わたしはあなたの隣で幸せに咲く

初枝れんげ@出版『追放嬉しい』『孤児院』

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27.わたしはあなたの隣で幸せに咲く

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目の前には上等のハーブティーと、クッキーが並んでいます。

私の隣には旦那様がお座りになり、対面の座席には美しい金髪のどこか柔和な雰囲気の男性が座っています。

「本当にあの処置で良かったのか? 本来ならば処刑は免れ得ない罪を犯した。何より、君が彼らから受けた仕打ちを考えれば、それだけでも大問題だというのに」

「もちろんです。ずっと心配をしていました。国王様の恩赦に星の数ほどの感謝を捧げます」

「やれやれ。まったく。ケイン王太子殿下も何とか言ってやってくれ」

旦那様が目の前の相手……殿下にとても親しい口調で言いました。

「いやぁ、この唐変木をここまで変えてくれてありがとう。早々に結婚した僕としては、ロベルタにもこの国を支える柱として早く身を固めてもらいたいと思ってたんだ。しかし、この唐変木をこれほどデレデレにさせる女性がいて感無量だよ。ささ、早く結婚式を挙げたまえ」

「余計なお世話だ! まったく」

旦那様がとても砕けた様子でおっしゃいます。

でも、小心者の私はカチンコチンです。

だってしょうがありません。

目の前にいらっしゃるのは、このランズ王国の第一王子ケイン様なのですから。

旦那様は貴族学校で同学年だったようで竹馬の友のようなご関係のようです。

いつもは堅物と思われがちな旦那様ですが、気の置けないご友人の前ではとてもリラックスされているので、私まで嬉しくなります。

ただ、それが王太子殿下なので、やはり小心者の私の言動はぎこちないものになってしまうのですが……。

と、そんな緊張気味に微笑みを浮かべている私に、殿下はまじめな表情でおっしゃいました。

「……とはいえ、罪は罪だ。この意味は分かるね?」

「はい」

そう、それは妹や両親のこと。

本来存在しないペンゾラム侯爵の謀反を捏造しました。

その目的は、妹のリンディを私の代わりに公爵に嫁がせるというものでした。

どうやら伯爵領の経営がもはや破綻寸前まできており、私を嫁がせたことによる結納金でも間に合わないと踏んだ両親が、妹の企てに賛同したのです。私から旦那様へ婚約破棄の手紙を書かせ正式に別れさせた後、妹のリンディを嫁がせるという計画でした。そのために謀反という嘘を捏造し私の誘拐を企《くわだ》てたのです。

「本来ならばお家取り潰しの上、スフィア伯爵家の親族一同は処刑だ。国家転覆罪に相当するかもしれないからね。ただ、困ったことに、この王国で最も頼りになるそこの唐変木と」

「誰が唐変木だ」

「君だよ、君。そして何より、調べれば調べるほど酷い境遇だったシャノン令嬢が、そろって陳情に来るじゃないか。参ったよ」

「本当に申し訳ありません」

「いいのいいの。うちの母上が、君の身の上を知った上で陳情を聞いてさ、すごく心動かされたみたいなんだ。で、過去の判例を調べたところ、類似の罪で国外追放で対応している事例があったんだ。だから、問題ないから安心して」

「良かった、本当に」

私はうっすら涙ぐみながら言う。

もちろん、今までされたことも、何もかも忘れたわけじゃない。でも、それでもやはり家族だから……。

「本当に変わった奥さんだねえ。いや、ロベルタにはぴったりだよ」

またからかうように、殿下がおっしゃられた。

きっとまた口喧嘩が始まる。

そう思ったけれど、旦那様はそのアクアマリンよりも美しいアイスブルーの瞳を優し気に細められて、

「当然だろう。俺の愛する妻だぞ?」

とおっしゃられたのでした。

「ちょ、ちょっと。旦那様……」

私はすぐに真っ赤になってしまいます。

「やれやれ、あてられてはかなわないな。それじゃあ、僕は退散することにするよ。あとはお二人でどーぞ」

「もう帰るのか?」

「まぁね。今回のことで問題のある貴族のあぶり出しが必要なことも分かってきたし、やることが沢山あるんだ。まぁまた遊びに来てよ、ロベルタ」

「ああ、ありがとう、ケイン」

その心のこもったお礼の言葉に、殿下は嬉しそうに微笑まれると、退室されて行かれたのでした。





「ところで一つ疑問があるのですが、聞いても宜しいでしょうか?」

「なんだ?」

「どうして私の居場所が分かったのですか?」

私が閉じ込められていたのは、公爵領内とは言えすぐに見つかるとは思えない辺鄙な場所にあった。

どうやって探しだしてくれたのか、分からなかったのだ。

「あの日、王城へグリフォンで急行した俺は謀反のことをケイン王太子殿下に言った。だが、それはすぐに嘘だと分かった」

「なぜですか?」

「そこにペンゾラム侯爵がいたからな」

「まぁ!」

「あいつは野心家だが、王家には忠誠を誓っている男だからな……。最初から変だとは思っていたんだ。交易の相談にちょうど王城を訪問していたらしい。それで俺はすぐに領地へ戻ることにした。嫌な予感がしたからな」

そういうことだったのですね。でも、

「私の居場所はどうやって見つけて下さったのですか?」

やはりそこが分からない。

「シャノン。大聖女の逸話は知っているか?」

「え?」

唐突に話が変わったので、ついていけずにポカンとする。

そんな私を、旦那様は優しい、吸い込まれるような瞳で見られながら、

「聖獣は仕えるべき主の場所が分かるのだそうだ。そして、聖獣の本来の主とはかつて聖女と言われた、心美しく、人々を労わる存在だという」

「へ?」

「グリフォンには君の場所が分かった。君が美しい心を持つ聖女だからだ」

そう言って、旦那様はウインクをされた。

聖女?

私が?

私はその話を聞いて……。

「ふふふ、旦那様は時々冗談をおっしゃられるから困ってしまいます」

すぐに微笑みを浮かべて、

「私がそんな凄い存在な訳がありません。いえ、そんな肩書きはいりません。私は……その……」

私はしっかりと旦那様を見つめながら、

「旦那様とずっと一緒にいたいのです。妻としてあなたの傍でずっと……」

そう言うと、旦那様も優しい微笑を浮かべられて、

「俺もシャノンを愛している。俺の隣にずっといて欲しい」

「はい、旦那様」

徐々に旦那様の顔が近づいてきます。

あの日、庭園でできなかった続きを、私たちはするのでした。
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