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21.★妹リンディは嫉妬に狂う
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~★リンディ伯爵令嬢~
「なんなのよこれは!!!!」
私は滞在していたグランハイム公爵領の宿で、使用人から渡された手紙を読み、屈辱に打ち震えていた。
カリカリと美しく整えた爪を噛む。
既に路銀が尽きかけていて、伯爵令嬢である自分が、とても自分の品位に合わない宿に滞在せざるを得ない状態なのも気に入らなかった。
(私はあのみすぼらしい姉とは違うのに!)
きっと、あの姉だって、こんな部屋に宿泊させられれば文句の一つも言うに違いない。だから私が激怒するのも自然の道理だ。
「というか、そもそも、あの何の取柄もない姉なんて、すぐに離婚されて放り出されて野垂れ死ぬはず。その確信があったのに」
それなのに、1か月たってもその連絡が来なかった。だから私はこう考えた。
もしかしたら、もっとひどい目にあわされているのかもしれないと、そんなワクワクした気持ちで公爵領へ赴いたのだ。だから当然、長期滞在の旅費など持ってきていなかった。
というか、ただでさえ、伯爵領の家計は厳しいのだ。ゆえに、領民からは絞りに絞っているが、それでも足りない。だからやはり、私があのみすぼらしい姉に成り代わって、ロベルタ公爵に嫁いであげるべきなのだ。ここの領民はまだ余裕がありそうだし、もっと重税を課すことが出来る。
領民は貴族に尽くすことが義務なのだから。
それでこそ領民も生きがいがあるというものだ。
姉はよくもっと税を軽くしてあげたほうがいいなどと、最初の頃はよく寝言を言って、両親や私に更にご飯を抜かれたり、使用人に指示して執拗にいじめられたりして、どんどん心も体も弱って行ったが、当然の報いだ。
領民に豊かな暮らしをさせるなら、まず貴族令嬢の自分こそが世界で最も美しいドレスに身を包み、たくさんのメイドに囲まれ、優雅な暮らしをしなければならない。
だから、あのつまらない姉に、早々に婚約破棄をするように切り出したのだ。あんな女、すぐにロベルタ公爵様に捨てられるに違いないだろうってね。
なのに、今朝がた届いた手紙には私の思っていた結果とは真逆のことが書かれていたのだ。姉には両親が碌な教育さえ受けさせなかったのに、自力で学んだ美しい文字が並んでいる。それがまた私をイライラとさせた。
手紙の内容はこうだった。
『愛する妹へ
先日、あなたに言われた言葉は私の胸に響きました。本当にありがとう。
私のようなつまらない女が、領民を心から思い、領地の運営に心を砕かれているあの美しいロベルタ公爵様の妻におさまるなど、過分なことだと痛感しました。
だから、あなたの忠告通り、あの夜、僭越だったけれど、お忙しいロベルタ公爵様とディナーにお誘いしました。ご多忙ゆえ無理かと思ったのだけど、あっさりとご了承頂けて申し訳なく思うのと同時に、本当に嬉しく思いました』
私はイライラとする。早く婚約破棄した、城から出て行かされるっていう泣き言を読ませないさいよ!
そう心が叫ぶ。でも何とそのイライラをおさえて続きを読んだ。
『でも、ごめんなさい。
あなたの言う通り、私はあの方に本当にいろんなものを頂いたの。私について来てくれたメイドのアンのお世話もしてくれるとおっしゃってもらったし、お部屋も頂いたの。落ち着ける場所が出来て本当に嬉しかった。自由にお庭を散策もさせて頂いて美しい自然や、可愛いグリフォンちゃんにも出会うことができたのよ』
私は姉の見ている美しい光景が脳裏をかすめて、思わず嫉妬してまた爪を噛んでしまった。ああ、せっかく高いお金をかけて整えたのに!
