「枝分かれ」する未来が少し見えるので、時どき合流する面白パーティーのふりをして、主人公たちをちょっと助けようと思う

初枝れんげ@出版『追放嬉しい』『孤児院』

文字の大きさ
10 / 23
第2章

10.灼熱の旅団あらわる!

しおりを挟む
サラザール王国近郊。青空が広がる穏やかな昼下がり。

ズブシャー‼

血を撒き散らしながらモンスターが倒れる。

「ふん、他愛もない」

サーベルを引き抜きながらその人物は言った。

「よ、さすが姉御」

「姉さんにかなうやつはこの界隈ではもういやしませんぜ」

「くくく、そりゃそうさ」

姉御とか姉さんとか言われた人物はニヤァと笑った。

「あたいにかかればこれくらい造作もないねえ」

「さっすが姉御だぜ!」

「これなら勇者たちだってなんのそのだ!」

「くっくっくっ」

女は笑い、

「世界を救うのはこの灼熱の旅団の仕事さ!」

ばばーん!

と、新しい面白そうなパーティーが、勇者やカノユキたちの近くまで迫っていたのであった。



「ああん? 灼熱の旅団?」

冒険者ギルドのマスター、ピロキは片眉を跳ね上げながら言った。

「ああ、そうさ」

自信たっぷりな様子でバネッサは言った。

歳の頃は20代後半。その割には世間ずれしような雰囲気だ。出るところは出ている。が、体格は大きい。がっしりとしている。女傑といった感じ。

「ふふふ、驚くのも無理はないねえ。この超有名なパーティーが現れたってんだからねえ。どうだい、サインだってしてやってもいいんだぜえ?」

「ああ、いやそういうわけではなくてな」

ぽりぽりとギルドマスターは髪のない頭をかいた。

「ちょっと名前が似てると思ってな」

「は?」

バネッサとその取り巻き二人の男たちがピシリと石像のようにしばし固まった。



「ふうううううううううう、今日も今日とて助かったな」

ギルドにかえってきた漆黒の旅団、団長のカノユキは万感の思いを込めて言った。

「そうだねー! お姉ちゃんの力がまたまた役にたったねえ!」

女神アルテノは腰に手をあてて誇らしげに胸をはって言った。

くかかかか、と笑い声をあげながら。

いや、お前はまた敵につかまっていただろうが。いい加減、その油断するくせはなんとかならんのか。いいかげん知らんぞ。

それを言うならかーくんはせめてレベル2になろうよ。ていうか、いつまでレベル1なのよ。

ばちりばちり。

と、そんな雌雄を決すべく白虎と玄武の構えをしている二人の間に、

「ちょっと、あんたたちだね‼」

つめよってくる女……バネッサである。取り巻きの男二人も後ろからねめつけるようにしている。

「えーっと……だれだあんたらは。知ってるかアルテノ」

「ううん、知んない」

「ふむ。俺たちは労働からやっと開放されてな。ただいま憩いの時間というやんだ」

「お姉ちゃんもやっとひやっこい麦酒を飲めると神に感謝してるところなんだよ? いや、わたしも神なんだけどね」

「その神様ギャグはだいぶ寒いな。ふむ、そういうわけで今は相手をしてられないんだ。すまないがまたのご来訪を」

「うるさい! だまりやがれ!」

バネッサが近くの椅子をけりあげた。

ちなみに女神は、寒くない、寒くないもん、とつぶやいている。

「あんたらがあたしらのパーティー名を横取りしたっていう不逞のやからだねい!?」

パーティー名?

不逞のやから?

「なんのことだ、一体?」

カノユキは女神にむかって頭を人差し指でくるくるとした。頭のかわいそうなひとか?

「しらばってくれても無駄だよ!」

ばばん、と激しくポーズを決める。

波止場で海に向かって吠える海の男のごとく、椅子に片足をのせながら、

「あたしたちは、海を干上がらせ、山をも震撼させると恐れられる、名高きパーティー。あ、その名も、灼熱の旅団! この赫赫たる赤き髪と真紅の瞳がチャームポイント! 恐るべき冒険者集団さぁ!」

わー。

さすが、姉御!

