ANOTHER WORLD STORIES

佳樹

文字の大きさ
55 / 75

55話 安里翔

しおりを挟む
俺達は城から脱出するべく、最初に入って来た一階の入り口を目指して走った。
二階の踊り場から一階に目を遣ると、そこに在るべき筈の入り口は無く、更に窓だった部分は全て分厚く強固な壁に覆われていた。

「どう言う事だ?俺達が入って来た扉が塞がれてる・・・」
「迂闊だったわ。今までの歴史上、核が破壊される事何て無かったからすっかり忘れてたけど。
この城は敵に攻め入られた時、最終手段として、核を破壊して城の内部爆発を起こす事によって、敵諸共、城内に残る全てを消し去ってしまう要塞へと変貌を遂げるんだった。
恐らく、もう直ぐで崩落に続いて内部爆発が起こるわ。」
「成程。城の崩落で敵の足止め、その間に王やその重鎮達は内部爆発が起こる前に、隠し通路から逃げ果すと言う訳か。」
「ロマリオン!今はそんな冷静な分析をしてる場合じゃないだろ!」
「そうだったな。至極真っ当な意見だ。」
「今からじゃ玉座の間に戻って、何処にあるのかも分からない王の隠し通路を探すのは時間的にも不可能だと思うわ。」
「それじゃ、どうしたら良いんだよ。折角影を倒したのに、このまま、この城と心中するしか無いのかよ!」

ローブの女性は暫し逡巡し言った。
「一つだけ城から出る方法があるわ。だけど、あなた達の身の安全は保障出来ない、それに場合によっては大きな代償を払わなければいけない。それでも良いって言うなら私に付いて来て。」
そう言うと、ローブの女性は崩落により道を塞ぐ瓦礫を魔法で払いながら走り始めた。
例えそれがどんな代償であろうと、俺達はその僅かな脱出の可能性を信じて、彼女に付いて行くしか選択肢は残されていなかった。

走り始めて暫くして、二階の通路を進むローブの女性の足が止まった。
そして通路脇の壁に手を当て、何かを確認し始めた。
彼女がその手で触れている場所は、ロマリオンが何かあるかもしれないと言っていた場所と一致していた。

「いい、あなた達。今から進む通路は、本来は人間が通る様に作られてはいないの。それは元人間のロマリオン、あなたとて例外では無いわ。
この通路を進む時には強い意志を持って、絶対に自分の存在を疑わない事。
通路を進む途中で、見たく無い物を見る事になるかもしれない。そこでもし、自分を見失ってしまったら、二度と元には戻れなくなるから、今私が言った事をくれぐれも肝に銘じておいて。」
ローブの女性はこれまでに無く真剣な表情で俺達に念を押した。
そして俺を初め、ロマリオンにさえ、どの言語かさっぱり分からない呪文を唱え始めた。
すると突如、壁の向こうへと続く道が姿を現したのだ。
「道は開いたわ。さあ、覚悟を決めて。ここから先はあなた達次第よ。」

ここでアリシアは何かに気付き、周囲をキョロキョロ見渡して言った。
「ねえ、ちょっと待って。その前に翔もロマリオンも忘れてるかも知れないけど、またイワンが居ないわ。
何処かに隠れてるだろうから早いとこ探しましょう。
あんな奴でも仲間だから、こんな所に置いてけぼりにして死なれたんじゃ敵わないわ。
まったく、何時も私達に迷惑ばかり掛けるんだからホント困っちゃう。
ここが爆破する事も知らないだろうから、早いとこ手分けして探しましょう。」
そうか、アリシアは影の攻撃を受け、気絶していてからまだ知らないんだ。
イワンがもうこの世に居ない事を。
ここで真実を伝えてしまうと、アリシアの精神が乱れ、強い意志を以って通路を進む事が出来なくなるかもしれない。
そうなる位だったら、俺は後から嘘つきだと罵られて、アリシアに嫌われてもいい。

