わたしはあなたの隣で幸せに咲く

初枝れんげ@出版『追放嬉しい』『孤児院』

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1.家族から疎まれ、横暴領主のもとへ嫁がされる

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私と比べて妹は両親の愛情を一身に受けていた。

私の髪の毛が黒髪で、地味な見た目なのに対して、妹はその正反対だった。

金髪の美しい髪の毛に、同じ色の瞳。

しかも、聖女と言われる力があるとされ、簡単な傷なら治せるという奇跡を起こすことが出来た。

それほど凄い力ではない。

だが、このスフィア伯爵家において、聖女が誕生したというのは箔が付く話だし、何より私とは違うその天真爛漫で美しい容姿に、両親の愛情は全てもっていかれた。

私への贈り物は全て妹の次に考えられたし、忘れられた時も多かった。

妹の誕生日に比べて、自分の誕生日はおざなりなものだった。いや、

(妹が熱を出したせいで、何度か中止になったんだった)

せめて両親が自分を見てくれる、年に一度の日。

とても心をわくわくさせていた。なのに、それは何度も裏切られたのだった。

そして、その傾向はますます強くなり、この伯爵家で私の居場所はもはや無いと思えるほどひどい状況になってきた。

例えば、使用人も明らかに両親が妹を贔屓していることを理解しており、私への嫌がらせなどをこっそりとするようになった。

大事な服を隠されたり、食事をわざとこぼされたりした。でも、この家で何を言っても無視されるか、逆に私がどんくさかった、と言われるので、何も言うことはできない。

私はどんどん、追い詰められ、息をするのもこっそりとした生活になっていた。

でも、私は決して両親や妹を恨まなかった。

三人とも確かに私を無視するし、迫害する。

私の権利はないに等しい。

でも家族だ。

最後の最後には、きっと私を助けてくれるに違いない。

そう、最後の希望にすがるように、妹を、両親を信じていたのである。

私はどうしても、家族である彼らを心から恨むようなことが出来なかったのだ。

でも、その私の心根が良い結果をもたらすなんて、そんな都合の良いことはなかった。

どれだけ私が家族を愛そうとしても、彼らがそれに応えてくれる人間ではあるとは限らないのだ。

時に優しさに対して。

正しさに対して。

世界は最も理不尽な形で回答を与える。

それは今回のような仕打ちに、まさにあてはまるんじゃないかな?

私はその突然突き付けられた両親からの言葉に、絶句する他なかった。泣かなかったのは、単にあまりにショック過ぎて、心が追いついていなかったからだろう。本当の娘にこれほどつらくあたれる人たちがいるなんて、私のような平凡な人間には信じることが出来なかったとも言えた。

両親がつきつけた言葉。

それは、

「シャノン。お前の嫁ぎ先が決まったぞ」

「え? そんな突然、何を。嫁ぎ先を決めるなんて一言も聞いていないのに」

「お前の意向など知らん。儂の言うことを聞いておけばいいのだ。だが喜べ。お前の嫁ぎ先は、あの大公爵のロベルタ様だ」

「ほほほほ。あなたにはお似合いの嫁ぎ先ねえ、シャノン。嬉しいでしょう?」

そ、そんな!

私は目を見開く。でもショックの余り涙すら出ない。

ロベルタ大公爵。

この国で最も広大な領地と優れた政治力を持つとされる方だ。

ただ、その代わり黒いうわさが絶えない。

特に女性に対する横暴な態度から、まったく女性が寄り付かず、一切の縁談がまとまらないということで有名だった。

自分がそんな恐ろしい場所へ……。

そう思い、震えているところへ、

「まあ、お姉様、お可哀そう。突然の話で戸惑っていらっしゃるのね。せっかくお父様とお母様が、何もとりえのない平凡なお姉様のために、この上ない縁談をまとめてきてくださったのに」

「おお、リンディ。さすが私の娘だ」

「本当に。いつも私たちのことを思ってくれる、優しい天使だわ」

だったら、私のことももっと思ってくれてもいいのに。

「で、でも、すごく横暴な方だという噂もある方です。そんな人に嫁ぐだなんて」

「あら、いいではないですか、お姉様」

でも妹は天使のような微笑みを浮かべながら言う。

「この家は聖女の私が守ります。それに、お姉様がこの家にいても何もすることはないでしょう? 使用人にすら嫌われているお姉様では、ね。ならせめて、この伯爵家の発展のために、公爵様にいさぎよく嫁ぐのが、常識ではないかしら?」

「!?」

そこまではっきりと言われるとは思っていなかったので、またショックを受けてしまう。

その時、やっと目から涙が一筋こぼれた。

でも、それを見た両親はあからさまに迷惑そうな表情を浮かべるだけで、妹はますます笑みを深くして、

「あら、嬉しくて泣いているのね。そうよね、初めてこの家の役に立てるのだもの」

「わ……」

「わ?」

妹が首を傾げる。

「私はここにいることさえ、許してもらえないの?」

それは私のせめてもの心の叫びだった。

いさせてもらうだけでいい。ただ、家族の傍にいたい。それだけだった。でも、

「あは、あはははははは!」

妹は本当におかしそうに笑うと、やはり慈愛の笑みを浮かべて、

「血がつながっているからといって、必ずしも家族になれるとは限らないわ。言っている意味が分かるかしら」

「リ……ディア……」

今度こそ、私の瞳から、涙がはっきりと流れる。

「出発は明日よ、お姉様。早く準備をしてね」

それで話は終わりとばかりに、家族たちは引き上げて行った。

その成り行きをこっそり見ていた使用人たちも、くすくすとあざけりの笑いを残して去っていった。

「ああ、本当に」

それ以上は言葉にならなかった。

本当に私は家族に疎まれていたんだ。必要とされない人間だったんだ。

なら、

「邪魔にならないようロベルタ公爵様のもとへ参ります」

そして、噂通りなら、

「きっと私を追い出してくれるわ。そうすれば、きっと数日で行き倒れて、あとは死ぬだけね……」

そんな将来をはっきりと自覚して、私は現実感のないまま、荷造りをしたのだった。

私を殺してくれる、公爵様のもとへ行くために。
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