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55話 安里翔
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俺達は城から脱出するべく、最初に入って来た一階の入り口を目指して走った。
二階の踊り場から一階に目を遣ると、そこに在るべき筈の入り口は無く、更に窓だった部分は全て分厚く強固な壁に覆われていた。
「どう言う事だ?俺達が入って来た扉が塞がれてる・・・」
「迂闊だったわ。今までの歴史上、核が破壊される事何て無かったからすっかり忘れてたけど。
この城は敵に攻め入られた時、最終手段として、核を破壊して城の内部爆発を起こす事によって、敵諸共、城内に残る全てを消し去ってしまう要塞へと変貌を遂げるんだった。
恐らく、もう直ぐで崩落に続いて内部爆発が起こるわ。」
「成程。城の崩落で敵の足止め、その間に王やその重鎮達は内部爆発が起こる前に、隠し通路から逃げ果すと言う訳か。」
「ロマリオン!今はそんな冷静な分析をしてる場合じゃないだろ!」
「そうだったな。至極真っ当な意見だ。」
「今からじゃ玉座の間に戻って、何処にあるのかも分からない王の隠し通路を探すのは時間的にも不可能だと思うわ。」
「それじゃ、どうしたら良いんだよ。折角影を倒したのに、このまま、この城と心中するしか無いのかよ!」
ローブの女性は暫し逡巡し言った。
「一つだけ城から出る方法があるわ。だけど、あなた達の身の安全は保障出来ない、それに場合によっては大きな代償を払わなければいけない。それでも良いって言うなら私に付いて来て。」
そう言うと、ローブの女性は崩落により道を塞ぐ瓦礫を魔法で払いながら走り始めた。
例えそれがどんな代償であろうと、俺達はその僅かな脱出の可能性を信じて、彼女に付いて行くしか選択肢は残されていなかった。
走り始めて暫くして、二階の通路を進むローブの女性の足が止まった。
そして通路脇の壁に手を当て、何かを確認し始めた。
彼女がその手で触れている場所は、ロマリオンが何かあるかもしれないと言っていた場所と一致していた。
「いい、あなた達。今から進む通路は、本来は人間が通る様に作られてはいないの。それは元人間のロマリオン、あなたとて例外では無いわ。
この通路を進む時には強い意志を持って、絶対に自分の存在を疑わない事。
通路を進む途中で、見たく無い物を見る事になるかもしれない。そこでもし、自分を見失ってしまったら、二度と元には戻れなくなるから、今私が言った事をくれぐれも肝に銘じておいて。」
ローブの女性はこれまでに無く真剣な表情で俺達に念を押した。
そして俺を初め、ロマリオンにさえ、どの言語かさっぱり分からない呪文を唱え始めた。
すると突如、壁の向こうへと続く道が姿を現したのだ。
「道は開いたわ。さあ、覚悟を決めて。ここから先はあなた達次第よ。」
ここでアリシアは何かに気付き、周囲をキョロキョロ見渡して言った。
「ねえ、ちょっと待って。その前に翔もロマリオンも忘れてるかも知れないけど、またイワンが居ないわ。
何処かに隠れてるだろうから早いとこ探しましょう。
あんな奴でも仲間だから、こんな所に置いてけぼりにして死なれたんじゃ敵わないわ。
まったく、何時も私達に迷惑ばかり掛けるんだからホント困っちゃう。
ここが爆破する事も知らないだろうから、早いとこ手分けして探しましょう。」
そうか、アリシアは影の攻撃を受け、気絶していてからまだ知らないんだ。
イワンがもうこの世に居ない事を。
ここで真実を伝えてしまうと、アリシアの精神が乱れ、強い意志を以って通路を進む事が出来なくなるかもしれない。
そうなる位だったら、俺は後から嘘つきだと罵られて、アリシアに嫌われてもいい。
「アリシア。イワンは薄情な奴だから、君が気絶している間に、一人城から逃げ出したんだ。
今頃は反省しながら遠くから・・・、きっと遠くから俺達の無事を祈ってくれてるんじゃ無いかな。」
「も~最っ低~!今日と言う今日は許さないんだから!ここから出られたら翔も一緒にあんな奴とっちめてやりましょう!」
「ああそうだな。」
俺は両手をアリシアの肩の上に置いて唇を噛み締めながら言った。
そうでもして、アリシアの肩を支えにしていないと、イワンの事を考えると胸が苦しくて、自分の体重を支える事が出来ず崩れ落ちてしまいそうだったから。
「ねぇ、翔どうしたの?そんなに肩を震わせたりして。
イワンに怒ってるの?それとも、泣いてるの・・・?