と後ろで取り巻きの男二人がやんややんやとしている。

知ってるか?

いや、知らん。

そんなアイコンタクトでのやりとりが、一瞬にしてギルド内で行われている。

が、

「あ、俺聞いたことあるわ」

一人の冒険者が口を開いた。

「有名なのか」

「いや、というか……」

冒険者は思い出すようにしながら、

「たしか冒険に出るたびにその依頼者が何らかの被害をこうむるっていうんで、疫病神として有名なパーティーじゃなかったか。前の街を追い出された、みたいなことを聞いたような気がするが……」

ざわざわ、ひそひそ。この街に来てたのか。やべえな。そんな会話が繰り広げられた。

「おい、迷惑集団」

「やかましい!」

カノユキの言葉に、バネッサは怒鳴り返す。

居住まいをただすようにして、

「ふん、変な言いがかりはやめてもらおうか」

ビシリとカノユキを指差し、

「そんなことよりも今はパーティー名の話だ。あたいらが最高のセンスで名付けたパーティー名が、あんたらのパーティー名と酷似しているようじゃないか。ええ?」

えっと、パーティー名?

冒険者ギルドに登録した名称のことだね。

ああ、あれか。あれってそんなに変わった名前か?

バネッサはハッ、と鼻を鳴らし、

「なんて名なんだい? ふふん、まあどうせあたしたちのパーティー名に似ているだけで、しょせんは紛い物。2流、3流の名前だろうがねえ」

「ん? ああ、俺達のパーティー名か。まあ、たしかに大したことはないかな」

カノユキは頷いてから、

「『漆黒の旅団』っていうパーティー名だからな」

ちょっと、狙いすぎたかな。

そうだよお、もっとかわいい名前がいいよお。

だが、そのパーティー名を聞いた途端、バネッサたちはプルプルと震えだす。

「し、漆黒……」

ん?

「し、しししししししししし漆黒」

大丈夫か?

「漆黒の旅団、だとおおおおおおおおおおおおお!?」

「うわあ!?」「きゃあ!?」

「か、か、か」

「か?」

「かっこいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい‼」

……………………………………………………はい?

「ちょ、ちょっとまっておくれよ。漆黒! 漆黒だって!?」

「? ? ?」

「くわあああああああああああああああああああ、かっこいい!」

バネッサが頭を抱えながら喝采を叫んでいる。

「灼熱よりもかっこいい! かっこいいじゃないか!」

「本当ですぜ、姉さん!」

「なんてったって漆黒ですからね! 黒より黒き黒ですよ、姉御‼」

はぁはぁ、と息を切らしながら、

「くうううううううううう、まさかこんなライバルが世の中にいるとはねえ! なあ、あんたたち‼」

「ええ姉さん! ナイス漆黒!」

「ナイス漆黒!」

にこやかに漆黒漆黒言い合っている。

「やめんかい!」

と、いい加減カノユキも恥ずかしくなってきた。

かーくんにも恥ずかしいって感情があるんだねえ。

やかましいわい。こんなけ「漆黒漆黒」言われたら恥ずかしい気になってくるだろうが。

「決めたよ!」

ドドンとバネッサたちは「漆黒漆黒」言うのをやめてカノユキたちに向き直る。

「あんたたちは今からこの灼熱の旅団の永遠の宿敵【ライバル】にする‼」

「頼むからやめてくれ」

勝手に宿敵にしないでくれ。

「ふ、ゆえに、わたしはあんたらにバトルを申し込む‼ さあ、漆黒の旅団よ、この勝負いざ尋常に受けられよ!」

「は」

カノユキはいきなりの展開に頭がついていかない。

「はあああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

そう絶叫するしかなかったのである。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
【毎週火木土更新】 自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ――― 当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。 なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。

処理中です...