「枝分かれ」する未来が少し見えるので、時どき合流する面白パーティーのふりをして、主人公たちをちょっと助けようと思う

初枝れんげ@出版『追放嬉しい』『孤児院』

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第1章

7.勇者パーティーと初の共闘?

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「起き上がったな」

期待したほどの反応ではないが、ドラゴンは首をもたげて煙の方を探っている。

が、興味なさそうに視線を戻した。

今の女神は人間である。人間界に降りる時に、混乱を避けるために人間種にかわっている。レベルも1。

神たるドラゴンにとっては歯牙にかけるべき存在ではない。

だが、

「まあまあか?」

ちょっとは気にしてるっぽかった。

「だが、思ったより時間がかかりそうだな」

見込みが甘かったか。

もっと巨大な焚き火をたいて嫌がらせをしたほうがいいだろうか。

だが、敵性を認められては元も子もない。

「だが、このままだとまずいな。いつ勇者たちが来てしまうかわからん」

ふと面影がよぎる。

「ちっ」

今は仕方ないことを考えている場合ではない。

何か方法を。

「かーくん大変大変だよう!」

「なんだいきなり。俺はいそが」

「来ちゃった! 来ちゃったよ!」

「ま、まさか……」

バッと俺は空を見上げる。この世界にも太陽はある。夕方になれば傾いた太陽が目に入る。

だが、ここは。

「しまった森の中に入ってから時間感覚が狂わされていた‼」

すでに時刻は夕刻。ビジョンの表した時だ。

「勇者たちが、来ちゃったよ!」

女神の悲鳴が森に轟いた。



「追い払うぞ!」

このままでは勇者一行が食われてしまう。そうなればこの世界はバッドエンドだ。

駆け出すカノユキ。だが、その背後から、

「あ、それは無理かな」

アルテノの否定の声が聞こえた。

「なっ……」

あっさりとした、しかしはっきりとした言葉にカノユキは驚きながら、

「なんでだ! やらないうちから!」

そう食って掛かる。女神は両耳を抑えて、

「だってビジョンで未来は確定してるじゃない」

やはりはっきりと言った。

「そ、そうか……」

俺は唖然とした。

「そういえばお前にちゃんと説明できていなかったな」

「へ?」




「未来を変える力?」

かっけー、とアルテノはため息を付きながら。いや、はっきり言って馬鹿にした感じで半笑いのまま言った。

なぐったろか。

「そんなふうには言ってないだろが」

俺は首を振って反論する。

時間がない中で俺は移動しながらアルテノに説明した。

ラビットスライムと戦った時、スキルが発動した。

その際に現れたビジョンは2つ。

いずれも女神のケツが溶かされて死ぬ、というものだ。

「あのまま死んでいればよかったかもしれないな」

「なんですって!?」

ぎゃーぎゃーと喚く女神は放っておく。

ではなぜ今この女神は生き残っているのか?

言うまでもない。俺が関わったからだ。 

なぜなら、俺のスキルには俺自身の未来が映し出されない。 

だから、俺が関わった未来は不定となる。  

「そのためにわざわざドラゴンと対峙したってわけ!?」

理屈は分かるけど、とドン引きの女神。

「現場に出なければならないのがこのスキルの弱点でもある」

(だが、最高のメリットでもある)

「なにせ実際にこうして未来を変える可能性を秘めているのだからな」

「でも、どうするのかーくん?」

「ん、なにがだ?」

「勇者たちは冒険者ギルドの特別ミッションか何かでやってくるんだと思うわ。この森に降り立ったレッドマスタードラゴンを討伐するようにって。帰ってほしい、って頼むだけじゃ無理なんじゃない?」

なんだ、そんなことか。

「ふ、それなら問題ない」

「そ、そうなの?」

「ああ、俺もすでに一介の冒険者だ。振る舞い方は心得ている」

す、すごい。かーくんが頼りになる! ただの邪魔くさがりやの口達者だと思ってたけど、やるときはやるってわけね!

「ちなみに、なんて言うつもりなの、かーくん! お姉さんもできるだけ協力するわ!」

「無論、冒険者パーティーとして対峙する」

うんうん。

「パーティー名もすでに決めてある」

うん、うん。

「漆黒の旅団、だ!」

うん、うん……へ?

「そ、そうなの?」

少しおののきながら女神が言った。

ふ、感動しているようだな、とカノユキは言った。

「我ながら素晴らしいネーミングセンスだ」

「あ、えっと、そうね。えっと他に決まってることは?」

「ふ」

カノユキはさわやかに笑った。

「あとはその場その場の流れだ」

「そ……」

それのどこが作戦じゃーい、と森に悲鳴がとどろいた。




女勇者、リス(?)のポンタ、学者風の男カリス、ツインテール娘のイブキは開けた場所を歩いていた。

森の中でもここは木が少ない場所である。

折られた木が多いのは、これから討伐するレッドマスタードラゴンが破壊したからかもしれない。

そう思うと勇者たちも緊張感をいだかざるをえない。

これからの戦いに身もすくむというもの。

ごくりと生唾を嚥下するのも自然なことだ。

すでにこの場所からドラゴンは見えている。あまりの大きさに目前にいるように錯覚すら覚える。

「み、みんな準備はいい?」

「あったぼうよう!」

「べらぼうめぃ、とでも言っておきますかね」

「あたしはいつでもOKよ!」

全員が全力出撃の体制に入ろうとしていた。

気が練られ、魔力が高まり、木々はざわつきはじめる。周囲の動物たちもほとばしる緊張感に逃げ出そうとする。なぜならこれは竜殺し。ドラゴンの肉を食べれば不死になるとも伝わる。それはドラゴンの強さの逆説でもある。倒せないから。殺せないから、不死なのだ。

それが今から起こる。事件の開始なのだ。

なお、後の世に語られる面白パーティーの物語も開始される。
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