一人だけ勝手に逃げたのがそんなに悔しかったの?だったら私も・・・」
「違うんだアリシア。そうじゃ無いんだ。後でちゃんと話すから今は何も聞かないでくれ・・・」
俺はこれ以上アリシアの顔を見ていられず、堪らず目を逸らした。
その思いを察してくれたロマリオンが俺の肩に優しく触れ、その足でアリシアに歩み寄り、同じ様に優しく肩に触れた。
「翔にもロマリオンにもそんな顔されたら何も聞けないわ。分かったは、今は何も聞かないであげる。」
俺達はローブの女性を先頭に真っ暗闇の通路を進んだ。
通路を進む途中で様々なイメージが止めどなく浮かんでは消えた。
火の海となった町。
逃げ惑う人間を襲う魔物の群れ。
幾重にも積み重なる人間とモンスターの死骸。
魔物とは少し違う、獣の様な悍ましい生物。
ロマリオンの憂いを帯びた笑み。血に染まった剣。
三人の人間の顔。二人は見覚えが無いが、その内一人は誰だか思い出せないが何故か見覚えがある。
この世界の景観とは違う初めて見る村。藤知里村?
だめだ!
これ以上、頭の中で処理出来ない!これ以上、意識を保てない!
あれからどれ位の時が流れたんだろう。
まるで夢の中に居る様な不思議な感覚の中、遠くから誰かが誰かを呼ぶ声が聞こえる。
「翔!」
翔って誰だろう。
それより俺は誰だっけ。そもそも誰かであったんだろうか。
「お願い・・・目を覚まして・・・」
さっきの叫ぶ様な声が、今度は縋るような声に変わった。
何故だろう、この声の主を悲しませてはいけない気がする。今すぐ目を開けなければ。
だめだ。体が思う様に動かない。声がどんどん遠ざかって行く。
恐い・・・
助けてくれ!
俺は此処に居る!
置いて行かないでくれ!
二階の踊り場から一階に目を遣ると、そこに在るべき筈の入り口は無く、更に窓だった部分は全て分厚く強固な壁に覆われていた。
「どう言う事だ?俺達が入って来た扉が塞がれてる・・・」
「迂闊だったわ。今までの歴史上、核が破壊される事何て無かったからすっかり忘れてたけど。
この城は敵に攻め入られた時、最終手段として、核を破壊して城の内部爆発を起こす事によって、敵諸共、城内に残る全てを消し去ってしまう要塞へと変貌を遂げるんだった。
恐らく、もう直ぐで崩落に続いて内部爆発が起こるわ。」
「成程。城の崩落で敵の足止め、その間に王やその重鎮達は内部爆発が起こる前に、隠し通路から逃げ果すと言う訳か。」
「ロマリオン!今はそんな冷静な分析をしてる場合じゃないだろ!」
「そうだったな。至極真っ当な意見だ。」
「今からじゃ玉座の間に戻って、何処にあるのかも分からない王の隠し通路を探すのは時間的にも不可能だと思うわ。」
「それじゃ、どうしたら良いんだよ。折角影を倒したのに、このまま、この城と心中するしか無いのかよ!」
ローブの女性は暫し逡巡し言った。
「一つだけ城から出る方法があるわ。だけど、あなた達の身の安全は保障出来ない、それに場合によっては大きな代償を払わなければいけない。それでも良いって言うなら私に付いて来て。」
そう言うと、ローブの女性は崩落により道を塞ぐ瓦礫を魔法で払いながら走り始めた。
例えそれがどんな代償であろうと、俺達はその僅かな脱出の可能性を信じて、彼女に付いて行くしか選択肢は残されていなかった。
走り始めて暫くして、二階の通路を進むローブの女性の足が止まった。
そして通路脇の壁に手を当て、何かを確認し始めた。
彼女がその手で触れている場所は、ロマリオンが何かあるかもしれないと言っていた場所と一致していた。
「いい、あなた達。今から進む通路は、本来は人間が通る様に作られてはいないの。それは元人間のロマリオン、あなたとて例外では無いわ。
この通路を進む時には強い意志を持って、絶対に自分の存在を疑わない事。