『それにドレスや美味しいお食事まで頂いて……。もうこれ以上は私などには過分だと言おうとしたの。だけど、本当にごめんなさい。言おうとしたら涙がなぜか流れてきて止まらなかったの』
「……」
『心が弱くていやになるわ。あなたが私を罵るのも当然だと思う。でも、そんな私を見て、ロベルタ公爵様は……旦那様にはまたご心配をかけてしまったの。本当に申し訳ないと思った。だから、次の日にお見舞いに来てくれた旦那様に、ちゃんと申し上げたの。私はもう十分なものを頂いたし、もっと相応しい貴族令嬢がいるって。あなたのこともよ……』
よし! と思う。唇が自然とニンマリとなるのが分かった。これでロベルタ公爵様はあのシャノンを城からすぐにでも放り出すはずだ。何せ、美人で可愛らしい、花のような私がいるんだから。うふふふふ。
『でも、旦那様は何か勘違いをされているのだと思うのだけど、なぜか私を離して下さらないのよ……』
「は?」
私は唖然とする。その感情が怒りなのか、それを超越したのなんなのか分からないが、とにかく脳裏にいろんな感情が爆発していた。
『領民を思うことや、他人に優しいということを褒めてくださったの。そんなことないのに……。メイドのことも、領民に笑顔でいて欲しいことも、全部当たり前のことなのに。贅沢をしないことだって、旦那様のご両親が急逝されて、領地経営に腐心されていることを鑑みれば当然のことだし……。もちろん、ある程度お金を使うことが領地運営の経済を回すために必要ということは知っているけれど、散財とは違うもの。でも、そんな当たり前のことをしているだけの私を、旦那様は「ありのままの君」が良いと言ってくださるの』
「はぁ! はぁ! はぁ! はぁ!」
私は呼吸が荒くなっていることに気づかない。
『むしろ、ずっと一緒にいて欲しいと、日傘のプレゼントまで頂いたのよ。病弱な私を気遣って、一緒に散策をしようって……。私、旦那様にこんな気を遣わせてしまって、申し訳ないと思ってはいるの……。でも、ドレスよりも、私は心のこもったこの日傘のプレゼントの方が実は嬉しかった……。だから、こんなにも私を大事にしてくださる旦那様のそばに、もしかして、自分はいてもいいのかもしれないと思い始めたのよ』
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ!
私が爪をかじる音が貧相な部屋に響く。ドレスより日傘が良い訳ないわ! 何を言っているの、この女は!
『だから、ありがとう、リンディ。あなたのおかげで、自分の気持ちをしっかりと伝えることが出来た。そのおかげで、旦那様が本当はとても優しくて、私なんかにもそのご厚情を分けて下さる方だと分かったの。情けをおかけ頂いているに違いないし、至らない私だから、いつ追い出されるか分からないけど、でも、領民の笑顔のために少しでも頑張ってみたいと思ったの。だからありがとうリンディ。あなたのおかげで、今とても幸せよ。あなたもどうぞ幸せになって。お父様とお母様にも御身体を労わるよう宜しくお伝えして
あなたを愛する姉より』
「なんなのよこれは!!!!」
ビリビリビリビリ!!!!
私は怒りのあまり、思わず破り捨ててしててしまった。
「ど、どうなされましたか、リンディさ」
「入ってくんじゃないわよ!」
「は、はは!!」
はぁはぁはぁはぁ……。
使用人どもが驚いて私の部屋に入って来たので、しかりつけて追い出した。
「あんな……。あんな女があの美しいロベルタ公爵様の妻になるですって……」
私は思わず怨嗟の呟きを漏らす。
「あんなやせぎすの女がこの豊かな公爵領の富を独り占めするですって……」
先日見た時は少しふっくらとしていて、血色も良かったように思えた。きっと、とんでもない贅沢な化粧品を使用しているに違いない。あの痩せぎすな姉があんなに美人なはずがないからだ。
「そんなこと許せるわけないわよねえ」
私はビリビリに破かれて、床に落ちた手紙を踏みつけながら、思わず唇をニンマリとさせた。
なに、思い通りにならなければ、実力行使をするまでだ。
ロベルタ公爵様にふさわしいのは可愛い聖女の私であることは間違いないし、公爵領の富を使って栄華に浴するのも世界で一番愛くるしい私であるはずだ。
今までだってそうだったし、これからもそうでなければいけない。
「ちょっと、入って来なさい」
私は先ほど追い出した使用人を再び呼び寄せた。
「あなたが悪いのよ、シャノン。分不相応なことをするから。身の程をわきまえろと散々言ってきたのにね」
私はほくそえみながら、入ってきた部下にある指示を与えたのだった。
「なんなのよこれは!!!!」
私は滞在していたグランハイム公爵領の宿で、使用人から渡された手紙を読み、屈辱に打ち震えていた。
カリカリと美しく整えた爪を噛む。
既に路銀が尽きかけていて、伯爵令嬢である自分が、とても自分の品位に合わない宿に滞在せざるを得ない状態なのも気に入らなかった。
(私はあのみすぼらしい姉とは違うのに!)
