光の中へ

佐崎らいむ

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「入っていいですか?」
 返事を待たずに、部屋に押し入った。

 男性の一人暮らしにしては割と片付けられている部屋の窓をまず開け放って換気し、レンジを借りて簡単な食事の用意をした。食欲がないという彼に「少しだけでも」と、たまご粥を半分だけ食べさせた。
 熱に効く風邪薬を飲ませ、水分をたっぷりとらせたあと、おでこにヒンヤリシートを張ってあげた。

「少ししたら熱が引いて楽になると思うので、少し眠ってください」
 ベッドに横になるように言うと、
「この状況で、眠るのはむずかしいです。……なかなか」と、困ったように言う。

 でも、もういいから帰ってくれとは言わないでくれた。

「なら、このまま少し、話させてもらっていいですか? 返事はつらいだろうから、ただ聞いてくれるだけでいいです」

 ちょうどいいサイコロ状のクッションを見つけたのでそこに座り、枕に背を預けている三沢君を、少し距離を置いて見つめる。こうやって落ち着いた気持ちで向かい合うのは初めてだ。

「なぜかな、って、ずっと思ってたんです。なぜ三沢さんは、私を避けるような態度を取るんだろうって。引き継ぎ以外で話をしたこともなかったし、嫌われるようなきっかけもなかったと思ったから、ずっと気になって」

「ちが……ごめん、そうじゃなくて」

「いいんです。謝らないでください。私は感謝を伝えたくて、ここに来たんです」

「……え」

「あの日、三沢さん……、いえ、コニーランドのキャラのトビネズミのトビーに出会ったことは、たぶん一生忘れられないくらい、大きな出来事だったんです」

 三沢君は返事に困ったように、目を泳がせた。
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