通路を進む途中で、見たく無い物を見る事になるかもしれない。そこでもし、自分を見失ってしまったら、二度と元には戻れなくなるから、今私が言った事をくれぐれも肝に銘じておいて。」
ローブの女性はこれまでに無く真剣な表情で俺達に念を押した。
そして俺を初め、ロマリオンにさえ、どの言語かさっぱり分からない呪文を唱え始めた。
すると突如、壁の向こうへと続く道が姿を現したのだ。
「道は開いたわ。さあ、覚悟を決めて。ここから先はあなた達次第よ。」
ここでアリシアは何かに気付き、周囲をキョロキョロ見渡して言った。
「ねえ、ちょっと待って。その前に翔もロマリオンも忘れてるかも知れないけど、またイワンが居ないわ。
何処かに隠れてるだろうから早いとこ探しましょう。
あんな奴でも仲間だから、こんな所に置いてけぼりにして死なれたんじゃ敵わないわ。
まったく、何時も私達に迷惑ばかり掛けるんだからホント困っちゃう。
ここが爆破する事も知らないだろうから、早いとこ手分けして探しましょう。」
そうか、アリシアは影の攻撃を受け、気絶していてからまだ知らないんだ。
イワンがもうこの世に居ない事を。
ここで真実を伝えてしまうと、アリシアの精神が乱れ、強い意志を以って通路を進む事が出来なくなるかもしれない。
そうなる位だったら、俺は後から嘘つきだと罵られて、アリシアに嫌われてもいい。
「アリシア。イワンは薄情な奴だから、君が気絶している間に、一人城から逃げ出したんだ。
今頃は反省しながら遠くから・・・、きっと遠くから俺達の無事を祈ってくれてるんじゃ無いかな。」
「も~最っ低~!今日と言う今日は許さないんだから!ここから出られたら翔も一緒にあんな奴とっちめてやりましょう!」
「ああそうだな。」
俺は両手をアリシアの肩の上に置いて唇を噛み締めながら言った。
そうでもして、アリシアの肩を支えにしていないと、イワンの事を考えると胸が苦しくて、自分の体重を支える事が出来ず崩れ落ちてしまいそうだったから。
「ねぇ、翔どうしたの?そんなに肩を震わせたりして。
イワンに怒ってるの?それとも、泣いてるの・・・?
一人だけ勝手に逃げたのがそんなに悔しかったの?だったら私も・・・」
「違うんだアリシア。そうじゃ無いんだ。後でちゃんと話すから今は何も聞かないでくれ・・・」
俺はこれ以上アリシアの顔を見ていられず、堪らず目を逸らした。
その思いを察してくれたロマリオンが俺の肩に優しく触れ、その足でアリシアに歩み寄り、同じ様に優しく肩に触れた。
「翔にもロマリオンにもそんな顔されたら何も聞けないわ。分かったは、今は何も聞かないであげる。」
俺達はローブの女性を先頭に真っ暗闇の通路を進んだ。
通路を進む途中で様々なイメージが止めどなく浮かんでは消えた。
火の海となった町。
逃げ惑う人間を襲う魔物の群れ。
幾重にも積み重なる人間とモンスターの死骸。
魔物とは少し違う、獣の様な悍ましい生物。
ロマリオンの憂いを帯びた笑み。血に染まった剣。
三人の人間の顔。二人は見覚えが無いが、その内一人は誰だか思い出せないが何故か見覚えがある。
この世界の景観とは違う初めて見る村。藤知里村?
だめだ!
これ以上、頭の中で処理出来ない!これ以上、意識を保てない!
あれからどれ位の時が流れたんだろう。
まるで夢の中に居る様な不思議な感覚の中、遠くから誰かが誰かを呼ぶ声が聞こえる。
「翔!」
翔って誰だろう。
それより俺は誰だっけ。そもそも誰かであったんだろうか。
「お願い・・・目を覚まして・・・」
さっきの叫ぶ様な声が、今度は縋るような声に変わった。
何故だろう、この声の主を悲しませてはいけない気がする。今すぐ目を開けなければ。
だめだ。体が思う様に動かない。声がどんどん遠ざかって行く。
恐い・・・
助けてくれ!
俺は此処に居る!
置いて行かないでくれ!
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