きっと、あの姉だって、こんな部屋に宿泊させられれば文句の一つも言うに違いない。だから私が激怒するのも自然の道理だ。
「というか、そもそも、あの何の取柄もない姉なんて、すぐに離婚されて放り出されて野垂れ死ぬはず。その確信があったのに」
それなのに、1か月たってもその連絡が来なかった。だから私はこう考えた。
もしかしたら、もっとひどい目にあわされているのかもしれないと、そんなワクワクした気持ちで公爵領へ赴いたのだ。だから当然、長期滞在の旅費など持ってきていなかった。
というか、ただでさえ、伯爵領の家計は厳しいのだ。ゆえに、領民からは絞りに絞っているが、それでも足りない。だからやはり、私があのみすぼらしい姉に成り代わって、ロベルタ公爵に嫁いであげるべきなのだ。ここの領民はまだ余裕がありそうだし、もっと重税を課すことが出来る。
領民は貴族に尽くすことが義務なのだから。
それでこそ領民も生きがいがあるというものだ。
姉はよくもっと税を軽くしてあげたほうがいいなどと、最初の頃はよく寝言を言って、両親や私に更にご飯を抜かれたり、使用人に指示して執拗にいじめられたりして、どんどん心も体も弱って行ったが、当然の報いだ。
領民に豊かな暮らしをさせるなら、まず貴族令嬢の自分こそが世界で最も美しいドレスに身を包み、たくさんのメイドに囲まれ、優雅な暮らしをしなければならない。
だから、あのつまらない姉に、早々に婚約破棄をするように切り出したのだ。あんな女、すぐにロベルタ公爵様に捨てられるに違いないだろうってね。
なのに、今朝がた届いた手紙には私の思っていた結果とは真逆のことが書かれていたのだ。姉には両親が碌な教育さえ受けさせなかったのに、自力で学んだ美しい文字が並んでいる。それがまた私をイライラとさせた。
手紙の内容はこうだった。
『愛する妹へ
先日、あなたに言われた言葉は私の胸に響きました。本当にありがとう。
私のようなつまらない女が、領民を心から思い、領地の運営に心を砕かれているあの美しいロベルタ公爵様の妻におさまるなど、過分なことだと痛感しました。
だから、あなたの忠告通り、あの夜、僭越だったけれど、お忙しいロベルタ公爵様とディナーにお誘いしました。ご多忙ゆえ無理かと思ったのだけど、あっさりとご了承頂けて申し訳なく思うのと同時に、本当に嬉しく思いました』
私はイライラとする。早く婚約破棄した、城から出て行かされるっていう泣き言を読ませないさいよ!
そう心が叫ぶ。でも何とそのイライラをおさえて続きを読んだ。
『でも、ごめんなさい。
あなたの言う通り、私はあの方に本当にいろんなものを頂いたの。私について来てくれたメイドのアンのお世話もしてくれるとおっしゃってもらったし、お部屋も頂いたの。落ち着ける場所が出来て本当に嬉しかった。自由にお庭を散策もさせて頂いて美しい自然や、可愛いグリフォンちゃんにも出会うことができたのよ』
私は姉の見ている美しい光景が脳裏をかすめて、思わず嫉妬してまた爪を噛んでしまった。ああ、せっかく高いお金をかけて整えたのに!
