様な無機質な物体に二つの眼球だけが付いているといった具合だった。
その威圧感は尚も俺達を震え上がらせていた。
「お前は一体何者なんだ?」
"我はゲートを守護する存在"
影は天を指差して言った。その先に目を遣ると影が出現した穴に似た穴が宙に浮かんでいた。だけど、その穴からは禍々しさは感じられない。
これこそ、ロマリオンが言っていたゲートの事だろう。
"そして、我は選ばれし者を屠る存在"
「つまりアンタは俺の命を狙う魔物って訳か。」
"お前達が魔物と呼ぶ存在は我が生み出した傀儡に過ぎぬ"
影は漆黒の炎を作り、こっちに向けて放った。
俺達は間一髪、炎を躱す事が出来たが、その炎が辿った軌跡を見て愕然とした。
それに触れた物は見る影も無く全て消え去っていた。
あの炎にちょっと掠るだけでも致命傷になり兼ねない。
俺とロマリオンは次の攻撃を警戒しつつ、影との距離を詰めた。
アリシアは魔法が使えず仮に影に向かって行ったとしても足手纏いにしかならない自分に悔しさを感じていた。
そしてイワンはと言うと、遥か後方で両手に薬草を握り締めて戦況を伺っていた。
俺とロマリオンは二人掛りで影を攻撃したが、バリアの様な物に阻まれ剣も魔法も通らない。
影は俺達の攻撃には全く関心を示さず、漆黒の炎の二射目を放った。
「危ない!」
ロマリオンが覆い被さる様にして俺を庇った。
見上げた先にロマリオンの顔があった。
「君が無事で何よりだ・・・」
ロマリオンは苦しそうな顔で口からは大量の血が流れていた。
力無く俺に覆い被さったロマリオンを立たせようとした時、その左半身が無くなっている事に気付いた。
「ロマリオン!どうして俺なんかを庇ったんだよ!」
「いいか!良く聞くんだ安里翔!絶望的なこの状況を変える方法が一つだけある!
君はこれから私に止めを刺して、魔王の力を手に入れるんだ!そうすればあの影を倒す事が出来るかもしれぬ!
それに魔王の力を得る事で、ゲートを通る条件も同時にクリア出来る!」
「そんな事俺には出来ないよ!ロマリオン!アンタは不死身なんだから、暫く休めば損傷した腕だって回復するかもしれないだろ?
一旦ここから離れて、回復してから奴に再戦しよう!」
「どうやら、この炎の前では私が不死身である事は意味を成さない様だ。これは存在それ自体を消滅させる炎だ。触れてしまっては最後。復元する事は出来無い。」
俺にはロマリオンを手に掛けると言う選択肢は考えられない。
ふと後方に目を遣ると、崩壊した瓦礫に挟まり気絶しているアリシアの姿が見えた。
ついでにイワンを探したがその姿はどこにも見当たらなかった。
影に目を戻すと、漆黒の炎をこちらに向けている。
「もう迷っている暇は無いぞ!」
「それでも出来ない!」
漆黒の炎が影の手を離れ、猛スピードでこちらに迫っている。
足を動かそうにも力が入らない。
「坊主!最後まで諦めるんじゃねぇ!
これでお前達の御守をしないで済むと思うと清々するぜ。
・・・だけど、お前とアリシアと一緒に旅が出来て楽しかったよ。
これからの事、そしてアリシアの事は任せたぞ!勇者、安里翔!」
イワンは俺を突き飛ばし、いつも肌身離さず身に着けていた道具袋をこちらに向かって投げ、晴れやかな顔で笑ってみせた。
「何言ってんだよイワン・・・。止めろーーー!!!」
そしてイワンは前を見据え、小さく何か呟いた。
しかし、その声は誰にも聞き取る事は出来なかった。
『アレン、サラ。すまなかった。今から俺もそっちへ行って罰を受ける・・・イワンでは無い本当の俺として・・・』
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