「アリシア。イワンは薄情な奴だから、君が気絶している間に、一人城から逃げ出したんだ。
今頃は反省しながら遠くから・・・、きっと遠くから俺達の無事を祈ってくれてるんじゃ無いかな。」
「も~最っ低~!今日と言う今日は許さないんだから!ここから出られたら翔も一緒にあんな奴とっちめてやりましょう!」
「ああそうだな。」
俺は両手をアリシアの肩の上に置いて唇を噛み締めながら言った。
そうでもして、アリシアの肩を支えにしていないと、イワンの事を考えると胸が苦しくて、自分の体重を支える事が出来ず崩れ落ちてしまいそうだったから。

「ねぇ、翔どうしたの?そんなに肩を震わせたりして。
イワンに怒ってるの?それとも、泣いてるの・・・?
一人だけ勝手に逃げたのがそんなに悔しかったの?だったら私も・・・」
「違うんだアリシア。そうじゃ無いんだ。後でちゃんと話すから今は何も聞かないでくれ・・・」
俺はこれ以上アリシアの顔を見ていられず、堪らず目を逸らした。
その思いを察してくれたロマリオンが俺の肩に優しく触れ、その足でアリシアに歩み寄り、同じ様に優しく肩に触れた。
「翔にもロマリオンにもそんな顔されたら何も聞けないわ。分かったは、今は何も聞かないであげる。」

俺達はローブの女性を先頭に真っ暗闇の通路を進んだ。
通路を進む途中で様々なイメージが止めどなく浮かんでは消えた。

火の海となった町。
逃げ惑う人間を襲う魔物の群れ。
幾重にも積み重なる人間とモンスターの死骸。
魔物とは少し違う、獣の様な悍ましい生物。
ロマリオンの憂いを帯びた笑み。血に染まった剣。
三人の人間の顔。二人は見覚えが無いが、その内一人は誰だか思い出せないが何故か見覚えがある。
この世界の景観とは違う初めて見る村。藤知里村?

だめだ!
これ以上、頭の中で処理出来ない!これ以上、意識を保てない!


あれからどれ位の時が流れたんだろう。
まるで夢の中に居る様な不思議な感覚の中、遠くから誰かが誰かを呼ぶ声が聞こえる。
「翔!」
翔って誰だろう。
それより俺は誰だっけ。そもそも誰かであったんだろうか。
「お願い・・・目を覚まして・・・」
さっきの叫ぶ様な声が、今度は縋るような声に変わった。
何故だろう、この声の主を悲しませてはいけない気がする。今すぐ目を開けなければ。
だめだ。体が思う様に動かない。声がどんどん遠ざかって行く。


恐い・・・
助けてくれ!
俺は此処に居る!
置いて行かないでくれ!


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔力ゼロの俺だけが、呪いの装備を『代償なし』で使い放題 ~命を削る魔剣も、俺が持てば『ただのよく切れる剣』~

仙道
ファンタジー
現代日本で天才研究者だった相模登(さがみ のぼる)は、ある日突然、異世界へ転移した。  そこは『スキル』と『魔力』が全てを決める世界。   しかし登には、ステータス画面もなければ、魔力も、スキルも一切存在しなかった。   ただの一般人として迷宮に放り出された彼は、瀕死の女騎士と出会う。彼女の前には、使う者の命を瞬時に吸い尽くす『呪いの魔剣』が落ちていた。   武器はそれしかない。女騎士は絶望していたが、登は平然と魔剣を握りしめる。 「なぜ……生きていられるの?」  登には、剣が対価として要求する魔力は存在しない。故に、魔剣はデメリットなしの『ただのよく切れる剣』として機能した。   これは、世界で唯一「対価」を支払う必要がない登が、呪われた武具を次々と使いこなし、その副作用に苦しむ女騎士やエルフ、聖女を救い出し、無自覚に溺愛されていく物語。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

レオナルド先生創世記

ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!

200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち

半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。 最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。 本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。 第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。 どうぞ、お楽しみください。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

処理中です...