『それにドレスや美味しいお食事まで頂いて……。もうこれ以上は私などには過分だと言おうとしたの。だけど、本当にごめんなさい。言おうとしたら涙がなぜか流れてきて止まらなかったの』
「……」
『心が弱くていやになるわ。あなたが私を罵るのも当然だと思う。でも、そんな私を見て、ロベルタ公爵様は……旦那様にはまたご心配をかけてしまったの。本当に申し訳ないと思った。だから、次の日にお見舞いに来てくれた旦那様に、ちゃんと申し上げたの。私はもう十分なものを頂いたし、もっと相応しい貴族令嬢がいるって。あなたのこともよ……』
よし! と思う。唇が自然とニンマリとなるのが分かった。これでロベルタ公爵様はあのシャノンを城からすぐにでも放り出すはずだ。何せ、美人で可愛らしい、花のような私がいるんだから。うふふふふ。
『でも、旦那様は何か勘違いをされているのだと思うのだけど、なぜか私を離して下さらないのよ……』
「は?」
私は唖然とする。その感情が怒りなのか、それを超越したのなんなのか分からないが、とにかく脳裏にいろんな感情が爆発していた。
『領民を思うことや、他人に優しいということを褒めてくださったの。そんなことないのに……。メイドのことも、領民に笑顔でいて欲しいことも、全部当たり前のことなのに。贅沢をしないことだって、旦那様のご両親が急逝されて、領地経営に腐心されていることを鑑みれば当然のことだし……。もちろん、ある程度お金を使うことが領地運営の経済を回すために必要ということは知っているけれど、散財とは違うもの。でも、そんな当たり前のことをしているだけの私を、旦那様は「ありのままの君」が良いと言ってくださるの』
「はぁ! はぁ! はぁ! はぁ!」
私は呼吸が荒くなっていることに気づかない。
『むしろ、ずっと一緒にいて欲しいと、日傘のプレゼントまで頂いたのよ。病弱な私を気遣って、一緒に散策をしようって……。私、旦那様にこんな気を遣わせてしまって、申し訳ないと思ってはいるの……。でも、ドレスよりも、私は心のこもったこの日傘のプレゼントの方が実は嬉しかった……。だから、こんなにも私を大事にしてくださる旦那様のそばに、もしかして、自分はいてもいいのかもしれないと思い始めたのよ』
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ!
私が爪をかじる音が貧相な部屋に響く。ドレスより日傘が良い訳ないわ! 何を言っているの、この女は!
『だから、ありがとう、リンディ。あなたのおかげで、自分の気持ちをしっかりと伝えることが出来た。そのおかげで、旦那様が本当はとても優しくて、私なんかにもそのご厚情を分けて下さる方だと分かったの。情けをおかけ頂いているに違いないし、至らない私だから、いつ追い出されるか分からないけど、でも、領民の笑顔のために少しでも頑張ってみたいと思ったの。だからありがとうリンディ。あなたのおかげで、今とても幸せよ。あなたもどうぞ幸せになって。お父様とお母様にも御身体を労わるよう宜しくお伝えして
あなたを愛する姉より』
「なんなのよこれは!!!!」
ビリビリビリビリ!!!!
私は怒りのあまり、思わず破り捨ててしててしまった。
「ど、どうなされましたか、リンディさ」
「入ってくんじゃないわよ!」
「は、はは!!」
はぁはぁはぁはぁ……。
使用人どもが驚いて私の部屋に入って来たので、しかりつけて追い出した。
「あんな……。あんな女があの美しいロベルタ公爵様の妻になるですって……」
私は思わず怨嗟の呟きを漏らす。
「あんなやせぎすの女がこの豊かな公爵領の富を独り占めするですって……」
先日見た時は少しふっくらとしていて、血色も良かったように思えた。きっと、とんでもない贅沢な化粧品を使用しているに違いない。あの痩せぎすな姉があんなに美人なはずがないからだ。
「そんなこと許せるわけないわよねえ」
私はビリビリに破かれて、床に落ちた手紙を踏みつけながら、思わず唇をニンマリとさせた。
なに、思い通りにならなければ、実力行使をするまでだ。
ロベルタ公爵様にふさわしいのは可愛い聖女の私であることは間違いないし、公爵領の富を使って栄華に浴するのも世界で一番愛くるしい私であるはずだ。
今までだってそうだったし、これからもそうでなければいけない。
「ちょっと、入って来なさい」
私は先ほど追い出した使用人を再び呼び寄せた。
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