「枝分かれ」する未来が少し見えるので、時どき合流する面白パーティーのふりをして、主人公たちをちょっと助けようと思う

初枝れんげ@出版『追放嬉しい』『孤児院』

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第2章

12.セイレーンの巣を壊滅させてしまったりもする

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ざざーん! ざざーん!

にゃーにゃーとカモメのごとき鳥が啼く。

「異世界の海もあまり変わらないか」

カノユキがそこにはいた。ついでにアルテノもいる。

そして、

「やってくれたじゃないかあ、漆黒の」

バネッサたちもやってきていた。

「あたいらを出し抜くとは、ふ、ふふふふふふ」

カノユキは頭にはてなマークを浮かべた。

「はーはっはははははははは。いやあ、あんたも大人しそうな顔をしておいてなかなかのやりてだねえ。断ったふりをして、その後すぐにクラーケン退治のミッション・バトルを受けるとは、恐れ入ったよ!」

「はあ? お前ら何を言っている?」

俺は単に勇者を助けるついでにクエストを受けただけなんだが?

「そもそもミッション・バトル自体が成立していないはずで、お前のはやとち」

「だけど、いい気になるんじゃないよ!」

聞いてないな、これは……。早くもカノユキはまともな思考を破棄することにした。

「ここからはあたいらも本気だ。遅れは取り戻させてもらうよ! なあ、おい、ゴンズ!セバス! さあ、いくよ!」

あいあいさー!

灼熱の旅団の3人は元気よく駆け出した。船を探しに言ったのだろう。

「な、なんかすごいよ。勝負が始まっちゃったみたいだけど……」

「知らん。放っておけ」

「い、いいのかなあ」

「かまわん」

(そもそも、あいつらにかまけている余裕などない)

カノユキは深く思考に沈む。

(今回の敵は……)

俺でも多少戦うことはできるだろう。

だが、放っておけば、勇者たちが死んでしまう。

そうすれば。

この世界は魔王が支配し、ジ・エンド。

バッドエンド直行。

そんな未来を回避できるは自分だけである。

カノユキは海を見る。

風が先程よりも徐々に強くなってきた。遠雷も聞こえる。

「嵐になるかもしれんな……」



「ううーん、ぼえぼえ」

汚物が海へと放流される。

「ううーん、完全に酔ったな」

「ふ、ふひひ」

と女神が尊厳を維持できていない顔で笑いながら、

「もー、かーくんったらなっさけーい!」

などと言っていた。

「いや、お前ほどじゃないが」

ぼえぼえ、と汚物を海にまきちらす女神に言った。

「ぼえぼえ」

カノユキたちは船をチャーターして洋上に出ていた。依頼を受けた冒険者には無料で貸出をしてくれるのだ。

「それにしても」

遠くの空を見る。黒い雲が天を覆っていた。遠雷が静かに、だが存在感をもってゴロゴロと重低音を奏でている。

「……いやな、天気だ」

どこか湿気を含んだ、生暖かい、薄気味わるい風を浴びながらつぶやく。

そして、風に乗って耳に伝わる音楽も、どこか心をざわつかせ……、

「ん?」

音楽?

「し、しまった! これは!?」

カノユキはハッとする。

「おい、お前たち今すぐ耳をふさげ! これはもしかするとッ……!」

が、時すでに遅し。

ぽややーん。ぐーぐー。ふらふら……。くらりくらり……。

「くっ、手遅れか!」

船員たちがいつの間にか目をぐるぐる回していたり、わけの分からないことをブツブツ言ったりしている。明らかに正気を失ってしまっているようだ。

「ど、どーするのかーくん! この船吸い寄せられてるよ!」

「なに!」

船の吸い寄せられている先に、大きな岩場がある。

そこにいたのは。

『海獣セイレーン』

美しい音色と美貌で船乗りたちをおびよせる人型モンスター。
意識を失った人間を誘い、海底へと引きずりこむという。

「……だが、どうして俺たちは無事なんだ?」

全員があの不気味な音楽を聞いたはずだが?

なんでかしら?

「ちっ。そんなこと考えている場合じゃないか」

美しい女たちが音楽を奏でる。形状は人魚。その口からもたらされる音色は蜜のよう。だが、それらが異形のものであることをカノユキは直感する。そんな化け物たちに船は迫る。

「ともかく、このまま海の底に引きずり込まれるわけにはいかない! 行くぞ‼」

「うん‼」

美しいセイレーン。

が、その美貌が……。

ぐちゃり!

カノユキたちが岩場に降り立ち、セイレーンたちに肉薄すると、セイレーンが本性を表す。その美貌は獲物を引きつけるための仮初のもの。

バケモノの容貌を顕現させる。

「くそ、化物どもめ!」

「かーくん、伏せて」

アルテノが風魔法を詠唱する。

「喰らいなさい! ウィンドカッター♡」

なんで「♡」なんだ……。

が、威力は絶大だ。蛇にも似たセイレーンは八つ裂きにされて青色の体液を撒き散らす。

だが。

わら……。わら……。ぞろ……。ぞろ……。

「くそ! 効いてはいるが、数が多い!」

ナイフで切りつけ、追い払いながらカノユキは吐き捨てる。

(海に逃げられると逆に厄介だぞ)

「危ない! かーくん‼」

「え?」

(しまった! 油断したか!)

カノユキは一瞬で状況を悟る。今、カノユキは目の前のセイレーンをナイフで切り伏せた。それは背後ががら空きということ。

悪寒が走る。きっと、このあと自分は背後からセイレーンから恐るべき攻撃を受けるに違いない。

「し、しまっ……!?」

ちゅっどーん‼

………………

…………

……

「は?」

岩場の一角が喪失していた。

爆発は岩場に密集していたセイレーンたちを蹴散らした。

圧倒的な火力に、なんというか場違いな雰囲気が流れる。

けほけほ、と爆風に巻き込まれた女神が咳き込んでいた。

「あーはっはっはっはっはっは」

間抜けな大笑い声が遠くから聞こえてきた。
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