「枝分かれ」する未来が少し見えるので、時どき合流する面白パーティーのふりをして、主人公たちをちょっと助けようと思う

初枝れんげ@出版『追放嬉しい』『孤児院』

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第1章

8.すこし目立ち過ぎたか・・・・・・

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「みんな、気をつけて」

だが、その時彼らの後ろで物音がした。

ばっ!

次に何かおぞましいものがうごめく気配! 

「きゃっ!?」

「で、出た!?」

予想外の方向からの敵の出現に勇者たちが悲鳴を漏らす。そして……、

「じゃんじゃじゃーん!」

どーんと、背後に盛大な煙をまき起こしながら、面妖なポーズを決めた女が現れた。木の枝の上で。

その前に男がクールに風を受けながら言った。木の枝の上で。

「勇者たちよ。よく来たな。だが一歩遅かったようだぞ。ここに住むレッドマスタードラゴンは、この漆黒の旅団のリーダー、カノユッキーの獲物だ!!!!!」

そしてもう一度、背後にバコーンと盛大な音と、煙がたちあがった。

演出指導はカノユキ、実施はアルテノ。

二人は高いところが良いだろうと、急いで木によじのぼったのであった。おかげで葉っぱやら枝がからみついていてひどくみすぼらしいが。

「お、おさるさん?」

「なんだありゃ!」

「ううむ、あんなモンスターは見たことがありませんなあ」

「あ、あっははははは! うっけるぅ! ばっかみたいだよぅ!」

なので、このような反応はカノユキには意外だった。

「誰がおさるさんだ!」

「わっ、ごめんなさい!」

「あやまることなくない? てか、なんか聞いたことあるような声なような」

おっと、危ない危ない。

顔はラビットスライムが落としたフェイスガードで隠してある。学ランもマントで隠れている。

だが、あまり取り乱してはばれてしまう。クールに決めなくては。

カノユキはふっと(影のありそうな)笑いを浮かべ。

「去るといい。勇者よ。お前の力ではまだレッドマスタードラゴンを倒すことなどできない」

「なっ!? どうして私達がドラゴンを倒しに来たことを!? このクエストは王国から秘密裏にもたらされたもの。一介の冒険者では知らない国家機密のはず!」

(あ、そうなのか)

「ふ。言っただろう。漆黒の旅団は何でも知っている。すでに国家中、大陸中にオレのネットワークは張り巡らされているのだ」

「そ、そんな。そんなすごいパーティーがいたなんて!?」

勇者は驚愕に目を見開く。

なお、他の3人は、聞いたことないんだが? うん。といった会話を繰り広げている。

(ね、ねえねえ、かーくん)

と、アルテノがひそひそと話しかけてきた。

(なんだ、今いいところなのに)

(いや、その、どうでもいいけど、なんでそんなキャラなの?)

(なにってお前)

カノユキは心底不思議そうに首を傾げ、

(これが一番かっこいいだろう?)

(そ、そうか、そうだったのね……)

アルテノは戦慄した。この異世界にきてから一番の戦慄である。

(かーくんは邪魔くさがり屋で口達者な少年だと思ってたけど……)

ごくりと喉を鳴らした。

(分かりづらい中二病! 中二病なんだわ!)

唖然とした表情で、のりのりのカノユキを見上げるしかない女神アルテノである。

「さあ、わかったらこの場から立ち去れ。勇者パーティーよ。この漆黒の旅団、カノユッキー様がレッドマスタードラゴンの相手をする。早々に消えろ、怪我をする前に、な」

「そ、それなら私達と協力しましょう! 漆黒の旅団さん!」

「ふ、断る!」

「ど、どうしてっ!?」

「決まっている!」

ぶわさとマントをひるがした。特に意味はない。

「お前たちごときパーティーは足手まとい! オレ一人で十分だ」

「そ、そんな」

しゅんとなる。

若干罪悪感を感じるカノユキ。だが、このまま戦わせれば勇者たちがビジョンの通り、捕食される可能性が高い。心を鬼にするカノユキ。

おーい、あたしもいるよ~。と女神が小声で主張していた。

「おうおう、好き放題いってくれやがってよう!」

と、勇者の肩の上でリスが啖呵を切る。

「そこまで言うなら俺たちにその実力を見せてもらおうじゃあねえか! ああん、漆黒の旅団様たちよう!」

「ふむ、それはぜひとも見せてもらいたいものですな」

「あたしもあたしも~」

勇者が悲しんでいるのを見て、パーティーメンバーが挑戦的にカノユキ(カノユッキー)に言った。

「ふ、嫌だね!」

「な、なんだと!?」

「手の内をさらす馬鹿者がどこにいる!」

「そ、そんなこと言って、実力がないだけなんじゃないのかってんだ!」

「ふ」

カノユキは嘲笑する。

というポーズをとる。

実際、そのとおりなので。心の中ではそろそろ撤退してくれないとやばいなー、どうしようかなーと思っていた。

「ならば、わたしの実力をお見せしよう!」

しゃきん、とナイフを取り出す。モンスターを倒したときにドロップしたアイテムである。スロットが3つ空いている。

「あ、あれは破邪のナイフです。スロットが3つも空いています! 漆黒の旅団さん、やっぱり相当の実力者ですよ、みなさん!」

なんでアッチよりなんだよ、とリスがつっこむ。

「3スロットか。結構レアな品ですな」

「でもでもぉ、魔石がはいってないよお?」

「おそらく、手の内を明かさないためです! 魔石によってはその色や模様で効果が露呈しちゃいますからね!」

だからなんで漆黒の旅団よりなんだよ。リスが呆れていた。

「見せてやろう。さあ、目をかっぽじってようく見ておけ。絶対にみのがすなよ! 一瞬だ! 一瞬だからな!」

ぐ、ぐぐぐぐぐぐぐぐ。

緊張が高まる。誰もがカノユッキーが次の瞬間ドラゴンに襲いかかるものだと集中した。

「よし、やれ! アルテノ!」

「知らないからねー! えーい‼」

「きゃっ!? ま、まぶしい!?」

「なんにもみえねえぞ、どうなってやがる‼」

アルテノが放ったのは単に光をはなつ魔法ライトニングだ。基本的には夜に明かりをつけるために使う生活魔法である。こんな使い方をするのは前代未聞だ。

「いまのうちになんとか勇者たちを昏倒させて街まで連れ帰るぞ!」

「これって作戦っていうのかなあ!」

「急げ、時間が……」

ない。そう言おうとして、カノユキは自分に落ちる大きな影に気がついた。

それは自分だけではない。この辺り一帯を覆う影である。

それは何度か旋回する。

そして、その後北の方へと飛び去っていった。

「レッドマスタードラゴン……」

「ど、どこかに行ってくれたんだね……」

「よかった」

「ほっ」

二人がほっとしたのが悪かった。

べき!

「へ?」

うわああああああああああああああああああ!?

どさ、どさと茂みに落ちる。

「い、いてててててて」

「か、かーくん。大丈夫?」

「大丈夫だ。そんなことより逃げるぞ」

「へ? な、なんで?」

アルテノは頭にハテナマークを浮かべる。目標を達成したいま、逃げる必要など微塵も見当たらない。

「馬鹿言うな。木から落ちるなど、かっこわるすぎる!」

カノユキの顔は真っ赤であった。

ええー、漆黒の旅団は大丈夫で、これはダメなの……。

女神はげんなりとした。

が、光球の力はもうだいぶ弱まりつつある。

ここにいたら何だかいろいろとややこしそうだ。

とりあえず、二人は面倒ごとを避けて、すたこらさっさと姿を隠し、茂みの中を逃げ去ったのであった。

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